【インタビュー1/4】グラハム・ボネット「グラハム・ボネット・バンド編」

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レインボー、マイケル・シェンカー・グループ、アルカトラスなどで唯一無二のシャウトを聴かせてきたハード・ロック界屈指のボーカリスト:グラハム・ボネットが、2017年3月に自ら率いるグラハム・ボネット・バンド&アルカトラスのダブルヘッダー来日公演を行った。

◆グラハム・ボネット画像

ライブは、歴代のクラシックスと最新アルバム『ザ・ブック』からのナンバーを加えたオールタイム・グレイテスト選曲で、グラハムは絶好調の熱唱を聴かせていた。ベス=アミ・へヴンストーン(ベース)、コンラド・ペシナート(ギター)、ジミー・ワルドー(キーボード/アルカトラスのオリジナル・メンバー)、新加入のマーク・ベンケチェア(ドラムス)を率いて行われたステージは、幅広い年齢層のハード・ロック・ファンをヒート・アップさせ、後半ではベス=アミに代わってゲイリー・シェアがベースをプレイ、オリジナル・アルかトラスの3人が集結するステージを実現させている。

2016年7月にはイタリア・ミラノでのライブ映像作品/アルバム『フロンティアズ・ロック・フェスティヴァル 2016~ライブ…ヒア・カムズ・ザ・ナイト』もリリースされるグラハム・ボネット・バンドに取材を敢行した。メンバー全員に語ってもらったインタビュー全4回の第1回では、バンドの現在について語ってもらった。

──現在のグラハム・ボネット・バンドはどんな状態ですか?

グラハム・ボネット:ファミリーのようだよ。元々このバンドは俺とベス=アミのアコースティック・デュオとしてスタートしたんだ。でも新曲を書くうちに、徐々にエレクトリックな曲もやりたくなった。それでベス=アミがかつてやっていたバンドでギターを弾いていたコンラドに声をかけたんだ。さらにドラマーやキーボード奏者が必要になって、現在のラインアップが揃ったんだよ。みんな友達だし、エゴの問題はまったくない。マークは素晴らしいドラマーで、バンドをひとつに結びつけてくれる存在だ。俺自身、すごく安心できる仲間たちだよ。

──グラハム・ボネット・バンドとアルカトラスは前者のベースがベス=アミ、後者がゲイリー・シェアとメンバー的には異なっていますが、音楽的にはどう異なるでしょうか?

グラハム・ボネット:やっている音楽は基本的に同じだよ。ただ、グラハム・ボネット・バンドの方がアルカトラスよりもモダンだと思う。“グラハム・ボネット・サウンド”を21世紀に持ち込んだ音楽性だ。自分より若いミュージシャン達と一緒にやるのは刺激になる。俺みたいな老いぼれは自分の周囲を見回すことがないし、未来を視野に入れて音楽をやることがないからね(笑)。俺は今、流行の音楽なんてまったく聴かないけど、コンラドは現代の音楽シーンをよく知っているし、ジミーも常に新しい音楽をチェックしている。グラハム・ボネット・バンドでやることは、俺にとって大きなスリルだよ。

──2015年、マイケル・シェンカーズ・テンプル・オブ・ロックとの来日公演について、ベスはどんなことを覚えていますか?


ベス=アミ・へヴンストーン:あれは最高だったわ。私は何度も日本に来たことがあるけど、ミュージシャンとして来るのは初めてだったの。スタッフはみんな優秀で、私が頭をまったく使わなくても、すべてがスムーズに動いていった。アメリカだと会場のPAが酷かったり、いろんなトラブルが待っているけど、一切そんなことはなかった。ファンが鉄道の駅で待っていたり、ホテルのロビーで鉢植えの向こうに隠れてこっちを凝視しているという経験は初めてだったわ(笑)。

