【アルルカン主催<束の世界 2026>ボーカル対談 vol.2】暁 ×咲「お互いどっちかが動けなくなるまでよろしくお願いします」

2026.02.25 18:00

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3月1日(日)、東京・EX THEATER ROPPONGIにて4年ぶり2度目の開催となるアルルカン主催イベント<束の世界 -SONOSEKAI- 2026>が開催される。

本イベントにはMUCC、キズ、DEZERT、甘い暴力が出演。それぞれ、主催であるアルルカンと縁の深いバンドたちで、チケットがすでにソールドアウトしている。

イベント開催を前に、BARKSでは、暁と各バンドのボーカルとの対談企画を敢行。第2弾に登場するのは、甘い暴力・咲だ。生々しい感情を歌いながらも、クレバーな姿でシーンに着々と布石を残し続けている両者。出会いから最近のバンドの近況まで語ってもらった。

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──来たる3月1日にアルルカン主催<束の世界 -SONOSEKAI- 2026>がEX THEATER ROPPONGIにて行われますが、今思うと暁さんは年末に渋谷クアトロでのワンマンで「2026年はさらに野心を持って攻めに行く」とMCで話していらっしゃいました。あの言葉を踏まえますと、このたび4年ぶりで行われる<束の世界>とは、まさにアルルカンが“攻めの野心”をもって臨む大事な場所ということになるのでしょうか。

暁:そうですね、それは確かにあります。1回目(2021年11月14日@Zepp Haneda)の時は単に自分たちがイベントをやりたいっていう以外にも、当時のコロナ禍っていうものが影響してましたから。生活そのものには必要ないとされがちだった音楽とか、バンドっていうものをやっていくことに対して、どう開き直るかという姿勢を明確に表したい気持ちがあったし、ああいう状況下で「ここからどう希望を歌っていくのか」みたいなところがかなり大きかったんです。でも、そこからある程度の規制はありつつもライブが出来る日常が戻って大阪でやったとき(2022年8月27日<束の世界-SONOSEKAI- 2022>@なんばHatch)は、わりとフラットにやれたんですよ。そういう過去を経ての今回に関しては、やっぱりまず野心が先にあります。結果としてシーンの活性化につながっていけばいいなみたいなことを思ってはいますけど、順番としては野心の方がだいぶ先ですね。

──今回のイベントに参加されるのはアルルカン / MUCC / キズ / DEZERT / 甘い暴力の計5バンドとなります。咲さんはこのたびアルルカン側からのお声がけをいただいた際、どのような気持ちで受け止められることになりましたか。

咲:暁から「メシに行かんか」と去年の夏くらいに連絡が来て、珍しいなと思ったんですよね。最初は暁からなぜ誘われたのか、本題が何なのか、ただ飲みに行きたかっただけなのかがちょっとよくわからなくて。だけど、実際に会った時には暁からバンドに対する考えとか想いみたいなものについて「どう考えているの?」って、わりと率直に訊かれたんです。で、俺はこうこうこう思っている、音楽やライブっていうものに対してこう考えている、っていうの話したんですよ。そこからはバンドに対する考えとか想いみたいなものをふたりでいろいろと話し合ったりもしつつ、最終的に「咲がそれだけの情熱を持ってるんだったら一緒にやろうよ」って声かけてもらった感じでしたね。僕としてはもう、素直に嬉しかったです。ただ、何より暁には謝りたいことがあって……。

暁:いや、直接会ったときにも言ったけど全然その必要はないよ。

──咲さんが暁さんに謝りたいこと、というのは…?

咲:ドラム・啓の件です。2月15日のライブ(<甘い暴力 啓ちゃん卒業のプレゼンツ「はっぴぃぃぃぃ!!!!>@なんばHatch])を最後に脱退するんですけど、暁とゴハンを食べて<束の世界 -SONOSEKAI- 2026>への出演が決まった時点だと、まだそのことは決まっていなかったんですね。本当に隠してたわけではなかったんですが、こういう形になってしまったことが申し訳ないなと感じていて。それと同時に、とにかく3月1日のライブは誠意を持ってやらせてくださいっていう気持ちが僕の中に今あるんです。

暁:うん、大丈夫。そのことはほんとに気にしてないから。

──なお、これは今のお話の流れに対して少し水を差すような問いかけにはなってしまうのですが、先ほどの咲さんからの言葉を裏返すならば、もしや暁さんとしては咲さんとの会話を通してある種の確信が持てなかった場合、イベントに“誘っていなかったかもしれない”可能性もありえたことになりますか。

