【ライヴレポート】seek (Psycho le Cému / MIMIZUQ)、ソロ1stワンマンを盟友が祝福「渋谷! ようこそ!」

<seek FIRST ONEMAN LIVE「白日をたゆたう雨虎、水に溶ける数列」>が9月14日、東京・渋谷CHELSEA HOTELで開催された。12月3日に3rdシングル「月と黒猫」をデジタルリリースしたseekのソロ初ワンマンとなった同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
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9月14日はseekの誕生日でもあり、超満員の会場には終始祝福ムードが充満していた。誕生日とは、1年365回の日々を一度リセットし、新たな門出、あるいはそのきっかけにする日でもあるのだろう。そうシンプルに考えれば、大そうな意義など求めることが、そもそもナンセンスなのではないかとすら個人的には思う。
人間は自分が生まれたときの景色を記憶していない。だからこそ、生まれた日自体に思い入れを有することはないとも言える。だが一方で、年齢を重ねることで特別な日になることも事実だ。物心がつき、祝いの日として過ごしてきた光景や情景が積み重なることで、その暦は単なる数字ではなくなるのだから。

この日、seekは46歳となった。幾多のバンドを渡り歩き、エッセイストとしての側面も持ち合わせる多彩なseekにとっても、この日は一層特別な日だったことは間違いない。ライヴタイトルに冠しているように、ソロとしてのワンマンは彼のキャリアにおいても初めての試みだったからだ。
Psycho le Cémuでの主催フェス開催にはじまり、MIMIZUQの周年ワンマン、machineのサポートと、精力的だった2025年のseekの活動のなかでも、とりわけ重要な1日となったライヴ当日の模様を振り返ってみたい。
先述したように会場は超満員、客席後方まで多くのファンで埋め尽くされている。この日、ソロワンマンを開催することは1年前に発表されており、seekの活動における重要度があらかじめ伝わっていたことも大きい。人によってまちまちだとは思うが、1年前から2025年9月14日の行先をこの会場に決めていたオーディエンスも少なくないはずだ。
1年かけてゆっくりと温められた空間に水音のようなSEが染み渡ると、この日のステージを支えるaie(G:deadman / kein)、晁直(Dr:lynch.)、西山小雨(Key)がステージに登場。最後にスーツを纏ったこの日の主役seekが現れると歓声が起こった。



その声がseekの掲げる右手に吸い込まれると、始まったのは「不透明人間」だ。seek初のソロ音源として2025年3月にリリースされた同曲は、“ラッタラリラリタラリラ”と繰り返されるサビが癖になるナンバーであり、ライヴでは音源以上の湿度をもって届けられる。アップライトベースを携えたseekの醸し出すムードは妖艶で、まさに大人のロックの社交場といったところだ。“来世はいらない ねぇ そうでしょ?”と問いかける詩世界が、渋く深い歌声と深く絡みついて、狂おしい情念めいたものを感じさせる。退廃的に声色を変えていくブレスも含めて、ひとつひとつのサウンドが情景に色を加えていく様は穏やかなサウンドと反比例するようにスリリングだ。
間髪入れず、西山小雨のピアノが響き渡った「相食む」ではアダルティな音色がポエトリーリーディングのような歌唱を色づける。静と動を往来するボーカリゼイションは、それだけで聴き応えのあるもので、コロナ禍で弾き語りを始めたseekの歌唱が説得力を感じさせる。続く「稀代の鼠」でフロアを小気味よく揺らすと、MCへ。
「おい! 渋谷! ようこそ! 今日は<seek FIRST ONEMAN LIVE「白日をたゆたう雨虎、水に溶ける数列」>。本日は1日よろしく!」──seek
といつものseekの口調でアツく謝辞を投げかける。彼のイメージカラーである緑のライトが続々とフロアで点灯し始めると、メンバー紹介を経て、「ここで本日のスペシャルゲストを紹介します」と呼びこまれたのはMIMIZUQの森 翼。「音楽が好きな人! ライヴハウスが好きな人! seekが好きな人!」と場を温めると、seekも盟友の登場に顔をほころばせる。

