【アルルカン主催<束の世界 2026>ボーカル対談 vol.4】暁 ×来夢「刺さるはずの人たち全員を漏れなく刺しに行きたい」

3月1日(日)に東京・EX THEATER ROPPONGIで開催されるアルルカン主催イベント<束の世界 -SONOSEKAI- 2026>。MUCC、キズ、DEZERT、甘い暴力を迎えて開催される本イベントは、実に4年ぶりの開催だ。
BARKSでは暁と各バンドのボーカルとの対談企画を実施してきたが、今回ついに最終回ということになる。暁にとっての最後の話し相手となるのはキズの来夢。この両者が縁浅からぬ関係にあることをすでに大半の読者がご存知だろうが、その関係性のあり方についてはまだ知られていない部分も多々あるのではないだろうか。共通項も相違点もたくさん持つ彼らの、リアルな言葉の応酬をお楽しみいただければ幸いだ。

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──今回の対談シリーズも4回目、最終回となります。暁さんの中でも3月1日に向けてのイメージがより明確になってきているんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか?
暁:そうですね。何だろう? 実際、自分にとって大事な人たちしか呼んでないんですけど、こうして改めてみんなと喋ってみると、その人がどうして自分にとって大事なのかが再確認できるようなところがあって。俺自身、すぐ目の前のことばかりに集中し過ぎてしまうところがあって、そのせいでいろいろと忘れがちになったりするんですけど、こうしてイベント当日を迎える前に、そういうことを自分の中で改めて確認できたのがすごく良かったなと思いますね。それによって多分、結果的にその1日を大事にできることに繋がりそうな気がするし。
──つまり、この対談連載企画の有意義さを実感できているということですね?
暁:そうですね。ギリギリの段階で無茶な提案をして良かったです(笑)。
──「その人が自分にとって大切な理由がわかる」なんて、ほとんど愛の告白のようにも聞こえますけど(笑)、来夢さん、そんな言葉を聞いてどう思います?
来夢:いや、まさに俺もそう思いました。なので今、改めて「そういえば<束の世界>って誰が出るんだっけ?」と思って出演ラインナップを確認してみたんですけど、なんか言ってることは理解できましたね(笑)。
暁:あははは!
──大切に思われているという自覚はあるんですか?
来夢:どうなんでしょう?(笑)でも、自分としてもアルルカンのことはずっと大切な仲間だと思ってます。キズの始動の頃からずっと一緒にいてくれてたし、その前のバンド時代からもそうだし。常に身近なところに暁がいてくれたわけで、やっぱり自分にとっても大切な存在になってきますよね。
──いわゆる同期ではないかもしれませんが、お互い説明の要らない関係というか。
来夢:そうですね。お互い同じような時代に生まれて、似たような環境にいて、同じようなことをやってきて。そういう存在はあまり多くはないので。
暁:俺としても来夢のことは、前のバンドの時から「歌、上手えな」と思っていて。今、「愛の告白」みたいな話が出ましたけど、俺、普段はあんまりそういうことを言わないんですよ。相手のことをどう思ってるかを、伝えようとしないというか。
来夢:確かに暁がそういうことを言ってるところは想像つかないな。
暁:そうだよね? ただ、さすがに前のバンド時代から知ってるだけに付き合いも長いから……。実はさっき、「これまで来夢とどんなやり取りしてたっけ?」と思ってLINEの履歴をずっと見てたんですよ。
来夢:あ、残ってんの?
暁:全部残ってる(笑)。それを見てみると、俺は結構ちょくちょく来夢にいろいろと相談していて。PCのこととか歌のこととか、いろんなことを質問してるんですよね。
来夢:なんか俺には新しいことについて訊いてくるよね?
