【インタビュー】BabyKingdom、新アトラクション「ハピネのかくれんぼ」リリース「魔法が詰まった空間をみんなに届けます」

2026年に結成10周年を迎えるBabyKingdomが、3月4日に新アトラクション「ハピネのかくれんぼ」をリリースした。
本作は“日常の中に潜む幸せ=happinessを自分自身の目で見つけ出していこう”というテーマで制作。魔法や妖精が棲むおとぎ話のような世界を、バンドサウンドとケルト音楽のようなサウンドメイクで表現した多幸感あふれる一曲に仕上がった。10周年を迎える感謝も込められているという本作について、今回もメンバーにたっぷり語ってもらった。
──BabyKingdomがこのたび提示する新アトラクションはシングル「ハピネのかくれんぼ」は、森の妖精・ハピネを主人公に据えた“Forest Fantasia”の世界を描いたものになるそうですね。音楽的にもストーリー的にも、またあらたな領域へと踏み出すことになった経緯をまずは教えてください。
志記(G):ここまでの流れを少しおさらいさせていただきますと、2024年春に出したアルバム『FUNNY∞CIRCUS』でひとつの区切りがついたところから、メキシコ・死者の日をテーマにしたシングル「CALAVERAS/サルサルーサ」、陰陽師を描いたシングル「SEIMEI」、千夜一夜物語やアラビアンな音楽をモチーフとしたシングル「ALPHA来夜/ヒラケゴマ」と続いてきて、このところのシングルはどちらかというとマイナーチューニングの楽曲が続いていたんですね。
──確かに、少し陰のあるマイナーコード独特の響きを活かしたカッコいい曲が多かったかもしれません。
志記:やっぱり、ヴィジュアル系という枠組みの中だとマイナーチューニングの曲ってそういうカッコ良さを出しやすいところがあるんですよ。でも、僕の個人的な見解としてはBabyKingdomの大きな強みって、むしろメジャーチューンの曲をこのバンドらしくやれるところにあるとも思っているので、今回のシングルについてはとにかくメジャーな曲調のものをシングルしたいという気持ちがまず前提としてありました。とはいっても、メジャー調の曲を作るって凄く難しいんですよ。
──それはどのような点が難しいのでしょうか。
志記:僕がメジャー調の曲を作ると、聴きやすいJ-POPで終わってしまうことが多いんです。それもそれで普通に良いんですけど、BabyKingdomのシングルA面としてそれを出すのは“ちょっと違う”と僕はずっと思っていて、だとしたら「BabyKingdomのシングルA面にふさわしいメジャーチューンってどういうものなんやろ?」っていうことを、『FUNNY∞CIRCUS』以降ずっと探し続けながらリリースを重ねてきていたんです。それで、今回の場合はまず曲調よりもイメージとしてお菓子の家というモチーフの方を先に思いついて、そこから曲を作っていくというアプローチをとっていくことになりました。
──お菓子の家=グリム童話の『ヘンゼルとグレーテル』を想起されたのですね。
志記:そうです、そうです。まさに今回の表題曲「ハピネのかくれんぼ」はそのイメージを思い浮かべながらデモを作っていって、途中で咲吾に相談してみた時に「もうちょっと大きい枠組みにしていったらどうやろう?」っていうアドバイスをもらったんですね。そこから“Forest Fantasia”の方向へとさらに進んでいくことになりました。音の面ではいわゆるケルティックな要素を取り入れていくことになったんですが、そこはもともとのお菓子のお家っていうテーマとも僕の中ではつながってます。
──そのつながりについても、解説をしていただけると嬉しいです。
志記:現代のポップスって、基本的に元をたどっていくと西洋音楽のクラシカルなところから発生したものになるじゃないですか。ケルト音楽の場合は古代ケルト人の生み出した民族音楽が元になっているで、成り立ちとか歴史はかなり独特ではあるんです。ただ、使う楽器自体はけっこう似てたりするんですね。