暁:では説明をさせていただきましょう。去年、僕は彼らのツアー(<甘い暴力 2025 春のプレゼンツツアー「堕天」>)が終わったタイミングで、「お疲れ」っていう意味で凄く軽い感じで咲を誘ったんですよ。今どんな心境だったり、どんなテンション感でバンドをやってるんやろう?みたいなことを知りたくて。っていうのが、それまで僕のイメージだと、咲や甘い暴力って“甘い暴力を大事にしたい”っていう気持ちと、“自分がどう自分を超えていくか”の両方を延々とやってるように感じてたんですね。つまり、その先にあるのはただデカいところでライブをするとか、そういう誰もがわかりやすい目標みたいなのものとは違うんだろうなとも感じてたんですよ。いわゆる絶対的な物差しで考えるんじゃなく、あくまでも自分たち独自の物差しで考えて自分たちを研ぎ続けてるように見えてたから、そのあたりが実際にはどうなのかをちょっと知りたかったんです。ちょうど、僕自身もアルルカンをどうしたいかという自問自答に対して、一旦区切りというか見通しが立ったタイミングだったっていうのが理由としてはかなり大きかったですね。

──なるほど。暁さんの中にある野心がより固まった時期でもあったわけですね。

暁:そういうことなんですよ。自分のやってることを自分で認められたし、これを周りにもちゃんと認めてもらいに行こう!と思って。そのために自分の命を使い切る、使い切ってやろうって決めたんです。だからこそ、今回<束の世界>をあらためて本気でやろうとも思ったんですよ。要するに、僕としてはもっと多くの人に見つかりたいとか、もっとたくさんの人をその気にさせたいっていうベクトルやったんで、もし咲がその部分でスタンスが違うんだったらまた別のタイミングで誘わせてもらおうかな、と思ってたんです。

──やはりそういうことでしたか。

暁:なのでちょっと重たいかもですが、どっちかが動けなくなるまで、その気にさせたり、その気にさせられたりをずーっとやろうね。よろしくね。みたいな気持ちで行って。でもそのまま言うのも違うんで、最初はふんわり誘いました(笑)で、色々話して「やっぱり大丈夫だったな」となってから「出て」と言ったんです。だから、啓ちゃんのこともね。うちもドラム脱けてるし。どんな決断であれ、前に進むための決断だというのはわかるから、僕は全く気にしないし特に心配もしてません。

──それだけ暁さんは甘い暴力のポテンシャルを信じていらっしゃるのですね。

暁:僕はそんなに咲くんや甘暴のメンバーとしょっちゅう連絡取るわけじゃないんですけど、みんな凄くいい空気感を持ってるなと勝手にそう感じてます。もちろん、啓ちゃんが脱けた後の動きにも今から期待してるんですよ。あ、その前に2月15日の卒業ライブも行くわ。

咲:マジで?! 大阪まで??

暁:2月11日に神戸でイベント出るから、そのまま実家に寄って行こうかなと。

咲:ありがとう、暁くん!

暁:いやだって観たいし。

咲:嬉しい。ちょっとこれはもう……燃やすわ!

──いやはや、実に胸熱な展開となってきたこの対談ですが。ここで少し、暁さんと咲さんが出会われた頃のことについてもお話をうかがえますと幸いです。

暁:大阪での主催に呼んだり、呼ばれたりっていうのはしてたんですよ。あと、前にキズと甘暴がツーマンする時、ちょこちょことふたり(咲と来夢)のメッセージをつないだりとかしたことはあるし。このあいだボーカル会があった時も、逹瑯さん(MUCC)から「咲くんに声かけて」って言われて咲くんにそのまま連絡したりみたいなことはあるけど、初めて話をしたのは何時やったかなぁ。

咲:俺は甘い暴力を組む前にBIGCATにアルルカンを観に行ったことがあって、凄い衝撃を受けたことがあったんですよね。でも、その時は挨拶とかもしてないままだったんです。その後、コロナ禍でツーマンが延期になってからの振替公演(<アルルカン Presents「ホンキノ遊ビ」アルルカン × 甘い暴力「核弾頭」> 2021年3月6日@UMEDA CLUB QUATTRO)をやった時から、ちゃんとしゃべるようになった記憶があります。

