「M-SPOT」Vol.049「情報の伝え方で評価が180°変わってしまう、音楽の不思議」

楽曲に触れたその第一印象から紐解かれるアーティスト像と楽曲への評価と、そもそも熟知しているアーティストの楽曲に対する評価…その両者には、知らず知らずにして大きな差異が生じてしまっているのかもしれない。
楽曲を聴いて感じた第一印象からトークはスタートしたものの、そのアーティストのSNSを発見し、その様子を知るにつけ、楽曲への評価は第一印象とは真逆なものへと変化していってしまった。そんな様子をリアルにお届けするのが今回の「M-SPOT」だ。コメンテーターはTuneCore Japanの堀巧馬と野邊拓実、菅江美津穂、そして進行役はいつも通り烏丸哲也(BARKS)である。
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──今回はleinayuaれいなゆあというアーティストの「dandelion」という曲を紹介したいのですが、まずは聴いていただけますか?
菅江美津穂(TuneCore Japan):曲の説明によると、人生観をテーマにした楽曲だそうですね。
──m-floのLISAを思い起こすような素敵な声ですよね?なんですけど、素敵すぎるがゆえに「AIなのか?」と思われてしまいそうな危惧を感じたんです。優れたシンガーにとってやりにくい時代になったな…と。
野邊拓実(TuneCore Japan):僕も「AIって言われたらAIに聞こえちゃうかも」ってちょっと思った。
──そういう悔しさとかもどかしさを感じているシンガーソングライターって、いっぱいいるんじゃないかな。
野邊拓実(TuneCore Japan):で、このジャケットがまた、ちょっと生成AIっぽいでしょ?なおのことボーカルも生成AIなのかなって印象を持ってしまう。まさか歌はAIじゃないですよね(笑)?
堀巧馬(TuneCore Japan):調べると、いわゆるシンガーソングライターの方ですね。
菅江美津穂(TuneCore Japan):YouTubeでも発信していますし。
──「歌も楽曲もAIで作れるようになった時代だからこそ、ジャケット制作においても安易な生成AIには手を出さないほうがいい」と思いますし、歌や声が素敵であればあるほど、AIに模倣される対象になってしまうとなれば、アーティストは「人間ならではの魅力」とか「パーソナリティのアピール」にものすごく気を配ったほうがいいと思うんです。
野邊拓実(TuneCore Japan):クライアントがAIでデモを作って「これをもうちょっとちゃんとしたやつにしてください」みたいな依頼が来るようになったと、友達の職業作家も言っていました。誰にでもAIがやってきて、そこまで音楽にこだわりがない人たちは「もうAIでいいじゃん」という時代が徐々に来ている。でもこれって悪い話ばかりでもなくて、「じゃあ、人間にしかできないことってなんだろうか」っていうのを考えるきっかけになる。AIじゃできないことをちゃんと考えていくことが、人類全体の音楽のクリエイティビティを上げていくきっかけでもある。「人間っぽさってなんだろう」とか「AIっぽくなさってなんだろう」みたいなところを考えて作っていくのは、今後の音楽をやる人たち全員に共通して重要なことだと思うんですよ。
──確かに。
野邊拓実(TuneCore Japan):そこを考える才能も必要だし、自分の作品がAIっぽく聴こえちゃうのであれば、危機感を持ってそこをちゃんと踏まえた方がいいと思っています。音楽以外でもAIっぽさってあるので、オフィシャルやサブスク、SNSのトップ画像とかも考えたほうがいい。AIっぽいジャケットじゃなくて、本人の顔写真でもいいと思うんですよね。
堀巧馬(TuneCore Japan):パッケージングってめっちゃ大事ですよね。本来は、純粋に音楽を聴いて、音楽から読み解いて、そのアーティストの良さを紐解いていくのがあるべき形なんですけど、もうそれは時代が許さない。アーティスト活動する上で、SNSに気を遣うことは避けられない。そういう意味では、leinayuaれいなゆあさんのInstagramを見ると、また印象が変わるなと思うんです。アーティストとしてボイトレの仕事だったりMCの仕事だったりラジオパーソナリティとか、いろんなことをされていることがわかる。プロフィールには「シングルマザーシンガーソングライターメッセンジャー/ボイトレ…」とあるんですけど、自分の声を使って、MCやパーソナリティとしてナレーションでメッセージだったり自分の思想を伝えているのだとすれば、音楽というものも、もしかしたらこの人にとってはツールのひとつでしかないのかもしれない。であれば、ジャケット写真も、そこまで作り込む必要もないと思っているかもしれない。

