【異次元連載】トム・ハミルトンが語るエアロスミスの真実 Vol.4「名曲「テル・ミー」誕生秘話。僕の書いた曲をこのバンドがプレイし、スティーヴンが歌うこと。それが長年の夢のひとつでもあった」

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いよいよ発売を迎えた『ミュージック・フロム・アナザー・ディメンション!』。すでにエアロスミス・ファンの多くにとっては1日24時間をこのアルバムに浸りながら過ごすような日々が始まっているはずだが、今回はその4曲目に収録されている「テル・ミー」についてトム・ハミルトンに語ってもらおう。実はこの曲、トム自身の作詞/作曲によるもの。過去にも、広く認知されているところでいえば、あの「スウィート・エモーション」(1975年発表の『闇夜のヘヴィ・ロック』に収録)の作曲者としてクレジットされている彼だが、作詞/作曲というのはもちろん初ということになる。

「自分で1曲を丸々書くこと。それを目指しながら、あれこれ学んでいた時期があったんだ。でもそれは純粋に、このバンドに僕の曲をプレイしてもらうのが長年の夢のひとつだったからだよ。だからこそ今回、この曲をみんながプレイして、スティーヴンが歌うというのは僕にとってすごい経験だったんだ。僕自身、自分のアイデアを形にする程度になら自分で歌うこともできるし、それを独力でそれなりに発展させていくこともできる。だけど当然、スティーヴのようには歌えない。というか、彼のように歌える人間なんか、この世にまず居ないよね(笑)。だから、“僕の曲をスティーヴンが歌ったらどんな気分を味わえるんだろう?”とずっと思っていたんだ。もちろん、きっと素晴らしいヴォーカルを乗せてくれるに違いないと思っていたよ。これは、ここ数年の間に僕がずっと取り組んできた曲のひとつで、そのデモを耳にしたプロデューサーのジャック・ダグラスが、“それ、みんなでやってみたらどうだい?”と言ってきてね。それを切っ掛けにして、この曲が使われることになったんだ」

トムいわく、前述の「スウィート・エモーション」や、同様に『闇夜のヘヴィ・ロック』に収録されていた「ソルティおじさん」も、かつて同じような経緯からレコーディングされることになったのだという。そして改めてこの曲自体が生まれてきた背景にあるものを尋ねてみると、トムからは次のような回答が得られた。

「あるとき、アコースティック・ギターを弾いていてね。僕は、そこそこギターも弾けるんだ。難しいことはできないけど、アコースティックでコードを弾くのが大好きでね。ほとんどパーカッションのように扱うわけだよ。で、この曲の最初の3つのコードは、2本の指を固定しておいて、他の2本を動かすことによってまったく違うものになるところから出てきたもので……結局、当初はそれを弾くのが面白くなっていたんだと思う。しかも、そのコード感が気持ち良かっただけじゃなく、自分の耳にも頭にも訴えてきたんだ。それでさらにコードを探し続け、ブリッジのことも考え始め……そうして完成していったんだ。アレンジ自体はシンプルなものだけどね。僕がこれまでこのバンドに貢献してきた曲を聴いてみれば、いずれも非常にシンプルなパートの組み合わせでできあがっているのを理解してもらえるはずだ」

そうしたシンプルな作風を自身のスタイルと認めているトムではあるが、この曲が育っていく過程において、当初はそこに若干の揺らぎが生じていたことも認めている。

「ただ、そういう自分の作風についてわかってはいても、やっぱり当初は“これじゃシンプル過ぎるかな?もうちょっと複雑にしないと面白くないかな?”と思っていたのも事実さ。だけど時間を経過していくにつれて、肝心なのはそのシンプルさなんだってことを理解したんだよ。シンプルかつ強力なストラクチャーにして、そこに素敵なものをいろいろと加えていく。そうやって作ることが大事なんだ。クリスマスにはクリスマス・ツリーを飾るだろう?ツリーはそれだけでもツリーとして成立するものけど、そこに綺麗な飾りをつけていくことで素敵なものになる。曲についても同じことが言えるんだ。僕は昔からザ・バーズのあのジャカジャカした音の感じとか、1960年代後半から1970年代初めにかけてのフォーク・ロック・バンドのサウンドというのが好きでね。そういった僕の背景にあるものが、この曲の方向性を決めてくれたんだと思う。このサビのコード感には、ミステリアスで寂しげな響きがあるよね。自分でもそこには惹かれるんだ(笑)」

最後はやや自画自賛モードになっていたトムだが、この曲が今作における重要なピースのひとつになっていることは間違いないし、すでにアルバムをお聴きの皆さんはこの解釈にも深く頷いてくれることだろう。さて、次回はスティーヴン・タイラーとジョー・ペリーのコンビによる「アウト・ゴー・ザ・ライツ」について話してもらうことにする。お楽しみに!

取材/文:増田勇一

◆エアロスミス特設チャンネル「 【異次元連載】トム・ハミルトンが語るエアロスミスの真実」
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