暁:そっか。ライブには咲が来てくれることの方が多かった印象があるけど、それが最初だったんやね。でも、実は咲が前のバンドをやってた時から僕は彼の声が好きだったんですよ。なんか品ががある感じがして。それだけに、甘い暴力が生まれた時には凄いびっくりしたし、ちょっと心配もしてたんです。前とは全然ちゃうやん!と思って。まだ会ったこともなかったのに勝手に(笑)。

咲:あははは(笑)。

暁:だけど、しばらく様子を追っていくうちにイベントとかフェスで観る機会なんかもあって「あぁ、こっちの方がより剥き出しなんやな」って腑に落ちたんです。僕が知らなかっただけで咲にはこんな顔があったのか、ってね。まさかSIMカードを食べるような人とは思ってなかったけど(笑)、多分こっちが本性なんやなと。で、そこからさっきのツーマンにつながっていったんですよ。(注・「SIMカードを食べる」とは咲が当時の彼女に対する疑惑を感じた際、衝動的にSIMカードを食べてしまったという昔話を指す。本人が暁と共演したWEB番組内にて激白した)
咲:まぁ、確かに昔よりも甘い暴力になってからの方が剥き出しではあります(苦笑)。

──咲さんからすると、最初にBIGCATでアルルカンのライブをご覧になった時に受けられた衝撃というのはどのようなものだったのでしょう。

咲:暁の生き様がそのまま体現されてるのがアルルカンというバンドなんだな、っていうことに衝撃を感じたんです。もちろんメンバーの演奏があってこそではあるんですけれども、客の盛り上がり方も凄かったし、まだまだ自分も経験が浅い時だったんで、ただただ「すげぇ……」と圧倒されてしまって。あれは自分にとって良い刺激になりました。

──そんな咲さんもキャリアを積み、甘い暴力は今年で10年目ですよね。

暁:うわー、もうそんな経つん?

咲:びっくりするで。当時10歳だった子が成人してるもんな(笑)。

──この10年の間に甘い暴力を見守られてきた暁さんからすると、彼らがバンドとして変化および成長してきたのはどのようなところだと感じられていますか。

暁:最近……でもないか。ここ数年で変わって来てるというよりも、僕がやっと気付いたみたいなことはありますね。っていうのは、さっき言った“自分たち独自の物差しで考えて自分たちを研ぎ続ける”ことって、そう誰にでも出来ることじゃなかったりするんですよ。なんだかんだで周りはどうやとか、これをしたら周りはどうなるか、みたいなところに惑わされがちなんでね。

──良くも悪くも、周囲からのアドバイスが向けられるケースもありそうです。

暁:昨日はこの対談企画のひとつとして、千秋(DEZERT)ともしゃべったんですけどね。そこで僕がしたのは「ずっと呪いにかかってる」っていう話だったんですよ。過去を振り返ると、ありがたいことに僕はアルルカン・暁が形成される前からいろんな人に見つけてもらえた経緯があったせいか、バンド活動を続けたり、大きいところでライブすることを手放しで喜べなかったり、どういう気持ちでいればいいのかわからないみたいな呪いに長い間かかっていたというか。だけど、その呪いが最近やっと解けたんです。そして、そこで気付いたんですよね。甘い暴力は、自分の物差しで研ぎ続けてるからちゃんとカッコよくなっていってるんだって。自分にやれることだけを延々やってるだけで何も変わらない奴もいるけど、バンドとしての原点を軸にしたうえでどんどん円を大きくしていってるんだなっていうことを甘い暴力に対しては感じてます。

──その呪いのお話については、解けた切っ掛けが何だったのかも知りたいです。

暁:自分で決めて自分でやってみて、その責任を自分で負うということの意味をあらためて知ったからですかね。メンバーに頼ったりとか、事務所がいてくれたり、ファンが目の前にいてくれたりと、そういう恵まれている環境に慣れてしまっていたが故に、自分と他人の境界線をうまく引けなってた自分がいたんですよ。どこまで自分が引き受けていいのか、どこまで人に預けていいのかが全くわからないまま過ぎている時間がけっこう長く続いた中で、良いも悪いも全部ちゃんとフィードバックを自分で受け止めるっていう覚悟が出来たからだと思います。昨日はそれを呪いという言葉で表現したんですけど、いろんな境界線がはっきり見えるようになって呪いが解けました。その分、今の自分は前よりわがままになったとも言えるでしょうね。最もわかりやすく言うなら、しっかり“腹が括れた”っていう表現が一番近いかもしれない。

