サエキけんぞう流、ザ・ローリング・ストーンズ映画の楽しみ方

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全国の映画館スタッフが選ぶスクリーンで最も輝いた映画、それが<映画館大賞>。5月22日~29日に行なわれたベストセレクション作品のトークイベント&特集上映には、各界から様々な豪華ゲストが参加し、映画をめぐるトークが繰り広げられた。なかでも5月28日(木)の『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』の上映にはサエキけんぞうが登場、軽妙なトークでストーンズ映画の魅力を解説、場内を沸かせてくれた。

「ストーンズにおいて、ミックは部長、キースが副部長ですね(笑)」

多くのストーンズファンが駆けつけた会場に登場したサエキけんぞうは、「今日は、事情聴取されている犯人みたいな気分ですね。余計なことは言えないですね。言葉には気をつけないと」と言いながらも歯切れの良いトークでストーンズ映画の魅力について語り始めた。

◆映画『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』予告編
◆映画『シャイン・ア・ライト』インタヴュー

「『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』というのは、ストーンズのライヴ映画としては4、5作目になるわけですよ。この映画ができたと聞いたとき、このアルバムは良い/悪いと考えることができるような普通のストーンズファンの人は、誰しもがまた映画化したのかと、これ以上作ってどうするんだという思いに駆られたと思うんですよ。だから、これ以上何ができるのかと思う訳です。」

しかし、ここからがサエキけんぞうの真骨頂。ボブ・クリアマウンテンの名前を出してきた。いわずと知れたロックサウンドを瑞々しくクリアに正当にプッシュしてきた重鎮だ。デジタルリバーブに代表される80年代の最新鋭ミックスサウンドの印象も強いが、オーソドックスなロック・サウンドの基準値を大きく底上げしたエンジニアだ。

「でも、観たらすごいんですよ!サウンドがね、すごいんです!ミキシングがいいんですよ!初期の頃の代表作の映画化といえば『ギミー・シェルター』があるんですが。それが本当に素晴らしいんだけど、その映画の中で観客が一人死んでしまっているという。平和が終わってしまったと。ストーンズは70年代においてディープなものを作ってしまったんですよ。そこで、いったい何が残っているのか?とするとサウンドなんですね。ボブ・クリアマウンテンという方がいて、80年代にABBAとか名作をミックスしていたすごい人なんですが、その人が最近、ストーンズのミキシングをしているんです。4枚組DVDも出ていて、4枚組となると7時間もあるんですが。全部いいんですよ。何がいいかっていうと全部ボブがやっているんですよ。ミックが発声練習をやっている映像があったりね。そういうものがあって~シャイン・ア・ライトは満を持しての映画となるわけです。見応えがあるし、ミックスの遊びが入っているんですよ。他の音をぐっと下げてギターの変な音を出したりというところが、5~6ヵ所はあるんです。そんなミックスは普通ないんですよ!DVDでこれから観る人もいるでしょうが、やはり劇場のアンビエンスにはかなわない訳で。ぜひ劇場でドカンと観て欲しい映画です。でっかいスクリーンで。マーティン・スコセッシのカメラワークを大スクリーンで楽しんでほしいです」

この映画にスコセッシ監督が頻繁に登場することについて、言及が続く。

「愛すべきおやじかなあと思います。かわいらしいおやじですよね。セットリストが直前まで届かないというシーンが冒頭にありますよね、セットリストがそんな直前に来るなんてありえないという意見もあるんですが、僕は、映画の通りだと思いますよ。どうも流れはその日に決めている形跡があるんです。もちろん、最初と最後と大枠の曲順は決まってるんだと思うんですが、数曲入れ替えるだけでも、雰囲気は大きく変わりますからね。ミックは常にマーケティングを行なっていると思うんです。その時のコンディションによってどうすべきか決めていると思いますね。それに本人たちは熟知していると思いますが、リハーサル・シーンも観ると、入念にリハーサルを行なっていて、しかも冷静に行なっている。曲数もとても多いんですよ。

そんなストーンズに対し、ミックは神様かという問いが飛ぶ。

「神様というか…ミックは部長ですね。キースが副部長(場内爆笑)。ロン・ウッドはぱしりだ。そこに、顧問というか微妙なところにチャーリーがいるんですね。チャーリーの言うことは無視できない。ストーンズは4人になってしまいましたからね。絶対にくつがえらない。昔ブライアンがいたときは複雑な関係だったと思うんですけど。いまだにブライアンがいたときは、どういう関係だったかがはっきり分からない。いろいろなボーナストラックとかの古い映像でそこをチェックすることも楽しみのひとつですね。」

いろんな貴重な映像が挿入されているのも『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』の面白みだ。

「中でも僕が注目しているのは70年代のミックの映像。30年後もロックはやっているかという質問に対して、「ロックをやっているだろう」って言ってるんですよ、ミックが! これはすごいですよね~。大体の人がロックは死んでいるとか、終わっているとか言ってるんですよね。そこまで続くなんて、当時は誰も思っていないわけですよ。みんなバンドもロックもなくなっていると思っていたと思うんです。こんなに太く長く続いているストーンズも今が一番すごんいんじゃないの、というくらい魅力がありますよ。このパフォーマンスはすごいや、と。僕の友人なんかも共通の意見で、この映画を観て、ミックを見直したと。ここまですごいのかと。至近距離で観るというのもあるけれど、歌が本当にすごいんですね。さらに僕が注目したのは、クリスティーナ・アギレラのお尻をね、ミックが、さりげなく触るんですよ。気付きました?パーンっとね、男らしく触るんですよ。勉強して頂きたいと。そこはひとつ見どころ。それとチャーリー・ワッツ。よれよれなんだけど、ライヴ中にカメラに向かってにこっと笑って「ぼろぼろだ。」というようなことを言う。その余裕ってなんなんだって。別撮りしてるならまだしも、ライヴ中ですからね。この人の底知れないすごみというか。この年になってからさらにすごくなっていると思いました。ストーンズは、再結成以来さらに演奏も日々うまくなっていますしね。今が一番良い状態かもしれないと思うくらいライヴも良くなっていますからね。」

そして、カメラワーク。

「~シャイン・ア・ライトはカメラワークがすごいですね。普段見られないような角度で観ることができるから、いいんです。何でこのような角度で撮れるの?こういう位置で撮れるの?みたいな。メンバーもカメラが邪魔でしょうがなかったはず。でも映画だからとあきらめているんですよ。大きい会場ではなく、小さいシアターを選んだということもポイントだと思いますよね。小さいシアターだとあっちからこっちから動かないといけないことがいっぱいある。そのいいプレイと表情をありえないアングルから撮っているということが、この映画の最高のポイントじゃないかと思います。」

音と映像の両方を隅々まで楽しむためには、まずは劇場へ向かった方がよさそうだ。全国の公開スケジュールをチェックして、大スクリーンで『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』を楽しんでいただきたい。やはり、ザ・ローリング・ストーンズは“神”なのである。

◆映画館大賞ウェブサイト
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