【レポート】植田真梨恵、<LAZWARD PIANO -青い旗->に永遠と無常「自分が本物になれるようなライブです」

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植田真梨恵がピアノワンマン<LAZWARD PIANO>シリーズ10周年を記念して2月23日、東京・Zepp HANEDAで<LIVE OF LAZWARD PIANO -青い旗->を開催した。同アニバーサリーライブでは原点に立ち返り、グランドピアノを運び込んだライブハウスで、ロックバンドよりロックに、アコースティックの枠を超えることが宣言されていた。祝福と感謝に溢れた<LIVE OF LAZWARD PIANO -青い旗->のレポートをお届けしたい。

◆LAZWARD PIANO (ラズワルドピアノ) 画像

凄いものを観た。いや体験した。植田真梨恵と西村広文による<LAZWARD PIANO>10周年を記念した一夜限りのスペシャルライブ。1月に出たばかりのセルフカバー&ベストアルバム『BEST OF LAZWARD PIANO -青い箱-』は、パッケージ作品として望みうる最上級の内容だったが、一発勝負の現場の迫力はやはりレベルが違う。音楽ライブのような二人芝居のような音の格闘技のような、形容しがたい唯一無二のパフォーマンスがそこにあった。



グランドピアノとマイクとギターだけのステージに、植田真梨恵が青い旗を立てる。アコースティックギターを激しくかき鳴らした瞬間、青い闇を切り裂いてガツンと衝撃波が届く。1曲目は「未完成品」だ。植田真梨恵、西村広文、どちらも裸足。打楽器としてのピアノ、言葉を超えるメロディ、感情を解放する歌。ノンストップで「きえるみたい」「壊して」、そして「ザクロの実」。譜面を見ているとは思えない。あうんの呼吸でリズムを合わせながら、その場で曲を創造していくようなスリル。それが<LIVE OF LAZWARD PIANO -青い旗->。

「さよならのかわりに記憶を消した」は大好きな曲だ。<LAZWARD PIANO>で聴くと永遠と無常の感動が倍加する。物語めいた「a girl」はこの編成にぴったりだし、「スペクタクル」はジェットコースターのようにうねるメロディをぴたりと着地させる歌の巧さに驚く。「流れ星」はミラーボールがカッコいいし、「優しい悪魔」「愛おしい今日」はぐっとスローなテンポで叙情を伝え、「メリーゴーランド」は素敵な青いドレスの裾をつまんでステージを右へ左へ。とにかく曲ごとに見せ場がある。ピアノとアコギと歌だけなのに、単調どころかむしろ世界が広がる。



「ピアノ、西村広文!」、植田真梨恵がいきなり叫ぶ。ここまで11曲、やっと今日の第一声だ。

「<LIVE OF LAZWARD PIANO -青い旗->へようこそ。たった一夜限りですから、あっという間に終わってしまいますけれども、最後まで楽しんでいってください」──植田真梨恵



MCというよりは、選手宣誓のような凛とした叫び声。すぐに曲に戻り、赤いライトと手拍子で盛り上がる「センチメンタリズム」からの3曲が凄かった。「S・O・S」のめちゃくちゃに速いリズムを正確に打ち出しながら、つっぷして、立ち上がり、鍵盤に肘打ちを喰らわす西村広文が凄かった。こんな演奏はフリージャズの世界でしか見たことがない。音の格闘技にしか聴こえない「心と体」も凄かった。「彼に守ってほしい10のこと」「ハルシネーション」は、観客の手拍子に乗せられて強く激しくしかし温かい。<LAZWARD PIANO>には高い攻撃力と大きな包容力、どっちもあるのが素晴らしい。

少し時間を取って、ピアノにつっぷして西村広文が呼吸を整えたのは、次の「吠える虎」を最高のテイクにするためだったに違いない。繊細の極みを行くバラード、心の琴線をはじく指、叙情溢れるメロディ、呼吸のような歌は、間違いなくこの日のベストの一つ。次に「変革の気、蜂蜜の夕陽」「コンセントカー」と、希望を感じさせる温かい雰囲気の曲を持ってきたのも後味が良かった。そして、この日二度目のMCは少し長めに、<LAZWARD PIANO>への10年の思いと、観客への感謝と、相棒への愛を込めて。