──この暁さんからの言葉も受けつつ、咲さんから見て時間の経過と共にアルルカンに対しての見え方、感じ方が変わってきたところはありますか。

咲:つまびらかに話すと、堕門くんの脱退であったりとか、いろいろと大変なことが重なった時期に、本人たちが相当ダメージを受けていたであろということは僕も感じていたんですけど。そこからアルルカンが活動を続けていく選択をした事実や、暁が発するSNSの言葉から様々な変化は僕なりに感じてましたね。と同時に、これは僕が勝手に暁に言ってるだけなんですけど、その頃から僕は暁とは親和性があるなっていうことも感じるようになりました。そう言うと、何時も暁は若干苦い顔するんですけど(笑)。

暁:してないって(笑)。っていうか、咲とはよくその話になるよね。
咲:壁にぶち当たった時の立ちすくみ方から、壁に向かっていく過程に親和性を感じる部分があるんです。暁もステージで語るタイプの人間だし、ターニングポイントがあった時に自分の中で暁が置かれた状況や目の前の事実を認めて受け入れて、ひたすら真摯にステージに立ってるところに凄いリスペクトを感じます。年月が経つほどキャリアにあぐらをかくじゃないですけど、ヘンにこなれた感じになっていくアーティストも増えていくのに対して、今年で13周年にもなるアルルカンと暁には全くそういうところがないんですよ。

暁:へー、誰なんやろ。嘘です続けて下さい(笑)

咲:いやそれでね。本人は呪いが解けたと言ってますけど、僕はまだ暁は別の意味で呪われてるんじゃないかとも思ってるんですよ。

暁:多分“こじらせてる”ところは一緒で、それはそれで呪いなのかもしれない(笑)。お互いに人から「真面目だね」みたいなことはよく言われると思うんですけど、実態としてはそこまで真面目でいようと思ってるわけではないものの、なんかどうしても“そうせずにはおれん”というかね。もうこれは疾患というか、病に近い気がしてます。

咲:あー、なんかわかる。

暁:さっきのたもちゃんがいなくなった時の話とかも、うちの楽器隊メンバーはかなり食らってたけど、自分は何をするべきなのかしか正直興味がなくて。この壁をどうやって超えるのか?っていうことを、ずっと集中して考えてたんです。で、ひとつ壁を越えたらまた自分からさらなる壁を求めてくみたいな。きっと、僕と咲はそういうところが似てるんじゃないのかな。人からするとそういうところが「真面目」って映るのかもね。

咲:でも僕、千秋には「性格悪い」って言われてますよ(苦笑)。

暁:そうなんだ(笑)。それは自分に向ける自分ルールが歪で鋭利な分、外に対して「人は人やから」みたいなところがそう見えることもあるのかな。あとは、ステージとそれ以外で雰囲気がカチッて完全にスイッチするところも咲と僕は似てる印象がありますね。

──ステージを拝見させていただいている者としての観点からは、当然ボーカリゼーションのスタイルはそれぞれに異なるものの、暁さんも咲さんも赤裸々に“今その瞬間の自分”を歌や言葉で受け手に対して伝えていらっしゃるように感じております。たとえば、昨年末にKTZepp YOKOHAMAにて開催された<甘い暴力 周年記念のプレゼンツ 九年目の招待>では、咲さんが啓さんのことを含む現況について「大丈夫なわけねぇだろ!」と叫んでいらっしゃいましたよね。

暁:あ、そのライブレポート昨日ちょうど読みました。

──あの一言は本当に衝撃で。エンターテイナーでもある方があれだけ率直に胸の内を吐露するというのは、相当に腹が括れていないと出来ないことだと感じた次第なのです。しかも、そのあとには「大丈夫じゃないっていう本音はさっき「だいじょばない」を歌って吐きだしたから、もう本当に大丈夫。俺たちは最高の10年目に向かってやっていくんだよ」ともおっしゃっていましたよね。その言葉がたとえ今は空元気なのだとしても、自らを鼓舞しながら、同時にファンのみなさんも安心させようとする健気な姿勢に、それこそ咲さんの芯の強さを感じました。