コンラド・ペシナート:俺にとっては初めての日本だったけど、ファンがグラハムに敬意と愛情を持っていることが伝わってきた。スタッフからもプロフェッショナルな対応をしてもらったし、とてもハッピーな経験だったよ。しかもマイケル・シェンカーと同じステージに立てることにエキサイトした。俺は彼の大ファンなんだ。

ベス=アミ・へヴンストーン:グラハムと初めて会ったときは、彼が有名なロック・スターだとは知らなかった。シンガーだとは本人から聞いていたけど、彼は「俺は有名人だ」と自慢するタイプじゃないしね。グラハムが作ってきたアルバムを少しずつ聴いているところよ。どれも名作だから聴くたびにエキサイトするわ。

グラハム・ボネット:俺自身、自分がロック・スターだなんて考えていないよ。初めてレインボーで日本に来たとき(1980年)、衝撃を受けたんだ。空港から出るとき数千人のファンが待ち構えていて、誰か有名人が同じ飛行機に乗っていたのかな?と思った。でも日本のファンはサインや握手は求めても、我々のプライバシーに踏み込んでこようとはしなかった。それが良いところだった。

──しばらく前、グラハムと旧メンバー達がアルカトラスの名称を巡って揉めていましたが、それはもう解決したのですか?

グラハム・ボネット:もう何年も前の話だし、まったく問題はないよ。「どっちが本当のアルカトラスか?」なんて興味がなかった。世界は広いんだし、いくつもアルカトラスというバンドがいてもいいじゃないか。

ジミー・ワルドー:俺はグラハムこそがアルカトラスのシンガーだと確信していたし、いつかオリジナル・アルカトラスを復活させたいとずっと考えていた。何回もイングヴェイ・マルムスティーンとも話したんだ。彼も興味は示してくれたけど、結局なんだか面倒な話になりそうで、俺も「やーめた」って気分になってしまった。今グラハムと一緒にやれるのは喜びだよ。俺にとって大事なのはビジネスよりも音楽なんだ。グラハム・ボネット・バンドはリアルなバンドで、リアルな音楽をやっている。『ザ・ブック』は誇りにできるアルバムだよ。

──2017年6月にライブ映像作品/アルバム『フロンティアズ・ロック・フェスティヴァル 2016~ライブ…ヒア・カムズ・ザ・ナイト』がリリースされますが、どんなライブだったと記憶していますか?

グラハム・ボネット:イタリアのミラノで、フロンティアーズ・レコーズと契約しているいろんなバンドが出演するフェスだ。我々は2日目(2016年4月24日)にタリスマンやトリクスターと出たんだ。レインボー、アルカトラス、マイケル・シェンカー・グループの代表曲をプレイしていいライブだったと思うし、現在のバンドの姿を捉えているよ。

──マークはまだバンド加入前ですよね?

マーク:うん、叩いているのは前任ドラマーのマーク・ゾンダーだよ。元々俺はLAのシーンで、いろんなバンドでプレイしてきたけど、コンラドと知り合って「いつかドラマーが必要になったら声をかけてよ」と話していた。それから数ヶ月後、オーディションを受けることになったんだ。

──マークはこれまでレコーディング経験はありますか?

マーク:いくつかあるけど、ワールドワイドな活動をするバンドはこれが初めて。ここ3~4年間やってきたバりオ・タイガー(Barrio Tiger)というバンドのアルバムが近々出るはずなんだ。ガレージ・パンクっぽいサウンドで、グラハムとやっていることとはかなり異なるサウンドだけど、俺が影響を受けたのはレインボーやブラック・サバス、ジューダス・プリーストやレッド・ツェッペリンなどクラシック・ロック寄りの音楽だから、グラハム・ボネット・バンドでやる方がしっくり来くるよ。

──コンラドはどんなギタリストから影響を受けてきましたか?

コンラド・ペシナート:俺は今34歳だから、最初はアイアン・メイデンやガンズ&ローゼズ…スラッシュはヒーローだったよ。人生が変わったのは16歳のとき、スティーヴ・ヴァイのショーを観たことだった。もちろんリッチー・ブラックモアからも影響を受けてきたし、ディープ・パープルやレインボーの曲をコピーしてきたよ。

──ベス=アミはどうですか?