暁:確かに。だけど逆に、来夢からの相談ってそんなにないよなと思って。
来夢:俺、あんまり誰かに相談するってことをしないからな。
暁:ちょこっとしたのはあるんだけどね。カミコベ(<COMING KOBE>:アルルカンは2023年、キズは2024年に出演)のセットリストの件とか。で、そうやって履歴をぶわーっと見返してたら、自分で思ってたよりも頻繁に連絡取り合ってたことに気付かされて、しかも俺の返信内容が自分でも「なんかえらく素直やな」と思えるぐらい素直だったりすることにちょっと驚いたりもして。
来夢:わざわざ連絡する時って、かならず意味というか目的があるわけですよ。それがあるからこそ何か答えが欲しいと思ってるわけで。だからこそ答えがシンプルに、素直になるんじゃないかな。
暁:なるほどね。確かにそうかも。
来夢:お互いが連絡する時って、どちらかが何かに困ってる時とか、何か助けて欲しいことがある時とかだと思うんですよ。何も悩みがない時に連絡することって、あんまりないんじゃないかな。
暁:そうだよね。で、そういうところがお互いの関係を特別なものにしてるというか、なるべくして大切な存在になったというか、そういうところがあるんじゃないかなと思う。

──なるほど。お2人の関係が「仲が良くて日頃からよくつるんでいる」というのとはちょっと違った、信頼関係に基づいたものだということがよくわかります。
来夢:なんかそういうふうに言葉で説明するとすごく堅苦しい感じになりますけど、決してそういうわけでもないんです。俺はスマホを変えちゃったんでLINEの履歴があまり残ってなくて、いちばん古いのが2024年のやつなんですけど、その時もいきなり「『反撃』やろうよ!」の一文だけでしたから(笑)。それで「何歌う?」「めっちゃ悩む」みたいなやり取りをして。
暁:そうそう、そんなこともあったね。で、さっきも言ったように俺はあんまり自分の気持ちを伝えるようなことを言わないんですけど……。
来夢:あんまりそういうこと言われても気持ち悪いけど(笑)。
暁:だけど一緒に<九命>というツアーを廻った時、来夢はアルルカンのことを家族だと言ってくれてたりとか。ただ、そう言われた時に俺自身はあんまりピンときてなかったというか、その言葉が自分の中に収まりのいい感じに落ち着いてなかったんですね。ただ、その後、MUCCとツーマンをやった時に逹瑯さんも同じようなことを言ってくれて、その時になんか、ふんわりと理解できた気がして、そのことを来夢に連絡してみたり……。多分その履歴、今の来夢の新しいスマホには残ってないと思うんだけど(笑)。
来夢:なんかあったね、そういう話。でも俺、本当にいろんな意味で家族だと思っていて。家族って自分では選べないものだし、同じように、ライバルというのも選べるものじゃないしね。
暁:確かにそうだね
来夢:同じ時代に、同じものを見て、同じ感動をしていなかったら、おそらく今こうして同じところには居ないはずだと思うんですよ。そういう意味では、本当の家族よりも家族みたいな関係にあるんじゃないかと思ってる部分も自分にはあるし。
──こうして同じ時代に同じ場所に居るということは、偶然のようでありながらそこに必然性があるということですね?
来夢:はい。しかもそこで重要なのは、お互い今の時代に流行ってないジャンルの音楽をやってるってことですよね。そうなってくるともう、運命としか思えない。
暁:流行ってないからね、実際(笑)。もうホントに好きなやつしかやってないよね。
来夢:まさしく。だからすっかり居なくなったよね、「俺、ヴィジュアル系バンドやってるけど、実はヴィジュアル系あんまり好きじゃねえんだよな」みたいなやつが。昔はめっちゃいたんですよ。ただ単にそういうスタンスであることがカッコいいと思ってたというだけだったのかもしれないけど、そういうことを言うやつがめっちゃ居た。だけど最近はもうヴィジュアル系が根っから好きな人たちしか残ってない気がする、先輩も後輩も。ビジネスでこれをやってる人たちが居ないというか。
──長い時間をかけながらふるいにかけられてきた人たちだけがその領域に残っている、ということですね?
