「城南海」のよみかたVol.7「四季の移り変わり てくてく秋冬散歩」
師走に入り、外を歩くと、もみじやイチョウがきれいに色づいています。「せっかくだから、紅葉を見に行こう!」というわけで、今回は城さんが「初めて」という、いちょう並木で有名な明治神宮外苑に足を運びました。ちょっぴり雨が降ってきてしまいましたが、鮮やかな黄色がみごとです。そして、クリスマスの雰囲気に誘われるように、東京ミッドタウンへと移動。ツリーを眺めながら、城さんが「好きな季節」という12月の思い出、そして音楽についての最近感じていること、などを伺いました。
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自分の誕生日、クリスマス、年越し……12月は一番好きな季節
▲明治神宮外苑のいちょう並木。雨でも、多くの人が訪れていました。 |
城南海:冬の雰囲気に惹かれます。クリスマスのころが好きですね。自分の誕生日もお正月も、そのあたりにぎゅっとつまっているので。
――城さんのお誕生日は、クリスマスの翌日の12月26日ですね。でも日にちが近いと、誕生日だけ単独でお祝いしてもらうのは難しそう。
城南海:だいたいクリスマスと一緒にされます(笑)。サンタさんがいる、と思っていた時期は別でしたけれど。
――いつごろまで、サンタクロースはいると信じていましたか?
城南海:小学校6年生までいると思っていました。
――知っていたけれど、知らないふり?
城南海:本当にいると思っていました。ありえないプレゼントがあったりしたもので。例えば、朝起きたら、枕元にプレゼントのお財布が置かれていて、その中にマクドナルドで使えるドリンク券が入っていたんです。奄美大島にはマクドナルドがないんですよ。「奄美にないのに、なんでだろう?」と不思議でした。
――マクドナルドのドリンク券!それは不思議。
城南海:あと、奄美で手に入りにくいリカちゃん人形があって「それが欲しい」とクリスマスの前日玄関にサンタさん宛の手紙を置いたんです。そうしたら、手紙がなくなっていて、クリスマスの日の夜にピンポーンと玄関のチャイムが鳴って扉を開けたら、なぜかラジカセを持ったサンタさんがいて。「はい」ってプレゼントを渡され、それには私が書いた手紙が箱に貼ってあって、開けてみたらリカちゃん人形だったということもありました。まあ、あれは今思い返すと父だったのかな、とは思うんですけれど(笑)。他にも小学校3年生のときは、朝起きたら2階のベランダに大きな袋があって。開けたら1つのプレゼントではなくて、いろいろなおもちゃが入っていたこともあります。「お母さんでしょ?」と母に聞いたら「え? 知らない」と言われて。そういう不思議なプレゼントが続いていたので、「サンタクロースはいる」と信じていたんです。
▲東京ミッドタウンでは、赤く色づいたもみじを発見。 |
▲東京ミッドタウン内のサンタツリーの前でパシャリ。約1800体のサンタクロースを積み上げているそうです。 |
城南海:東京のように華やかなイルミネーションはないけれど、ツリーを飾ったり、家族で料理を食べたり、といったクリスマスの雰囲気は変わらないですね。でも奄美大島は、島内に教会が多いんです。カトリック教徒の方が多くて有名なのは長崎ですけれど…奄美も多いんですよ。
――そうだったのですね。
城南海:苦難の歴史があるから、心のよりどころだったのでしょうね。
――ちなみに、秋冬に歌ってみたい曲はありますか?
城南海:歌う時期は限定されるけれど、やっぱりクリスマスらしいを歌ってみたいですね。たとえばBoAさんの「メリクリ」のような。実は昨年「きよしこの夜」をグインヴァージョンで歌ったのですが、意外な感じに仕上がったんです。たぶんシマ唄って夏の感じが多いと思うんですけれど、実際にグインを入れて歌ってみて、合うなあと思いました。
奄美の言葉と標準語を融合させて、音を楽しむ曲にもチャレンジしたいです
――今、シマ唄のお話が出てきましたが、シマ唄に出てくる奄美の言葉(島口)を聞くと、意味は分からなくても、その優しい響きがとても心地よく感じます。
城南海:以前、奄美は昔の日本の言葉が残っているとお話しましたが、方言の中で7割は平家の言葉のようです。平家の人が奄美に来たときに、その言葉を残していったので、シマ唄も古(いにしえ)の高貴な言葉なんですよね。だからシマ唄の言葉は、美しいなと感じるんじゃないかと思います。
――奄美の言葉で詞を書いてみよう、と思うことはありますか?
