【ライブレポート】ホワイトスネイク、デヴィッド・カヴァーデイル健在
ホワイトスネイクが日本に還ってきた。同じメンバー構成で約1年ぶりという短いインターヴァルでの来日となったが、前回が『ザ・パープル・アルバム』に伴うツアーで、ディープ・パープル時代の楽曲を中心としたライヴだったのに対し、今回はグレイテスト・ヒッツ・ツアー、しかも日本の秋を彩る鋼鉄の祭典<ラウドパーク16>10月9日(日)のヘッドライナーとしての参戦である。
◆ホワイトスネイク画像
さまざまなドラマが生まれた2日間を経て、客電が落ちると雷に打たれたように立ち上がる。そして「バッド・ボーイズ」の鋭角的なイントロ・リフが斬り込み、ショーが幕を上げた。デヴィッド・カヴァーデイルの歌声にはハリがあり、その好調ぶりを物語っている。
オープニングの「バッド・ボーイズ」から「スライド・イット・イン」へと“すべり込んでいく”流れは1988年6月、大ヒット・アルバム『白蛇の紋章』(1987)に伴う来日公演と共通するものだ。そのときのドラマーだった現在66歳のトミー・アルドリッジが、28年前と変わらぬパワフルなプレイを叩いているのは、もはや驚異である。
ホワイトスネイクの主人公がデヴィッドであることは言うまでもないが、世界トップクラスのギタリスト・チームを見ることができるのも、彼らのライヴの醍醐味のひとつだ。現在のレブ・ビーチとジョエル・ホークストラというコンビは、歴代でも最強の部類に入るだろう。2人の指は縦横無尽にギターの指板を駆けめぐり大観衆の目を釘付けにする。ジョエルはジェフ・ワトソン直伝の8フィンガー奏法まで披露、会場をどよめかせた(ジョエル、レブは2人ともナイト・レンジャーに在籍したことがある)。
さらにマイケル・デヴィンのベース、ミケーレ・ルッピのキーボードも、がっちりタイトにバンドのサウンドをまとめ上げていた。「ラヴ・エイント・ノー・ストレンジャー」「ザ・ディーパー・ザ・ラヴ」と1980年代のビッグでメロディアスなナンバーが続いた後、アメリカ侵攻前のバンドを代表する名曲「フール・フォー・ユア・ラヴィング」、そしてホワイトスネイクのライヴでは欠くことができない「エイント・ノー・ラヴ・イン・ザ・ハート・オブ・ザ・シティ」をプレイ。デヴィッドの「ウタッテ!」という呼びかけに対して<ラウド・パーク>の観衆は大きな歌声で応える。
日本のファンとしてはいつまでも歌っていたい気分だろうが、メドレー形式で「ジャッジメント・デイ」へと突入していく。いわゆるシングル・ヒットではないものの、この重厚な叙事詩はファン・フェイヴァリットのひとつで、バンドと共にグルーヴに揺られていった。レブとジョエルのギター・ソロ・スポットを挟んで、30年以上、情念を込めて歌われてきた「クライング・イン・ザ・レイン」が演奏される。今晩もありったけのエモーションを注ぎ込んだヴォーカルは、年輪を経るごとに濃厚さを増している。
トミー・アルドリッジのドラム・ソロは、ホワイトスネイクのショー後半のハイライトのひとつだ。そのパワーとスピード、そして重量感。手のひらでの乱れ打ちを含め、トミーが“ゼニを取れる”ドラマーであるという想いを新たにさせる強力なソロだった。そして終盤は黄金のヒット・ナンバーの速射砲だ。はたして世界中で何万人が「イズ・ディス・ラヴ」「ギヴ・ミー・オール・ユア・ラヴ」を聴きながら愛を交わし、そして何十万人、何百万人が「ヒア・アイ・ゴー・アゲイン」に勇気づけられ、困難に立ち向かっただろうか。それぞれの曲のイントロが奏でられるたびに湧き上がる大歓声は、この会場内にもそんなファンが少なからずいたことを証明していた。「ヒア・アイ・ゴー・アゲイン」の最後には、観衆の一人ひとりがホワイトスネイク・クワイア(合唱隊)のメンバーとなっていた。
いったんステージを後にしたバンドだが、静まることのないコールに呼び戻されて、この曲をプレイしなければホワイトスネイクのショーは終わらない!とばかり「スティル・オブ・ザ・ナイト」で大団円を迎える。さらに最後のサプライズとして演奏されたのは、「紫の炎」だった。『ザ・パープル・アルバム』と同じ、ツイン・ギターをフィーチュアした新アレンジへと変貌を遂げたヴァージョンは、ホワイトスネイク・クラシックスのひとつとして彼らの血と肉になっていた。フェスティバルとは“祭り”である。グレイテスト・ヒッツを歌って盛り上がるホワイトスネイクのショーは、まごうことなく“祭り”を締めくくるクライマックスだった。
<ラウド・パーク16>での大熱演から一夜明けた10日、ホワイトスネイクは静岡市に移動。静岡市民文化会館でプレミアム単独公演を行った。さらに13日には大阪国際会議場メインホールでのショーで、ジャパン・ツアー最終公演が行われている。デヴィッドはしばしば日本の観衆に「ゲンキですか?」と問いかける。日本での彼は、自らがまだまだ最高にゲンキであることを高らかに宣言したのであった。
文:山崎智之
写真:Mikio Ariga
デヴィッド・カヴァーデイル(ヴォーカル)
レブ・ビーチ(ギター)
ジョエル・ホークストラ(ギター)
マイケル・デヴィン(ベース)
トミー・アルドリッジ(ドラムス)
ミケーレ・ルッピ(キーボード)
<ラウドパーク16>10月9日(日)@さいたまスーパーアリーナ
・スライド・イット・イン
・ラヴ・エイント・ノー・ストレンジャー
・ザ・ディーパー・ザ・ラヴ
・フール・フォー・ユア・ラヴィング
・エイント・ノー・ラヴ・イン・ザ・ハート・オブ・ザ・シティ
・ジャッジメント・デイ
・レブ・ビーチ&ジョエル・ホークストラ・ギター・ソロ
・スロー・アンド・イージー
・クライング・イン・ザ・レイン
・トミー・アルドリッジ・ドラム・ソロ
・イズ・ディス・ラヴ
・ギヴ・ミー・オール・ユア・ラヴ
・ヒア・アイ・ゴー・アゲイン
・スティル・オブ・ザ・ナイト
・紫の炎
◆ホワイトスネイク・ワードレコーズサイト
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