【インタビュー<後編>】フルカワユタカ、「days goes by」を語る「誰かと作るというデカいテーマ」
フルカワユタカが11月8日、シングル「days goes by」をリリースした。同作はDOPING PANDAインディーズ時代のプロデューサーTGMX(FRONTIER BACKYARD)と再びタッグを組んで制作されたもの。これを皮切りにアルバムリリースや自身主催フェス開催をはじめとする今後の注目展開が続々と発表されており、活動ペースも周囲を巻き込んだアプローチもこれまでにない盛り上がり。先行シングルとしてリリースされた「days goes by」はその起爆剤となるものだ。
◆「days goes by」ミュージックビデオ 動画
先ごろ公開したインタビュー前編では、2017年に増大した活動の理由と、今後予定されているソロ5周年活動20周年イベントについて語ってもらった。その後編はタイトルナンバーに加えて11曲のデモ音源を収録したシングル「days goes by」と、すでにレコーディングが終了しているという2018年1月リリースのアルバム『Yesterday Today Tomorrow』への予感について。
シングル「days goes by」のサウンド&プレイはもとより、メンタリティの変化がもたらしたアルバムコンセプト、フルカワならではの愛深きバンド論など、前編に続いて深く訊いたロングインタビューをお届けしたい。
◆ ◆ ◆
■「すげえ!」って言わせたかった
■デモ段階から愛でられてる曲です
──11月8日にニューシングル「days goes by」がリリースされましたが、すでに2018年1月にニューアルバム『Yesterday Today Tomorrow』リリースも発表となってまして。「days goes by」は先行シングルというカタチですか?
フルカワ:はい。僕自身、シングルリリースってドーパン (DOPING PANDA)の時からけっこうイヤだったんですよ。アルバムで勝負することを考えると、シングルのカップリングって1曲捨てるようなもので、すごく残念だったりするんですね。だからといってリミックスを入れたりとか、そういう片手間感みたいなのもイヤだし。ただ、世の中の流れでシングルが出せなくなってきてるじゃないですか。YouTubeとかでミュージックビデオが観られるし、だったら配信でいいじゃないかっていう方向に業界が進んで、パッケージとしてのシングルの意味合いがどんどん薄れている。そういった中で、なくなると不思議なものでシングルが恋しくなる(笑)。今回、メーカー側から「シングルを出そう」って言われて、「え、いいの?」と(笑)。
──「days goes by」はニューアルバム『Yesterday Today Tomorrow』収録曲からセレクトした楽曲ですか?
フルカワ:アルバム中から1曲、チームで選んだ感じです。デモをしっかり作って、その中から「これはシングルになりそうだね」っていう4曲を先に録ったんですよ。ミックスまで終わらせた段階で、その中から選んでもらいました。
──この曲が選ばれた決め手は?
フルカワ:一番大きいのは、今回のプロデューサーのTGMX(FRONTIER BACKYARD)さんですね。ある程度一任したんです。というのは、ドーパン後期はミックスまで自分の手でやってたんですけど、今はその時よりもっと“自分だけ”な環境じゃないですか。エンジニアさんと僕の中で完結しようと思えば出来ちゃう。今回は、そうじゃないカタチで制作したかったんです。
──そういう理由で、DOPING PANDAインディーズ時代の師匠でもあるTGMXさんをプロデューサーに迎えたわけですね。
フルカワ:そうです。もちろん自分が正しいと思うところは意見を戦わせたり建設的な話をしますけど、たとえば録り方とか混ぜ方、アレンジの仕方で食い下がるよりも、一回引いて受け止めて、自分で消化するっていう作業をしたかったんです。だから、シングルの選曲に関してもTGMXさんとメーカー担当者とで選んでもらって。もちろん僕も好きな曲ですけど、もうちょっと派手なドーパンっぽい曲も、その4曲のうち2曲ぐらいあったんですよ。
──客観的な意見を尊重したと?
