【インタビュー】Nothing’s Carved In Stone、4年3ヵ月ぶり12thアルバムに円熟と好奇心と挑戦と「やっぱり音楽の情熱かな」

2026.03.05 12:00

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前作『ANSWER』以来、4年3ヵ月ぶりとなるNothing’s Carved In Stoneの12thアルバムが完成した。『Fire Inside Us』と名付けられたその最新アルバムには2024年5月にリリースしたひとつ前のEP『BRIGHTNESS』に入りきらなかった曲に『BRIGHTNESS』リリース後も止まることがなかった制作の中で生まれた新曲を加えた全10曲を収録。

ラウドロックからミドルバラード、さらにはエレクトロニックなダンスナンバーまでというなかなかの振り幅を持つ全10曲から感じられるのは、2年後に結成20年を迎えるバンドの円熟のみならず、音楽的な好奇心に突き動かされた挑戦というところが頼もしい。

バンドを代表して、村松拓(Vo, G)と生形真一(G)が最新アルバムのバックグラウンドを語ってくれた。ふたりの言葉から現在のNothing’s Carved In Stoneの充実ぶりをぜひ感じ取っていただきたい。メンバーの心境が反映されたという歌詞もこれまで以上に胸に響くものになっている。今回のインタビューではそんな歌詞についても深掘りしてみた。

12thアルバム『Fire Inside Us』

   ◆   ◆   ◆

■こういう形の曲は初めてです
■けっこういい歌詞が書けたかな

──とてもカッコいいアルバムでした。もちろん、曲がいいんですけど、ロックとしてカッコいいし、聴いているとバンドの熱い思いが伝わってくるんです。

生形:ありがとうございます。

村松:うれしいです。

──今回のアルバムには、2024年11月に配信リリースした「All We Have feat. Masato (coldrain)」、2025年5月に配信リリースした「May」、そして、2025年7月に配信リリースした「Everything」も収録されていますが、その3曲を作っている時には、アルバム制作を考えて、曲作りを進めていたんですか?

村松:いえ、前EP『BRIGHTNESS』の延長線って感じでした。『BRIGHTNESS』の時に(生形)真一とひなっち(日向秀和 / B)がけっこう曲を書いてくれたんですけど、『BRIGHTNESS』に入れられなかった曲もあったんですよ。だから、『BRIGHTNESS』を完成させた後も作り続けてたっていうか。

生形:『BRIGHTNESS』をリリースして、すぐに作りかけだった「All We Have feat. Masato (coldrain)」を完成させて、まずレコーディングして。

村松:その後、今回アルバムに入っている「MOONRISE」と。

生形:「May」と「Everything」をまたちょっとしてからレコーディングしてリリースして。そういう作業を3回ぐらいやってアルバムにまとめたのが、この2年でした。

村松拓(Vo, G)

──「All We Have feat. Masato (coldrain)」は曲を作る過程で、“シャウトパートを入れたらいいんじゃないか”ということになって、“だったらcoldrainのMasatoしかいないだろう”ということでオファーしたそうですね。その時、Masatoさんの“ゲスト参加多すぎ問題”というのは気にならなかったですか(笑)?

村松:気にならなかったよね(笑)。

生形:うん。いや、そもそもそんなにゲスト参加しているって知らなくて。

──Masatoさんのボーカルのレコーディングってどんなふうにやったんですか?

生形:Masatoに選んでもらったっていうか、シャウトの部分もシャウトとはいえ、メロディーも歌詞もあるじゃないですか。それを俺たちが提案したものを歌ってもらうのか、それともMasatoが考えるのか。「どっちがいい?」って聞いたら、「自分で作ってきます」って言うから、Masatoに作ってきてもらって。

──トラックを渡して、ボーカルを入れてもらったんですか?

生形:いえ、スタジオに来てもらってレコーディングしました。

──そうだったんですか。ところで、さっき『BRIGHTNESS』を完成させた後も『BRIGHTNESS』に入りきらなかった曲をレコーディングしたり、さらに新曲を作ったりしていたとおっしゃっていましたけど、Nothing’s Carved In Stoneの曲作りって、いつもそういうサイクルでしたっけ?

生形:この数年はそうですね。というのも、世の中の流れが変わってきたじゃないですか。昔はシングルをリリースしてアルバムという流れでしたけど、今はもう、そもそもシングルをフィジカルでリリースするってことが少なくなってきて。曲を配信して、また配信して、そこに何曲かプラスしてアルバムにするっていう流れになってきたから。俺らもそこまで極端に変わったわけじゃないけど、曲は常に作ってましたね。