ベス=アミ・へヴンストーン:私は兄がいるから、彼らのレコードを聴いて育った。長兄はウェザー・リポートやマハヴィシュヌ・オーケストラ、次兄はレッド・ツェッペリン、ザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズ。さらに姉もいて、メインストリームのAMラジオを聴いていた。両親もビッグバンド・ジャズやスウィングが好きだったから、いつも音楽に囲まれていたわ。自分がベースを弾くようになってからはポール・マッカートニーやジャック・ブルース、ジョン・ポール・ジョーンズのプレイから影響を受けてきた。

──ベス=アミは日本通として知られていますが、日本の音楽で好きなものはありますか?

ベス=アミ・へヴンストーン:E・Z・Oが好きだったわ。ヘヴィでメイクもクールで神秘的だったし、歌詞は英語だったけど、これこそが日本だ!と思っていた。ただJ-POPや演歌はあまり詳しくないのよ。もっと掘り下げたいと思っている。

──ジミーのキーボード奏者としてのルーツは?

ジミー・ワルドー:俺が聴いて育ったのはファッツ・ドミノ、リトル・リチャードなど初期のロックンロール・ピアニストだった。子供の頃、母親にクラシック・ピアノのレッスンを受けさせられたけど、俺はレッスンというものが嫌いでロック・ギターを弾くようになったんだ。バンドでギターを弾いていたけど、オルガン奏者が脱退して、俺がオルガンも担当するようになった。それでいつの間にかキーボードが本業になったわけだ。影響を受けたロック・キーボード奏者はソフト・マシーンのマイク・ラトリッジ、それからアトミック・ルースターのヴィンセント・クレイン…彼は攻撃的なプレイヤーだったね。それから言うまでもないけどディープ・パープルのジョン・ロード、キース・エマーソンやリック・ウェイクマン…クラシック音楽はあまり好きじゃなかったけど、彼らのメロディとテキスチャーが好きだった。そうそう、こないだNAMMショーで歩き回って疲れたんでバーに入ったら、ブライアン・オーガーが演奏していてビックリしたよ。彼のことも大好きなんだ。ティファニーとシーラEがパーカッションをやっていたよ。往年の名キーボード奏者ではジミー・スミスも素晴らしい。

──2016年11月にはジミーとゲイリーが参加したニュー・イングランドが1979年のデビューから37年を経て初来日公演を行いましたが、今後ニュー・イングランドとしての活動は予定していますか?

ジミー・ワルドー:今のところ予定はないんだ。バンドのみんなは仲が良いけど、距離的に難しいんだよ。2人はボストンに住んでいるし、そのうち1人はニュー・イングランドとして活動することに乗り気じゃない。ゲイリーはフロリダ在住だしね。俺自身、今はグラハム・ボネット・バンドでやるのが楽しいんだ。俺はいくつものプロジェクトを同時進行させるのが得意ではない。一点集中型なんだよ(笑)。

──グラハム・ボネット・バンドとしての今後の活動について教えて下さい。

ベス=アミ・へヴンストーン:2017年は世界をツアーして回る予定よ。ヨーロッパの夏フェスにも出演するし、単独ツアーも決まっている。グラハムはマイケル・シェンカー・フェストにも声をかけられているし、引っ張りだこね。その合間を縫って新しいアルバムも作りたいし、長期的な活動を続けていくつもりよ。

取材・文:山崎智之
Photos by Mikio Ariga


グラハム・ボネット関連作品

グラハム・ボネット・バンド『フロンティアズ・ロック・フェスティヴァル 2016~ライブ…ヒア・カムズ・ザ・ナイト』
2017年6月23日 日本先行発売予定
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グラハム・ボネット・バンド『ザ・ブック』
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