【Specoal】佐野元春~スペシャル・ディスクレビュー~
20thスペシャル【番外編】 ~スペシャル・ディスクレビュー~ 文●佐伯明 |
■『The 20th Anniversary Edition』 デビュー曲「アンジェリーナ」から新曲「イノセント」まで、 20年間に生み出した楽曲の中から代表作をコンプリートしたベストアルバム。 |
CD 2枚組 Epic Records ESCB-2080~2081 3,990(tax in) 発売中 | 佐野元春が「アンジェリーナ」でデビューした'80年、僕は大学の2年だった。 ブルース・スプリングスティーンの原稿を雑誌『rockin' on』に書き、日本のソングライターにもそうした傾向の人たちが出て来始めたことをキャッチしていた。 「アンジェリーナ」の疾走感は見事だった。 僕は買ったばかりの中古車に「アンジェリーナ」ばかり何回も録音したテープを積んで、夜の湖まで何度も飛ばしていた。その疾走感は「ダウンタウン・ボーイ」や「彼女はデリケート」に引き継がれた。そして、いつしかその疾走感は「コンプリケイション・シェイクダウン」の乾いた絶望に変わり、そしてまた「レインボー・イン・マイ・ソウル」の“優しさの奪回”へと豊かに転化した。 僕は佐野元春のSONGSと旅をしていた。旅の途中で、何が大事なことなのか?を学び、取り逃がしてはまた学んだ。それは、繰り返しではあったが、惰性的ループなどでは決してなかったと思う。 そして、僕は大人になった。だから、このアルバムにはこう言いたい。 「本当にありがとう」と。 |
■『LIVE ANTHOLOGY』 20年間に行なった膨大な数のライヴ。その記録映像の中から、 貴重な“瞬間”をピックアップしたライヴ映像集。 |
DVD2巻組豪華パッケージ・永久保存版 <PART1> トラック1~16 <PART2> トラック17~32 Epic Records ESBB-2038~2039 8,925(tax in) 発売中 VHS2巻組豪華パッケージ・永久保存版 <PART1> トラック1~16 <PART2> トラック17~32 Epic Records ESVU-538~539 8,925(tax in) 発売中 | アルバム『VISITORS』がリリースされるタイミングで、対マスコミのために小さなギグが催されたことがあった。場所は茅場町(東京・中央区)駅近くにある小さなレストラン。ライヴハウスでもイヴェントホールでもなく、ましてや茅場町などほとんどポップミュージックには無縁だと思われる場所だ。 MOTOはハンチングのような帽子(ジョン・レノンがそれとよく似た帽子をかぶっていた)をかぶり、後ろ髪のいちばん長いところに細い付け毛をし、ポエトリィ・リーディングとSONGの中間のようなパフォーマンスをした(後に聞いた話では、その付け毛はNYCで死んでしまったプエルトリカンの友人のものだったという)。 その時のMOTOの横顔は、ダウナーと覚醒が混在する印象的なもので、それを今、憶い出した。 Break Through=突き抜けるということを、僕は佐野元春の初期のLIVEで知覚体験したのだが、“沈思を表すパフォーマンス”があることをその時のギグで知った。 |
■『GRASS- The 20th Anniversary Edition's 2nd』 王道の佐野サウンドを集積した『20th Anniversary Edition』の対極とも呼べる、 オルタナティヴ・ナンバーを集めた“アナザー・サイド・ベスト”。 |
Epic Records ESCB-2190 3,059(tax in) 発売中 | 「自分の確固たる場所みたいなものを探しきれずにいて、どこか淋しがっている。 だから人生に対して、非常に明確なヴィジョンを持っているというよりかは、自分の人生をどのように扱ったらいいのか…ちょっと手におえない、といった風情の、そうした男。 これは、僕にかなり近い。 そして、その主人公は、ある種の酩酊感を伴いつつ、彷徨っている感じを持っている」 アルバム『GRASS』の主人公は、100パーセントとは言えないまでも、佐野本人に近いという。 どんなに己のキャリアが確立しても、自分の中に欠損部分があることを作品を通して提示していくこと…それが優れたソングライターだとすれば、佐野は『GRASS』でそれを実践していると言えるだろう。 “酩酊感を伴いつつ彷徨っている”佐野自身に近い楽曲内主人公。 ステキではないか? 人生を流れ渡るには、こうした感覚が不可欠だと思う。 |
■『Spoken Words』 言葉の音楽的表現/スポークン・ワーズを収録したCDブック。 MOTOのアグレッシヴな言語表現の記録を集約した作品集。 |
(佐野元春WEB SITE限定販売作品) E30100003 3,780(tax in) CD書籍 2000年12月末発送 | セントラルパークにほど近いホテルの、1階にあるカフェ。 カプチーノをシナモンスティックで撹拌しながら、遠くを見ていた2年前。 “おそらくは自分一人いなくてもなんら変わらなかったであろうこの世界”を感じ、Blueになるわけでもなく街路をピンボケ的に見ていた瞬間、<眠たげな世界を傍らに>という一節を含む佐野元春のSpoken Wordsの一つ「リアルな現実 本気の現実」の意味が判った。 その昔、画家/セザンヌが“海”を見つめながら、絵筆を取り描き始めたのは“小川”であったことにびっくりした友人は、おそらく、リアルな“表現という”現実を知らない人間だろう。セザンヌの眼前に広がった、眠たげな世界の一部である“海”の青は、今まさに描こうとしている“小川”の青の誘導路になったのだ。 佐野元春の、新編集盤エレクトリックガーデンと呼ばれる『Spoken Words』は、リアルな表現という現実が詰まっている。 リアルな現実とは、佐野元春が一生懸命汗水垂らして働いているとか、そうした現実ではない。表現という現実に本気で向き合っているということではなかろうか。 『Spoken Words』には、言葉が言葉を、音が言葉を紡ぐように、続発するものが淀みなくポエトリィ・リーディングという形を成している。 生活必需品に近い詩…傑作である。 |
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