【インタビュー:前編】黒夢、リテイクアルバム『Drug TReatment 2026』『CORKSCREW 2026』完成「人生の流れを確認することができるような作品」

2026.07.25 19:00

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黒夢が7月15日、自身初のセルフカバーアルバム『Drug TReatment 2026』『CORKSCREW 2026』を2作同時リリースした。オリジナルとなる『Drug TReatment』(1997年発表)と『CORKSCREW』(1998年発表)は、1997年から1998年にかけて約230本という圧倒的本数のライヴを敢行するなど、1999年1月に無期限活動停止した黒夢の最も剥き出しな攻撃性と破壊的で刹那的な疾走感を極めていた時期に産み落とされたアルバムでもある。代表作とも言える2作品が約30年の時を経てリテイク(再録)された『Drug TReatment 2026』『CORKSCREW 2026』は、当時の黒夢の最終形がさらなる進化を遂げて現代版にアップデートされたものだ。

両アルバムには、それぞれ12曲(+ボーナストラック)ずつ収録。再始動後のライヴで披露されてきた楽曲が選りすぐられたことに加え、ライヴに欠かせぬ「Sick」や、10数年前の再始動当時のオリジナルアルバム収録曲 「13 new ache」「I HATE YOUR POPSTAR LIFE」の“2026 mix”もボーナストラックとして収録された。レコーディングに参加したサポートメンバーは、ドラムにKatsuma(coldrain)。ギターにDaiki (ex.Crossfaith)と田中T幸彦(KEMURI)、『CORKSCREW』のアレンジも務めた土方隆行、シングル「少年」レコーディング当時にも参加した西川進。さらにホーンセクションとして栗原健とTabu Zombie(SOIL&”PIMP”SESSIONS)の演奏も華を添えた。

そしてリリースされた『Drug TReatment 2026』『CORKSCREW 2026』はアルバムランキングで1位と2位を独占するなど、好リアクションを獲得。そのサウンドは、オリジナルの曲構成のまま、敢えてアレンジを加えずにリテイクされた楽曲の数々に、約30年という年月に培われた黒夢の今が浮かび上がった仕上がりだ。“原曲からキーが上がった” “テンポが上がった”など、もともと突進力の高いパンキッシュなナンバーがさらに研ぎ澄まされたことも話題だが、注目すべきは、当時を凌駕する現在の黒夢の精神性と音楽性の高さにある。BARKSでは前編と後編に分けて、清春と人時のロングインタビューをお届けしたい。前編では『Drug TReatment 2026』『CORKSCREW 2026』の深部に迫る。

   ◆   ◆   ◆

■バレーボールにたとえるなら
■球筋や威力、チームプレイの全部が奇跡

──『Drug TReatment 2026』と『CORKSCREW 2026』という2作のリテイクアルバムが完成したばかりの今の手応えはいかがですか?

清春:どうですか、人時さん。

人時:“ああ、よく頑張ったな”というのが率直な気持ちですね。いい思い出ができたという感じかな。最近やっとマスタリングが上がって納品した記憶があるので、本当にギリギリまで根を詰めて完成したアルバムです。トータルとして清春さんの歌がすごくいいなと思いながら、ミックスを聴いていました。

清春:あらら。

人時:冗談抜きの率直な感想です(笑)。

──清春さんはいかがですか?

清春:手応えはわからないけど、今回黒夢がリテイクアルバムをリリースするっていうことに気づいて、聴いてくれる人がいるわけじゃないですか。当時のファンの人たちもそうだし、これまで知らなかった人も。オリジナルのリリースから30年ぐらい経ってるので、時の流れをわかりやすく目印にできる作品になったという感じでしょうか。

──目印ですか。

清春:聴いてきた人たちの人生とか、大人になってしまったこととか。このリテイク作品を聴いてるってことは、今でも大人になりきれてない部分があるということですからね。当時聴いてたけど、今回の作品を聴かない人もいるでしょうし、逆に当時聴かなかったけど、今回新たに聴く人もいるでしょうから、そういう意味では、いろいろな人の人生の流れを確認できるようなアルバムなんでしょうね。

──なるほど。ユーザーにとってこの30年間を確認できると。黒夢自身にとってはいかがでしょうか。

清春:僕らには確かな30年前があって、若いアーティストには30年後がある…かもしれない。っていうことの違いが明確になったアルバムなのかな、という気がしています。20代とか30代ではこの類のアルバムは出せないし、僕らくらいの年齢の人でもこういう作品をリリースすることが可能ではないアーティストがたくさんいる。やれるかやれないかという状況やポテンシャルも含めて、いろいろなことがわかりやすく露呈するアルバムじゃないかな。その人がどういう人生を歩んでいるか。……っていうような総合的な話でまとめさせていただいて、今日の取材は終わりってことでいいですか(一同笑)?

