【短期集中連載】第四回・BugLug一樹の“解体新書”

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9月1日に日比谷野外大音楽堂で開催するワンマンライブ<KAI•TAI•SHIN•SHO>に向けて、BugLugのメンバーに行なってきたソロインタビュー。第四回目は、BugLugの“音”の部分を担う一樹(G)の登場だ。優しく穏やかに語ってくれた、彼の思いを紹介しよう。

  ◆  ◆  ◆

■自分たちが楽しむライヴをやることが
■お客さんも僕たちに求めてることなんじゃないか

――バンドでの自分の立ち位置ってどんなものだと思ってますか?

一樹(G):バンドの中ではよく音楽担当なんて言われますね。あがってきた曲をどういうサウンドに仕上げていったらいいのか、あとは曲のアレンジもこういうほうがカッコいいとか、そういう部分で意見を言ったり。そういう立ち位置ですかね。

――すごく重要な役割ですね。

一樹:そうですね。みんなと相談しながらサウンドを作っていく中で、僕が「こうしたい」って言うことが多いんですけど、やっぱりいつも上手くいくわけじゃなくて。メインコンポーザーはやっぱり一聖(Vo)なんで、彼が作ってきた曲をみんなでアレンジしていく中でどういうアプローチをしていくのか、そこの提案をすることが多い立場だと思います。

――バンドのサウンドプロデューサー的な立場?

一樹:そこまでカッコいいものじゃないです(笑)。もっと裏方というか、音楽面でバンドを支える立場というか。もともと音楽が好きなので、そういう部分を担当してるんですけど、そのぶん自分が「これだ!」と思ったことに夢中になりすぎちゃうところがあって。で、メンバーの意見を気にせず突っ走ってしまうこともあるんだけど、そこを優(G)とか将海(Dr)が戻してくれることがあったりします。

――それは確かにプロデューサー的ではないかもしれない(笑)。

一樹:そうですよね(笑)。でもそれぐらい僕は音楽が好きだし、BugLugがヴィジュアル系っていう枠に収まらない音楽をやるバンドでありたいと思っているから。

――はじめから他のヴィジュアル系とは異質の存在だったと思うんですね、BugLugは。それは音楽的にもそうだけど、バンドが歩んできた道のりもそうで。

一樹:そうですよね。

――メンバーが事故にあっても止まらずに4人だけで活動したり、その復活の舞台が武道館だったり。すでに普通のバンドのバイオグラフィーとは明らかに違ってて、ガチャガチャしてるというか。

一樹:予想もしない人生ですね。

――で、9月1日の野音はそういう普通とは違う道のりを歩いてきたバンドならではの舞台になるのでは?と思ってるんですが。

一樹:そうですね。僕が思うのは、やっぱり武道館で味わった悔しさっていうのが大きくて。一聖が事故にあって、そこから僕たちは運良く武道館で復活をすることができたんですけど、あの時の僕らはバンドの本質を見失っていたというか。とにかく「一聖が復活する」っていうことに誰もが意識を持ちすぎてしまって、本来のBugLugらしさが上手く表現できなかったんです。もちろん持てる全ての力を出したし、言い換えればそれが僕たちの実力だったわけで。で、それがすごく悔しくて。

――せっかくの武道館なのに。

一樹:なので僕的にはまず、武道館をもう一度やりたいと思っていて。そこに向かって行くための目標のひとつとして、今回の野音があると思ってます。また武道館に行くために越えなければいけない壁のひとつです。もちろん前にも野音ではやってるけど、ソールドアウトはできなかったんで、今はそこを目指してます。

――ちなみにこれまでやった野音のライヴはどうでしたか?

一樹:今回で3回目なんですけど、1回目も2回目もすごく楽しい思い出がたくさんあって。他のメンバーも言ってると思うんですけど、野外ってすごく解放感があるじゃないですか。普通のハコだと出した音が反響するのが当たり前だけど、それが外に飛び出して行く。そこになんか、僕らの世界が広がっていくような楽しさがあって。だから演奏してても楽しいし、ステージから見える景色も楽しいんですよ。

――野外ライヴって世界観を作りにくいものだと思うんですね。明るいうちから始まるから照明に頼れないし、音が反響しないぶんバンドの演奏が丸裸にされてしまうし。つまりヴィジュアル系が得意とする会場ではないというか。

一樹:そうですよね。でも僕らが野音でやったライヴって、そういうコンセプトだったりテーマでやることよりも、楽しさをフィーチャーしたお祭り感のあるものだったんで。ただ今回はアルバムのツアーのタイトルがついてるんで、今までとは違った趣向になるとは思うんですけど、やっぱりバンドのスタンスとしては、1回目と2回目を超える楽しいライヴにしたいっていうところで。そうじゃないと僕たちもライヴをやる意味がないというか、自分たちが楽しんだうえで、来てくれたファンのみんなを楽しませることが大事だと思ってるので。

▲一樹(G)

――自分たちが楽しむことが大事だと。

一樹:そうですね。ていうのも、僕たちってツアーのファイナルでいつもより大きい会場とかになると、緊張して上手くいかないことが多くて(笑)。だから変に力んだりしないで、自分たちが広い会場を使って遊ぶつもりでやろうと思ってます。

――今回の個別取材で皆さんが口を揃えて言うのは「バンドを楽しむこと」なんですね。今も一樹くんから「自分たちが楽しむ」という発言が出てきましたけど、BugLugにとってそれが大事なことなんだと自覚したのはいつ頃なんでしょうか?

一樹:いつからですかね……「武道館から」って言うのが答えとしては一番美しいのかもしれないけど、もう少し前から気づいてたかもしれない。というのも、その少し前からBugLugのライヴに来るお客さんが僕たちに求めてるものが何なのかを、考えた時期があって。たぶん……バンドとしてのカッコ良さを求めてるだけだったら、僕らのライヴには来ないだろうなって(笑)。

――どうしてそう思うんですか?