来夢:そうですね。それこそコロナ禍なんかも経てきたことで……。
暁:うん。淘汰されてきたところはあるよね。たとえば今はヒップホップとかがすごく流行っていて、おそらく「あんなふうになりたい」の対象がそっちだったりすると思うんですけど、おそらく本当に好きでヒップホップをやってきた人たちの中には、自分たちの世界にそういった雑味みたいなものが増えてきて困ってる人もいるだろうし。でも結局、全部そういうところがあるじゃないですか。それこそヴィジュアル系の先輩たちの中にも単純に「化粧すると客が入る」みたいな理由でそれを選んでた人たちは居ただろうし。べつにそれが悪いとか言いたいわけじゃないんですよ。結局みんなバンドで夢見たいし金稼ぎたいし、そういう願望があるからこそそれをやってきたわけで。
──だからそこに「成功できる法則」みたいなものがあれば、それに従おうとする気持ちもわからなくはない、ということでしょうか?
暁:そうならざるを得ないところってありますよね。
──だけどお2人は、これが心底好きでやっている。
来夢:こんな時代にこれをやってるということは、そういうことですよね(笑)。絶対に楽じゃないですからね。今の時代にバンドをやるなんて、修羅の道だと思ってますよ。
暁:あはは!
──もしかして今、アルバム制作が大変なことになっているからそう感じるという部分もあったりするんじゃないですか?
来夢:それもあります(笑)。ただ、それ以上にいちばん大きいのは、この時代にステージに立ち続けるってこと。しかも今流行ってるわけでもないこのジャンルでそれをやるっていうのは、すごく難しいことだと思います。
──今、このカテゴリーの音楽が流行っているわけじゃないのはわかります。ただ、逆に言うと、何が流行っているのかがわかりにくい状況でもあると思うんです。
暁:ああ、楽しみ方がすごく多様化してますよね。
来夢:流行りってものが見えにくくなってるところがありますよね。SNSなんかも日々いろんな情報に溢れてるので。しかもそこで目に入ってくる情報が、どれも数字を伴ったものになってるじゃないですか。だからSNSが普及してからは本当に流行ってるものが見えにくくなってきてるというか。俺はむしろ、今やオールドメディアと呼ばれてるものに広告を打っているようなものこそ本当の意味で流行ってるんだと思うんですよ。お金が使われているものというか。だけど今や広告予算をかけるところがみんな違ってたり、目に見えないところにそれを使っていたりするから、流行りが見えてこないというか。
──なんだかマーケティング会議みたいになってきましたが(笑)、今の時代、メインストリームがどこにあるのかが見えにくいところがありますよね。それに対してのカウンターの立場にあるものばかりがたくさん乱立しているようなところがあって。
来夢:確かに自分たちにとっての敵が何なのかが見えにくくなってきてると思います。いろんなものが溢れていて、「じゃあ何が売れてるのか?」と言われれば、昔はCD売り上げの数字だけで判断されていたのに、ダウンロード数とか再生回数とか、目に見えにくいところに全部数字が伴っていて。だから自分の知らないところで流行ってると言われても「それって本当に流行ってるのかな?」ということになってくるし。
暁:確かにわかりにくくなってきてる。だけど、なんていうか、敵がいたほうがわかりやすい気もするんだけど……どうなんだろうな。俺、来夢に言わせると「カメラが一個しかない」人間なんで(笑)。
来夢:あはは! いや、2~3個には増えてきてると思う。こういう話をしていても、わかりにくいことをさらにわかりにくくする天才なんですよ、暁は(笑)。マジでわかんなくなる。
暁:要するに主観が強過ぎて、自分の言葉しか喋れないというか、会話しようとしてるのに自分の話しかできないみたいな傾向が強いんです、俺の場合。そこにも重なってくるんですけど、なんか流行りものとかを見ていても、そこに引っ張られ過ぎないというか。「それ、カッコいいな」とか「面白いな」とか思うには思うんですけど、自分にとって都合のいい受け止め方しかしないようなところがあって。それこそSNSで一気に知られるようになったのも、アルルカン始動からさほど経ってない時期からのことだったので、オーバーグラウンドとかメインストリームと言われてるものに対する怒りとか反発心みたいなものが、あんまり自分の初期衝動の部分には必要なかったというか。その後に今みたいな状況になってきたんで、なんかかつての憧れを抱いたまんま、なおかつこの混乱した状況にも、そんなにも……
──惑わされずに済んでいる、と?