「<LAZWARD PIANO>はその瞬間瞬間の、自分の力のマックスでできることを、心から体から音楽を楽しんで、音楽になってやっているようなライブです。私は子供の頃から本物になることに憧れていました。そんな、自分が本物になれるようなライブです。誰とでもこんなふうになれるわけじゃないと思います。あらためて、ピアノ・西村広文!」──植田真梨恵

“おうちに帰ろう、黙ってひとり”──哀しい歌だけれど、ライブの終わりにはぴったりのスローバラード「朝焼けの番人」。そしてラストはやっぱりこの曲「サファイア!」だ。青い旗をかついで右左、観客に手拍子を求めながら練り歩き、最後の歌を歌い終えてひざまずく植田真梨恵。最後の一音を弾き終え、床に大の字になる西村広文。拍手で称える観客。素晴らしいノーサイド。勝者、全員。



「ごめん、こんなこと言うつもりなかったんやけど、普段言えないんで。本当にありがとうございます。ものすごく僕のピアノを最強にしてくれるね、君は。と思いましたよ今日は」──西村広文

アンコール。思わず出てしまった、西村広文の本音が泣ける。「私はこのへん(お腹)が限界破裂」「私は、お腹いっぱいピアノ弾いたことによりカラッポです」と、ぼやき合いながらも笑顔の二人がいとおしい。「恥ずかしい」は、この日初めて植田真梨恵がピアノのそばに来て二人寄り添うシーンが美しい。最後の最後、アップテンポのリズムに乗って明るく楽しく朗らかに、「よるのさんぽ」が楽しい。「終わりたくないなぁ」「奇跡だよ!」の会話が嬉しい。西村、ガッツポーズ。植田、笑顔。たっぷり2時間を超える特別な一夜の、なんと爽快なフィナーレだろう。



2023年2月23日の記憶をみんなの心に刻むために、最後は青い旗を掲げて記念撮影。一夜限りのつもりだった10周年ライブが、4月2日、神戸チキンジョージで<GIG OF LAZWARD PIANO -青い旗- Limited Edition!>として開催されることも発表された。植田真梨恵いわく「文化祭のあとの後夜祭みたいなもの」らしい。そして<LAZWARD PIANO>は続く。植田真梨恵の歩みは続く。『青い旗グッズ』の通販も始まった。でもそれはまた別のお話。

取材・文◎宮本英夫
撮影◎森好弘

■<LIVE OF LAZWARD PIANO -青い旗->2023年2月23日(木・祝)@Zepp Haneda(TOKYO)セットリスト

01. 未完成品
02. きえるみたい
03. 壊して
04. ザクロの実
05. さよならのかわりに記憶を消した
06. a girl
07. スペクタクル
08. 流れ星
09. 優しい悪魔
10. 愛おしい今日
11. メリーゴーランド
12. センチメンタリズム
13. S・O・S
14. 心と体
15. 彼に守ってほしい10のこと
16. ハルシネーション
17. 吠える虎
18. 変革の気、蜂蜜の夕陽
19. コンセントカー
20. 朝焼けの番人
21. サファイア!
encore
en1. 恥ずかしい
en2. よるのさんぽ

■追加公演<GIG OF LAZWARD PIANO -青い旗- Limited Edition!>

2023年4月2日(日) 兵庫・神戸チキンジョージ
open16:30 / start17:00
▼チケット
¥5,000 (税込)
※オールスタンディング (整理番号付)
※入場時ドリンク代別途必要
※3歳以下入場不可、4歳以上チケット必要
※声出しについてはライブ開催時の会場の規定に従います。そのため、緩和に伴い、声出し解禁公演となる可能性がございます。
一般発売:2023年3月18日(土)
【オフィシャル先行(プレリク)】
受付期間:3/6(月)12:00~3/12(日)23:59
https://l-tike.com/uedamarie/
(問)サウンドクリエーター 06-6357-4400


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