人時:今の話で終わったら面白いな(笑)。

──すごくいいお話でしたけど、ここで終わらせるわけにはいきません(笑)。今回のリテイクアルバム2作品にはスタジオ盤であるにもかかわらず、ライヴ盤のような凄味が感じられて、“最高!”のひと言で簡単に表現できない密度の濃い内容になっていると思います。『Drug TReatment』と『CORKSCREW』には’90年代のオリジナル盤が存在するわけですが、2026年の今、録り直すにあたって、心がけたことはありましたか?

清春:まったく新しいバンドの新譜だとしても、カッコいい作品だと思うんですよね。でも、そこにリリースから30年という尾ひれがついてくる。オリジナル盤があるなか、今回僕らが何をやったかというと、基本的にはノーアレンジ。やろうと思えばイジることもできるんですけど、今回、曲の構成とかキメにおいてアレンジはしてない。

──当時の曲構成のままということですが、なぜそうしたのでしょうか。

清春:僕らは、黒夢以降もお互いに違う現場で休むことなくプレイしてきたので、結果、そのことがすごく出てるのかなって気がします。黒夢の10数年前の再始動とかその活動も含めて、今の我々がやるとこうなるってことが。黒夢の活動がない間に、人時さんが釣りしかしてなかったならこうならなかったでしょうし、僕もフラフラしてただけだったらこうならなかった。お互いのタフで強靭なところが出て、ソリッドな仕上がりになった。やっとまともなバンドサウンドになった感じはするかな。

──では、レコーディング自体はスムーズに?

清春:緻密に綿密に作った感じはしないけど、いろんなことを考えながら、制作の途中段階では“もうちょっと”と思ったりもしました。リリースに間に合うか間に合わないかしかなかったですからね、最後は(笑)。

──人時さんはいかがですか? サウンド的な突破力とか突進力を感じさせる仕上がりになっていると思うのですが。

人時:オリジナルアルバムとされている2枚は、当時の新曲としてレコーディングしたわけじゃないですか。清春さんが「こんなのができたよ」って作ったデモがあって、その譜面があって、それに対してどうバンドアレンジしていくかっていう作業をして、制作したのがオリジナルアルバムで。そこからライヴの場でその新曲の演奏を重ねていくわけですよね。『CORKSCREW』に関しては当時120本近くのツアーをやりましたし。そうすると、“ライヴを経てこうなっていった”という曲の形が出来上がっていくんです。そこから黒夢は活動休止に入るんですけど、10数年前の再始動時にもライヴでやったし、去年の再始動時のライヴでもやってきた曲だから、2026年に生まれた新曲とはわけが違う。当然、身体に染みついてて、剥ぎ取ろうと思っても剥ぎ取れないようなものにはなってるんです。サウンド的な突破力とか突進力という意味では、そこは大きいんじゃないかな。

──納得です。清春さんのおっしゃった30年という「時の流れ」ですね。

人時:リテイクという話が最初に出た時に、プレイヤーとしては“曲構成から構築し直す?” “プレイもリアレンジする?”とかってことが頭をよぎったんですよね。最初は“昔の音源と比べられたくない”みたいな気持ちもあったんですけど、清春さんがさっき話したように、そういことではなくて。曲はほぼオリジナルの状態で、細かな違いはあれども基本の骨組みは変えないっていうスタートになった。そうしたら、結果論かもしれないけど、ライヴで培ったものが形としては出たのかなって感じてます。

──今回リテイクするにあたって、オリジナル音源を振り返る機会もあったと思うのですが、当時の歌や演奏についてはいかがでしたか?

清春:シビれますね(笑)。本当にシビれます。

人時:ははははは!

──それはプラスorマイナス、どちらの意味なのでしょう?

清春:いやまあ、当時の自分は何度もこれをチェックしてOK出してたんでしょうからね。その事実にシビれます。シンプルに声も出てなければ、ピッチもリズムも滑舌も全部悪い。全部よくないですね。ただ何て言うんでしょう……嘘をつくのが上手かったんだな(笑)。歌えないんだから嘘をつくしかなかった。

──それもひとつの技だったわけですよね。

清春:そうだね。それは僕が今振り返って思うことで、当時はそう思ってなかったんだけど。それしか出来ないから、本当のことを言ってもなかなか信用してもらえないので嘘をつこうみたいな。嘘をつこうというアイデアはあったのかな、嘘をつけたっていうのはすごいなっていう。それが変に清春っていう人の歌のイメージになった。まぁ今の僕がみるとヘタな嘘なんですけどね。

──興味深い話です。それがリテイクアルバムでは?

清春:今はもう、バレーボールにたとえるなら、サーブ、レシーブ、トス、スパイク、その威力やスピードや球筋、チームプレイの全部が奇跡。こっそりネット越しに入れたりとか、そういう嘘はついてない。同じ人間とは思えないぐらい。“歌い方が変わった”なんていうレビューをたまに見かけるけど、“変わってるわけがないよ”とお伝えしたいですね。ちゃんと歌というものを知っただけだということですね(笑)。

人時:ふふふふ。

清春:ただ、聴いてる人の、昔のいい思い出には勝てない前提。でも、本人はヘタな嘘だったんだと思います(笑)。

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