暁:そうですね。たとえばここ1年くらいでTikTokをやるようになってるんですけど、それについても流行りに乗るためとかじゃなく、ごく自然に「あ、やってみよう」という感じで始めていて。そういうものについても俺はわりと都合のいい距離感で生きてこられた気がしますね。

──今の発言を聞いていて思いました。敵を作らない言い方ができているな、と。
暁:あ、そうなのかな(笑)。でも確かにあんまりいないかもしれないですね、具体的な敵というのは。空気感とかについて違和感とか気持ち悪さを感じることはあるんですけど、特定の人とかに対してそこまで強く感じることはなくて。たとえば自分の親友とか身近な人とかがそういうことで困っているとか、そういう問題にまではまだ直面していないから、社会に対する怒りみたいなものもそこまで強くはないし。来夢の場合はこれまでの人生の中で具体的にそういう対象が見えるタイミングもあったんじゃないかと思うけど、俺の場合は正直な答え方をしても敵を作らずに済んでるかもしれない。これから先どうなっていくかはわかんないですけど(笑)。
来夢:なんか今の受け答えを聞いて「暁、変わったな」と思いました(笑)。さっき「会話してるのに、自分の話しかできない」とか言ってたじゃないですか。でもなんか、俺からすると、いつも俺ではない誰かと話してる感じだったんです。もしかしたら自分の中の何かと話してるような感覚だったのかな。しかもそれで会話が成立しちゃってたから、その中で質問してる自分は何もわかってなくて「はあ?」みたいな感じになっちゃっていた。だから今の回答を聞いて驚いたんです。今みたいに収まりのいい回答ができる人間だとは思ってなかったので(笑)。なんか今の暁は生きやすそうで、すごく羨ましいです(笑)。
──褒めているようにも、そうじゃないようにも聞こえますが(笑)。
来夢:いや、褒めてますよ、間違いなく。
暁:なんか面白え(笑)。
来夢:昔に比べると今、本当に生きやすそう。もっと生きづらそうにしてる印象があったからね、以前は。
暁:確かにそれはあったかもしれない。
来夢:暁は黒板にセットリストを書くんですけど、もう明日死ぬんじゃないかっていうような顔をして書いてるんですよ。あれを書いてる時に話しかけたりすると、暁がセットリストにすべての気持ちを向けていて、俺への回答に心がないのがわかるんです。
暁:あははは!
来夢:あのセットリストにはすごく念がこもってると思う(笑)。今もあんなふうに書いてるのかどうかわかんないけど、本当にその様子がすごくて、みんなに見せてあげたいくらい。というか、あの暁をみんな一度見たほうがいい(笑)。
──是非いつか、隠し撮りをお願いします(笑)。
来夢:でもホント、遺書でも書いてるかのような感じなんですよ、雰囲気としては。
──暁さんはそれを自覚しているんでしょうか?
暁:半分くらい(笑)。
来夢:同じ文字を何度も書き直してるんですよ、怖い顔して(笑)。でもなんか、綺麗に書きたいとかそういうことでもなさそうだし。
暁:うん。なんか収まりの悪さみたいなのが気になるというか。
来夢:そういう暁をずっと見てきたので、今の彼は生きやすそうで羨ましいな、と思うわけです(笑)。
──暁さんとしては、ここ何年かの間に物事の考え方、捉え方が変わったとか、そういう変化に繋がるような切っ掛けがあったとか、何か身におぼえがあるんでしょうか?