──現在でもケルト文化が伝承されているのはアイルランド、スコットランド、ウェールズ、フランスのブルターニュ地方などのようですが、そもそもケルト人発祥の地とされているのは今でいう南ドイツやオーストリアだそうなので、西洋音楽とつながっていても何らおかしくはありません。
志記:ただし、ケルト音楽には少人数編成で奏でるという大きな特徴があるんですよ。その雰囲気は今回のMVでも表現させていただいているんですが、森の中だったり、小屋の中で少人数で集まり、みんなでひとつのメインメロディを一緒に弾いて楽しむというのが古典的なスタイルだったらしいんです。オーケストラなどで響かせる壮大な西洋音楽とは真逆の、小さな音楽として育っていったのがケルト音楽だったということなんです。
──やはり民族音楽としての血が濃いのですね。のちに北米へと伝わっていった時に、カントリーやブルーグラスやフォークソングという、いずれも小さな音楽として成立するかたちに変化していったのもうなずけるお話です。
志記:クラシックも最初は室内楽から始まったとはいえ、ひとつのメロディに対して何重構造にもハモりがあったり、対位法でいろんなメロディを重ねて複雑にしながら、よりスケールの大きなものへと進化していきましたからね。ひとつのメロディをみんなで楽しむケルト音楽のスタイルであれば、BabyKingdomにもうまく取り込むことが出来るんやないかと思ったんですよ。
──ちなみに、咲吾さんが「ハピネのかくれんぼ」を『ヘンゼルとグレーテル』のイメージだけにとどまらせることなく、さらに拡大解釈をしていきたかったのは何故ですか。
咲吾(Vo):『ヘンゼルとグレーテル』に出てくるお菓子の家も森の中にあるので、志記から出て来た根本的なところでのイメージは変えてないんですけど、そこから物語を作っていくには広げられる世界観がちょっと狭いなと感じた自分がいたんですよね。曲や詞に限らずメンバー4人の衣装やMVを作っていくうえでも、もっと世界観を広くした方が面白い聴かせ方、見せ方をすることが出来るだろうなと考えたんです。あと、今回3曲を同時に出すのでその中の1曲で僕は『ピーター・パン』もやりたかったんですよ。
──カップリングに「ネバーランド」という曲がありますね。
咲吾:はい。これも前から曲にしたかったテーマだったんですが、結局『ピーター・パン』もそれはそれでシングル1枚分の中で表現するには「ちょっと狭いな」と自分でも感じていまして(笑)。それで、今回は志記のやりたかったことと、僕のやりたかったことがいずれもファンタジー要素を含んでいることを踏まえつつ、両方のアトクラクションを置いたひとつのエリア=Forest Fantasiaとして展開していくことにしました。
──前回シングルの「ALPHA来夜/ヒラケゴマ」ではアラビアンコーストエリアが新設されましたけれど、BabyKingdomのMUSIC THEME PARKは拡大の一途ですね(笑)。
咲吾:森の中の物語を描くっていうのは、ほんとにBabyKingdomにとって初めてのことなんですよ。今回はもう楽曲や衣装やMVから木々の香りを漂わせたいな、って思いながら作っていきましたね。いろんな面で新しい試みをしてます。
──では、ここで恒例の配役発表をお願いしてもよろしいでしょうか。ヴィジュアル面では赤と緑を基調にされているようですが、今回もなかなか斬新なスタイリングですよね。
咲吾:僕は鹿の角が生えた人外といいますか、昔は人間の貴族だったんですけど、森の中に棲みついていくうちに妖精になったという経歴を持ってます。森の中の案内役でもありますね。で、志記はこの見た目どおり狩人です。虎丸さんは森の泉を護っている神様で性別はないのかな。
虎丸(Dr):いや、この感じは女神でしょ(笑)。
──泉に斧を落としてしまった場合、スーッと水底から現われそうな雰囲気です。
虎丸:「あなたが落としたのはどちらの斧ですか?」っていうやつですね(笑)。
──では、このもにょさんのお姿は…?
