YAMAHA POCKETRAK CX特集

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プロの技:プロミュージシャンはこう使う


プロミュージシャンなら、POCKETRAK CXをどんなふうに使うのだろうか。今回は、GargoyleのKENTROとeversetのtatsuoによるアコースティック・ギター・デュオ“SIDE GOLD”に、実際にPOCKETRAK CXを使ったレコーディングを試してもらった。


難しいセッティングも必要なく2台のギターがくっきり録れる

完璧に調整できる入力レベル

まずは、小さなスタジオでアコースティック・ギターのデュオを録るのにもっとも一般的だと思われるセッティングでレコーディングをスタート。二人が並んで座り、マイクスタンドを使ってその正面1.5mほどの距離から狙った。さて、セッティングが決まったら最初にすべきこと、それは入力レベル(ゲイン)の調整だ。

ゲインの調整は、ギターを弾きながら、画面のレベルメーターやピークで点灯するLEDでレベルを確認して行なう。最大の音量のときにピークに達しない範囲で、なおかつできるだけレベルが高くなるようにするのがいい。“80段階もあるからぎりぎりまで詰められるし、メーターもあるのでわかりやすい(tatsuo)”“当たり前だけど左右のレベルがきちんと反応して、分離がいいこともわかる。小さいのにすごいですねぇ(KENTARO)”と二人は感心しながら、ほんの1分程度でレベル調整を完了。すぐにぴったりの設定をみつけられたようだ。

そして録った音を聴いてまた感心。“二人のギターの音の違いがよくわかるね(KENTARO)”“分離もいいし、いい音(tatsuo)”と、セッティングもレベル調整もそれほど慎重にならなくても、簡単にリアルないい音が録れたことに驚いていた。

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右チャンネルと左チャンネルで音を録り分ける

セッティングで変わるアコースティック・ギターの音色

楽器というのは、マイクとの距離によって録れる音色が違ってくるもの。そこで今度は、POCKETRAK CXをもっとギターに近づけて録ってみた。

まず試したのは、二人の間にPOCKETRAK CXを置き、左右のマイクが2本のギターそれぞれのサウンドホールを狙うように置くというセッティング。本体のマイクからギターまでの距離は50cm程度だ。これで録ったファイルを再生して聴いてみると、2本のギターがより分離して聴こえ、音の違いもさらに明確になった。また、高音がより歯切れよくなって、シャキッとした音で録れた。近づけると低音成分が増えるのでは、と予想していたのでちょっと意外だったが、これは“距離を近づけたので部屋鳴りの成分が少なくなったからでしょう(KENTARO)”ということらしい。

次に、できるだけギターぎりぎりまで寄ってみることにした。演奏するのはtatsuo一人だけ。そしてギターのサウンドホール直近、距離は10cm程度のところにPOCKETRAK CXを置いて録った。このセッティングではアタックがさらに明確になり、より生々しい音になった。面白かったのは、左右のチャンネルの音がかなり違って聴こえたこと。一方のチャンネルは硬い音、もう一方は太い音になっていたのだ。これは、左右のマイクがそれぞれサウンドホールと弦を弾く部分を狙うセッティングだったため、それぞれが違う音の鳴りを拾っていたからだ。KENTAROによると、“まさにアタックとサウンドホールそのものの音が録れている”のだそうだ。

プロのレコーディングの現場では、アコースティック・ギターを録るのに複数のマイクを使い、それぞれの音をミックスして仕上げることも多い。それに似たことをPOCKETRAK CXで手軽にできるのはとても面白い。また、セッティングを変えることで録れる音も違ってくるので、色々な方法で多彩な音を録れる。POCKETRAK CXが本格的なレコーディングにも使えることを、SIDE GOLDがきっちり証明してくれた。

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大音量のロックサウンドでも音割れしない

リミッターを効果的に使う

普段のレコーディングでは、レベルをきっちり合わせて録り、リミッターを使うことはないというSIDE GOLDの二人。しかし今回は、あえてリミッターをかけながらの録音にもトライしてもらった。

初めに、大音量のときに入力レベルがピークを超えてしまうようにゲインを設定して録音。次に、同じゲインの設定でリミッターをオンにして録音した。2つのファイルを聴き比べてみた結果は、ちょっと意外だった。リミッターをオフにすると歪んだりノイズが混じることを予想していたのだが、オンにした場合と同じくらい、かなりきれいに録れていたのだ。しかしさすがにプロの耳。SIDE GOLDの二人は微妙な違いを聴き分けていた。そして効果的な使い方も提案してくれた。

“リミッターをオンにすると、ぐっとレベルが下がるね。音色はコンプレッサーで圧縮したような感じで粒立ちがくっきりするから、大人数でコーラスを録るときなんかにコンプレッサー的に使うといいかもしれない(KENTARO)”

