【ライブレポート】植田真梨恵、密度の濃い時間に「秋ですね」

植田真梨恵の全国ツアー＜植田真梨恵LIVE TOUR UTAUTAU vol.2＞が10月25日、故郷・福岡にて幕を閉じた。同ツアーは自身がギターを持たない楽曲を中心に、歌とパフォーマンスで魅せていくもの。その初日となった10月3日の東京 TSUTAYA O-EAST公演の速報はすでに公開しているが、改めてその詳細に迫るレポートをお届けしたい。

◆植田真梨恵 画像

この夏には＜たったひとりのワンマンライブ vol.2＞と題して、アコースティック・ギターを相棒に表情豊かな歌を聴かせてくれた植田真梨恵。今回は、1stアルバム『はなしはそれからだ』でのツアーよりもさらに大きくなった会場で、バンド編成による＜植田真梨恵LIVE TOUR UTAUTAU vol.2＞を行なった。東京、大阪、名古屋、福岡の4都市をめぐったこのツアーの初日がここ東京・TSUTAYA O-EAST公演となる。


爽やかなストライプのタンクトップに、ボクシンググローブをつけて、ファイターのごとく登場した植田真梨恵。会場が大きな歓声で包まれるなかギターを抱えると、デビュー曲「彼に守ってほしい10のこと」で幕を開け、続く「ナビゲーション」そして「カーテンの刺繍」ではハンドマイクで観客を盛り上げ、「声出る？」とフロアに問いかけてコーラスのシンガロングをあおったりと、序盤からかなりのハイペースぶり。


白のツナギ姿のサポートメンバー“いっせーのーせ”との息も、ツアー初日にして抜群。前回のアルバム・ツアーよりもさらにバンド感が上がって、ライヴならではのドライヴ感が増している。観客のノリもまた同様で、のっけからとにかく大声で歌いっぱなし。“UTAUTAU”＝歌うたうというこのツアーのタイトルを地でいくライヴだ。その勢いのなかで、新曲だというポップ・チューン「sheep skin」も披露された。


「今日初めて、植田真梨恵のライブに来た人は？」という問いに、たくさんの人が大きく手を掲げ返事をする。会場が大きくなって、ようやく来ることができた人も多いのだろうし、もちろんアルバム『はなしはそれからだ』や3rdシングル「わかんないのはいやだ」など、キャッチーでヒネリもたっぷりの植田真梨恵節に心掴まれている人たちもまた増えているのだろう。彼女がフロアにマイクを向ければ、大きなコーラスが返ってくるし、「今日はちょっと暑いけど、秋ですね。おいしいもの食べた？」と聞けば、方々からいろんな声が上がったりと、終始にぎやかだ。


この観客のエネルギーもまた、バンド・アンサンブルや歌のいい燃料になっているのがよくわかる。中盤、ピアノと歌を中心にスタートした「愛おしい今日」では、じっくりと味わうように聴き入り、「壊して」から「メリーゴーランド」そして「心と体」へとアグレッシヴなサウンドに、エモショーナルな歌声を加速させていくと、会場の内の温度をグッと上昇させるようにコブシを上げたり、大きくリズムをとっていったりジャンプしたりと一体感が高い。ギターを置いて、ほぼハンドマイクでステージ上を闊歩したり、ステージのへりに腰かけて歌ったり、観客との距離がどんどん縮まって、密度の濃い時間が生まれていく心地よさがある。


デビュー曲にはじまり、インディーズ時代の曲もたっぷりちりばめ、本編だけで全21曲。アンコールでは「変革の気、蜂蜜の夕陽」をアコースティック・ギターをかき鳴らしながらひとりで歌い上げ、そしてシングル「わかんないのはいやだ」で締めくくった。2時間を超えるステージもあっという間と感じるほど濃く、そしてめくるめくカラフルな曲の世界に観客を思い切り飛び込ませる、彼女の懐の深さも感じたライブだった。

取材・文◎吉羽さおり







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