【インタビュー】W.A.S.P.「マーケットは再び縮小。みんなうんざりしているよ」
1984年にセンセーショナルなデビューを果たしたW.A.S.P.は、ブラッキー・ローレス(Vo、G)を中心に現在まで通算15枚のスタジオアルバムをリリースしているL.A.メタルの象徴的バンドだが、その音楽性は実にシリアスなブリティッシュハードロックである。2016年にリリースされたアルバム『Golgotha』は久しぶりに日本国内盤もリリースされ、2018年は名盤『Crimson Idol』の25周年アニバーサリーとして新曲を含むリレコーディングアルバム『Re Idolized』が発売となった。
ギタリストとして1992年『Crimson Idol』ツアーで加入し、2001年に再加入、2006年より再び現在まで在籍しているダグ・ブレアが、取材に快諾してくれた。フィンランドでのリッチー・ブラックモアズ・レインボーのコンサートにて彼をキャッチしたことで実現したインタビューである。ダグは現在フィンランドに住んでいるとのことだ。
──あなたに逢えて光栄です。
ダグ:僕もだよ。日本には1992年のオリジナル『Crimson Idol』ツアーで一度行ったきりだし、ここで会えたのも運命だね。そして素晴らしいギフトをありがとう。この2枚の日本盤CDはブラッキーもおそらく見た事ないと思うよ。
──現在、フィンランド在住との事ですが、なぜフィンランドに?
ダグ:ここの教育制度の為さ。僕は"特別な専門家"として多くのツアーミュージシャンたちにこの制度について教えたり訓練しているんだ。この制度は非常によく開発されていて資金も供給される。僕は音楽にキャリアを持つ教育の専門家だけど、様々なフィールドでの専門家がいるんだよ。
──てっきりアメリカに住んでいると思っていました。
ダグ:フィンランドに来てほぼ5年になるかな。他のメンバーはみんなロサンゼルスに住んでいるよ。
──メンバーに会うのはツアーの時のみですか?レコーディングは?
ダグ:レコーディングやリハーサルは彼らに会いに行かねばならないよね。L.A.に行けば会えるし、もちろん僕らはいつもレコーディングは一緒に作業をしているよ。決してファイルを送るだけの事はしたくないんだ。
──1992年のオリジナル『Crimson Idol』から25年経ちましたが、2017年からスタートした『Re Idolized』のロングツアーの手応えはいかがでしたか?
ダグ:とても素晴らしかった。54本のツアーをしたんだけどソールドアウト公演もたくさんあったし、どの会場も98%は埋まっていたよ。ライブレビューもとても良いものばかりだった、ブラッキーの歌も素晴らしかったし僕らの演奏も上手くいった。特に最終日はベストなショウだったな…君にも観て欲しかったよ。
──リッチー・ブラックモアはあなたのギターヒーローのひとりとの事ですが、彼のどんなところに惹かれますか?
ダグ:彼は常に僕に影響を与えた人なんだ。彼のロックミュージックの中のクラシカルな影響はそれこそ既成概念の破壊のようなものだった。多くのミュージシャンやバンドに扉を開けたと思うよ。彼のサウンドは、我々ミュージシャン全員が好む範囲内なんだと思う。ディープ・パープルとレインボーは、それほどの多くのクラシックロックの名曲を持っているよ。
──今となってはW.A.S.P.の『Crimson Idol』もクラシックロックの名盤のひとつとなりましたね。
ダグ:同感だよ。でも前作の『Golgotha』とその前の2作『Babylon』と『Dominator』も同じメンバーで作ったものだから、それらは全て特別なものだよ。僕らはずっと成長している、2007年の『Crimson Idol』の15周年ツアーには若いファンも多かったし、でも2007年は世の中でもメタルの復活年でもあったと思うんだ。メタルファンが増えた手応えを凄く感じたんだけど、でもこれは行ったり来たりしていて、今は多くのメタルバンドは年に2回大きなツアーをしているけど実に酷いものさ。またマーケットは再び縮小している。みんなうんざりしているよ。
──それはCDの売上げですか?
ダグ:いや、それはもう大昔にそうなっていたし、今はライブ動員も問題だね。ストリーミングが無料で観れちゃうからさ、それはもう戻らないよ。唯一の方法はストリーミングに記録しないバンドである事だよ。日本ではどう?
──日本はまだまだライブ集客も良い方だと思います。そんな中、『Re Idolized』の制作案はいつ頃からあったのですか?
ダグ:2015年の<ゴルゴダ・ツアー>が終わってからだね。良いアイディアだと思ったし、ドラムセッションが始まったのが2016年の前半だったと思う。ただ、これは僕はブルース・キューリックのコピーをしただけで、『Golgotha』の方はとても時間をかけて作ったアルバムなんだ。
──『Golgotha』のテーマはW.A.S.P.の復活を意味するものですか?
ダグ:ブラッキーの個人的な歌詞に関しては答えられないけど、僕の思うところと多分他の人もそうかなと思う復活は、2007年に『Dominator』を現在のメンバーでリリースしたこと…これが始まりだったと思う。そこから着実に成長して『Golgotha』は多くの要素が頂点を迎えた作品と思えるよ。メンバーも固定してレコーディングとツアーを12年やってきたからね。マイク・デュプケ(Dr)はもうツアーは離脱したけど『Re Idolized』のレコーディングには参加しているんだ。
──『Golgotha』と『Re Idolized』のどちらにも収録されている「Miss You」は、特別な曲ですか?
ダグ:うん、僕のお気に入りの曲でもある。実はこれ、1990年代当初にオリジナル『Crimson Idol』の為に書かれた曲なんだよ。僕は遠くに住む事を選択して、人生を変える大きな出来事だった。この長距離でのリレーションがとても難しく苦しかったけど、乗り越えた。この曲のリードギターは本当に自分の心と同じく泣いているんだよ。レコーディングで「メンバーみんながそこに居る。考えるな、感じろ」ってね。この思いをカミングアウトできて嬉しいよ、まさに僕の気持ちの曲なんだ。
──さて、そろそろ日本公演の予定は?
ダグ:僕らは行きたいと思っているよ。この夏もヨーロッパのフェスティバル出演がいくつかある。僕らの次回のミーティングは日本である事を願うよ。
──日本のファンへメッセージを。
ダグ:W.A.S.P.で12年間、メンバーとして4枚のアルバムに関われた事はとても幸運に思っている。バンドがすぐに戻って来る事を本当に願っているよ。
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ダグ・ブレアは現在、フィンランドにて地元の若手バンド:アウェイク・アゲインを手掛けているという。日本でも好まれそうなサウンドをもった好バンドだ。
取材・文・写真:Sweeet Rock / Aki
アーティスト写真:Tallee Savage