松崎しげる「秋になると聞きたくなる曲」/【連載】トベタ・バジュンのミュージック・コンシェルジュ
音楽家/プロデューサーのトベタ・バジュンによるミュージック・コンシェルジュは、オススメの10曲を素敵なコンシェルジュからリコメンド、「音・音楽へのこだわり」を紐解きながら今の音楽シーンを見つめ最新の音楽事情を探っていく連載企画だ。
今回7人目のコンシェルジュとして登場するのは松崎しげるだ。2016年も黒フェスの愛称でお馴染みの主宰フェス松崎しげるプレゼンツ「黒フェス2016-しげる祭り- 白黒歌合戦」の開催や、人気ボカロP、40mPが率いる虹色オーケストラとの異色コラボによるシングル「からくりピエロ」のリリースなど、60歳代半ばとはとても思えない精力的な活動をみせている。今回は野球と音楽中心の少年時代を過ごしていた松崎しげるに「秋になると聞きたくなる曲」をセレクトしてもらった。
●松崎しげる「秋になると聞きたくなる曲」
(1)ナット・キング・コール「Stardust」
(2)ザ・ビートルズ「Ask Me Why」
(3)ザ・ビーチ・ボーイズ「Girls on the beach」
(4)ハービー・マン「Deve Ser Amor(It Must Be Love)」
(5)松崎しげる「愛のメモリー」
(6)ルイス・ミゲル「Como Yo Te Ame」
(7)山下達郎「FUNKY FLUSHIN'」
(8)原田真二「キャンディ」
(9)坂本九「見上げてごらん夜の星を」
(10)ハナ肇とクレージーキャッツ「だまって俺について来い」
◆ ◆ ◆
(1)ナット・キング・コール「Stardust」
この曲を聴いて全身に電気が走って、小学3年生でレコードを聴くようになった(笑)。産まれたときから親父とおふくろが(音楽)好きだったんで聴いてたんだけど、自分から針を落とすっていう作業は小学校3年生くらいからだね。
(2)ザ・ビートルズ「Ask Me Why」
野球ばっかりやってたんで歌手になろうとは思わなかった。僕らの時代の野球はスパルタだったんで、(練習後は)勉強する気力もない何もない。全くの脱力感の中で、唯一レコードに針を落としてたね。それが自分の身体が一番リラックスできた瞬間かな。ナット・キング・コールをずっと聴いてて、中学2年でザ・ビートルズが世界デビューしたんだよね。日本デビュー盤は「プリーズ・プリーズ・ミー」。そのB面の「アスク・ミー・ホワイ」って曲を聴いたときにこれでまた電気走った。ハーモニーってこんなに素晴らしいんだって。
(3)ザ・ビーチ・ボーイズ「Girls on the beach」
エンドレスサマーじゃないけど、ザ・ビーチ・ボーイズの「Girls on the beach」。この曲はまたしびれまくったなぁ。
(4)ハービー・マン「Deve Ser Amor(It Must Be Love)」
中~高校生の時期にインストゥルメンタルを聴きたいっていう感覚があったんだよ。それでハービー・マン聴いてて、この曲を初めて聴いたときの、間奏のアドリブ演奏のなんとも言えない感覚…なかなか譜面には書けないような動きなのよね。どの音楽聴いてもイントロと間奏が同じだった時代だったから、この曲のアドリブを聴いたのにはすごく感銘を受けたね。
(5)松崎しげる「愛のメモリー」
自分の曲はあまり聴こうと思うのがないんだけど、(自分の曲を挙げるとするなら)「愛のメモリー」っていうのは必ず入っているだろうな。
(6)ルイス・ミゲル「Como Yo Te Ame」
最近ずっと聴きまくっている。ルイス・ミゲルはまさに本当のシンガーソングライター。日本でもネットでは(情報が)出てるんだけど、やっぱりヨーロッパのストリングスの厚みとか、水の中にいるようなあの感覚とか。
(7)山下達郎「FUNKY FLUSHIN'」
やっぱり同じ時代、達郎は聴くね。思い切りポップを引き寄せてくれたっていうか、達郎くんと原田真二っていうのは、絶対に自分の中にある。自分で達郎をやったっていうのは、ステージでずっと歌ってた「FUNKY FLUSHIN'」。これは彼がラブソングばっかりやってる中でも、R&Bって言うかモータウンが大好きだったから。俺が歌っているところに少年隊の植草(克秀)くんが観に来てさ、あいつらこれレコーディングしやがったの(笑)。達郎くんはいい曲の宝庫だから。彼の場合は匂いからくるっていうか、匂わせてくれるよね。
