【連載】KO KIMURA「Underdigic」vol.4「ハウス/テクノなどのDJ系ダンスミュージックの楽しみ方」
2018年でプロDJ歴33年を迎えたカリスマDJ、KO KIMURA。クラブ創成期から、現在までシーンをリードし続けているのはもちろん、特に、国内のハウスミュージックシーンにおいて、現在活躍する多くの若手〜中堅DJたちに多大な影響を与えてきたDJである。そのDJ歴の殆どを最新の曲を探しディグすることに費やし、グルーヴ感と選曲でフロアを魅了しながらも、現在進行形で最新のダンスミュージックやDJスタイルを追求する姿勢は、国内のみならず、海外にもファンが多く、海外公演等も積極的に敢行中だ。
DJ活動の傍ら、1940年代のオートバイのレストア方法をハーレー誌に連載、世界を股にかける食べ歩きがWEBや書籍にて記事化、アニメーション関連の活動も積極的に行うなど、過去の布石やカルチャーメイクだけに留まらず活動しているKO KIMURAが、今、海外のアーティストやDJたちと国内外を飛び回っている。それは、“DJ”という職業や生き方を超越しているとも言うことができ、またその延長線上において、1年中、世界中の優美な文化とコラボレーションを繰り返す“旅”に出ているともいうことができるだろう。
6月より連載となったコラムでは、月に一度の更新と共に、めまぐるしいDJ活動と並行するかのように、貪欲に“Culture meeting”という生き方を実践するDJ、KO KIMURAに迫っていく。
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■今、DJの選曲の楽しみ方は大きく2つに分かれている!
■知っている曲・知らない曲がプレイされた時のフロアの反応は?
DJが奏でるダンスミュージックの楽しみ方で、DJがその持ち時間の中で組み立てる選曲の流れは、まるで高級レストランのディナーコースのようなので、その選曲の流れをお楽しみ下さいと以前書かせて頂きましたが、今回はそのDJの選曲の楽しみ方も今現在、大きく二つに分かれると思うので、今回はその辺りを説明させて頂きたいと思います。
音楽を楽しむ上での要素として最も大きいのは、“メロディ”と“歌詞の内容”なのはもちろん皆さんご存知だと思います。また日本ではそのアーティストのアイドル性/カリスマ性などが大きく影響して、そのアーティストが好きだからその人の曲が好きになるということも多いと思います。ですので、基本クラブでDJの選曲を楽しむということでももちろん“いい曲”や“好きな曲”をメインにいわゆる“聴いていい曲”を楽しむ方が圧倒的に多いと思います。「キラーチューンを人気DJがドロップして、ダンスフロアは狂乱の盛り上がりを見せた……」なんて絵に描いたような、フェスやクラブの姿は安易に想像出来ますね。
その一方、僕のようなDJがプレイする曲は、特にこの10年ほどは基本歌が入ってない=歌詞など入ってないことがほとんどで、またメロディすら入っていない曲が多い。そして僕のようなDJは、自分がかける曲をお客さんが一切知らないことを前提にDJしつつ、また皆が知っているヒット曲をフロアを沸かすためにかけることを全くしないので、そんなダンスミュージックを家で聴いてもどこが楽しいのかさっぱりわからない人も多いのではないでしょうか? 僕自身、クラブに来ない、ハウスやテクノのことを知らない方に自分がやってる音楽を説明する際には、「ひたすら工事現場や工場のような場所でドンドン、カンカン入ってる電子音楽が永遠に続く感じです」なんて説明をしているくらいなので(笑)。
■しかるべきサウンドシステムにおいてのみ聴こえる音がある
■そこにあるダンスの覚醒は阿波踊りや獅子の太鼓も同じ!?
では、そんなヒット曲や“聴いていい曲”をかけない僕のようなDJがなぜ存在するのかというと、それは、たとえ美しいメロディや歌が入ってなくとも、反復してひたすら続く音楽が、然るべきサウンドシステムにおいて、ダンスフロアで聴いた時だけ機能して、自分のダンスしたいという気持ちを物すごく覚醒してくれる音楽があるからです。
家の普通のスピーカーから聴くだけではわからない“ダンスの覚醒”がそこにはあって、僕自身それがたまらなく好きなので、もう30年以上そう行った音楽を追いかけることになってしまいました。「フロアを沸かすためにヒット曲をかけることはしない」と先ほど書きましたが、でもフロアでダンスしている人の動きは物すごく見ていて、全体のその「ダンスの覚醒」具合を確認しながら皆さんのテンションをうまく上げていけるようなDJをしているので、それは近いところでいうと阿波踊りのように、お祭りがひたすら続く祭囃子の太鼓の音になぜかどんどんトランス状態にハマっていって、踊りが止まらない的な現象に近いと思います。
今後DJを聴いた時には、その人は耳触りがいい「いい音楽」をプレイするミュージシャン的なDJなのか、単に「ダンスの覚醒」を目指すシャーマン的DJなのか、もしくはその間に位置するDJなのかを意識してみるだけでもナイトクラビングは楽しくなると思います!
文・写真提供:KO KIMURA
編集協力:NazChris
◆KO KIMURA オフィシャルサイト
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