【インタビュー】KAMIJO、ギタリストHIROと語る『VIOLET DAWN』と'90年代の正解「一番のテーマは新しいライヴのスタート」

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KAMIJOが7月31日、ミニアルバム『VIOLET DAWN』をリリースした。“EPIC INTENSEなサウンド”をテーマに制作された同作品には、タイトルチューン「VIOLET DAWN」をはじめ、「The Anthem」「Twilight」など新曲5曲が収録された。LAREINE、Versaillesといったバンド活動を経て、2024年でキャリア29年、ソロデビュー11年を迎えるKAMIJOだが、前回インタビューで明かされていたように、ついにリリースされた『VIOLET DAWN』は、新章の息吹を感じさせて斬新この上ない。

◆KAMIJO×HIRO 画像 / 動画

ギターにLa'cryma ChristiのHIROとRayflowerのYUKI、ベースにRayflowerのIKUO、ドラムにex-Janne Da Arcのshujiといったツワモノを迎えたバンドサウンドは鉄壁であり、'90年代ヴィジュアルシーンを知るものにとっては、ドリームチームという形容にも大きく頷けるはず。現代的なヘヴィネスや激しさ、KAMIJOならではのインテリジェンスが詰め込まれた作品は、まさしく今現在のものであるが、歴戦の精鋭たちによるサウンドは時代を超越して美しく豊かだ。KAMIJO曰く、そこに大きな効果をもたらしたのがHIROのギタープレイだった。

なお、完全生産限定盤は、4月20日にZepp Shinjukuで行われた<Visual Rock Identity -The Anthem->から、ストーリーに関連する楽曲を抜粋したライヴDVDほか、ドキュメンタリー映像やInstrumental CDも付属するなど、強靭なバンドサウンドやKAMIJO作品に脈々と流れる物語を感じられる仕上がりだ。BARKSはKAMIJOとHIROを迎え、『VIOLET DAWN』についてじっくりと話を訊いた。


   ◆   ◆   ◆

■ルイ17世が生きた時代から
■今、自分たちが生きている時代へ


──6月に行われたヨーロッパツアー<KAMIJO Europe Tour 2024 “The Anthem”>は随分と盛り上がったようですね。

KAMIJO:はい、びっくりする盛り上がりでした。結構、キツキツな行程だったんですけど、メンバー、スタッフのみなさんのおかげで、すごくリラックスして回ることができて、すごく楽しかったです。今回、新しいファンがものすごく増えていて、Versaillesを含め、今までのヨーロッパツアーの中でも一番の動員になりました。下は小学生から、すごく幅広い層に聴いていただいていることもわかりましたね。

──YouTubeなどがきっかけになるケースは多いでしょうけど、どういうきっかけで、KAMIJOさんを知るんでしょうね。

KAMIJO:まったくわからないです。ただ、「mademoiselle」という曲がやたら人気でして。たとえば、Spotifyでも100万回も再生されているんですけど、そういったサブスクリプションなどで人気のある曲は、ライヴでもやっぱり盛り上がりましたね。今回のツアーはHIROさん、IKUOさんという国内でもお馴染みのメンバーに加えて、スウェーデンのYOHIOくんとVORCHAOSのUSHIくんという編成で回らせていただいたことでも、期待値はすごく高かったと思うんですね。いいものを見せられてよかったなと思います。

HIRO:個人的に海外でツアーを回るということが初めての経験だったんですよ。しかもKAMIJOさんのサポートということで、どういう盛り上がり方なのかといったことも、まったくわからなかったから…何があっても動じないように覚悟を決めて(笑)。

KAMIJO:そうだったんですか(笑)。

──特に演奏陣は機材面が気になりますよね。

HIRO:そうなんですよ。なるべくどこでも同じ環境、同じ音で演奏できるようなコンパクトなシステムを作っていたんですけど、海外でのライヴって「何が起こるかわからない」ってよく言うじゃないですか。でも、KAMIJOさんをはじめ、スタッフの方がとてもよくしてくれて、やりやすい環境を作ってくれたことで、演奏に集中できたし、ヨーロッパでのライヴを純粋に楽しむことができて、本当にいい経験だったなと思います。


KAMIJO:ありがとうございます。実はメンバーさんの中で、HIROさんはプリプロとかもずっとご一緒させていただいていたので、日本で共に過ごす時間も一番長いんですけど、今回はさらに一緒にいる時間が長かったので、これまでは入り込めていなかったHIROさんの深い部分にも触れられたと言いますか。だいぶ一緒に飲み続けましたからね(笑)。

HIRO:こんなに飲んでるKAMIJOさんは初めて見ました(笑)。

KAMIJO:その意味でも楽しくてしょうがなかったです(笑)。

──より結束力も強まりますよね。

HIRO:演奏も今までで一番いい出来だったと思うんですよ。やっぱりライヴを重ねていくにつれて、どんどん無敵になっていって。いつもはシビアに臨む箇所でも、イケイケな気持ちでできたり。

KAMIJO:ライヴ終演後のステージ上では、メンバーさんも僕と一緒にラインナップしていただいて、マイクを渡すこともあったんですね。そのときHIROさんが「Yeah!」って叫んでいたのが僕は嬉しかったですね(笑)。

──それぐらい気分も昂揚していたわけですね。

HIRO:なるべくその国の言葉で挨拶できたらいいなと思ってるんですよ。でも、全部は無理だったので、もう開き直って(笑)。でも、久しぶりにそういうこともできたし、そこまで自分を解放できたことに、昔を思い出して懐かしく感じたりもして。

──ヨーロッパツアーの前に、今回のミニアルバム『VIOLET DAWN』のレコーディングはほぼ終わっていたんですか?