“オフでもあまり歪まないから、普通はそのままでも安心して使える。ただ、大音量が連続するような状況だと、リミッターをオンにしておいたほうがいいでしょう。たとえばロックのライヴを録るときとか(tatsuo)”

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1本のケーブルで2本ギターを録音

プロならではのアコギ録りのアイデア

POCKETRAK CXには、外部マイクとライン入力に対応した外部入力端子がある。プロミュージシャンならこれをどう使うのか。彼らはここでも面白いアイデアを披露してくれた。

そのアイデアとは、POCKETRAK CXとギターを直結してしまうこと。マイクやピックアップを内蔵している、いわゆるエレアコと呼ばれるギターなら、確かにライン入力を使って直結して録音できる。しかし彼らのアイデアの面白さはここからだ。なんと2本のギターを同時に接続して録音してしまおうというのだ。

彼らが使ったのは、一方(POCKETRAK CXの入力端子側)がステレオミニジャック、そしてもう一方の端(ギター側)が2つのフォーンジャックに分かれているケーブルだ。これでギター2本を同時に接続することができる。こうして直結すると、左チャンネルにKENTAROのギター、右チャンネルにtatsuoのギターというように、それぞれのギターが左右のチャンネルに独立して入ってくる。結果は予想通り、クリアで分離のよいライン録音ができた。

直結だから周囲のノイズもあまり気にならないし、もう一方のギターの音がカブることもない。後で編集をするときにも、それぞれのギターの音を独立して調整できる。2本のギターを同時に録るには、とても便利な方法だ。

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イコライザーで音を整えられる

EQは再生時に効力を発揮

POCKETRAK CXのEQは、録音、再生の両方で使える。今回は、初めから用意されている8つのプリセットと、自由に設定を変えられるUSERを試してもらった。

POCKETRAK CXならアコースティック・ギターはEQを使わなくても好みの音で録れるので、録音には使わないかもしれない、というのが二人に共通の感想だ。しかし、“エアコンの風の音が気になるときに低域を大幅にカットする、といった極端な使い方はアリ(KENTARO)。”“バンドなら一度録ってみて、全体の音を整えるために色々試すといいかも(tatsuo)。”また、再生に関しては、“デモを他人に聴かせるときとかにはいいですね。カッコよく聴こえるようにちょっとドンシャリにする、とか色々使えそう(tatsuo)”と、かなり好印象だったようだ。

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リハーサルならMP3での録音で十分に使える

長時間録りっぱなしならMP3が活躍

音質とファイルサイズを決めるのが録音モード。今回はCDと同じ音質の44.1kHzの非圧縮リニアPCMと、CDと同等とされる128kbpsのMP3、それに320kbpsのMP3の3つのモードで録音し、聴き比べてもらった。

違いがすぐにわかったのはリニアPCMと128kbpsのMP3。PCMのほうが細部まで輪郭がはっきりしているだけでなく、低域も太くパンチのある音だった。同じMP3でも、320kbpsになると、PCMに肉薄するほどの高音質。SIDE GOLDの二人も、これなら音楽の録音にも使えそうだという。

最後に、POCKETRAK CXのMP3とリニアPCMを、彼らならどう使い分けるかを訊いてみた。“楽器のレコーディングには、基本的にリニアPCMを使うと思います。でもMP3だと長時間録れるので(2GBのmicroSDに128kbpsで34時間以上)、リハの間ずっと回しておくというときにはMP3が便利ですね。リハならこの音質で十分だし(KENTARO)”“SEのための素材を録ってくるのにはMP3がいいですね。あとメンバー間でデモをメールで受け渡すのにもMP3が使えそう(tatsuo)”

普段は非圧縮のリニアPCMのデータしか使わないというSIDE GOLDの二人だが、POCKETRAK CXを手にしたらMP3も活用できそうだという印象を持ったようだ。

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●SIDE GOLD

2001年、KENTAROのバースデイ・ライヴでのセッションがキッカケで結成。2006年、本格的に活動を始める。数回に及ぶライヴ、ストリートライヴ、自ら主催するイベント「EACH GARDEN」等を開催。2008年1月、ライヴ会場にて初の音源「cloud of dust/rain a forest」発売。2月「fitful breeze/bourbon time」、3月「typhoon/dead hours」をリリース。

オフィシャルサイト http://sidegold.com/

●KENTARO(Gargoyle) オフィシャルサイト http://firstcell.net/gargoyle/

●tatsuo(everset) オフィシャルサイト http://www.tappun.com/

SIDE GOLDによるデモ演奏

⇒大画面ムービーはこちら

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