──ただ、世の中がそういう流れになってきたからとはいえ、モチベーションがないと制作ってなかなか進まないような気もするんですけど。

生形:でも、メリットもあるんですよ。フィジカルでシングルをリリースするとしたら、最低でも3曲とか、アルバムだったら10曲とか作らなきゃいけないじゃないですか。

──はい。

生形:それはかなりエネルギーが要るけど、配信だったら1曲からでもリリースできる。メリットはそこだよね。

村松:そうだね。

生形:その1曲に集中できるっていうか。

──そうか。1曲出来たらすぐにレコーディングして、リリースできるっていう。

生形:でも結局、“せっかくスタジオを押さえるんだから”って、“もう1曲作ってレコーディングしようか”ってなるんですけどね(笑)。そこが配信のメリットかな。手軽にってわけではないけど、録り終わってからリリースもすぐにできるっていうのはいいことだと思いますね。

生形真一(G)

──そんなふうにリリースした「May」は珠玉のミッドバラードです。「All We Have feat. Masato (coldrain)」からのギャップがなかなかだと思うんですけど、「All We Have feat. Masato (coldrain)」の次に「May」をリリースしたのは、どんな意図とか狙いがあったんですか?

村松:同じタイミングで出来た「May」「MOONRISE」「Everything」の中から「May」を選んだんですけど…なんでだったっけ?

生形:やっぱり「All We Have feat. Masato (coldrain)」がけっこう激しい曲だったから、その流れで「Everything」だと激しい曲が続いちゃうし、「MOONRISE」は取っておきたかったんですよ。

──あ、アルバムに。

村松:そうだ、取っておいたんだ。

生形:で、5月にリリースするなら、「May」がぴったりじゃないかって。

──5月に出すから「May」という曲を作ったんじゃないんですね?

生形:いや、最初から「May」だったんですよ。

──ミドルバラードとしてすごく手応えを感じたから、というのもあるんですか?

生形:それはもちろんですけど、そういう理由もあって、3曲録った中から「May」になりました。

──「May」のどんなところにバラードとして手応えを感じたんでしょうか?

村松:やっぱり、こういう形の曲は初めてというところですね。あと、後になって思ったんですけど、個人的には、けっこういい歌詞が書けたんじゃないかなとは思っていて。基本、ひなっちが発案してくれた曲なんですよ。メロディーと歌詞も含め、冒頭のサビブロックがほぼそのままあって、それをもとに残りの歌詞を書かせてもらったんです。だから、共作みたいな感じなんですけど、それはけっこうおもしろかったですね。

生形:初めてじゃない?

村松:初めてだし、言ったら、自分からの発信ではないじゃないですか。ひなっちが持ってきたアイデアをもとに、どうやってこの曲の世界観を作って、メッセージを当てはめていこうか、けっこう悩んだんですけど、メンバーに聴いてもらったら、「すごくいいね」って言ってくれて。やりきれてよかったって思いました。

──僕も歌詞がすごくいいなと思いました。最初は男女間の恋愛の歌なのかなって思えるんですけど、聴いているうちに、もっと大きなことを歌っているというか、大きな愛に包まれているような気持ちになる。そういう歌詞の流れも聴きどころじゃないか、と。

村松:そうですね。ちょうど「May」ってタイトルの5月というテーマがあったんで。出会いとか別れとかの季節ではあるじゃないですか。そういうところをどうやってNothing’s Carved In Stoneの曲にするのかってところで、“恋愛の曲にするのもな”っていうのはぶっちゃけあって。いや、それも全然ありなんですけど、それだけじゃなくて、聴いた人の背中を押せる何かがほしいなっていうのは、やっぱり根底にあるから、それを探りながら言葉を紡いでいきましたね。

──「聴いた人の背中を押せる何かがほしい」とおっしゃったんですけど、Nothing’s Carved In Stoneってそういう曲が多いと思うんですよ。でもその一方では、「May」もそうなんですけど、過去の記憶を断ち切れない気持ちを歌ったものも少なくないというか、大きなテーマのひとつになっているんじゃないか、と今回のアルバムを聴いて改めて思ったので、そこも聞いてみたかったんですけど、どうですか?

村松:歌詞は真一と僕が書いているんですけど、僕が思っているのは、幾つになっても人間って失敗するじゃないですか。でも、そこからもう一回立ち上がっていく姿って、年齢に関係なく、どの年代の人にも当てはまると思うんです。今、たまたま冬季オリンピックをやってますけど、たとえばフィギュアスケートの選手が2分とか4分とかの演技に人生を賭けてきて、“最初の演技でコケました、9位でした” “でも、次の日は完璧にやりきりました”……みたいなドラマって、自分の失敗とか挫折とかと重ね合わせて、感動するものだと思うんです。Nothing’s Carved In Stoneってそういうことを表現できる器があるんだよなっていうふうにはずっと感じてるんですよね。おのおのに元々キャリアがあるところから始まってることもあるのかもしれないですけど、成功体験だけ重ねてきたバンドってわけではないし。やってみたものの、全然思ったのと違ったね、みたいなことは、もちろん経験として乗り越えてきてるから。そういうこともちゃんと書けるんじゃないかなとは思ってますね。何度でも立ち上がろう、みたいなことを体現しているバンドではあると思ってるから。

──しっかり過去に向き合っているからこそ、言葉に表れてきてしまう、と。

村松:そうですね。不思議とそうなりますね。

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