【インタビュー】Go Hiyama「建築や音楽……一見異なるようなふたつが共存するものに興味がある」
DJ、サウンドデザイナー、アーティストとして知られるGo Hiyamaこと日山豪の個展「音を鳴らすということ」が開催中だ。今回の個展は、日山が電子音楽を中心に作品をリリースする過程の中で感じた「音はどこにあるのか。音は何と関係するのか。音を鳴らすと何が生まれるのか。音とは。音楽とは。」という疑問に対して、それを形にして答えを見出そうとする試みとなっており、音楽家による芸術作品として、興味深いものとなっている。なぜ今回の個展開催に至ったのか、彼の生い立ちとともにその思いを聞いてみた。
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■建築と音楽には
■アートとデザインがある
──今回の個展の話を伺いたいのですが、ああいうことを考え始めたのはいつでしょうか?
Go Hiyama 5〜6年前、音楽を作ること自体を考え始めた時期があったんです……なぜ音楽が売れないんだろう、なぜクラブにお客さんが少ないんだろう、クラブミュージックって何なのだろう、自分が今つくっている音楽は何のためだろう、いろいろ考えたんですが、結局僕はそのクラブミュージックの世界しか知らなくて。一言で音楽と言っても僕の音楽の世界は狭かったんですね。見渡してみると、実は僕の周りには音楽に限らず、すごく面白い人たちがたくさんいたんです。
例えば面識があるわけではないですが、共栄デザインさんやYURI SUZUKIさんは広く音を表現していてすごく楽しそうで。それを知って興奮して。クラブミュージック、DJだけだった生活から、そうやって視野が広がってきた感じなのかな……そんなときに“自分らしいもの”をもう一度作りたいと思ったんです。まず出てきたのは音楽で、それは昨年リリースした『I AM GOODBY』という形になった。その作品を作っているころに、漠然と“何かやりたい”と思ってギャラリーのオーナーに言ったことを覚えてます。「俺、弦張りたいっス」って(笑)。
──今回の作品そのままですね。
Go Hiyama 実はそのときはなんでそう思ったのか、覚えてないんです。それが2年半くらい前ですね。そこからいきなり弦を張ったわけではなくて、なんで自分がそう思ったのか考える日々が続きました。本を読んだり、音楽以外の人にあったり、何かを見に行ったり、勉強したり……。そうして、ああ、だから俺は弦を張りたかったんだな、ということが分かってきて、今回の展示に至りました。展示物の前にいろいろと文章は書きましたが、こういう思いのキーワードだけを記したんです。全部言ってしまうと面白くないと思って。実はかなり“いろいろな考え”(https://goo.gl/h9Kr49)があの作品に入っている。
──次の展示を考えてますか?
Go Hiyama 今回の“弦”より前から考えているテーマが「音と時間」。どう表現すればいいのか、どう伝えるのか、まだ答えが出ていないですね。僕は建築を専攻していたので、当たり前のことを考えるのが好き。なぜこの机はこの高さなのか、なぜ窓はこの位置に付いているのか……建築ってデザインとアートが両方入っています。音楽も実はそうで、建築と似ていることに最近気づいた。もしかしたら物事ってそういう意味での“曖昧”がいいなという気持ちになってきた。一見異なるような2つが共存するもの、そういうものを含んでいるものに今、すごく興味があります。そういう作品を作りたいですね。
■音楽で食べていくということが
■僕の人生でありえるかもしれない
──ところで、Hiyamaさんが音楽活動を始めたのはいつからでしょうか?
Go Hiyama 作り始めたのは15〜16歳くらいですね。兄の影響で。当時、兄の部屋からはズーッとクラフトワークが流れていて……。好きなバンドが解散して「何を聴いたらいいか分からん」と兄に相談したところ、「お前、これ聴けよ」と言って渡されたのがそのクラフトワークだった。クラフトワーク以外に当時聴いたもので印象的だったのがYMO。まさにエレクトロニックミュージックの王道をいってました。
──そこから制作に至ったきっかけは?