咲:まぁ……大丈夫ではないんですよね。このところ何回も気絶してましたし。一昨日も家の廊下で気を失って倒れてたりとかしてました。ほんまに。

──この寒い中での気絶は危険ですよ。たとえ家の中でも廊下は冷えませんか。

咲:大丈夫です。その前にベランダでも一回ぶっ倒れてるんですけど、これがまた都合いい体で、寒いと思ってちゃんと動いて部屋に戻ってから「さむっ!」ってなって廊下でまたぶっ倒れて気絶してたんで(笑)。自分なりに、なんとかギリギリのところで乗り切っていくんやろうなと思ってます。あとはもう自分の中にあるもんを全て舞台と歌詞と楽曲に込めるのみです。

──そうやってうかがいますと、咲さんはストイックと自暴自棄の狭間で生きていらっしゃるようにも見えてきます。

咲:自分が志しているのは、芸事に生きて芸事を全うして去っていくという、そこが究極点だと思ってるんですよ。じゃあ、何も言わずにMCも何もなく音楽だけやれよと言われると、またそれはちょっと自分の中での話は変わってきてしまうんですけれども。舞台の上に立たせてもらっている以上は、舞台の上だけでいいんです。そこでしか評価されないと僕は思ってますから。当然、今度の<束の世界>でも自分たちはその意識で臨むつもりです。そして、舞台に立ち続ける限り何歳になっても磨くべきものを磨き続けていくしかないと思ってます。本当に。

──因果なものです。それは強い誓いである反面、強迫観念に似た呪いなのでしょうね。

咲:だと思います(笑)。暁もさっき「疾患に近い」って言ってましたけど、もうこれは本当に呪いであり、疾患であり、狂気ですよね。狂気の沙汰なんですよ。音を楽しむと書いて音楽のはずなのに「一体これは何の呪縛なんだ?」って思うこともあるとはいえ、こうやって続けてきてるバンド人生こそが自分にとっての生きる証になってますから。ステージが楽しいとか、ライブで気持ち良くなって「イェーイ!」ってなるよりも、気絶してくたばりかけたり、明日が見えないような状態の方を、乗り越えて振り返ってみると俺は「楽しい」って感じることが多いんですよ。我ながらそれはやっぱり狂ってるなと(笑)。

暁:ふふふふ(笑)。

咲:極論、狂いながらでも理想の自分を追い続けて、磨き続けて、いつかそのまま去ればいいって思ってます。

──咲さんのこの言葉、暁さんはどう感じられます?

暁:使ってる言葉が違うだけで、本質的には一緒やなと思いますよ。そういえば、甘い暴力のファンってなんて呼ばれてるんだっけ?

咲:もともとは“こじらせ女子”だったんですけど、近年は男子も増えてきてるんで“こじらせ男子”もいます。

暁:こじらせの民たちなのね。

──対して、アルルカンのファンはダメ人間なわけで。なかなかの並び具合です(笑)。

暁:結局、性質が一緒なんでしょうね。なにしろ、それぞれのバンドのフロントに立ってるふたりがこの有様ですから(笑)。

咲:この有様って(笑)

暁:こじらせ女子・男子も、ダメ人間も、きっとみんな心当たりがあるんだと思いますよ。さっきの呪いみたいなものが自分の中にもどこかにある、ってね。もはや受け止めているし、半分諦めていると言ってもいいし、でも嫌いじゃないんですよ。しんどさも知ってるけど、でもまたそこに向かっちゃう。しかも、自覚してる以上にちょっと楽しかったりもするっていう。苦しい波を感じている間こそ、生きてる感じがするんですよ。我々はそういう、ちょっと歪なやり方でしか自分の生を実感できない人種なんでしょうね。

──そういう意味では、今回のメンツはみなさんその傾向が強そうです。逹瑯さんもアウトプットの仕方こそ異なりますけれど、書かれている歌詞の内容などから察するに、普段あからさまにはそうした面を見せないだけのようにも感じます。

暁:だからカッコいいんですよね。きっと。今回のメンツはそれぞれが劇的な生き方をしていて、それで成り立ってるバンドばかりだと僕は思ってます。奏でてる音楽は当然として、存在しているだけでもいろんな影響をもらってるし、心に響く言葉をくれる時だってあるし、背中で見せてくれる時もあれば、側で見ててくれる時もある。<束の世界 -SONOSEKAI- 2026>には、そうやって何かをもらってるバンドしか呼んでません。

