【連載】KO KIMURA「Underdigic」vol.2 「フェテ・ド・ラ・ミュージック - パリでもっとも長い1日 - 」
2018年でプロDJ歴33年を迎えたカリスマDJ、KO KIMURA。クラブ創成期から、現在までシーンをリードし続けているのはもちろん、特に、国内のハウスミュージックシーンにおいて、現在活躍する多くの若手〜中堅DJたちに多大な影響を与えてきたDJである。そのDJ歴の殆どを最新の曲を探しディグすることに費やし、グルーヴ感と選曲でフロアを魅了しながらも、現在進行形で最新のダンスミュージックやDJスタイルを追求する姿勢は、国内のみならず、海外にもファンが多く、海外公演等も積極的に敢行中だ。
DJ活動の傍ら、1940年代のオートバイのレストア方法をハーレー誌に連載、世界を股にかける食べ歩きがWEBや書籍にて記事化、アニメーション関連の活動も積極的に行うなど、過去の布石やカルチャーメイクだけに留まらず活動しているKO KIMURAが、今、海外のアーティストやDJたちと国内外を飛び回っている。それは、“DJ”という職業や生き方を超越しているとも言うことができ、またその延長線上において、1年中、世界中の優美な文化とコラボレーションを繰り返す“旅”に出ているともいうことができるだろう。
先月より連載となったコラムでは、月に一度の更新と共に、めまぐるしいDJ活動と並行するかのように、貪欲に“Culture meeting”という生き方を実践するDJ、KO KIMURAに迫っていく。
◆ ◆ ◆
■とんでもない音楽祭
■<フェテ・ド・ラ・ミュージック>とは?
9年ほど前に、パリでお店を構えていらっしゃる“枝魯枝魯PARIS”の店主・枝國さんから「コウさん、パリでは6月21日の夏至の日に、<フェテ・ド・ラ・ミュージック>っていうスゴいお祭りがあって街中音楽だらけになるんです! 良かったらパリに来て一緒にDJやりません?」というお誘いを頂き、どんなもんだろう?と思い行ってみると驚きました!
それは、一年で日が一番長くなる夏至の日に“音楽祭”と謳って、誰の迷惑も気にせずに、どんな音楽でも、どんな音量でも、どんな場所でも……ひたすら自分が好きな音楽を流して楽しむことが許されるというとんでもない一日だったのです。
街中の至る所で場所さえあれば、隣に負けてたまるか!の如く大音量でバンド・楽団形式や今時のDJスタイル。ロックからクラッシックからジャズから民族音楽からダンスミュージックなど……いろいろなジャンルの音楽が流され、それに合わせて屋台的な出店なども出て、飲み物や食べ物まで売っているので、騒音苦情どころではありません。それが、パリの一区画だけではなく、パリ中というかフランス中で行われている(!)というからスゴいんです。
1981年にフランスの文化相がやろうと言い出して、1982年から今まで続く、国が決めた行事なので誰も文句を言えず、うるさいのが嫌な人はその日に休みを取って他の国に出て行ってしまうほど(!)の大きな行事なのです。
もちろんそんな祭りなので、音楽が大音量で街中のどこでも流され、酒も入るわ食事も入るわで大騒ぎ。「コウさん、音楽祭の日は危ないのでちゃんとした靴を履いてきて下さい!」って言われた理由がなんと! 飲んだビールやワインの瓶を所構わず投げ捨てたりしてあるので、割れたビール瓶のガラスとかゴミも混ざって危ないったりゃありゃしない(笑)。
日本人としてはそんなのが落ちてたら危ないから……と自分がDJをしたブース周りを片付けたりしてたら、「お前何やってるんだ? お前がそのゴミを片付けたら国から掃除役として仕事を得て給料もらっている人の職が無くなってしまうじゃないか!」と言われる始末。所変われば何とやら……ですね。
■大らかな気持ちで付き合う
■「芸術の国フランス」の所以かも
ということで、遠慮なく思いっきり好きな音楽を流して自分も楽しませて頂きつつ、それが気に入ってもらえるとリアクションもとても良く、どんどんDJブース周りに人が溜まってきます。これぞDJの醍醐味だな〜と、その年から毎年参加しています。その楽しさに魅せられて、TEI TOWAさんやFPM田中さん、大沢伸一さんまでもが毎年一緒に参加することに(笑)!
そして夜中まで宴は続き、街が少し静かになる夜3時過ぎくらいには、町中至る所がゴミだらけ。でも、僕に忠告をくれたフランス人の言う通り、掃除役の人が給料分の、ものすごい良い仕事をしてくれて次の日には昨日の模様が嘘のようにパリ全体がとてもキレイに! フランスの底力を見せていただきました!
次の日には何区はどこが盛り上がったか?というのがパリ市のオフォシャルのHPでも紹介されるので、負けてはいられません。もちろん我らが枝魯枝魯ブースは区の一番と紹介されました! こんな楽しいフェスが日本でも開けると良いなあ〜なんて思ってると、いろいろなところで実は開催されている様ですが、やっぱり苦情を気にしての大人しい小規模での開催っぷり……(少し寂しい気もしますが)。
このフランスの音楽祭<フェテ・ド・ラ・ミュージック>の様に、“いろいろな音楽が流れているから、自分で好きな音楽が流れている所を見つけて楽しもう! 静かな所にいたいならその日は別の国に行けば良い”なんて大らかな気持ちで音楽やアートと付き合っていられるから「芸術の国フランス」と呼ばれるのかもしれないですね。
編集協力:NazChris
◆KO KIMURA オフィシャルサイト
この記事の関連情報
新潟を代表するDJ KAIのアルバムにKO KIMURA、SUGIURUMN、A.Mochiらが参加
【連載】KO KIMURA「Underdigic」vol.7「ダンスミュージックとアニメ音楽と」
【連載】KO KIMURA「Underdigic」vol.6「ハウス/テクノなどのDJ系ダンスミュージックの楽しみ方3」
【連載】KO KIMURA「Underdigic」vol.5「ハウス/テクノなどのDJ系ダンスミュージックの楽しみ方2」
【連載】KO KIMURA「Underdigic」vol.4「ハウス/テクノなどのDJ系ダンスミュージックの楽しみ方」
【連載】KO KIMURA「Underdigic」vol.3「最新最速!世界のダンスミュージック事情 2018 SUMMER!」
【連載】KO KIMURA、キャリア33年を誇るDJによるコラム 「Underdigic」
【インタビュー】KO KIMURA「DJのプレイに身を委ねてみると最高の時間を過ごせると思う」
KO KIMURAのDJ 30周年イベントにTOWA TEI、大沢伸一、☆Taku、マーク・パンサーら集結