【インタビュー】GLAY・TAKURO「GLAYって、遊びのスタートだから面白い」
TAKURO曰く「HISASHIの才能が炸裂した」というアルバム『SUMMERDELICS』を引っさげてのツアー<GLAY ARENA TOUR 2017 “SUMMERDELICS”>の真っ只中に、GLAYのニューシングル「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」がリリースされる。新人バンドのような溌剌さとやんちゃなサウンドが彩るGLAYの最新ワールドが踊る中で、GLAY王道とも言える直球ど真ん中の実直バラード「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」の、堂々リリースだ。
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様々な色合いを持ったGLAYワールドが幾重にも折り重なることとなった2017年11月…このタイミングにシングル「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」がリリースされるその裏には、どうやら曲げられなかったバンドの思いが色濃く渦巻いていたようだ。バンドのわがままを突き通したというシングル・リリースにまつわる思い、その真意をTAKUROに訊いた。
◆ ◆ ◆
■年齢的な意味も含めて自分たちの年代にふさわしい歌ができたから、
■「自分たちが責任取るから」ってリリースを決めさせてもらった
──…その、わがままってなんですか?
TAKURO:この曲のモチーフは20年前位からあったんですけど、自分たちの覚悟具合が足りないこともあって、ようやく去年くらいからまとまってきた曲なんです。でも『SUMMERDELICS』というテーマで曲がどんどん生まれ、どんどんHISASHIの魅力がGLAYの武器になっていく状況の中で、どうしてもこの曲がはまらないんですよ。
──馴染まない? 20年もかかっているのに?
TAKURO:曲としてはキャッチーだし久々のラブバラードだし、今だからこそ歌える大人のバラードでもあるからリリースしたほうがいいとも言われていたんですけど、結局頭の一行の歌詞(「♪年が明けたら~」)が邪魔して。
──歌詞には「雪景色」も出てきますね。
TAKURO:『SUMMERDELICS』というアルバムのコンセプトと、この曲のキャッチーさ…どっちも捨てがたいんだけど、結果俺らは『SUMMERDELICS』の世界を取った。その後「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」の話になって、リリースするならこの歌が街の中で映える一番良い時期と考えたんですけど、「♪年が明けたら~」の歌詞を考えると、年明けのリリースではおかしなことになる…ということで、アリーナツアーをやりながらリリースすることにしたんです。
▲「WINTERDELICS.EP〜あなたといきてゆく〜」 |
TAKURO:取材を受ける時間もないくらいだからイレギュラーですね。でも今のGLAYが歌う世界はこういうものだという作品だし、TERUが歌い直した「Satellite of love」やバンドで再録した「時計」というカップリング曲もGLAYがワンステップ上がるものだし、年齢的な意味も含めて自分たちの年代にふさわしい歌ができたから、「自分たちが責任取るから」ってリリースを自分たちで決めさせてもらったんです。
──それを「わがまま」と言ったのか。
TAKURO:今改めて自分の気持ちを整理していくと、この曲は、もしかしたら「ずっと2人で…」以来の、リリースとか世の中で聞かれることとは離れた立ち位置で生まれた曲のような気がして。
──ピュア…ということですか?
TAKURO:そうですね。例えば「HOWEVER」はもう、“GLAY、ここにあり、決定打!”みたいな、「BELOVED」「誘惑」に続くものとして気合いも入っていたし、「Eternally」は“誰かのために”っていう気持ちとともに、きっちり良い曲を書こうっていう思いもあった。だけど「あなたといきてゆく」は自然発生的に生まれて20年くらいほったらかしにされてて、少しずつ書き足していって2016年にようやく形になり、2017年にようやくセッションに入り…っていう。そういう意味でも、17歳の頃に書いた「ずっと2人で…」と生まれは似ているかもしれない。
──17歳の自分が作った曲に、幼さとか未熟さを感じることはありますか?