ここでは森 翼の「アンフェア」とMIMIZUQの「Piggyback」がプレイされた。「アンフェア」の途中、森の合図で、各楽器とオーディエンスのクラップの音量をミニマムに絞る場面があったりと、音で遊ぶ大人な演出も見事。優しいメロディが染み入る「Piggyback」ではseekがお馴染みのエレキベースに持ち替え、聴覚的にも視覚的にも楽しませてくれた。なお、「うちの相食む坊やが…」に対して「誰が坊ややねん!」と漫才のような軽妙な掛け合いも微笑ましい。
熱量高いステージから一転して、中盤はノスタルジックな空気が会場を包んだ。西山のアコーディオンをフィーチャーしたわらべ歌のような「夜掴奇譚」、残響音まで味わい深い晁直のドラムが冴えわたった「夢みる心臓」と、暗がりのなかで、しゃがれ掠れながら音に溶ける歌唱は実に艶やか。
そして、aieのアッパーなカッティングと、seekの「聴かせてくれよ、渋谷!」という咆哮に導かれ、オーディエンスから「Oi!Oi!」と声が上がると、ふたり目のスペシャルゲストの登場だ。「この人がいたから…この人がいたから、今日、俺はここのステージに立ってるぜ!」とseekから紹介されると、ハットにTシャツ姿というバンドでは見られない軽装のDAISHIが現れた。
seekのつま弾くベースのイントロに歓声が上がったのは、seek作詞作曲によるPsycho le Cémuの「Paranoia Flyng Fish」。この曲のコール&レスポンスで盛り上げると、続いたのは「シラサギ」だ。seekソロ曲制作のきっかけになったキーマン西山小雨がレコーディングでもピアノを弾いているナンバーだ。この日は印象的なピアノ部分を生演奏で聴くことができた。

ちなみに、seekが所属するPsycho le CémuとMIMIZUQの音楽を表現するうえでシーケンスは欠かせない要素である。だが、今回のソロワンマンはシーケンスレスで構成され、グルーヴはステージ上の演者とオーディエンスの呼吸でのみ成り立つ。この緊張感と自由度の高さはseekソロ編成の醍醐味でもある。
また、森 翼にも言えることだが、信頼するボーカリストをステージに招き入れた際のseekはとにかく嬉しそうで、まさに少年のごとく破顔一笑の表情を見せる。DAISHIの耳を惹きつける伸びやかな歌唱を聴きながら、いくつになっても祝いの日は良いものである、そんな気持ちになった。また、DAISHIとseekのやり取りは、お馴染みの珍妙なものであり、笑いのなかに大きな信頼を感じさせるものだったことは説明するまでもないだろう。seek自身、Psycho le Cémuのファンに森 翼を、MIMIZUQのファンにDAISHIを見せられたことが何より嬉しかったのではないだろうか。
ボーカリスト論的なことで言えば、DAISHIと森 翼という絶対的なふたりとはキャリアも何もかも異なる前提で、seekの歌には目を見張るものがある。その奇抜なヴィジュアルはもとより、ド派手なベーシストとしての第一人者的イメージも持つseekだが、彼の声質がなす歌声は実に芳醇だ。そして、その歌声ありきで制作されたオリジナル楽曲の存在はやはり大きい。
Psycho le Cému曲を歌い上げたDAISHIを送り出してから披露された「白濁に酩酊、泥濘の睡蓮」以降の終盤ブロックは、そういった意味でも、この日のハイライトと言えるだろう。2025年7月リリースの「白濁に酩酊、泥濘の睡蓮」は、序盤よりもしゃがれた声が味わい深い。そして「手拍子ちょうだい!」と煽った昭和歌謡チックな「月と黒猫」を終えると、seekがバンド生活26年を振り返るように思い出を語った。
今のスタイルに至った理由、出会った人々への感謝とともに、「気がつけばどんどん同世代のバンドマンがいなくなった」と寂しさも語ったMCは赤裸々なもの。さらに、自身のこれまでの活動で、時に約束を果たせなかったことにも触れたうえで、「自分のなかに流れる血で、今もバンドマンとしてやれているんじゃないかなと思って作った曲があるんで、その曲を今日みなさんにお届けして、このステージを降りたいと思います。今日はどうもありがとうございました!」と改めて感謝を述べた。