暁:なんだろう……? やっぱり、4人体制になったことで「しっかりしよう」みたいな意識が強くなったことが大きいんじゃないかな、と。なんか以前の俺には、自分と他人の間に線を上手く引けないところがあって、どこまでを自分が引き受けるべきなのか、どこまでを他の誰かに任せていいものなのかというのがわからなかったりするところがあったんです。あとは、たとえば同じような言葉がたくさん並んでる時に、他の人から見れば「右から二番目の言葉がいちばんわかりやすくて伝わりやすい」とわかるくらいの違いがあるのに、自分の目にはそれがわからなくて、どの言葉も同じ温度、同じ色で並んでいるように見えたり……。そういう時間がすごく長かったんです。ただ、バンドが4人になって「これからもっと頑張らなくちゃ」ということになった時に、自分で線を引くことについても頑張ってみるようになったというか。自分が思っていることに実際挑戦して、それに失敗して、ということを繰り返していくうちに自然にその線を引けるようになってきたところがあって。だから他の誰かに何かを伝えようとする時に、互換性のある言葉を選べるようになったというか、意思の疎通が以前よりもスムーズになってきたところがあるんです。そういったところでの生きにくさを感じるタイミングが少なくなってきたような気がしますね、確かに。
──「頑張らなくちゃ」という意識の高まりと同時に、自分ですべて抱え込まなくてもいいというか、まわりと負担を分け合えるようにもなったのではないかと想像します。どうでしょうか?
暁:ああ、どうなんだろう? まわりに助けてもらってる部分は絶対あると思うんですけど、俺にはやっぱり「自分をさらけ出して、本気でぶつかってみた結果、何かが変わった」という成功体験のほうが多いので、誰かに頼るというよりは自分の限界量を上げていく方向に舵を切ったほうがいいのかな、と自分では思ってるかな。ただ、自分でやれることを思いっきりやってみた結果、それでもできないことを人に頼んでいるわけなので、もしかするとそれはイコールなのかもしれないです。
──それこそ暁さん自身のビジョンを、より明確に他のメンバーたちやまわりの人たちに伝えなければならなくなってきたわけですよね。そこでおのずと必要とされる的確な言葉選びが以前よりもスムーズにできるようになっている、ということなのかもしれません。
暁:確かにスムーズに喋れるようになってるのかもしれない。日本語がちょっと上手になってきたというか。
来夢:ちょっとだけな(笑)。
暁:日本語、難しいですから(笑)。
──言葉もそうですけど、バンドを運営していくことの難しさも感じます。来夢さんは、そうした困難さを感じることはありますか?
来夢:いや、むしろ困難さしか感じてないです(笑)。うちの場合、メンバーそれぞれよく知ってるし、それぞれの関係性とかも見えるんですよ。暁も多分、それが見えてると思うんだけど、そういう意味ではキズとアルルカンは結構真逆だと思う。
暁:ああ、そうなのかな。
来夢:俺たち4人はめちゃくちゃ仲良くて、もちろんアルルカンも仲がいいんだけど、その仲の良さの種類がちょっと違うのかな。しかも自分の場合、生きづらさにまた磨きをかけてきたようなところがあって、なおかつ歳をとってきたせいなのか、最近はちょっと老害になりつつあるというか(笑)。もっと若い頃はただ異端のつもりでいたのが、今では物事の考え方が老害っぽくなりつつあるのを実感してるんです。やっぱり他とは違うことをずっと考えてきた人間だし、自分が「違う」と思ったことにはかならず自分なりの理由があるし、なおかつ俺の場合は孤立した場所に自分なりの答えを求めてしまう習性があるんで、すごく老害化しつつあるのを感じてるんです。
──まさかこの場で老害宣言が飛び出すとは。もしもここにMUCCの逹瑯さんでも居たら「まだ早えだろ!」とか言われそうですが(笑)。
暁:ははははは!
来夢:確かに。でも老害になるための準備段階は着々と進んでますね。
──今、逹瑯さんの名前を出したところで思い出したんですが、かなり前に取材した際に、彼の口から中間管理職という言葉が出てきたことがありました。つまり、こんなに長くやってきた自分たちには後輩もたくさんいるが、まだまだ上には先輩もたくさんいて、その板挟みのような立ち位置というのは結構大変だ、というような話だったんですが、来夢さんが言うところの老害というのもそれに近いところがあるんじゃないですか?