フルカワ:珍しいでしょ(笑)。ドーパンのメジャー以降はほとんど自分主導。ソロになったら、もっとそうなったじゃないですか。でも実は、前回の「サバク」はマネージャーの一押し曲でミュージックビデオを制作してるんです。そのへんからフレキシブルになって。人の意見を聞きたくなるっていうことの極みじゃないですか、プロデューサーをつけるって。しかも直の先輩であり、ミュージシャンとして尊敬してるTGMXさんなので、メンタル的にも乗っかっていこうっていう。「days goes by」を選んだことに関してTGMXさんは、「“フルカワっぽい曲”を外したい」とは言ってましたね。
──16ビートや4つ打ちのダンスチューンとか、疾走感あるパンクのような十八番ではなく、ということですか?
フルカワ:4曲の中で最も新機軸というか、新しく生み出された感があるものですよね。確かにアダルティで洋楽っぽい曲じゃないですか、「days goes by」は。TGMXさんとしては、「連想できるような曲だと俺とやってる意味もないし、今回は違うところに届けたほうがいいんじゃないか。フルカワっぽい曲はこの後のアルバムで思う存分やればいいから、先行シングルは、違うフルカワユタカを見せるべきじゃないか」みたいなことを言ってましたね。だから、先行シングルだけどアルバムを代表するっていう意味合いとはちょっと違っていて。で、僕はその意見に関して全く賛成でした。
──アルバム『And I’m a Rock Star』のインタビュー時、収録曲の「can you feel」は「カテゴライズされないものを書きたくて、それがカタチになった曲」とおっしゃっていたんですね。「days goes by」もファンクでディスコでソウルだけど、ひとつにカテゴライズできない楽曲で。ご自身も手応えを感じていた「can you feel」をさらに推し進めた新たな楽曲という印象を持ったんですが。
フルカワ:間違いなくそうでしょうね。「can you feel」について僕が「作曲家としてある一定の壁を越えた」みたいなことを言ったのは、ケツを叩かれる感覚がちゃんとあって書いたものって言うか。もちろん、他の曲で手を抜いてるわけじゃないし、すべての曲が自然体なんですよ。メロコアな曲も大好きだし、それこそ僕は王道のヴァン・ヘイレンが好きですから、ファンライクな曲が好きだったりもするんです。そういう自分が押し出される時もあるんだけど、今回のアルバム自体、そればっかりではない。「days goes by」は特にそうなんですよ。
──たしかにわかりやすさ全面の曲ではないですね。
フルカワ:「すげえ!」ってTGMXさんに言わせたかったんです。この曲はデモが上がった段階から愛でられてるって言ったら変ですけど、「この曲はイイ、この曲はイイ」とTGMXさんも言ってましたね。
──ちょっと楽曲のコアな話をうかがいますが、楽曲構成って最初からこのカタチだったんですか?
フルカワ:構成をわかりやすくしたぐらいかな。TGMXさんが“いいな、この曲”って言うときはあんまりイジらないですからね。いいと思ってるところは削らないですし。
──ド頭の弾き語り的なAメロ部分って、その後も繰り返し出てくるもんだと思ったら、BメロとCメロが繰り返されますよね。“あれ?Aメロは最初の一発だけ?”と思ったら、最後の最後に出てくるみたいな。つまり、プロローグとエピローグ的にAメロが入っているアレンジが印象的でした。
フルカワ:特徴的な曲進行だけど、出来上がってみるとストライクっていう部分はTGMXさんのアイデア。僕はプログレッシヴに感じちゃうからそうはしないんです。たとえば僕自身は、ずっとループだったりとか下世話な進行が好きなので、「サバク」もそうですけど、ある種普遍的でしょ。TGMXさんはそこをひねってくるというか、天邪鬼なのか(笑)。FRONTIER BACKYARDもSCAFULL KINGもAメロが1回しか出てこないっていう曲があるんですけど、それをポップに聴かせるんですね。
──決してトリッキーではなく馴染んでるという。
フルカワ:1曲通して聴いてみるとトリッキーじゃないっていうのは、それはもう昔から感じてるTGMXさんのアレンジの特徴ですね。
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