Go Hiyama これはある意味、兄に騙されまして……(笑)。気づいたら兄の部屋にPCとシンセサイザー一式がすべて揃っていたという(笑)。僕もそれらの機材にお金を出した手前、使わないと損だなという気持ちで制作を始めたんです(笑)。
──作り始めたのは?
Go Hiyama テクノです。始めたころに『Artficial Intelligence 2』(WARP)が出たころで。あのときにフルCGのミュージックビデオを見たのが衝撃的で感動したのをすごく覚えてます。こういう音楽を作りたいと思って、とにかくコピーみたいなことをしてました。そこから完全にテクノ一筋です。僕の中で大きな転換といえば、いわゆるリスニング的なテクノから、フロア的なテクノに変わったことなんです。
まだリスニング的なものばかり作っていた頃の話ですが、兄が部屋に入ってきてジェフ・ミルズのEP「Growth」をかけて、出て行ったんです。あの作品はループ溝になっていて、曲が終わらないことに気づかず、ズーッと勉強してわけ。30分くらい経ったときに、「あれっ、レコードなのに終わらないぞ?」と思って、そのループ溝を知るとともに、なんだか分からないけれどすごいこと──レコードなのに終わらない──が起きてる。ジェフ・ミルズって人がすごい!となって、フロア向けのトラックを作り始めた記憶があります。
──建築の勉強をしつつ、大学在学中にデビューするわけですが、生活は変わりました?
Go Hiyama う〜ん。大きく何かが変わったというよりも自分の心構えが変わりました。音楽で食っていくということが僕の人生でありえるかもしれない、そう思いました。(石野)卓球さん、(田中)フミヤさん、ケンイシイさん、タカアキイトウさん……そのころヨーロッパにバンバン行ってた人を見てたし、あの人たちのような生活を僕もできるのか、そう感じたことで、人生設計が少し変わりました。本気で建築家にもなりたかったし、建築でもいい成績を修めていたので、当時の担当教授に相談したところ、彼が僕の背中を押してくれたのも覚えてます。
──その後は音楽で生活をすることが始まったと?
Go Hiyama 音楽だけで食べていくというのは最近です。例えば日本でレギュラーパーティをやって毎回100人入るからって食べていけないですよね。ヨーロッパ各地に招致していただく機会が幾度かあって、現地でDJを生業とする人たちを実際に見てきました。取り巻く環境が日本とは違う。食べていくにはこっち(ヨーロッパ)に行かなきゃいけない。悩んだ結果、僕は日本に住みたいと思った。
……実は一度音楽を諦めた時期がありました。就職して、いわゆるサラリーマン生活が始まると思いましたが、そこの社長が変わった人で音楽で食べていくには、という企画書を毎週出させて結局「お前、音楽をやりたいんだろ」とクビになりました(笑)。それでサウンドブランディング/音楽制作をする会社「エコーズブレス」を作ったわけなんです。
──それで今はサウンドデザイナー的な仕事も並行してされている。
Go Hiyama どちらかというとDJは控えていて。理由は二つあります。テクノ寄りのダンスミュージックを作ること、つまり「俺は今どういうことをやっているんだろう」と考え始めたこと。もうひとつは病気になってしまって、暗いところに行くと目が見えにくくなるんですね。つまりクラブに行くことが難しくなってしまったんです。自分の頭の中と身体が、同時に“来た”わけなんです。
でも僕は音楽がすごく好きだから、音楽とともにどう生きていくか、そればっかり考えた。そうやって考え始めたら、音楽で食べていけるようになってきた。今でも音のことばかり考える毎日です。
日山 豪 個展「音を鳴らすということ」
※会期中、日曜日・祝日は閉廊しておりますのでご注意下さい。
時間:12:00〜19:00
会場:(PLACE) by method
オープニングパーティー:6月29日(金)19:00〜21:00
サウンドパフォーマンスイベント:
7月21日(土)16:00 start|Lycoriscoris、Piviha
7月28日(土)16:00 start|Nyantora(ナカコー)、duenn
住所:150-0011 東京都渋谷区東1-3-1 カミニート#14
地図:http://goo.gl/maps/nzyvr
電話番号:03-6427-9296
URL :http://wearemethod.com/
◆Go Hiyama オフィシャルサイト(ECHOES BREATH)