来夢:いや、そんなふうにシーンの全体像のことを考えたことはなかったんで、それはちょっと違うと思うんですけど。
暁:なんか来夢の場合は個人的な話っぽいよね?
来夢:うん。なんか自分が思うことを言う時に、一旦止めるようにはなったかな。自分たちの間では通用するはずだと思ってる言葉が、若い子たちにはそのまま通じなかったりするわけですよ。そんな感じで後輩のバンドとかと向き合っていると、俺も老害になりつつあるんだろうなとか、すごく感じます。
──今の来夢さんの発言の中にも出てきましたけど「若い子たち」という言葉が出てきたら、それはすでに何かの兆候ではあるのかもしれませんね。
来夢:ああ、そうかもしれない(笑)。
──老害云々の話はさておき(笑)、今日こうして話を聞いていて感じるのは、背景とかキャリア、環境といったものが近くて、共通項も多々あるお2人の間には、やはりどこか決定的に違うところがあるということ。だからお互いに対しての鏡にもなるし反面教師にもなり、同じものを見ていてもきっと受け止め方が違う。だからこそ暁さんは来夢さんに意見を聞きたくなったりするんじゃないですか?
来夢:俺はそこのところはよくわからないけど、暁とはまったく逆のことを思っちゃったりするんですよ。意見が違うからこそ喧嘩にもならないというか。「俺はこう思うんだけど」という話になった時に、その話があまりにも違いすぎて議論にもならない。そこで「こういう人間もいるのか。暁ってすごいな!」とはならないんですよ。多分、お互いにそんなふうに思ってるはずなんです。ただ、あまりにも違うから逆に気を遣わないし。普通、ちょっと意見の合わない人間が居ると、いくらかムカついたりするもんじゃないですか。一緒に居るのが辛くなったりとか。だけど同じことに対してお互いまったく違うことを思っていても、解釈が離れ過ぎてるからムカつくこともない。
暁:確かにそういうところ、ありますね。でも結局、自分にないものを持ってるからこそ来夢には惹かれるし、自分と似てるところがあるかどうかはどうでもいいかな、と思ってるんです。カッコ良ければそれでいいというか。そういう点で来夢についてはずっとリスペクトできてるんだけど、俺自身はあんまり来夢の頭の中を汲み取れてなかった時期のほうが長かったと思うんですね、前々からずっと喋ってきてたくせに。
来夢:そこについては俺も同じだけどね。
暁:でもなんか、こないだlynch.の東京ガーデンシアター公演があった時に、2人でちょっとご飯食べてから一緒に観に行ったんですけど、その時にちょっとだけ頭の中を見せてもらえた気がして。その時、それこそ老害の話とかも出てきてたんですけど、俺はべつに老害なら老害で行けばいいと思ってるんですね。べつにそのスタンスを押し通せとかそういうことじゃなく、普通に自分の思ったとおりにやって、それが駄目だった時には……ちゃんと迫害されればそれでいいと思う(笑)。実はこれ、DEZERTの千秋にも訊いたんですけど、武道館って唯一無二の特別な場所みたいに言われてはいても、べつにそんなことないはずだと思うんですよ。だけどやっぱり何かしら印象に残る場所のひとつではあるはずだと思う。ただ、俺はまだそういう景色を見ていないので、それをやった前後での違いとか、今だからこそ見えてるもの、考えてることとかってあるのかな、みたいなことを考えさせられるんです。まあ今はとにかくアルバム制作が大変だろうと思うんだけど、それが大変なのはきっと何かを越えようとしてるからだろうと思うんです。実際、ちょくちょく曲を聴かせてもらってたりもするんだけど、常に何かを超えようとしてるってことを、毎回感じさせられるし。だから最近、来夢の頭の中はどうなってるんだろうな、みたいな興味はありますね。こないだ話した時にそれがちょっとわかった気がしたんで、もうちょっと深いところまで知りたいところではありますね。
来夢:今までこれほど長いこと付き合いがあって、初めてわかったの?(笑)
暁:うん、なんとなくだけど(笑)。あの時はプライベートなことまで含めて初めて聞けたことも多かったから。
来夢:俺はいつも、ちゃんと話してきたつもりだったんだけど。
──面白いもんですね。ところで今も話に出た武道館について。確かにひとつのアイコンとして象徴的な場所であり、実際、特別な場所ではあるはずですが、過度に神格化されているような部分も確かにあるかもしれません。そこですでにあの場所を体験している来夢さんからすると、実際にライブをやる以前とやってみた後とでは、武道館という場所の捉え方が違ってきていたりするものなんでしょうか?