咲吾:もにょは“狼に食べられたもにょ”ですね。狼の上顎と下顎で挟まれてます(笑)。
──相変わらずの完璧な配役ですね(笑)。なお、今思うと昨年末のツアーファイナルで志記さんは「僕たちBabyKingdomは来年で10周年になるんですが、10年目で何をしたいかなと思ったら、こうして続けて来られた喜びと幸せをみなさまに届けて一緒に幸せな舞台を作っていきたいと思いました。というわけで、来年の春は凄くハッピーな日々になります!」とMCで語られていました。『ハピネのかくれんぼ』とは、そのスタンスを明確に具現化したものということなのでしょうね。
志記:その気持ちはとても強かったです。
咲吾: この「ハピネのかくれんぼ」っていうタイトルも、要はHappinessっていう言葉から生まれたものですからね。10年目を迎えていく中でここからさらなる幸せを見つけに行くことも大事なんですけど、それ以前にメンバーがいて、ばぶりーずって呼ばせてもらってるファンのみんながいて、支えてくれてるスタッフがいて、こうしてバンドを続けていられるこの状況とか、自分たちの足元や身の回りにある幸せにまずはちゃんと気付いて、それに対しての感謝をすることを大切にしたいなと思ったんですよ。だから、10周年イヤーの1発目にリリースするのはこれにしたかったんです。
──では、ここからは表題曲「ハピネのかくれんぼ」のディティールについてさらにうかがって参りましょう。この楽曲はケルト音楽を下敷きにしたとのことですが、完成形へと仕上げていく際に重視されたのはどのようなことでしたか。
咲吾:Bメロとサビの最後でボーカルに関してはちょっとシャッフル調になるんですけども、意識していたのは森の中の音楽隊みたいなイメージですね。志記が言うように、メジャー調であるところも大事にしました。明るいメロディーをみんなで一緒に楽しく口ずさめるような曲にしたかったんです。
──リズムを構築されていくうえで心がけられたのはどのようなことでしたか。
志記: そこも実は10周年というキーワードにつながるんですけど、最初の方に入っているマーチングっぽいリズムは2018年に出した「TOY&MAGIC」をセルフオマージュして入れました。あれはおもちゃの兵隊さんをコンセプトにした時にやった手法だったんですよ。あと、イントロのズッタズッタっていうリズムは2017年に出した「ライドンザ・ビーチ」で使ったリズムだったりもするんで、今回は敢えて昔やったことがあることをいろいろ組み合わせてリズムを構築してます。当時やったことを今のBabyKingdomとしてやるならどうなるんかな、というところに挑戦してみたんです。
──虎丸さんは過去の要素を含んだこのリズムと向き合っていった時に、何か感じられたことはありましたか。
虎丸:なんか不思議でしたよ。正直、昔のフレーズを叩いてるっていう感覚は一切なかったです。純粋に、新しい曲としてしっかり構築されたものを叩いているっていう感覚でした。オマージュはオマージュなんですけど、そこまでわかりやすくはないですからね。「ほんまにこれ、言わんかったらわからんでしょ!」っていうタイプのセルフオマージュやなって思いました。
──ケルティックなニュアンスを持つ曲であるため、いわゆるロックドラム的な色合いを打ち出す曲ではないという点も考慮されたわけですよね。
虎丸:いやほんまそうなんですよ。だから、ライブでこれをどうしようかな?っていうところは今ちょうど考えてるところなんです。自分的にこういう雰囲気の曲はあんまりやって来てないですし、普段やったら大体どんな曲でも「どうメタルなドラムにしたろうかな」って考えるんですが、今回ばかりはメタルにしたらあかんなと思いながらやってました。ある意味、ちょっと未知の世界ではありましたね。そして、ポップな音楽って難しいんやなってあらためて感じました。今回の3曲はその部分でどれも共通してます。
──もにょさんの場合、この「ハピネのかくれんぼ」についてはベーシストとしてどのように捉えていくことになられましたか。
もにょ(B):またいつも通りにボヤいちゃますが、これも難しかったです(苦笑)。この曲は譜面が志記さんから来た時点で「こういう感じでやるよ」と説明は聞いていて、ドラムが普段よりも一定のリズムを刻んでいる感じになっている分、対比を出すために「ベースで変化をつけるよ」という謎のリクエストを受けてたんですね。結果的にこの曲ではあんまりわかりやすいかたちではないものの、個人的にはベーシストとしてだいぶ進化することが出来たんじゃないかと感じてます。自分の成長を感じられる1曲になりました。
──とても洗練されたベースラインを弾きこなしていらっしゃる印象です。
