【ライブレポート】HIRO [La’cryma Christi]、初のギター&ヴォーカル公演で「まだ見ぬ景色が見えた」

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La'cryma ChristiのHIROが8月26日(日)、渋谷クラブクアトロでソロライブ<HIRO 2nd Solo Live 〜Under the midnight sun〜>を開催した。2017年の1stソロライブは、ギターインストアルバム『Gale』収録曲が中心だったが、今回は8月15日に発売された2ndソロアルバム『Midnight Sun』が主役。そのニューアルバムは誰も予想しなかった全曲ヴォーカル曲だった。La'cryma Christiのギタリストとして知られるHIROだが、もはやギタリストの枠に収まらない。

◆HIRO [La’cryma Christi] 画像

まだ誰も見たことのないライブになるはずだから、フロアを埋めた観客も開演前からソワソワしていた。その期待と緊張が暗闇に包まれると同時に乾いた風のSEが流れた。1曲目は、アルバム『Midnight Sun』でも冒頭に収録されている「白夜」。6/8拍子の美しいメロディと一音入魂のバンドとHIROの低温ヴォーカルがもつれ合う。バンドを従えて歌うHIROの姿も初めてなら、バンドサウンドで歌うHIROの生声も初めて。さらにはギターを抱えているが、ほとんど弾かないHIROも初めて。この初めて尽くしの状況をどう捉えればいいのか、すべての観客が期待と緊張を抱えたまま固まった。

アコースティックギターの長い余韻を残し、1曲目の演奏が終わったものの、会場は静寂で染まったままだ。拍手も歓声もない。次に何が起こるか、全員が固唾を飲む。しかし、予定調和を壊したこの静寂こそ、創造性の証明だ。1曲目で派手に盛り上げ、その勢いで3曲ほど続け、中盤にバラードやミディアムテンポで、仕切り直して後半戦へ、こんなありきたりのライブに創造性はない。そういう漫然としたライブが好きな観客にはHIROのライブは薦められない。新しい刺激を求めている観客こそ、ウェルカムだ。


ハードにドライブする「我」でも、HIROはヴォーカルに集中していた。ギターを下げたまま、ハンドマイクで歌う。どこか危険な香りがするヴォーカルが彼の個性だ。この2曲目が終わると、「HIRO!HIRO!」と、ようやくフロアのあちこちから声が飛ぶ。ここでMC。見事なライブ構成だ。開け放たれた扉の外から、おそるおそる覗き込んでいた人たちが、扉の内側へ一歩踏み込むきっかけになるMCだから。

「初めまして、ギター&ヴォーカルのHIROです」

挨拶がわりの短いMCなのに、ステージとフロア、お互いの緊張がほぐれた。観客をさらに自分の世界の内側に導く。1stソロアルバムからギターインストを2連発。「Like the Wind」「Dear Phantom」。ヘヴィなギターが唸りを上げると、緊張の呪縛から解放されたのか、ヘッドバンギングする観客も現れた。


続いては、再びヴォーカル曲。「鏡の中の君」「反逆のセレナーデ」。大人の情事が描かれている「鏡の中の君」。ミッドロー(中低音域)に豊かな倍音が含まれているやわらかいヴォーカルが心地よい。一方、パーカッシブと言うべきだろうか、言葉を畳み込むヴォーカルだったのが「反逆のセレナーデ」。ここでもギターはほぼ弾かず、歌に専念していた。

「ヴォーカルって大変なんだと、しみじみ思っています」と、2度目のMCでは小さく笑みを浮かべた。La'cryma Christiのライブでは、ほとんど喋らないHIROだからこそ、MCでときおり顔を覗かせる親しみやすさも、ソロならでは。

“歌詞を伝える”をテーマに作ったアルバム『Midnight Sun』の収録曲がさらに続く。「今夜は満月だそうで……」と、歌詞に満月が出てくる「緑の秋」。街が青く染まる夜明けの歌「conviction」。観客の脳裏に歌詞の情景が浮かぶよう、丁寧に歌っていた。ギターを置き、マイクスタンドで歌ったのが「祈り」。誰もが初めて見るHIROの姿。やはりもはやギタリストの枠に収まらない存在だ。


ライブ終盤は、オーバードライブする「残り香」から。妖しいヴォーカルだ。これもHIROの個性のひとつ。ここまできたら、観客は曲と完全シンクロ、もう固まっている観客は一人もいない。リズムを刻み、熱い眼差しを送り、身体を揺らす。「Bare Fangs」は『Gale』収録のギターインスト。高速リズムとスリリングなギターフレーズが交錯する。物悲しさをたたえたメロディもまたHIROならでは。