──すなわち、心技体の揃ったバンドだけが集っているということでもあるでしょう。チケットがソールドアウトしているのも納得です。

暁:ソールドアウトになったのは、間違いなく出てくれるバンドの力によるところが大きいです。ホスト側であるアルルカンとの関係性みたいなところを加味しても、やっぱりそれぞれバンドが持ってる力が強いので。アルルカンもさらに頑張らなくちゃ、という気持ちにさせられてます。もらったものをもらったままにしておく気はないんですよ。そこが今までとは決定的に違うところですね。

──暁さんの中で燃えているであろう野心の在り方、野心の中身というものがここに来てだんだんとクリアに見えてきました。以前、甘い暴力さんとRoyzさんがイベントをやるにあたって対談をしていた記事でも同じようなことを感じましたが。

暁:自分の命を使い切っていいやっていう、それを口にするのは簡単ですけどね。そのために「どうやるの?」みたいなところが自分の中でまとまったので、今までみんなにもらってきた分を返していけるだけの存在に僕もなりたいんです。今回のメンツの誰かが新しく面白いことやりたいなってなった時に、向こうの眼にアルルカンが映ってるのかどうか。一緒に肩組んでやれるのかどうか。甘暴とRoyzの記事も、そういう流れの中で語ることが出来る話だと思ってるんですよ。

──それぞれのバンドが、お互いに尊い絆を感じあっているのですね。

暁:次に武道館をやるのは誰になるのか、どうやってもっと前に進んでいくかみたいなこともその対談ではしてたんですよね。もちろん自分もそうなるって決めてるし、刺激し合える相手がいるっていうのは大切だなって思いましたし、みんなが切磋琢磨してる中に常にアルルカンもいる状態にしたいっていうことも強く感じました。多分、それが一番みんなに対して僕らが“返せるもん”なんやろうなと。野心の抱き方として、口だけじゃないところ、イキってるわけじゃないみたいなところが前と違うからこそ、今回こうして<束の世界>をやるわけでね。先輩も同期も後輩も増えたり減ったりする中で、僕がこの激重感情をブワーッとつのらせて一歩踏み出した今、そこに甘い暴力が参加してくれるというのも本当に嬉しいことなんです。せやから、ここはあらためてね。お互いどっちかが動けなくなるまでよろしくお願いします、っていう気持ちで僕は一緒にやりたいと考えてます。

──なんだかプロポーズの言葉みたいではないですか。

咲:あははは(笑)。

暁:まぁ、この重たさ加減は普通あんまり人に向けないもんでしょうね(笑)。DEZERTとキズは既にもう自然とそういう関係になってると思うし、あんまり言葉にしたりはしないけど、お互い肩を並べるのにはそれだけの気持ちがいるじゃないですか。MUCCはここまでに背中も見せてきてもらってるし、言葉とかいろんなものももらってるから、それに対して当たり前に応えたいっていうのがあるのは当然なので。だからこそ、甘い暴力に対してはここで1回ちゃんと言葉にしておきたかったんですよ。咲くんならドン引きせずに「あぁ、そうなんや」って優しく受け止めてくれると信じてます。

咲:暁はな、そういうところがえぇんやで。

──おふたりの関係というのは、いわゆる友だちというのとも少し違いそうですね。

咲:盟友とか戦友みたいな感じですかね?

暁:多分そういうもんなんやろな。

──人とわかちあう、わかりあう、というのはそう簡単なことではないだけに。盟友であると言いあえる関係性だなんて少し羨ましいですし、とても眩しいです。

暁:ちょっとカッコいいですよね、そういう言い方をすると。

咲:なんかマンガみたいというか。

──リアリティ満載なバンド系青春漫画の世界ですね。

暁:どうなんやろ?でも、カッコいいだけじゃなくてリアルな分だけ残酷なところもありますよ。マジでカッコいいと思わなかったからつるんでないし、さっきの話みたいにヘンにあぐらでもかくようになったら相手せんようになりますから。

咲:そういう意味では、誤解を恐れずに言うと今度のイベントには思いっきり噛みつきに行く感じで挑もうと思ってますね。みんなのことは凄いリスペクトしてますけど、いろいろ学ばせてもらった師匠とか先輩たちと俺は本気で戦います!

