「M-SPOT」Vol.050「楽器や音楽のみならず、スポーツ経験も音楽性に影響を与える説」

2026.01.20 20:00

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世の中に「○○っぽい□□」というのは数多ある。「猫っぽい犬」とか「英語っぽい日本語」とか「肉っぽい魚」とか…。今回は一聴して、なんだかリズムのキレとか呼吸感、センテンスの区切りなどから「ベースっぽい歌」と感じた作品を紹介してみたい。

「キーボードっぽいギタープレイ」とか「女性っぽい声質」「打ち込みっぽい生ドラム」「生っぽいストリングス」「ボカロっぽい歌」みたいな表現はよくあるが、歌を聞いてベースみたいだなと思ったのはこれが初めてだ。この感覚は、他人に共感を得られる類のものなのか、今回のトークテーマに上げてみた。

コメンテーターはTuneCore Japanの野邊拓実、そして進行役はいつも通り烏丸哲也(BARKS)である。

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──今回紹介したい楽曲は、ジュンヨシハラというアーティストの「突風」という作品なのですが、この方は幼少期からピアノを習いつつも、姉からのお下がりのベースを手にしてベーシストになったという方なんです。いかにもベーシストらしいスラップごりごりの楽曲なんですが、面白いなと思ったのは、ボーカルもまるでスラップのようなフレージングなんです。まずは聴きましょうか。


──ベースを弾きながらボーカルを取るバンドはたくさんありますけど、ボーカルがスラップみたいだなと思ったのが初体験で。

野邊拓実(TuneCore Japan):いや、なるほどって思いました。確かにメロディーにはすごい特徴を感じますよね。イントロは往年のフュージョンのような感じでしたけど、歌はこっちのけんととかを感じさせるようなリズムを刻むメロディーがあったりして、すごく現代的で面白いなって思います。「メロディがベースっぽい」と言われると、確かにリフっぽいですよね。

──習得楽器の特性がボーカルスタイルに影響を及ぼすことってあるのでしょうか。「ベースっぽいボーカル」なんて言葉、ないですよね(笑)。

野邊拓実(TuneCore Japan):そうですね。でも僕の中では、ギター&ボーカルが弾くギターとギタリストが弾くギターって、間の取り方とかに結差があるなと思っているんですよ。ギター&ボーカルが弾くギターって、歌うようなギターのリズムの取り方だったり、単純にフレージングそのものも「ボーカリストが根にあるんだな」みたいなのを感じることが多いですよね。けど、ベース&ボーカルにはあんまりそれを感じたことがない。「ボーカルはモタっているけどベースは走っている」みたいな、「おかしいな」「ひとりでどうなってんだ?それ」みたいな凄いプレイを聴かせるスティングみたいなベーシストはいますけど、「歌そのものにベースの要素を感じる」って、確かにすごい新鮮な感覚がありますね。

──ラッシュのゲディー・リーは超絶ベースプレイと歌をライブで完璧にこなす超人ですけど、実はできるまで泣くほど練習するんだそうです。ジュンヨシハラはライブではどうするんでしょう。スラップしながら歌っちゃうんですかね。

野邊拓実(TuneCore Japan):どうなんでしょう。いや、そうなんじゃないですか?わかんないですけど。

──ベースで歌いながら弾く場合、メロディアスなメロプレイよりむしろスラップのほうが簡単と聞いたことがあります。程度問題ですけど。

野邊拓実(TuneCore Japan):普段は、ライブでもベースを弾きながらボーカルを取っている方みたいですね。

──プロフィールを見ると、高校ではバンドもやりながら部活でバドミントンをやっていたそうで、これ僕の勝手な偏見ですけど、バドミントンってリズミカルなスポーツですよね。

野邊拓実(TuneCore Japan):はいはい、跳ねるリズムですね。なんかわかんないけどそういうイメージがあります。もしかしたらベースと親和性ありそう。この方は、音楽以外のところにもかなり色々とリズムを感じたり、リズム感に魅力を感じて生きていらっしゃる方なのかもしれない。

──そう、私もそんな気がしたんです。そうじゃないと「突風」のこの歌メロにたどり着かないんじゃないか、みたいな。高校3年からは「道具のいらない趣味としてブレイクダンスを始めた」ともプロフィールにあって、ここにもリズムが介在していますよね。で、本人も「ここからリズム感や音楽の幅も広がった」と言っている。振り返ればそうだったという話かもしれないですけど、直接音楽とは関係ない様々な出来事が、全て「リズム」や「音楽」に紐づいていく発想というか体質というか、そういうキャリアの末の「突風」という音楽作品なのかな。

野邊拓実(TuneCore Japan):こういう経験が、ジュンヨシハラさんのユニークなポイントとして、ちゃんと生きている感じがいいですね。イントロではよくある感じですけど、そこにこの歌が入ってくるのが面白い。自分の演っている楽器とかダンスとか、そういう経験が音楽性を左右するっていうのは、よくあることかなと思います。もちろん大量に音楽を聴いている人が、そこから自分の音楽を掴み取っていくのも素敵な話で、そうあるべきひとつとも思いますけど、音楽以外からの影響がきちんと音楽になっている人っていうのも、その人の魅力が際立ちますよね。それこそ音楽を聴いただけで「この人、多分映画とかすごい観ている人なのかな」とか、「なんかわかんないけどアニメっぽい情景が浮かぶな」とか、感じさせてくれる人って魅力的ですね。

──音楽にもキャラがにじみ出ますよね。音楽を聴いただけだけど「この人と酒飲んだら楽しそう」とかね(笑)。

ジュンヨシハラ

野邊拓実(TuneCore Japan):人間が作っている以上、やっぱり人間性は音楽に出ますから。大雑把な人が作る音楽ってやっぱり大雑把で大味で、だからこそ大胆な表現ができていたり。逆に丁寧で細かい人が作る音楽って、緻密で微妙な変化を楽しめたりみたいなところとかがあったりとか。僕も音楽を演っていますけど、自分の音楽を聴いて「自分って今こういう感じなんだな」とか「僕ってこういう地味なところに魅力を感じる性格してんだな」と思って自分の性格を変えようみたいなムーブがあったりとかして、そういう体験も相まって人間性はすごく出るなって思います。なので、アーティストの皆さんには、自分の人間性と徹底して向き合ってほしいなと思うんですよね。

──音楽と関係なさそうな体験や感性が音楽に影響を与えたり、思わぬところで結びついたりしますからね。

野邊拓実(TuneCore Japan):そう、歌詞とかだけじゃなくて、ちゃんと音にも表れるものだと思います。この作品は、そういうひとつの典型例だと思いました。

ジュンヨシハラ

bassist/singersongwriter/breakdancer 早稲田大学卒業 幼少からピアノを習い、中学2年生の頃に、姉のお下がりのベースを弾き始めたことからバンドや音楽への関心が高まる。高校在学中は軽音楽部とバドミントン部を兼部。また、高校3年生から「道具のいらない趣味」としてブレイクダンスを始めたことにより、リズム感や音楽の幅も広がった。2020年からソロとしての活動を開始。2021年からライブ配信アプリにて、フォロワーの総数は少ないながらも多数イベントで優勝。少数精鋭のファン層を構築しつつある。2023年1月に最新アルバム『リンスインシャンプー、好きじゃない』をリリース。
https://www.tunecore.co.jp/artists/Jun—–

協力◎TuneCore Japan
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
Special thanks to all independent artists using TuneCore Japan.

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