もにょ:この1年とか2年くらいはずっとベースの精度だったり洗練性という部分に目を向けてきたので、そこを自分なりに集大成的なかたちで音として表現することが出来たのが「ハピネのかくれんぼ」だと思います。というのも、僕はもともとマイナー調のウォーキングベースが得意なんですよ。そんな自分がこの久しぶりのポップスA面曲で、軽やかさとかポップスならではのリズム感を出すことが出来たことに達成感を感じてるんです。
──志記さんにとって、今回「ハピネのかくれんぼ」でのギタリストとしての役割はいかなるものでしたか。
志記:これはコンポーザーとギタリストがせめぎ合ってる立場ならではのことやと思うんですけど、この曲で最もこだわったのはケルトチックな雰囲気は醸し出しつつも、プレイヤーとしては現代音楽の真ん中をいきたいなと思ってました。そのために音数は出来るだけ減らしたんですよ。というのは、今ってスピーカーで音を聴く機会は少ないじゃないですか。スマホにイヤフォンをつなぐとか、パソコンの小さなスピーカーを通して聴くとか、そういう状況がきっと多いですよね。そうなってくると、エレキギターを左右に振ったり、真ん中にに3本まとめて壮大に入れてしまったりすると、全体のバランスを崩しかねないんですよね。だから、今回はあくまでワンギターでどこまで戦えるのか?ということを意識しました。
──いさぎよさが必要だったわけですね。
志記:そういうことなんです。イントロにはフィドルとマンドリンにアイリッシュフルートが入ってますけど、もしそこに対して盛り盛りのギターサウンドを入れてしまうと、全部の良さが消えてしまうんですよ。他をディスるつもりはないんですが、よくバンドにフルオケを入れましたっていうタイプの曲があるじゃないですか。僕はあれ、とても難しいことだなと思ってるんです。何故ならエレキギターという楽器が根本的にフルオケ的な存在で、いわゆるファーストヴァイオリン、セカンドヴァイオリン、ヴィオラ、チェロまでをカバー出来るものなので、そこに対してオーケストラも入れると全員で殺し合うみたいな状況になりがちなんですよね。だから、そういう事態をなるべく排除したくて今回はギターをひとつのフレーズにまとめてそこに魂を込めました。
咲吾:2番のBメロなんてファ○マがかくれんぼしてるしな(笑)。
志記:なんか森とか緑のイメージが強い曲やったんで、なんか面白い遊びが出来ひんかなと思いファ○マの入店音をさらっと入れてみたんですよ(笑)。
──途中で聴こえてくる地味タッピングとも呼べそうな美しいフレーズも活きていますし、それらは音を絞り込んだからこその効果を生んでいるのですね。
志記:サビも普通だったらそこで一番バーン!と強い音を出すんでしょうけど、それはわざとやってないんです。サビでもギターはコードを弾かず、リードとしてアプローチしてます。真ん中にベースがいて、右にはギターがいて、左の空いてるところにはファーストとセカンドのヴィオラを入れて、そのうえでステレオでピアノを入れることにより、壮大すぎないケルト音楽のニュアンスを作っていきました。
──あっさりした薄味とはまた違う、滋味深いけれどすっきりした音になっていますね。
志記:細かい音作りについては、エンジニアさんが凄腕の人なのでその方の意見も取り入れさせていただきました。ぶっちゃけ、今回のレコーディングではギターの録りに最もお金を使いましたね(笑)。最近はどのアーティストも家で録るっていうのがほとんどやと思いますけど、凄く良いスタジオを押さえていただいてギターを録るためのマイクも計6本使いましたから。
──それは非常に贅沢ですねぇ。
志記:エンジニアさんにも「こんなん、なかなかないで!」って言われました(笑)。でも、それこそケルト音楽の原点と言えるミニマルな“小屋の中でやってる感”を出すにはギターアンプの目の前に置いてあるマイクの音じゃなくて、空間の鳴りそのものを録った音で勝負したかったんです。
──いわゆるアンビエントの部分を大事にされたのですね。
志記: それです、アンビエントのためにマイクを4本立てました。空気の振動、アナログの響きをとにかく活かしたかったんですよ。
──ギターといえば、MVではだいぶヴィンテージっぽいギターを使ってらっしゃるようですが、レコーディングでもあのギターを使われたのですか?
志記:MVで使ってるのはヴィンテージではないんですよ。僕が二十歳の時に買って以来ずっと愛しすぎているギターで、使い込みすぎてるせいか色がちょっと褪せてヴィンテージっぽい見た目になっちゃってるだけなんです(笑)。そして、レコーディングではそれよりもさらに古い僕が初めて買ったギターを使いました。
──レコーディングでその古いギターを使われた理由は何だったのでしょう。
志記:めちゃくちゃオタッキーな話になりますけど大丈夫ですか?
