【ライブレポート】W.A.S.P.40周年ツアー開幕、衰え知らずの歌唱とカリスマ性

ブラッキー・ローレス（Vo, B, G）を中心にL.A.メタルシーンで活躍したW.A.S.P.。あのセンセーショナルなデビューから40年、コロナ禍により2020年から2度の延期を経て、遂に40周年ツアーが開幕した。


10月末から12月中旬まで続く35本のアメリカツアー（ヨーロッパツアーは2023年）は、全公演にアーマード・セイントが帯同し、更にテキサス州の4公演のみマイケル・シェンカー・グループもスペシャルゲストというラインナップだ。その上、バンド史上初のミート＆グリートを含むVIPパッケージも提供される事がアナウンスされた。

ツアー開幕3本目のショウとなるアリゾナ州フェニックス公演は、スタンディングでもかなり大きな会場であるが、バルコニーエリアまでも満員で埋め尽くされている。

ステージにはブラッキー・ローレスのシンボルとも言えるマイクスタンド、通称"エルヴィス"が堂々と鎮座。バックドロップは背面と左右全てに「ARENA OF PLEASURE」や「THE TORMENTOR」といった彼らに由来するイラストとチェーンやドクロも飾られている。そこへエルヴィス・プレスリーの「C C Rider」のイントロでメンバーが登場。オープニングからこの演出には痺れてしまった。40周年を意味する背番号40のシャツに襟はないものの、ホワイトブーツのフリンジにもエルヴィス・プレスリーをイメージさせる。



「On Your Knees」からスタートするのは1984年の初来日時と同じと記憶しているが、今回はオープニングメドレー構成である。アニバーサリーに相応しい往年の代表曲で綴られるショウ、その手のバンドではないはずが「Hellion」ではクラウドサーファーも出現する盛り上がり。

近年はフェスティバル出演での映像を観ても比較的シンプルなステージにセットも短めな印象であったが、さすがに40周年ツアーはフルで彼らの世界観を見せてくれる。楽曲ごとにその収録アルバムの紹介をするブラッキー、背景スクリーンに映し出される当時のMVには夢中で観ていた頃へ引き戻されてしまう。



映像中の歴代メンバーも懐かしいが、現在のバンドを長年支えているメンバーも少し紹介しよう。ギタリストのダグ・ブレアは1992年の＜Crimson Idol＞ツアーでも来日メンバーであり、その後一度バンドを離脱しているが復活してすでに15年以上経っている。ベーシストのマイク・デューダも25年以上在籍しており、ドラマー、マイク・デュプキーの後任には元アングラのアキレス・プリースターがここ数年務めている。

ダグとマイクの2人が連続ターンしながらのプレイではステージがまるで『Inside The Electric Circus』になり、コンセプトアルバム『Crimson Idol』の楽曲のストーリー性には常に昂ぶりを覚え、ブラッキーの衰え知らずな歌唱と存在のカリスマ性には終始圧倒されてしまう。





終盤の「Animal（Fxxk Like a Beast）」「I wanna be Somebody」では"エルヴィス"を大きく揺さぶりながら全身を反らすブラッキー、ラストには高く登り上がってのパフォーマンスも見せてくれた。

1980年代のLAメタルシーンでの活躍が代表的なヒットであるがゆえ、未だに過激なパフォーマンスのイメージを持つ人も多いかもしれないが、基盤はロックンロールであり、パフォーマンスも至ってシリアスなものになっている。


エルヴィス・プレスリーやカヴァー曲も演っているTHE WHOやハンブル・パイ等からの影響、そして『Headless Children』アルバムでゲスト参加していたケン・ヘンズレー（Key）が在籍していたユーライア・ヒープあたりのロックを知ると更にこのバンドの深さを感じてもらえると思う。そしてブラッキーの好きなギタリストはカントリーを演っていた彼の母親とチャック・ベリーだとフェニックスで発言していた事も付け加えておこう。

最後に日本に来る予定も訊いてみたが、なかなか難しいようで随分と行けていなくて寂しいよと応えてくれた。



文・写真◎Sweeet Rock / Aki