再びギターを置き、ハンドマイクで歌った「under the midnight sun」。ステージにひざまずき、観客と目線を合わせるようにして、一人一人と向き合って歌った。サビになると、倍テン(2倍のテンポ)でヘッドバンキングする観客がいるかと思えば、じっとヴォーカルに聴き入る観客や、もう歌を覚えているのだろう、HIROと一緒に唇を動かす観客もいた。最初、静寂の一色に染まったフロアがラストで何百色にもなっていた。それはライブが成功した証明だ。予定調和を覆すことができた裏づけだ。本編ラストは『Midnight Sun』でもラストを飾っている「遥か…」。危うさ、妖しさ、低温、ローミッドなど、HIROのヴォーカルの個性が詰まっていた。


アンコールでは、11月3日(土)の初台DOORSと同4日(日)の新宿MARZでの追加公演<HIRO Solo Live “Midnight sun over the next”>開催が発表された。ギタリストからギター&ヴォーカルへと進化したHIRO。魅力は2倍どころではなく、何十倍にも膨らんでいたライブだったから、同公演でもさらに膨らむことだろう。

そして、アンコールはWaiveやRayflowerの活動で知られる田澤孝介(Vo)がゲスト出演。La'cryma Christiの「情熱の風」「Ivory trees」「IN FOREST」「THE SCENT」ではヴォーカルを担当した。ギタリストに戻ったHIROの、緊張から解放された笑顔と伸び伸びとした演奏も新鮮だった。HIROが言う「まだ見ぬ景色が見えた」影響だろう。きっとこれからも、11月の追加公演<HIRO Solo Live “Midnight sun over the next”>でも、彼はまだ見ぬ景色を追い続けるのだろう。

撮影◎中村 功

■<HIRO 2nd Solo Live『Under the midnight sun』>2018年8月26日(日)@渋谷CLUB QUATTROセットリスト

01. 白夜
02. 我
03. Like the wind
04. Dear Phantom
05. 鏡の中の君
06. 反逆のセレナーデ
07. 緑の秋
08. conviction
09. 祈り
10. 残り香
11. Bare Fangs
12. under the midnight sun
13. 遥か...
encore (Guest Vocal:田澤孝介)
14. 情熱の風 (※La'cryma Christi楽曲)
15. Ivory trees (※La'cryma Christi楽曲)
16. IN FOREST (※La'cryma Christi楽曲)
17. THE SCENT (※La'cryma Christi楽曲)

▼ライヴ・ミュージシャン
Vocal & Guitar:HIRO
Guitar:Shinobu
Bass:中村泰造
Drums:ササブチヒロシ
Guest:田澤孝介

■追加公演<HIRO Solo Live “Midnight sun over the next”>


2018年11月3日(土) 初台DOORS
Open16:00 / Start16:30
2018年11月4日(日) 新宿MARZ
Open18:00 / Start18:30
▼チケット
スタンディング 6,800円(税込) ※ドリンク代別
【オフィシャル最速先行販売】
受付期間:9月9日(日)23:59まで
http://www.lacrymachristi.jp/HIRO_MidnightSun.html

▼ライヴ・ミュージシャン
Vocal & Guitar : HIRO
Guitar : Shinobu
Bass : 中村泰造
Drums : ササブチヒロシ

■HIRO初のファン旅行<〜HIROの甘い罠〜越後湯沢で過ごす魅惑の2日間〜>


開催日:2018年10月20日(土)〜10月21日(日)
宿泊施設:NASPAニューオータニ(新潟県)
※申込締切:9月10日(月)15時まで
http://kk-kanko.com/hiro2018/


■2ndソロアルバム『Midnight Sun』


2018年8月15日(水)発売
GQCS-30009 3,240円(税込)
01. 白夜 (作詞:HIRO)
02. 我 (作詞:鈴木慎一郎)
03. 鏡の中の君 (作詞:伊勢正三)
04. 反逆のセレナーデ (作詞:伊勢正三)
05. 緑の秋 (作詞:伊勢正三)
06. conviction (作詞:Naoki. H)
07. 残り香 (作詞:鈴木慎一郎)
08. 祈り (作詞:伊勢正三)
09. under the midnight sun (作詞:HIRO)
10. 遥か... (作詞:鈴木慎一郎)
全作曲・編曲:HIRO

▼レコーディング・ミュージシャン
Vocal & Guitar:HIRO
Bass:中村泰造
Drums:ササブチヒロシ
Chorus (M8):玉虫ナヲキ

■『Midnight Sun』発売記念インストアイベント

2018年9月2日(日)14:00~ タワーレコード渋谷店 5F洋楽フロア
2018年9月2日(日)18:30~ 渋谷ZEAL LINK B1イベントスペース
※イベント内容:ミニアコースティックライヴ、握手&サイン会
http://www.lacrymachristi.jp/HIRO_MidnightSun.html

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