https://www.instagram.com/leinayua1(leinayuaれいなゆあ Instagram)
──なるほど。
堀巧馬(TuneCore Japan):ジャケ写が描けないならもうAIでいいじゃんっていうのも、ある意味ひとつの選択肢だとも思う。要は、アーティスト活動っていうところも自分にとっての「one of them」であって、必要以上に重く捉えすぎないことは、逆説的に言えば、自分たるものをしっかりわかっている人なんじゃないかなとも捉えられる。自分の活動って音楽「だけ」じゃないよねっていう。だからこそ、やりたい目的に対してはどんなツールでも使う。改めて「dandelion」を聴いてみると、根底に雑草魂みたいなところもあることが感じさせられる。自分がやりたいことに対して、貪欲的に手を伸ばし続けている生き様を考えた時に、いろんなことをやりたいという思いが伝わってくるように感じたかな。
菅江美津穂(TuneCore Japan):この活動の広さや内容、見せ方には、「地域性」もあるんじゃないかなと思いました。東京で活動する若いミュージシャンは、その環境に最適化した価値観で見せ方やAIの使い方を考えますけど、でもleinayuaれいなゆあさんのInstagramを見ていると、東京以外の場所でいろんな活動をしていて、その発信先は地域の方だったり地元の中小企業の方々やローカルFMラジオ局のラジオDJだったりするのかなと思うんですね。接してる情報が全然違っていて、そこが彼女にとっての主戦場だから、そこに目線が合っている感じがすごくするんです。
野邊拓実(TuneCore Japan):確かに、ターゲット像がしっかり見えていて、そこに対してちゃんと投げかけているんだなって思います。若者対象に音楽一点集中で勝負しようというマインドであれば、このインスタの内容には絶対ならないですからね。
堀巧馬(TuneCore Japan):そうそう。アーティストのブランディングという意味でもね。
野邊拓実(TuneCore Japan):シングルマザーと公言しているので、もしかしたら子どもへの目線とか、お子さんに向けた思いがあったりもするのかなと思うと、ターゲット像の解像度が上がってきて楽曲の聴こえ方も変わってくるなって感じます。
──ひとつの音楽とジャケット写真から受けた印象に対し、InstagramというたったひとつのSNSアイテムに触れただけで感想や印象がガラッと変わるって、ネット文化の面白いところですね。だからこそ、どういうツールをどのように使っていくのかってとても大事なんだなって思いました。
野邊拓実(TuneCore Japan):ほんとそうですね。

──正解とか間違いとかはないけれど、少なくともツールを的確に使うことで、伝えられることや可能性が大きく変わっていくことを実感しました。アーティストはそういう点を見据えて、今の時代の中で自分をどうプロデュースするかを考えるべきかもしれません。
堀巧馬(TuneCore Japan):そうだと思いますね。いろんなツールを乱用して統一感を失うと、うまくパッケージできなくて「この人って結局何をやっている人なんだろう」となってしまうリスクもある。YouTube配信者として見られちゃって、音楽家としては見られない…みたいなこととかね。
菅江美津穂(TuneCore Japan):Spotifyのアーティスト写真ひとつ変えるだけで、とっかかりが変わってくるとかもありますよね。
野邊拓実(TuneCore Japan):今回僕らは、何も前情報もなく「dandelion」という楽曲から受けた印象から話を始めましたけど、例えば僕が福岡に住んでいてleinayuaれいなゆあさんを知っていたならば、全く印象も変わっていたと思うんです。多分明るくてポジティブな方のような気がするので、その彼女がこの作品をリリースしたとなれば、まっすぐに「いい曲だわー」ってなっていたと思う。
──「最もAIを感じさせない楽曲」ですね。真逆の第一印象(笑)。
菅江美津穂(TuneCore Japan):対極にいる、すごく人間っぽい作品に感じます。これがAIぽく聴こえるなんてあり得ない、みたいな。
野邊拓実(TuneCore Japan):そうですよね。全く想定外のコメントをされているかも。入り口の入り方次第で凄く変わりますね…だから音楽って難しい。いやでも、AIっぽいって逆にいいことだとも思うんですよ。最近のAIって本当すごいという文脈での話ですから。
菅江美津穂(TuneCore Japan):それで言うと、近い将来「AIっぽい声だね」っていうのは、すごい褒め言葉になっているかもしれない。
野邊拓実(TuneCore Japan):「AIみたいに綺麗な声じゃん」「もう歌うますぎてAIかと思った」みたいな褒め言葉は、本当に普通になる可能性がある。
──最大の褒め言葉として「AIじゃん」って言い方が出てくるね。
野邊拓実(TuneCore Japan):完成度の高さを表すものにもなりうる。
堀巧馬(TuneCore Japan):「やべえそれマジAI」みたいな(笑)。
leinayuaれいなゆあ
leinayuaれいなゆあです。シンガーソングライターとして、自分が音楽にいつもちからをもらっているように誰かの心になにかを届けれたらな泣いたり笑ったり寄り添ったりそのときのシーンになにかを届けれるように色んなことを発信していきたいとおもっています!いつもこころに音楽を♪
https://www.tunecore.co.jp/artists/leinayua
協力◎TuneCore Japan
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
Special thanks to all independent artists using TuneCore Japan.