一樹:さっき言われたように、僕たちってガチャガチャしてるバンドだと思うんですね。音楽的に動き的にも。で、僕はそこをバンドの武器にしていった方がいいと思ってて。例えばヴィジュアル系だからステージで笑っちゃいけないとか、そういうことじゃなくて。もっと自由に、やっぱり自分たちが楽しむライヴをやることが、お客さんも僕たちに求めてることなんじゃないかって。

――そこにこのバンドの本質があると。

一樹:なので、もう武道館みたいなライヴだけは二度としたくないです(笑)。間違いなく今までの人生で一番の時間であったことは間違いありませんが、今でもあのライヴの映像を観ると、息が詰まりそうになるんで(笑)。

――そんな一樹くんにとって、楽しくバンドをやること以外に持っている目標とか理想ってありますか? バンドというよりも一個人、一ギタリストとしての理想像みたいなものなんですけど。

一樹:なんだろう……? すごく単純な話なんですけど、純粋に音楽が好きで、その音楽を楽しみながら音にするギタリストでいたいですね。

――でもヴィジュアル系の場合、音楽以外の要素がたくさんあるじゃないですか。メイクや衣装もそうだけど、音楽だけをやってればいいっていうジャンルではなくて。

一樹:そうですね。特に僕と将海はそこに対して正直というか、自分たちのやってることがヴィジュアルで表現したいものがない時は、メイクもすごく薄くなっちゃったりするんですね。けど、嫌いなわけじゃなくて。華やかなライヴとかステージへの憧れはあるし、それに見合う化粧や衣装を着るのも好きなんです。

――そうですよね。

一樹:ただその一方で、余計なものが一切ない状態で、ただ曲を演奏するだけでみんなが感動してくれたり笑顔になってくれることも理想ではあるけど、プラスアルファとしてヴィジュアルの要素も大事だと思ってます。その方が観てる人もより楽しめると思うし、自分たちも楽しめるから。だから音楽が好きだからと言って、それだけをやっていたいとは思わないです。

――ちなみに自分の作った音楽を評価されたい気持ちと、自分のことよりバンドを優先させたい気持ちとどっちが大きいですか?

一樹:正直に言えば、どちらも半分ずつありますかね……。BugLugって面白いバンドで。自分一人で作った曲よりも、このバンドだと想像以上のものが出来るんですよ。他のメンバーが作った曲も5人でやるとさらに面白いものになるし。そういう5人の可能性を感じられるからBugLugが好きなんだけど、それと同時に、「もっとこうしたい」とか「こうだったらいいのに」みたいな気持ちはあって。

――そこは捨てきれないと。

一樹:でもバンドってみんなの意見で作っていくから面白いし、それが強みでもある。しかも僕はもともとバンドに対する憧れが強いんで、やっぱりバンドの方が大事ですね。

――『KAI・TAI・SHIN・SHO』は、もっと音楽的に突き詰めたり掘り下げたり出来る部分があっても、あえてそこまでせず、5人が楽しく音を鳴らすことを大事にしたアルバムっていう印象があって。だから一樹くんみたいな立場のメンバーからすると、本当は個人的にやりたいことがあるかもしれないけど、バンドを優先させたのかなって思ったんです。

一樹:……その通りです(笑)。あの、BugLugの魅力のひとつにあるのは、感じたものをすぐ作品にしようとする速さというか、瞬発力みたいなもので。特に『KAI・TAI・SHIN・SHO 』はそういう衝動みたいなもので出来たアルバムなんですね。もちろん曲が完成する過程でいろんなスパイスは入ってるから、自分たちでも満足のいく作品にはなってますけど、音楽的な面で言うともっとやれることはたくさんあって、でもそこをあえて「よし作ろう! 出来た! さぁ聴いて!」みたいなスタンスというか、そういうアルバムにしたかったんです。練りに練って作ったアルバムも素晴らしいと思うけど、今の僕たちが表現したかった部分っていうのは、「今」だったんで。

――5人で「今」だったりバンドを楽しむことを大事にしたい。そういうことなんでしょうね。

一樹:そうですし、そういうバンドだから野音でやるのが好きなんでしょうね。

――わかりました。ちなみに現段階で、野音のメニューとか内容とか演出の部分とか、そういうのってある程度見えてきてるんですか?

一樹:もう8割方固まってきてて、今はそれを形にしていってる作業で。来てくれたファンのみんなが楽しんでくれる自信はあります。あと、自分が楽しみたいです。それが来てくれたみんなを満足させる要素の大事なひとつだと思うから。
取材・文◎樋口靖幸(音楽と人)

<BugLugワンマンライブ「KAI・TAI・SHIN・SHO」>

9月1日(土)日比谷野外大音楽堂
開場 17:00/開演 18:00
チケット 前売¥5000/当日¥6,000

一般発売中
・チケットぴあhttp://w.pia.jp/t/buglug/
・ローソンチケットhttp://l-tike.com/buglug/
・イープラスhttp://eplus.jp/buglug/

(問)NEXTROAD 03-5114-7444(平日12:00~18:00)

<BPR vs レジレコ TOUR「シバきあい!!」>

8月26日(日)Zepp Tokyo

【出演】
BugLug/DOG inTheパラレルワールドオーケストラ/Blu-BiLLioN/己龍/Royz/コドモドラゴン

チケット一般発売中:¥4,800(税込/ドリンク代別)

シバきあい!!特設サイト
http://shibakiai.com/

(問)NEXTROAD 03-5114-7444(平日12:00~18:00)

◆BugLug オフィシャルサイト
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