城南海:私の3枚目のシングル「白い月」の間奏のところに奄美の言葉が入っていますが、曲をいただいた時点では、詞は入っていなかったんです。「ここに奄美の言葉を入れたい」と思ったのですが、自分の知識だけでは限界があるので、父にも相談して一緒に考え、いろいろな言葉の案を出しました。そして最初は「これ」とは決めないで、口ずさみながらレコーディングをしていったのが、間奏部分なんです。
――いろいろな言葉を持っていると、表現の幅がより広がりますね。「この感情を伝えたいとき、標準語よりも、奄美の言葉の方が伝わる」とか。
城南海:そうですね。ただ、その一方で、普段は歌い手として歌の内容を伝えることを重視していますが、シマの言葉をいっぱい入れて、あえて意味は分からないように歌うのもおもしろいんじゃないか、と最近は考えているんですよ。
――歌詞カードを見て、初めて意味を知る形ですね。
城南海:そうですね。意味の前に、まず音の響きそのものを楽しんでもらえるような。
――もともと、城さんは音楽を聴くとき、詞とメロディのどちらに重点を置いていたのでしょうか?
▲散策のあとは、カフェでほっと一息。 |
――メロディと詞。両方大切ですけれど、どちらに比重を置くのかは、そのときどきによって変わるのですね。
城南海:メロディだけの意識から、詞を大切にする今の場所へ来て。その後、またメロディ重視の曲をやるとなると、今までの場所に「戻る」のではなく、新しいなにかが見えてくるのではないかと思っています。
人の心に届く歌を歌うためには、まず届けたい「想い」が大切
――武部聡志さんにインタビューをさせていただいた際、「城さんだったら、Aメロの8小節が10回繰り返されておしまい、といった曲でもいいかもしれない。今のJ-POPのフォーマットに乗らない音楽を目指していってほしい」と仰っていたのが心に残ったんです。
城南海:そういえば、私のデビュー曲の「アイツムギ」は1回Bメロが入っているだけで、あとは全部Aメロなんです。
――言われてみれば!4枚目シングルの「ルナ・レガーロ~月からの贈り物~」のように声を張るところはないですけれど、その分、人に聴かせることが難しそうです。
城南海:「ルナ・レガーロ」は、私の出せる声を全部入れて作っていただいた曲なので。武部さんに「ここ、出るよね?」って言われながら。結構スパルタでした(笑)。
――武部さんは『兆し』について、「うまさとかではなく、もっと彼女の内面的なもの、気持ちが伝わればいいな、と思った」と仰っていました。
城南海:私も今までの経験の中で、歌のうまさよりも、ニュアンスや感情が表れている方が人の心を打つ、と思います。私は、わりとまじめな性格だから(笑)、うまく唄おうとしてしまいがちですが、音程が合っていなくても、声がうわずっていても、そこに感情があったらかならず聴いてくださる方の心に響くし、そちらの方が大切。だから今後の課題としては、上手に歌うことより、いかに想いをのせていくか、だと思っています。自分では「うまく歌えた」と思っても、録音したものを聴き直すと、全然心に響かなかったりするんですよ。うまく歌うという、今まで大切にしてきたことはもちろん、今まで以上に想いを込める事をもっといろいろ試みたいです。
――テクニックは大切だけれど、想いの方が勝る、と。
城南海:最初に受けたオーディションで『童神』を歌ったんですけれど、全然思ったように歌えなかった。シマ唄以外の歌の経験もほとんどないし、絶対受からないと思ったんです。でも幸運なことに合格することができて。小さいころからスクールに通っていたり、すでにキャリアのある方たちがたくさんいる中で、「どうして自分が受かったんだろう?」と不思議だったんです。そのとき、上手なことも重要だけれど、それ以外に大切なものがあるんだと感じました。
――城さんの歌を聴くと、何のフィルターもかからず、まっすぐに送られてくる気がするんです。
城南海:おそらく、想いが先にあるからではないでしょうか。シマ唄との出会いもそうで、お兄ちゃんがやっているシマ唄を聴いて「好きだな」と思ったのがきっかけでした。「この素敵なシマ唄をみんなに聴いてもらいたいな」と思って唄い始めて、後から歌詞も唄い方も覚えたので。まず、「伝えたい」という想いから始まっているんですよね。
――唄(歌)を始めたきっかけが、今、大切にしている「想いを届ける」ことだったのですね。
城南海:はい。レコーディングでも、ピッチが合っていなくても、感情が出ている、というテイクがあえて選ばれることもあるんです。私としては「うまく歌った方を使ってください」と思うんだけれど(笑)、後で聴いたら、「あ、こっちの方がいいな」と納得することが多いんです。とくに、ライヴはそういうことが盛りだくさんあります。
――ライヴでは、ライブでは、直接、その瞬間瞬間の想いが込められた城さんの音に出会えますから、それがとてもワクワクするんですよね。次回のライヴも楽しみにしています。
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