(8)原田真二「キャンディ」
原田真二に関しては「キャンディ」だろうな。やっぱり日本のギルバート・オサリバンだと思った瞬間だな。他にも「Modern Vision」のような小粋な曲が好きなんだよね。何回も番組で一緒になったり、自分がいちばん最初にラジオの番組やったときに呼んだのがやっぱり達郎くんと原田真二のふたりだもんね。
(9)坂本九「見上げてごらん夜の星を」
なんと言っても僕は坂本九さんですかね。「上を向いて歩こう」もそうだけど、「見上げてごらん夜の星を」かな。この前のアルバム(『私の歌~リスペクト~』)に入れたのね。やっぱりいちばん自分がかわいがってもらった先輩というか、一緒に何回もステージやらせてもらって、惜しげもなく「自分のヒット曲を一緒に歌おう」って言ってくれた素晴らしい先輩でね。「見上げてごらん夜の星を」は絶対だね。
(10)ハナ肇とクレージーキャッツ「だまって俺について来い」
この間テリー(伊藤)と一緒に対談しながら自分たちの時代背景を考えた。これも自分のステージでやったことあるんだけど、クレージーキャッツって、最高に力をもらえて笑いももらえる。音楽の楽しさとか表現の仕方とか、植木等さんはすごいよね。「こち亀」かなんかの主題歌になったのかな?
◆ ◆ ◆
――「からくりピエロ」リリースおめでとうございます。明日(9月6日)もフェスですよね? 大変なときにごめんなさい。
松崎しげる:いえいえ、そんなそんな。毎回のことでね。ただやっぱりフェスは気を遣うね。違うアーティストが来るんでご招待というか、招いている立場なので。
――黒フェスは、元々松崎さんの立案なんですか?
松崎しげる:そうだね、「やるんならフェスやろうか」って。それこそいろんなフェスに出ていたから「うちでもなんかやろうか」っていうのが4~5年前からずっとあったんだよね。去年「9月6日(96=黒)を松崎しげるの日に」という認定があって「9月6日にフェスやりましょうか」って話がみんなから出てきて、「いいんじゃないの」って軽く言ったら動き出した。友達の西田敏行に「俺ちょっとフェスやるんだけど来ない?」って言ったら「行くよ! お前やるんだったら行くからよ」って。スターダストレビューの根本(要)くんも「根本くん、俺のとこでフェスやるんだけど来ない?」「行きますよ」「その前福岡でコンサートやってるんだけど、それ帰ってきますね」って。
――すごいネットワークですね。
松崎しげる:ゴスペラーズからは逆に電話があって「先輩、やるんだったら呼んでくださいよ」って。葉加瀬太郎は「いつも情熱(大陸ライブ)に出てもらってるんで、僕、行きます」って。音楽的な部分ではみんな揃ったんだけど、大友康平(HOUND DOG)と焼肉食っているときに「そういえば(黒フェスを)やるんだよね」「お前来るか?」「行きます!」って。そしたらそういう噂を聞いて、コロッケが「ねぇ松崎さん。黒フェスって、みんなオリジナル曲歌う人ばっかりなんですか?」「そんなことないよ。いろんなパフォーマンスやったほうがステージ的に面白いじゃん、お祭りなんだから」「出たいな」「出ろよ」と。第一回目はそういうふうに友達関係で決まっていった。そしたらMay J.とかクリス・ハートが「すごい盛り上がってましたね」「そうなんだよ。嬉しいよな、音楽好きが集まるのは。来年よかったら…」「やります!」って。
――ももいろクローバーZも。
松崎しげる:ももクロは、彼女たちのショーでずっと歌っていたからね。あいつらは俺にあだ名を付けるっていうんで「南国ピーナッツ」っていうあだ名が付けられて、だからももクロのファンたちは「南ピーさん」って呼ぶんだよ。彼女たちと一緒にステージでやっていると、逆にパワーをもらうんだよ。いつも手を抜かずに全身全霊でやっていて「俺たちもこうだったよなぁ」「なんか似たところがあるよな、こいつら」って。
――ニコ超会議での40mPとの出会いは?
