【ライヴレポート】CREATURE CREATURE、“一夜限り”とされた復活公演「ようやく会えましたね」
CREATURE CREATUREが8月30日、東京・新宿ReNYにて<One Night Awakening>を開催した。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆CREATURE CREATURE 画像
2018年7月8日の東京・新宿ReNY公演をもって、12年間の活動から<休眠>へと入ったCREATURE CREATURE。その後、彼らは同日の模様を収めたライヴ映像作品『Beyond Light & Lust』のリリースに伴い、2020年3月4日に同会場にて<One Night Awakening>と銘打った特別公演を行う予定になっていた。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、スケジュールは二度の延期に。状況が様々に変化するパンデミックには今も誰もが翻弄されているが、振替日程がなかなか決まらなかった最大かつ唯一の理由もそれである。
そんな中でついに実現した“一夜限りの覚醒”。結果的に5人が再びステージに立つまでに約4年もの歳月を経ることになったものの、長らく待ちわびていたファンにしてみれば、自ずから渇望感が増幅されていったはずである。そして、会場に詰めかけたオーディエンスと同じように、メンバー自身も来る日を独特の緊張感の中で迎えたに違いない。
暗転した場内にオープニングSEが流れ、MORRIE(Vo)、HIRO(G)、Shinobu(G)、人時(B)、ササブチヒロシ(Dr)が定位置につく。そしてハイハットによるカウントから「Maboroshi」が始まった。1stアルバム『Light & Lust』(2006年)の1曲目でもあり、この選曲にCREATURE CREATUREの原点を改めて感じ取った人も少なくなかっただろう。
ここから『INFERNO』(2010年)収録の「Dream Caller」と「Amor Fati」が続き、現時点での最新作である『DEATH IS A FLOWER』(2018年)からの「虚空にハイウェイ」へとつながった。ダイナミズムのあるアンサンブル。DEAD ENDやソロの際とは異なるMORRIEの立ち居振る舞い。久しぶりのステージでありながら、観ている側としても不思議なほど空白の時間を感じない。その声と音の融合に、彼らの世界へと瞬時に没入させる完成度の高さがあるゆえである。
初ライヴの際にも演奏された人時のベースが強力なグルーヴを生み出す「星憑き」、特に各パートのフレージングに歌詞と同調する言語的な意味を求めたくなる「Black Hole」、オーディエンスを大いに揺らす「Gone By Rain」。特定のアルバムのリリースに伴う公演ではない場合、セットリストは予想しづらいが、何が飛び出すかわからない楽しさがある。この前半だけで言っても、今回の流れは絶妙だった。コロナ禍で歓声を出すことは規制されてはいるものの、フロアの熱が着実に高まっていったのはその証だろう。
中盤はじっくりと聴かせるマテリアルが並べられた。まずは『PHANTOMS』(2012年)から「Mirrors」だ。ツインギターで奏でられる不穏なフレーズ、一転してブラックメタル的手法でヘヴィネスを押し出すリフ。MORRIEの歌もウィスパーからシャウトまで、様々な表情を見せるが、いわゆるポップミュージックのセオリーに対するCREATURE CREATUREの在り方を象徴的に表現した楽曲でもあるだろう。叙情性を感じさせる旋律の「Vanishing」は、余韻も含めて、歌い上げるMORRIEの声に惹きつけられていく。続く「Ataraxia」はアルバム未収録ながら、名曲に挙げられるものだ。サビで歌われる“世界は滅び 夢になるだろう”との一節には、MORRIEの考える“夢”の実像をいつも想像させられる。後半の人時とのツインヴォーカルスタイルの響きもライヴならではの醍醐味だ。