そして本編最後は、再びエレキベースに持ち替えて「not a spell」を披露。これまでの人生と、自身の生き様に向き合いながら、自身を鼓舞する楽曲は、煌びやかなメロディと相まって感動的。人に歴史あり。破天荒なだけがロックではない。生き様を曝け出しているからこそ、seekは愛されるのだろう。彼呼ぶ喝采が会場を包み込んで本編終了となった。
アンコールでは全4曲をプレイ。ふたりのスペシャルゲストも登場して、ツインボーカルでPsycho le Cémuの楽曲と、MIMIZUQの楽曲を披露する一幕も。それぞれの声質との相性はもちろん、DAISHIと森 翼はキャラクターのマッチングも言うことなし。至福の時間となった。

4人編成に戻って届けられたラストナンバーは「行雲流水」。楽曲タイトル通り、流れるままに身を委ねるように生きていく道のりを歌った同曲以上に、この夜のクロージングとして相応しい曲はないだろう。シーケンスレスの編成だからこそ、メンバー間が織りなすグルーヴィなアンサンブルが終始心地よく、seekの描く世界へ没入することができた。ディープな音楽ではあるものの決してニッチではなく、深呼吸したあとのような爽快感をも感じさせたのは4人の熟練の技でもあるのだろう。
いかにseekが愛されているかが伝わり心温まる会心のアクトだった。余談だが、この日纏っていたVivienne Westwoodのスーツは、長年お世話になった恩師であるSWEET HEART坂上社長から譲り受けたもので、初ワンマンの際に着ようと心に決めていたそうだ。彼の実直な人柄を表すエピソードだが、こういったところも長く愛され続ける理由なのだろう。

しかし、これだけ澄みきった想いを浴びてしまうと、どうしても気になるのは次の展開だ。だが、現状のところ発表されている予定はない。それでも、幕を下ろす前に、すでにいくつもの楽曲がレコーディング済みであることに加え、次は“旅”で会いたいとの想いを明かしてくれた。そして、Psycho le CémuとMIMIZUQの活動にもフォーカスしたくなる一夜となった。
撮影◎インテツ
■<seek FIRST ONEMAN LIVE「白日をたゆたう雨虎、水に溶ける数列」>2025年9月14日@渋谷CHESEA HOTEL セットリスト
SE. dot
01 不透明人間
02 相食む
03 稀代の鼠
04 アンフェア w/ 森 翼
05 Piggyback w/ 森 翼
06 夜掴奇譚
07 夢見る心臓
08 Paranoia Flying Fish w/ DAISHI
09 シラサギ w/ DAISHI
10 白濁に酩酊、泥濘の睡蓮
11 月と黒猫
12 not a spell
encore
en1 永遠の微熱
en2 鎮む森に降る慈しみの雨 w/ DAISHI&森 翼
en3 もう一度、くちづけを w/ DAISHI&森 翼
en4 行雲流水

■3rdデジタルシングル「月と黒猫」
2025年12月3日(水)配信開始
配信リンク:https://nex-tone.link/A00206297
Music Video:https://youtu.be/26WJslhjbRs
▼参加ミュージシャン
aie(G:deadman / kein)
晁直(Dr:lynch.)
西山小雨(Pf)
■凡思社企画<水槽のたゆたう>
12月27日(土) 東京・下北沢演家
第八十三回 魚ノ眼会員限定:open12:30 / start13:00
第八十四回:open17:00 / start17:30
2月15日(日) 東京・下北沢DY CUBE
第八十五回 魚ノ眼会員限定:open12:30 / start13:00
第八十六回:open17:00 / start17:30
■凡思社企画<ぽろろん猫とふらふらの死神とたゆたう魚>弾き語り三人旅
出演:Közi、aie、seek
4月04日(土) 群馬・高崎 花唄倶楽部
4月05日(日) 新潟 6studio
4月18日(土) 東京・下北沢 演家
4月19日(日) 愛知・名古屋 静かの海
open17:30 / start18:00
チケット発売日:2026年1月18日〜
■凡思社企画<ぶらりナゴム旅>弾き語り三人旅
出演:小林写楽、aie、seek
5月16日(土) 兵庫・神戸CHICKEN SHACK
5月17日(日) 広島 音楽喫茶ヲルガン座
open17:30 / start18:00
5月31日(日) 東京・板橋ファイト!
open18:30 / start19:00
チケット発売日:2026年2月14日〜
関連リンク
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