松崎しげる:あれはね、ニコニコ動画のフェスに呼ばれて、虹色オーケストラと会ったときに「お前らいいな」「やっぱり歌い手っていうのは、こういうハーモニーの渦の中で歌うのが歌い手冥利に尽きるしな、最高だよ」「機会があったらやろうぜ」っていう話をしていたの。ニコニコでコラボして歌った曲が良かったから「ちょっと俺やろうかなぁ」って言ったら、「本当ですか!?」って。
――そりゃ、向こうからしたらうれしいですよね。
松崎しげる:そしたら彼らがカップリングは「愛のメモリー」やりたいんだって。チェコ・フィルハーモニー管弦楽団と一緒にやった音源を題材にしてレコーディングした。若きアーティストと一緒にやると、お互いに感化され合うよね。クラシックをやってるんだけどポップをすごく理解してる年代で、力量がある。ももクロと同じように、若さっていうかパワーをすごく感じた。
――松崎さんは、これからどういうところに向かっていきたいと思っていますか?
松崎しげる:何しろステージが大好きなんで、ステージの上でいろいろな表現ができたら嬉しいし、生あるかぎりはステージに立ってると思う。あとはやっぱりいろんなところでコラボレーションする。相手からいろんな刺激をもらえるからね。自分としてはサウンド(の構築)が目標かな。表現の仕方っていうのは、アメリカじゃなくてヨーロッパのサウンドに持っていきたいかな。
――原点に帰っていく感じですね。
松崎しげる:逆に綺麗なラブソングを歌いたいね。今自分のボイシングもアメリカチックっていうか、ガーンって打ってぶつけていく感じなんで、それがもう少しインナーに入ってくるような。それでもってめちゃハイキーな(高音の良さは保ちたい)。
――ありがとうございました。ちなみに「からくりピエロ」の1,696(色黒)円っていうのは松崎さんが考えたんですか?
松崎しげる:こんなことを俺が考えられるわけないじゃん。こんなことよく考えるよな(笑)。
――しかも虹色黒の日(=2016(にじいろ)年9月6日)ってすごくないですか? これは偶然ですか?
スタッフ:偶然です(笑)。虹色=2016っていうのは虹色オーケストラのバンマスのジムインGさんが気づいたそうですよ。
――いいですよね。ところで事務所の上にマイアミ(※日焼けマシーン)があるっていう噂は本当なんですか?
松崎しげる:ありますよ。日焼けマシーンが。
――このままどんどん突き進んでほしいです。
松崎しげる:自分たちの夢をひとつひとつ掴んでいこうっていう、そういう仲間がいるからね。いいアーティストがみんな集まってきてくれているから。夢を追っていきますよ。
インタビュー:トベタ・バジュン
松崎しげるwith虹色オーケストラ「からくりピエロ」
HUCD-10229 1,696円
1.からくりピエロ
2.愛のメモリー
3.からくりピエロ(カラオケVer.)
4.愛のメモリー(カラオケVer.)
◆松崎しげるオフィシャルサイト
◆【連載】トベタ・バジュンのミュージック・コンシェルジュまとめ
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