美しいアルペジオに始まる「秘苑」は、どちらかと言えば落ち着いた趣きだが、静と動の音色が並行していく構成を軸にしながら、意表をついた展開も見せる。音源では幾度も耳にして慣れてはいるものの、やはり実演を通してバンドサウンドを体感すると、その妙技はより一層堪能できる。ライヴで演奏されることの多い「天醜爛漫」にも同様のことが言えるかもしれない。CREATURE CREATUREの実験性をキャッチーにまとめ上げた佳曲であり、進行するに従って引き込まれていく中毒性がある。コーラスから醸し出される温かみが弛緩だとすれば、ほとんどは緊張感に満ちている。終盤の楽器陣によるアンサンブルを背景に舞うMORRIEの姿も印象的に映った。
「ようやく会えましたね」──MORRIE
この日初めてのMCでMORRIEは、延期が続いていたライヴがついに実現した歓びを口にし、観客を煽りながら、代表曲の一つである「楽園へ」がアグレッシヴな後半への入口となり、「Red」「Sexus」で畳み掛ける。こういった展開をさらに加速させたのが「Dead Rider」だ。即効性がありながら、CREATURE CREATUREらしい前衛性も併せ持つ。ヘッドバンギングに興じるオーディエンスも一気に増えた。そのまま「Swan」へとつなげる流れにも頷かされる。オルタナティヴなヘヴィサウンド、起伏のあるグルーヴ。変幻自在な構成が気分を昂揚させる。アバンギャルドな様式美という表現には語弊があるかもしれないが、直感的にこの5人が生み出す混沌の世界を体感させられる時間でもあった。それゆえに本編最後の「春の機械」がもたらす不可思議なムードにも自ずから埋没できる。この曲もまたCREATURE CREATUREの始まりを象徴するものだ。
アンコールでは「千の闇夜に」と「Aurora」を続けて披露した後、メンバーそれぞれがマイクに向かった。リハーサルの時点で、以前よりも手応えがあったと一様に口にしていたが、それも頷かされるパフォーマンスだったのは、観客も同意するところだろう。MORRIE自身も個々の発言を受けて「やっていて幸せだと思いました」「いいライヴだったと思います」と話す。そして最後にプレイされたのは「Death Is A Flower」。“死”とは“花”であるという隠喩が示すものをどう捉えるかは十人十色だが、ゆったりと進む歌と演奏に触れるたびに、聴き手側は真理の探求を促される。そんな衝動を鼓舞されたまま、この日のライヴは幕を閉じた。
CREATURE CREATUREが次にいつ“覚醒”するのかはわからない。ただ、一夜限りとされた復活公演を通して、ステージに立つ5人もCREATURE CREATUREという特殊なバンドに自ら魅了された面があるのは間違いないところだろう。ただ、音楽表現に対するMORRIEの姿勢に鑑みれば、その来る日の到来には、必ずや何らかの意味が備わるはずである。周知の通り、9月7日にはDEAD ENDの名曲群をセルフカバーしたソロアルバム『Ballad D』をリリースし、かねてから行ってきた弾き語り公演も11月3日の東京キネマ倶楽部公演では100回目を迎え、さらに通常のソロバンド形態とは若干異なるライヴも予定されている。様々な活動がある中で、彼がCREATURE CREATUREの新章をどう位置づけるのか。新たな動きを待望しておきたい。
取材・文◎土屋京輔
撮影◎柴田恵理/荒川れいこ(zoisite)
■<CREATURE CREATURE「One Night Awakening」>2022年8月30日@東京・新宿ReNY セットリスト
02. Dream Caller
03. Amor Fati
04. 虚空にハイウェイ
05. 星憑き
06. Black Hole
07. Gone By Rain
08. Mirrors
09. Vanishing
10. Ataraxia
11. 秘苑
12. 天醜爛漫
13. 楽園へ
14. Red
15. Sexus
16. Dead Rider
17. Swan
18. 春の機械
encore
19. 千の闇夜に
20. Aurora
21. Death Is A Flower
■MORRIEライヴスケジュール
2022年11月3日 東京キネマ倶楽部
open17:30 / start18:00
▼<Arche 4>
2022年11月23日 東京・高田馬場CLUB PHASE
open16:30 / start17:00
▼<Sail Your Soul>
2022年12月17日 東京・大塚Deepa
open16:30 / start17:00
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