来夢:いや、俺たちは武道館やってないです。実際あのステージに立ちながら、一度も「武道館!」って言わなかったことをすごく後悔してるんです。それゆえなのか、ただデカいところでライブをやったというだけで、武道館でやったという意識がマジでなくて。だからこそもう一回やりたいんですよ。そこで「武道館!」って言いたいです。
暁:武道館を特別視したくなかったから、意識したくなかったから言わなかったんだよね?
来夢:そう。だけどまったく特別だと思わずにやったもんだから、本当に武道館でやったという気がしないんですよ。せっかくあの場所で撮ったライブ映像を見ても、一度も「武道館!」って口にしてないわけで。
暁:俺、絶対言おう!(笑)自分でもDEZERTやキズ、それから最近ではWaiveが武道館でやるのを観てきて、なんか毎回、いろんな想像を勝手に膨らませてきたけど、やっぱり「武道館!」って絶対言おうと思う。
来夢:それはホントにそうしたほうがいい(笑)。
──アルルカンとしての武道館公演ももちろん目標のひとつだろうと思いますが、たとえばこの『束の世界』というイベントを大きくしていきたいという願望もあるでしょうし、いつかそれを武道館でやれたりしたら素敵ですよね。
暁:わーっ、それはやりてえなあ。今回の<束の世界>については、キズも含めて、自分たちのそばに居てくれる存在だったり、背中を見せてくれる存在だったり、なんかもう、ホントにそこに居てくれるだけでパワーをもらえるようなバンドばっかりで。俺はこれまで、みんなからすごくいろいろもらってきたという感覚でいるので、それをもらったままにしておきたくないんですね。今まではずっともらいっぱなしだったけど、やっぱりそれをこちらからも返したい。そういう気持ちが芽生えてきたのと時期を同じくして、バンドとしての体制が整ってきた気もしているので、そんなところをちょっと見て欲しいな、と。これまでもらってきたものをちゃんと栄養にして、今、こうして自分でカッコいいと思えることをやれるようになったアルルカンを他のバンドにも見せたいし、そのバンドのファンにも見せたいし。もちろん自分たちのファンのみんなにも見て欲しい。とりあえず今回は、そういう気持ちで臨もうとしてるんです。
──今の自分たちを目撃・体感して欲しい人たちを集めたイベント、という言い方もできるわけですね。
暁:そうですね。しかもありがたいことに、すでにチケットがソールドアウトになってるんですけど、そこは本当に出てくれるバンドたちのパワーによるところがめちゃくちゃ大きいと思うので、自分たちももっと力をつけていきたい。やっぱりどのバンドも、これまでにアルルカンに対して「ああ、いいな!」と思う瞬間が少なからずあったからこそ出てくれるんだと思うし、そういう瞬間をこれからもっと作れるようでありたいし。何もむずかしく考え過ぎずに、肩を並べて面白いことをやれるバンド同士でありたいので、まずは今回のステージをちゃんと観てもらって、さらにその先のことを普通に想像できる自分でありたいと思いますね。
来夢:こういうカッコいいこと、ちゃんと言えるんですよ、暁って(笑)。
暁:どういうこと!?(笑)
来夢:前にもテレビか何かの取材の時に、暁は結構ちゃんとしたこと言っていて。イベントの趣旨とかをまとめるようなことを言えてるんです。俺はわりとそういうのが苦手なんで、結果的にニヤニヤして喋ってるだけだったんですけど(笑)。まあこのイベントについては「呼んでもらえて嬉しいな」とか「逹瑯さんも一緒で嬉しいな」とか、素直にそういうのもありますけど、やっぱりバンドがどんどん少なくなってきてるじゃないですか。だからいいイベントを作っていこうと思っても自分たちだけじゃできない。そういうところでの難しさも感じさせられますよね。しかもキズの場合は全然イベントをやらないんですけど、アルルカンはちゃんと舵を切っていろんなバンドを集めたりする動きができるんですよ。そういう部分でもすごいと思うし、リスペクトできるんですよね。実際、俺も過去に何回かイベントをやったことはあるんですけど、あんまり自分が思ったようにはいかないことばかりで、それもあって結構ワンマンばかりやってきたところがあるんです。そういったバンドのスタンスのあり方も実はお互い全然違うのかなって、今、気付きました。
──なるほど。このイベントを通じてお互いの“今”ばかりではなく、これから先の広がりや可能性が垣間見られるものになることも楽しみにしています。まず、アルルカンは3月にアルバムリリースが控えていますもんね?