──素晴らしい心意気です。

咲:俺は歌詞の中でよく王座っていう言葉を使うんですけど、俺自身はもし王座っていうものに座らされてとしても蹴飛ばしたい感じなんですよ。つまり、強い人と戦っていたいんです。強い人と戦う以外はむしろ戦いたくないくらいで、勝てる勝負にはあんまり興味がないんです。その点、今回のメンツは強豪が揃ってるおまけに自分だけ大阪にいるんで。暁にしても、来夢くん、千秋、逹瑯さんにしても、あんまりしゃべったりとかご飯したりとかっていう機会がほとんどないから、逆に言うと舞台の上でしか基本的にものを言えないんですね。だから、今回とことん噛みついて仮に負けたとしても次にはまた勝ちに行きます。諦めません。

──そのお言葉は甘い暴力の「挑戦者」という歌詞さながらです。

咲:それもそうですし、次に出す「虎伏戦吼」という新曲もそういう内容なんですよ。最初は龍とかフェニックスをイメージしてたんですけど、途中で俺はそうじゃなくて地に伏せて上を睨み続ける虎の方が似合ってるなと思って、歌詞を全て書き直しました。

──なんでも、次なるツアータイトルも<甘い暴力 2026春のプレゼンツツアー「虎伏戦吼」>になるそうですね。

咲:はい、次のワンマンツアーでも戦いの姿勢をみせていこうと思ってます。あと、その新曲は3月1日にもやる予定です。

──新曲といえばアルルカンも3月にアルバム『imagine』を出されますけれど、そこからの新曲を<束の世界>にて聴ける可能性はあるのでしょうか?

暁:先月の<DAWN>っていう東名阪ツアーでも先駆けてやってたんで、何かしら出来たらいいなとは思ってます。

──では、甘い暴力が噛みつきモードだとするならば。アルルカンはどのモードで3月1日という日を迎えることになりそうでしょうか。

暁:ホスト役ではあるけど、自分の野心を提示するには「今どう生きてるか」っていうことをステージ上で伝えていくことが一番大事になってくるんじゃないかと思ってます。僕も咲くんもさらけ出すタイプですけど、さらけ出してなおカッコ良いっていうのは、それが愚痴じゃない時だけなんですよ。目的や行き先を示すことに意味があるし、そのためには新曲も聴かせる必要があるわけです。あとはやっぱり、あくまで音楽ですからね。あまり音を楽しむ気で始めてない我々としても、そこは多少意識しないとあかんかなと。

咲:せやんな。俺らはそこがよくないな。

暁:しょうがない。俺らは薬を作ってるんやけど、薬を作ってることをエンタメにするっていう順番で頑張るしかない(笑)。そのためにも「これ、みんな絶対ブチ上がるよね」みたいな曲もやりたいし、自分に出来る限りのことをやって、ちゃんとカッコいいでしょ!っていうところを見せつけますよ。ファンの人たちがバンドにもらってるエネルギーがあって、それで毎日頑張れてるのと同じでね。僕らもいろんなバンドの存在、言葉、背中からいろんなものをもらってて、そのおかげでバンドをやっていられるんだっていう気持ちをちゃんとステージで出したいんで、一番強い戦法で行きます。

咲:(暁の言葉に納得したように無言で頷く)

暁:なぁ、その日「どうせ死ぬ」やらん?

咲:え。暁が言うならやろっかな。

暁:やった! 聴きたい!! あの曲、ツーマンした時から好きなんやけど。

咲:マジで。じゃあ入れるわ。

──そうした個々のバンドの持ち時間にプラスして、今度のイベントではセッション的なものが実現する可能性はありますか。念のためうかがっておこうかと。

暁:DEZERTもキズもやらないだろうし、甘い暴力も自分からはやらなそう(笑)。アルルカンは多分そういうのしやすいバンドやし、やったら楽しいとは思うんです。でも今やっちゃうと…っていう気持ちもあります。

──野心を持つバンド、本気で噛みつきにいくバンドたちが揃う中での和気あいあいとしたセクションは、似つかわしくないということですね。

暁:ここで話してきた野心みたいなものがちゃんと形になった後、ほんまに心から楽しくそういうセッションはやりたいです。今このシーン、この世代に根付いている、次は誰がどう行くみたいなこの流れをまずは大きくしていかないと。
咲:僕はこういう暁の背中を見て勉強したいと思ってます。勉強させてもらいますね!

暁:そんなもう勘弁してください(笑)。

取材・文◎杉江由紀

<アルルカン Presents「束の世界-SONOSEKAI-2026」>
3月1日(日) EX THEATER ROPPONGI
開場 14:30 / 開演 15:30

・出演者
アルルカン / MUCC / キズ / DEZERT / 甘い暴力

・チケット
SOLD OUT