KAMIJO:バンドの録音はすべて終わってまして。歌は数曲だけ終えていたんですが、“ヨーロッパで刺激を受けるだろうから”ということで、ちょっと隙間を作っておいた感じなんですね。



──なるほど。『VIOLET DAWN』は作品全体としてどんな位置づけなのでしょう? 2024年1月にリリースされたシングル「美しい日々の欠片」に続くものという意味でも注目されますよね。

KAMIJO:そうですね。まずお話ししておかなければいけないのは、僕はデビューしてから10年間、ずっとルイ17世のストーリーを描いてきて、それが昨年8月28日にZepp Shinjukuで行った10周年ライヴや、今年1月にリリースした映像作品『LOUIS XVII』で完結したんですね。そして、“自分はこれからどんなステージを作っていったらいいのかな”と。そういう中で、一旦完結したとはいえ、今までの楽曲を歌わなくなるのはやっぱり寂しいんすよ。そこで、“今までの自分の楽曲たちは、自分のライヴという小さな国の国歌だろう”と考えたんです。つまり自分にとって、ずっと歌っていくべき国の歌。そう捉えたら、昔の曲もまた違う聴かせられ方をするんじゃないかなって思ったんですね。

──なるほど。

KAMIJO:ルイ17世の物語から次の『VIOLET DAWN』に繋がるブリッジとして、楽曲「The Anthem」で“Anthem”という僕の分身人物をキャラクター化して、小さなストーリーを描いたんです。その中では、自分が人生の中で失ったもの、大切なもの、これから守っていきたいものなどを表現したんですね。「美しい日々の欠片」はそこに含まれるんですが、“いよいよ次は何を描いていくのか?”となったときに、自分自身が見たもの、感じたものをストレートに出していきたいなと思いまして。

──物語ではなく。

KAMIJO:ですから、ストーリーというよりも、KAMIJOの新しいライヴのスタート。それが今回の作品の一番のテーマですかね。最も表立って掲げているテーマとしては、“EPIC INTENSE”というサウンドを目指したいなっていうのがありまして。

──その“EPIC INTENSE”とは、どのようなものなのでしょう?

KAMIJO:たとえば、RHAPSODY OF FIREなどの音楽はエピックメタルと言われますよね。そのエピックも確かにエピックなんですけど、僕の言ってるエピックとは違って。ゲームのバトルミュージックや近代的な映画のサウンドトラックのティーザーで使われるようなエピックミュージックと比べても、どちらかというとだいぶヘヴィなもの、それが“EPIC INTENSE”ですね。インテンスミュージックというものがあるんですけれど、自分がバックトラックも作る人間なので、自分が作るバンドの楽曲にそれを当てはめて、思いっきりやってみたいというのが、今回のアルバムの最大のテーマですね。


▲通常盤

──4月のZepp Shinjukuでのライヴでも、「The Anthem」や「Twilight」は演奏されていて。あの日はアニメーションを交えたり、KAMIJOさんの声優としての出演もあったり、ある種のルイ17世の物語に続くストーリーを感じさせる内容でもありましたよね。それと無関係ではないにしても、まず今回は楽曲優先で考えたわけですか?

KAMIJO:楽曲優先かつ、ルイ17世が生きた時代から、今、自分たちが生きている時代…自分自身がそこで何を感じて、どんなサウンドでライヴをやるのか。そこに思いっきり絞ってますね。だから、“この曲はこれからこういうストーリーで”といったところは、今回は具体的には描いてないんです。4月のZepp Shinjuku公演は、ショー的な要素を思いっきり盛り込んだライヴで。5月の関東ツアーは、いかにお客さんと暴れられるライヴにできるか。そして先日のヨーロッパツアー。その三つの流れにおいて、ルイ17世の物語を終えた後の自分のこれからのライヴをどう作っていくか。実験と言ったら言葉が悪いですが、どんどん行動に移していったんですよ。そして見えてきたのがこの『VIOLET DAWN』という形ですね。どんなライヴがしたいのかを思い浮かべながら、「Twilight」も「The Anthem」も作りましたし。そういった一つ一つのパーツが固まっていったときに、“EPIC INTENSE”なライヴをしたいなと。そういった意思で作っていたアルバムということです。

──そうすると、それぞれの曲が何らかのストーリーの中で、居場所が決まってくる可能性はありますよね。実際に楽曲の端々からは、そういった流れも想起できますし。

KAMIJO:厳密に言うと、「Twilight」では、実はAnthemとEraの話が描かれていたり、「The Anthem」という楽曲の歌詞の中にAnthemの思いも含まれていたり、すべてにおいて関連付けて僕は作ってはいるんです。ただ、今はとにかくどういったライヴを作りたいか。それを前面に打ち出したいんです。だから…本当にデビュー作のような気持ちなんですよね。初めてのライヴをやるときのセットリストを考えながら、そこに必要な曲を作っていったという感覚はあります。

──バンドメンバーには、どの段階で具体的にどんな話をしていたのでしょう?

KAMIJO:いや、「この部分はこういった感じで弾いてほしいです」とか、そういった楽曲のアプローチについてのお話はさせていただいてるんですけれども、具体的に「こういった思いでこの曲を作りました」っていうところまではお話してないですね。

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