──興味があるのでお願いします。
志記:いつも僕が使ってるのは24フレットのロングスケールギターなんですが、レコーディングで使ったのは22フレットのミディアムスケールギターで、FENDERのストラトキャスターなんですよ。普段24フレットの方を使ってるのは、BabyKingdomの曲がそれを必要とするものがいろいろあるからなんですけどね。だけど、僕にとってギターの音っていうのはやっぱり22フレットの音が主軸なので、どうにか24フレットを22フレットに近付けようという試みもしたんですが、ギターテックさんいわく「24じゃ22の音を100%出すことは出来ないんだよ」と教えていただいたので、それ以来22フレットは家で弾いてたんです。でも、今回の「ハピネのかくれんぼ」に関しては“細くて強い音”がどうしても必要だったんで22フレットのFENDERストラトを使ったわけです。なんか細かい話ですみませんでした(笑)。
──いえいえ。大変勉強になりました、ありがとうございます。
志記:狙った帯域をピンポイントで凝縮した音じゃないと、この曲はダメだったんですよね。自分の求める音と、BabyKingdomとして出していこうとする音をどう共存させていくかは僕にとって永遠の課題やなとあらためて感じました。
──そういえば、MVでは咲吾さんもギターを弾いていらっしゃいますよね。
咲吾:あの部分はレコーディングでは志記が弾いてます。今後のライブでもタイバンとかでセッティングの時間に限りがある時は弾けないと思うんですけど、その日のライブによっては僕が弾くこともあるかもしれないです。
──「ハピネのかくれんぼ」では咲吾さんのボーカリゼーションや発声が、この曲のためのものとしてカスタマイズされている印象を受けたのですが、これは意図的に歌われたと解釈してよろしいのでしょうか。
咲吾:自分の中ではちょっとずつ発声方法が変わっていってるんですけど、一応「現段階だとこうです」というのがリアルなところですね。今回は新しい声の響かせ方をちょっと出来るようになったので、それをレコーディングでやってみたかったんです。時間をかけてでもこだわりたかったので、今回は自宅でじっくり取り組みました。だから、もし今までの楽曲とは発声が違って聴こえるんだとしたら僕としては嬉しいですね。優しさのあるウォームな歌い方を大切にしたんですが、そのあたりはカップリングの「FILMING」の方でさらに顕著に出た気もします。
──今作での咲吾さんの歌は、幼児にも伝わるような心温まるものになっていますね。
咲吾:ジブリに寄せてるんですよ。「ハピネのかくれんぼ」の2番Aメロなんて、コーラスワークとか完全にポニョですし(笑)。こどもっぽい響きの声を真ん中に持ってきて、その奥の下に大人の声を入れているので“藤岡藤巻と大橋のぞみ”的になってるんです。
──くわえて、この「ハピネのかくれんぼ」は歌詞もまるで絵本のようです。
咲吾:これは「僕はみんなの近くにいるハピネという名の幸せだよ」っていう歌なんです。第三者として「君の足元に幸せがあるよ」みたいに告げるのではなく「僕が幸せの妖精そのものだよ」ってわかりやすく伝えてます。『SEIMEI』の時みたいに古語を使ったりとか、難しいことは全くしてません(笑)。
──そのわかりやすさは、思うに「ハピネのかくれんぼ」をエバーグリーンな歌へと昇華させているのではないでしょうか。もし何十年か先に聴いたとしても、優しい空気感をたたえる普遍性を持った曲としてみずみずしく味わえるはずです。
咲吾:エバーグリーンっていうことでいうと、僕たちが2023年に出した『PENGUIN DIVE』っていう曲と近いところがあるような気もします。あれもわかりやすくてポップな曲だったんですけど、メッセージ性がちゃんとあって年月が経てば経つほどそこに込めた意味が深いものになって来てるので。いずれ「ハピネのかくれんぼ」も、そういう立ち位置の曲になっていってくれればいいなと思ってます。
──さて。ここからは先ほど『ピーター・パン』をモチーフにしたとのお話が出ていました「ネバーランド」についても、制作エピソードをうかがわせてください。
咲吾:これは志記の持ってきた幾つかの原曲の中で、僕が第一印象として冒険物語みたいな前向きな力強さを感じた曲だったんですよ。そして、最初はそこまでファンタジー感はなかったんですが、僕がネバーランドという言葉を入れて書いた歌詞を送ったら、ファンタジーになって返ってきました(笑)。
志記:「ネバーランド」っていうからには、ネバーランドっぽいワクワク感とファンタジー感が必要ですから。あとは「ハピネのかくれんぼ」との対比構造を意識したところもあって、ちょっとポップに聞こえるシンセサウンドとかを足しつつ、コード使いとかギターリフはあくまでシンプルにまとめてます。
虎丸:僕としては「ネバーランド」の方がA面でもいいのでは?っていうくらい、この曲がとってもお気に入りです。これはとにかく元気に楽しく叩きました。
もにょ:ベースも今回の3曲の中では「ネバーランド」がダントツで簡単でした。あと、〈ようこそネバーランド〉っていうフレーズがサビ頭にしっかりハマってるところが僕は凄く好きですね。
咲吾: 原作だとピーター・パンは「ずっと子供のままでいてね」って言って最後に去っていくんですけど、ずっと子供のままでいることは出来ないのが現実ではあるんですよね。でも、やっぱりBabyKingdomはMUSIC THEME PARKですから。夢を見続けたり、新しい夢を見つけたり、そういう意味では「いつまでも子供でいようよ」というメッセージをここでは伝えていくようにしました。
──大人になるにつれ夢を持っていても挫折してしまったり、いつしか夢見ることを忘れてしまったりすることも出てくるのかもしれませんが、それでも大なり小なり夢はあった方が人生は彩り豊かなものになりますものね。
咲吾:夢って壮大なものじゃなくて全然いいと思うんですよ。たとえば「来週、あのお店のハンバーグを食べよう」みたいなことだってひとつの立派な夢ですからね。
──BabyKingdomの次回ライブに参加しよう、とか?