TAKURO:レベッカになりたくてBOØWYになりたくてザ・ビートルズになりたくてあの頃に書いた曲…ある種のロールモデルがいるものに関しては、気恥ずかしさや元ネタとかいろいろなことを感じるけど、「あなたといきてゆく」や「ずっと2人で…」は元ネタが音楽ですらないから、気恥ずかしさは感じないですね。もちろん当時のテイクとか技術には感じますけど、「記録しておいてよかったな」「今思えばまぶしい季節だな」って思います。あのときの気持ちが素直に描かれている作品があって良かった。
──目標を掲げて心血を注いだものではなく、自然発生的に生まれた曲って他にもたくさんあったりするんでしょうか。
TAKURO:ありますね。でもそういう曲は、自分にとってどこまでいっても自分に近すぎてね。ここまでリリースされなかったのは、何か足りなかったからだけど、ひとつ足りないものがあるとしたら、この曲が持っている大きな覚悟みたいなもの。それがまだ、当時のメンバーの中にはなかったんだと思う。結婚して間もなかったり、俺なんか結婚してなかったし、この曲の中では上の世代も下の世代も歌えるけどそのときにはまだ下の世代がいなくて、どう解釈していいかわからなかった。
──熟成の時間が必要だったのか。
TAKURO:俺達の熟成ね。曲自体は何も変わっていないし詞もメロディも変わらないから。レコーディングでTERUの歌を聴いて直しをしてテイクを選んだりしているうちに、「あなた」っていうのが目の前の異性だけではない気もしてきた。俺が生まれた時にはおじいちゃんは亡くなっていたけれども、そういえばいつも星を見上げて見守ってるみたいなことをばあちゃんが言ってたなあとか、「Winter, again」で「歴史の深い手に引かれて」って歌詞があるけど、あれはばあちゃんのことだし、秋の函館を歩くとき今も昔も函館の黄昏を強烈に思い出す…絵として残ってるなあとか、そんなことをTERUの歌を聴きながら思うとね、ここは「祖母」って書いて「あなた」ってしたほうが俺の人生を映してくれるんじゃないかとも思うわけです。誰しもにあてはまる親子の関係、家族の関係だったりね。TERUの声から想起されたものっていうのはとっても重要な役を担っている。
──TERUさんはどのような思いを抱えて歌い込むんでしょうか。
TAKURO:俺らずっと一緒にいるわけで、俺の人生の上がり下がりやいろんな場面を見てきているから、俺が書いたその場面がTERUには手に取るようにわかるらしい。
──そうなんだ…
TAKURO:だから、「TAKUROの歌に関しては、自分の歌にして歌うってことはない」って。「俺が見て、TAKUROの人生の足りないところは補って、多すぎるところは削ってファンの人たちに届けるだけ」だって。
──そのように歌ってくれるボーカリストがいるなんて、やっぱりGLAYって素晴らしい。
TAKURO:とっても。
──歌詞が女性目線なのは、TAKUROさんにとって不自然なことではありませんか?
TAKURO:GLAYの中では珍しくないですね。「つづれ織り~so far and yet so close~」なんかもそうですし。
──意識しているんでしょうか。
TAKURO:ネタばらしをすると、頭の中にある映像がそうだったんです。もちろん、メロディの着地点が女性言葉との親和性が高いんだとは思います。「♪訪ねてゆくのね」といった柔らかい言葉とメロディとの相性がいいから。ただ、二重構造で「結婚しようよ」っていうのは途中まで男性言葉で、受けるのは女性言葉になっていて、その世界を俺が俯瞰で見ているようなところがあります。
──20年越しのリリースに、楽曲自身も「やっと世に出してくれてありがとう」って感じなのかな(笑)?
TAKURO:「ありがとう」なのか「遅ぇわ!」なのか。結婚と同じで男の方がウジウジして決まらない感じ(笑)。これまでもリリースするチャンスはあったのかもしれないけど、端から見たらしょうもないこだわりがあって、ようやくですよ。「次の大会で優勝したらプロポーズする」みたいな、変なロマンを男は求めがちで(笑)。
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