暁:はい、3月25日に出ます。
──その新作アルバムの世界観を匂わせるような何かを、3月1日のステージにも期待して良さそうですか?
暁:うわー、どうだろう?(笑)こういう時にどう言うべきかがまだわかんないな(笑)。でも、カッコいいバンドを集めればそれでイベントとして成立するのかといえば、そうじゃないと思うんですよ。やっぱりアルルカンがやるからには、このメンツが揃うからには、というのが何かしらあるはずだって期待されてるはずだし、そこで「これからこういうことを目指していきます」というものを見せたいという気持ちがあるので、今みんなが期待してくれているアルルカンの姿と、これからのアルルカンとして期待して欲しい姿の両方を見せたいなと思いますね。
来夢:逆に俺は、このイベントに際してはそういうことをまったく考えてなくて。いつだって、「今できる自分」っていうものしか見せられないし、未来のことはあんまり約束できないタイプの人間なんですよね。なので、その日の自分がどういうものを見せられるかはわからないですけど、こうして共感をおぼえてるバンドに「大切な存在」としてイベントに呼んでもらえるというのはやっぱり嬉しいことなので、当然のように気合は入っちゃいますよね。自分たちが呼んでもらえる理由、意味みたいなものについてもすごく感じるようになりましたし、そこはやっぱりお互いの関係性ってものを大切にしてるつもりなんで、そういったところをこのイベントを通じて感じてもらえたらいいな、と思います。
暁:これまで俺は、もっと自分たちのことを見つけてもらおうとする時に、「1人でも多くの人に観て欲しい」みたいなことを言ってきたんですけど、自分でそう言っておきながら「なんかちょっとボヤけてるな」と思っていたところがあったんですね。で、今回の<束の世界>で何をしたいかっていうと、やっぱり同じ時代に近くにいる人たち、同じようなことをしている人たちにしっかりと刺さることをやることなんです。だから「1人でも多く」というのは、言葉としてちょっと距離感が遠すぎたかな、と思うんです。俺としては誰かれ構わずというよりは、この表現が刺さるはずの人たち全員を漏れなく刺しに行きたいわけで。そう考えると、やっぱりこの日に一緒に居てくれる人たちにはわかってもらえないと、自分のことをカッコいいと思えないな、と。だから近いところに近い温度感で居てくれる人たちには、絶対に何かを渡して帰りたいという気持ちがありますね。
──当日会場に集まるのは、いわゆるグレーゾーンの人たちではなくコア層ということになるはずです。しかもその層がここまで大きくなってきたという実感があるからこそ、そういった発言が出るんだろうなと思います。だから当日は、イベントとしての盛り上がりはもちろん、それ以上に濃い何かを感じられることを期待しています。
暁:はい。おまかせください!(笑)
取材・文◎増田勇一
<アルルカン Presents「束の世界-SONOSEKAI-2026」>
3月1日(日) EX THEATER ROPPONGI
開場 14:30 / 開演 15:30
・出演者
アルルカン / MUCC / キズ / DEZERT / 甘い暴力
・チケット
SOLD OUT