志記:それを夢のひとつやと思ってもらえるなら、僕らとしては光栄ですよ。夢って次の目標みたいなものでもありますからね。次に何をしたいのか、というのが自分にとっての夢っていう考え方はアリだと思います。
──とおっしゃる志記さんは、このたび3曲目の「FILMING」も作られているそうですけれど、この曲はどのような生い立ちを持っているのでしょうか。
志記:僕、1年1回は必ず独り旅をするって決めてるんですよ。その期間は志記というキャラクターを捨てて大西君に戻るんですけど、旅先で行ったバーでエルヴィス・プレスリーの曲をやっていたんですけど、ロカビリーとかロックンロールをもし今のBabyKingdomがやったらどうなるのかな?っていうところから、ブロードウェイ的な捉え方だと面白いことがやれそうだなと思い、帰ってからすぐに作ったのが「FILMING」です。
──志記というキャラクターを捨てているはずの旅行だというのに、なんだかんだでBabyKingdomのことを考えてしまう志記さんはワーカホリックですね(笑)。
志記:まぁでも、1曲ちゃんと出来たのでよしとします(苦笑)。
咲吾:これは志記が送ってきた曲を聴いた瞬間、僕もまさにブロードウェイだなって感じたんですよ。ブラスやピアノも入っていてゴージャスだなぁって。
虎丸:なんか、雰囲気に酔える曲やなぁって思います。ドラムもそこを崩さないように叩いていくようにしましたね。
もにょ:音の面では僕の特徴というか、真骨頂な部分を活かせた曲でした。最近は先輩ベーシストさんに会うと、みなさん僕のことを「ジャズテイストのものを笑顔で弾く人」みたいな印象を持ってくださっていて「ヴィジュアル系にはそうそういないタイプのベーシストだね」っていうことも言っていただけるんですが、そういう自分の持ち味を思い切り出せる曲を志記さんが作ってくれたので嬉しかったです。あと、これもまた歌詞が良いんですよ。〈キザなセリフなんて言えないけれど カメラが回ってなくても愛する役です〉だなんて、それこそめっちゃキザやん!最高!!と思いました(笑)。そこが好き過ぎてもう何回聴いたことか。もにょさんイチオシです!
咲吾:1対1のラブソングではあるんですけども、そこにブロードウェイとか映画のイメージを重ねていくことで、毎日がハイライトになるような人生を過ごしていこうよっていう前向きなメッセージをこの歌詞には込めました。
──もにょさんが感激されていたこの歌詞中で描かれている男の子は、俗に言うスパダリ的な存在なのでしょうね。
咲吾:スパダリ?
