【連載】KO KIMURA「Underdigic」vol.3「最新最速!世界のダンスミュージック事情 2018 SUMMER!」

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2018年でプロDJ歴33年を迎えたカリスマDJ、KO KIMURA。クラブ創成期から、現在までシーンをリードし続けているのはもちろん、特に、国内のハウスミュージックシーンにおいて、現在活躍する多くの若手〜中堅DJたちに多大な影響を与えてきたDJである。そのDJ歴のほとんどを最新の曲を探しディグすることに費やし、グルーヴ感と選曲でフロアを魅了しながらも、現在進行形で最新のダンスミュージックやDJスタイルを追求する姿勢は、国内のみならず、海外にもファンが多く、海外公演等も積極的に敢行中だ。

DJ活動の傍ら、1940年代のオートバイのレストア方法をハーレー誌に連載、世界を股にかける食べ歩きがWEBや書籍にて記事化、アニメーション関連の活動も積極的に行うなど、過去の布石やカルチャーメイクだけに留まらず活動しているKO KIMURAが今、海外のアーティストやDJたちと国内外を飛び回っている。それは、“DJ”という職業や生き方を超越しているとも言うことができ、またその延長線上において、1年中、世界中の優美な文化とコラボレーションを繰り返す“に出ているともいうことができるだろう。

毎月一回更新となる本コラムでは、めまぐるしいDJ活動と並行するかのように、貪欲に“カルチャー・ミーティング”という生き方を実践するDJ、KO KIMURAに迫っていく。

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■パーティの規模より内容を重視して
■やり甲斐のある仕事を選ぶDJたち

前回は、パリで行われた<フェテ・ド・ラ・ミュージック>という音楽の祭典をレポートさせていただきましたが、今回はそれと同時期に周ってきた他のヨーロッパの都市や、そこで時間を共に過ごした、世界中を飛び回っている、いわゆる“インターナショナルDJ”の友人たちとの会話で感じたことを鑑みつつ、今、世界のダンスミュージック事情はどうなっているのか、ということをお伝えしたいと思います。


しかしながら、例えばバルセロナで毎年開催、たくさんのジャンルの音楽がプレイされる<ソナー(SONAR)>に、割といろいろな音楽に対してニュートラルで幅広い選曲を得意とする僕が行って、その体験を語るということは、僕“木村コウ”というフィルターを通しての話になるので、僕的には何の偏見もなく今のダンスミュージックの最新の流れのことを語っているつもりですが、ある人にとってみれば全然違うよ……なんてことになり得るかもしれませんが、このレポートを参考にしていただきつつ、ぜひ日本を飛び出して、現地のパーティシーンを存分に味わっていただきたいと思います! “書を捨て旅に出よ!”です。

さてさて、僕がなぜ毎年6〜7月あたりに渡欧するかといえば、6月21日にパリで行われる<フェテ・ド・ラ・ミュージック>の開催時期ということもありますが、その同時期にスペインのバルセロナで行われる<ソナー>という音楽フェスティバルも開催されているからです。他にもヨーロッパでは、いろいろなフェスが夏の間、開催されていますが、僕が思うに割と<ソナー>はいろいろな音楽ジャンルをリアルに、“音楽が好きな人”が楽しむフェスであり、“音楽にはそんなに興味がないけど、パリピがウェイウェイ言ってるチャラい感じ”ではないところに好感が持てるから好きなんです。バンドのライブとDJが交互に大体90分交代でプレイ・公演されるのも、単なるお祭りでなく、音楽を楽しむ感がすごくあってグッド!

<ソナー>は昼間と夜で場所を変えて開催していて、昼間の“ソナー・デイ”は、東京で言えば代々木公園と体育館的な場所でやっているような感じ……そうかと思えば、夜の部の“ソナー・ナイト”は都心からちょっと離れた、土地感覚で言えばビッグサイトみたいなところでやってる感じ。3日間連続で朝から夜まで通して遊べますし、その<ソナー>の時期に合わせて、直接は関係ないけれど、さまざまな場所で同時にやっている“オフ・ソナー”のフェスやパーティも山ほどあって、世界中からDJが集まってきます。僕にとっては、いつも日本に来るたびに一緒に食べ歩きをしている各国のいろいろなDJたちと一度にまとめて会えて、便利で楽しい、さらにDJとしてブックしてくれるパーティでもあり、また食べるものが美味しいところばかりなので、毎年行くようになってしまったんですね。

そして実際には、今音楽的に何が流行ってるかというと、去年から感じていたのですが、やはりEDMが一段落してきているのをあらためて感じました。以前はもうちょっとEDMをプレイしているイベントやパーティがあったのですが、この2年でグッと減ってきた印象です。まあ僕は、自分からはテクノ/ハウスのパーティにしか参加することはないのですが、行ったパーティの別のフロアではEDM中心に……ということが5年前くらいはよくあったのですが、そういうパターンがだいぶ減りましたね。


また、僕の友達で世界を飛び回るDJたちは、声を揃えて“いくらセレブともてはやされても、アヴィーチーの様に寝ずに世界を回って消費され尽くして死ぬなんてのは悲しい”と言い、パーティの規模より内容を重視して、やり甲斐のある仕事を選ぶケースがより一層増えたのを感じます。以前UKで2000年あたりに流行ったUKハードハウス/レップハウスやハンドバッグと呼ばれる音楽も、その音楽を牽引してきたとも言えるトニー・デ・ヴィートが急逝してから突如として勢いを無くしたのと同様に、アヴィーチーが亡くなった影響は割と大きい様でした。

■プログレッシヴ・ハウス〜テックハウス〜テクノ
■境界線がなくなってきた今のシーン

そしてここ2年くらい前から感じてはいましたが、今年、自分もやっぱりそうだ!と確信を持ったのは、テクノもハウスも10年ほど前までは、BPMが非常に遅く、BPM125を超えてDJしていると、いわゆるちょっとチャラい印象になるというか、遅いのがクールだ!という印象だったのが、この何年かで確実にBPMが速くなってきたということ。BPMがそう速く感じなくとも、実は確認してみると、127前後だったりするということが多く、EDMのデフォルトとも言える128に近い感じで、以前よりも割とアグレッシヴに感じる曲が増えてきたのは、僕的には嬉しいことです。


“次にこれが来る!”というジャンルは、まだ見えませんが、割とテクノの人でもメロディが入ってくる曲をかけるケースが増えたのと、2005年あたりから凹んでいた“プログレッシヴ・ハウス”のDJの人たちの復権も感じます。というよりも、プログレッシヴ・ハウスのDJ、テックハウスのDJ、テクノのDJの境界線が全然なくなってきた……という印象的すらあります。今や、やっていることはそうは変わらなくて、単に肩書きだけ自己申告でそう告げているだけかも(笑)? 実際、僕が今回ベルリンでプレイしてきたときも、「今夜のDJのラインナップの中でKOが一番リアルなテクノだった!」と言われるほどで、僕はそう思ってDJしていなくても、聴いてくれているお客さんにとっては、そう解釈してもらえるのが面白く感じましたね。


アンダーグラウンド系の音楽中心のDJにとっては自由で面白い世の中になってきました! この勢いで東京の夜ももっと盛り上げれるように頑張ります〜!!

文・写真:KO KIMURA
編集協力:NazChris

◆KO KIMURA オフィシャルサイト
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