志記:スーパーダーリンってことですね。
──日本人男性の多くはシャイで愛情表現も遠回しになりがちですけれど、女子からすればここまでストレートに愛を伝えてくれる男性はスパダリにほかなりませんよ。
咲吾:まぁ、でもそこが歌の特権じゃないかなと思うんですよね。言えないことを歌にするっていうことが出来るので。
──いずれにしても、今回の3曲は幸せをたくさんもらえるアトラクションばかりでとても楽しいです。と同時に、次のツアー<spring oneman tour『FOREST
FANTASIA』>がどのような場になっていくのかという点でも期待が高まります。
咲吾:笑顔でポップにというのはBabyKingdomの神髄だと思うので、今度のツアーではそこを軸にしながらみんなと幸せな空間を作っていきたいですね。
虎丸:全体的に『ハピネのかくれんぼ』は今までと若干カラーの違う曲が並んだ作品やから、きっとこの3曲が入ってくるとライブの場面転換っていうのをしやすくなると思いますね。見せ方とか聴かせ方の可能性も拡がっていくような気がします。
もにょ: やり方としては「ハピネのかくれんぼ」でセルフオマージュした「TOY&MAGIC」を久しぶりにセットリストに入れたりとか、新曲たちとテイストの近い曲を並べたりとか、そういうことも出来そうなんですよね。今までとは違う、今までになかったような特別で幸せな空間を作っていけるように頑張りたいです。
志記:ライブの場ってある意味ネバーランドやしな。あんな大声出して、拳あげて、頭振ってなんて仮にそのへんの道端でやったらもう大変ですよ(笑)。〈魔法はあるよ〉っていう歌詞のとおり、魔法が詰まった空間をみんなに届けます。
──しかも、そのツアーが終わってもBabyKingdomの10周年を記念したお祝いの日々はまだまだ続いていくわけですので。これからの展開も気になります。
咲吾:7月26日には10周年当日を迎えるので、そこに向けてもまた新しいアトラクションも用意してます。とにかく今年はバンドを愛する1年、その存在があることに感謝する1年にしていきたいですね。MUSIC THEME PARKは普遍的なものでずっとあるものなので、楽しくなりたいなと思ったら何時でも来てください。必ずみんなのことを幸せにします。そう思うと、BabyKingdomってみんなにとってのスパダリみたいな存在なのかもしれないですね(笑)。
取材・文◎杉江由紀
◼︎リリース情報
21stシングル「ハピネのかくれんぼ」
2026年3月4日(水) リリース
【初回限定盤 A type】 CD+DVD

品番:AMFD-1031 価格:¥1,980(税込)
[CD]
1. ハピネのかくれんぼ
2. ネバーランド
[DVD]
「ハピネのかくれんぼ」 MV&メイキング
【通常盤 B type】 CD

品番:AMFD-1032 価格:¥1,650(税込)
[CD]
1.ハピネのかくれんぼ
2.ネバーランド
3.FILMING
4.ハピネのかくれんぼ(inst)
5.ネバーランド(inst)
6.FILMING(inst)
【A/Bタイプ共通 封入特典】
初回プレスのみトレカ1枚ランダム封入(全8種の内)
◼︎ライブ情報
<winter oneman tour 『FOREST FANTASIA』>
3月4日(水) 渋谷 REX
3月14日(土) OSAKA MUSE
3月21日(土) 柏 PALOOZA
3月22日(日) mito LIGHT HOUSE
3月29日(日) 仙台 MACANA
4月4日(土) 札幌 Crazy Monkey
4月5日(日) 札幌 Crazy Monkey
4月11日(土) HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
4月12日(日) 新宿MARZ
4月19日(日) 名古屋 ell.FITS ALL
4月26日(日) 滋賀 U★STONE
4月29日(水祝) KYOTO MUSE
5月3日(日) 池袋 EDGE
5月5日(火祝) 西川口 Hearts
5月16日(土) 福岡LIVEHOUSE Queblick
5月17日(日) 福岡LIVEHOUSE Queblick
5月19日(火) 広島SECOND CRUTCH
5月27日(水) 渋谷ストリームホール ※ファイナル
<大西バースデーONEMAN LIVE 『大西とチートデイ 2026』>
5月22日(金) 心斎橋CLAPPER
<もにょバースデーONEMAN LIVE 『もにょとチートデイ 2026』>
5月23日(土) 神戸 太陽と虎
◼︎リリースイベント
3月7日(土) littleHEARTS.東京店
3月8日(日) イオンレイクタウンmor
3月15日(日) littleHEARTS.大阪店
3月20日(金) HMV大宮アルシェ
3月28日(土) タワーレコード仙台パルコ店
4月5日(日) タワーレコード札幌パルコ店
4月18日(土) 名古屋fiveStars
4月25日(土) Joshin日本橋店7階イベントホール
5月17日(日) ミュージックプラザ・インドウ







