いつも話してるんだ。ナニの大きさで、作家として、人としての価値が決まるわけじゃないってね(笑)
いつも話してるんだ。ナニの大きさで、作家として、人としての価値が決まるわけじゃないってね(笑) |
'94年の結成以来自分たち自身をめめしいと呼ぶ、ピアノを主体にしたギターレスの3人組は、Elton JohnやJoe Jackson、Billy Joelといった先輩キーボード弾きたちを超えようと努力を続けている。 ノースカロライナ出身の、風刺的で妙にセクシーなBen Folds Fiveは、'97年に、メランコリーでキャッチーな、どちらかと言えば物議を醸し出すようなバラード「Brick」で頭角を現した。 このトリオは、ピアノ、ベース、ドラムの編成にますます深入りし、2作目のクロスオーバーなアルバム『Whatever And Ever Amen』でそのスタイルを完成させた。3rdアルバム『The Unauthorized Biography Of Reinhold Messner』はオーケストラを加えた華やかな仕上げになっている。 「オーケストラのサウンドが好きなんだ」と、バンドの自然な進歩をしめす洗練されたアレンジについてFoldsは語る。 「最初のアルバムで弦楽器と管楽器を使うこともできた。だが、他のメンバーが大反対したんだ」 Foldsは、曲作りについて熱心に勉強しており、3分間のポップミュージックのファンでもある。さらに、'98年にはソロアルバム『Fear Of Pop Vol. 1』もリリースしている。 Folds、ドラムのDarren Jessee(このインタビューの応答から判断する限りでは、グループ一のおどけものであるようだ)、ベースのRobert Sledgeが最近ツアーでL.A.に立ち寄ったとき、LAUNCHの編集責任者Dave DiMartinoがインタビューした。 |
LAUNCH: この前のアルバム『Whatever And Ever Amen』は評判がよかったようですね。『The Unauthorized Biography Of Reinhold Messner』をレコーディングするときに、それはなにか影響を与えましたか。 BEN: 基本的には、レコードを作るのにたくさんお金が使えたね。とは言っても、俺たちはやりたいことをやって行くだけだけどね。支持してくれている人たちがいるというのは、仲間意識が生まれるし、違いも出てくる。 DARREN: まず、長いリムジンに乗ってスタジオを行き来するのはお金がかかるし、ブランデーの全銘柄をバーに揃えておくのも高くつく。でも、去年一年、いいレコードを作るのに必要なだけの十分な金を稼ぐことはできた。 ROBERT: 前のアルバムはBenの家で作ったんだ。彼が家を出て、俺たちがスタジオを彼の家に持ち込んで。これはちゃんと計画が立てられていなくてね。ちょっと条件が悪かった。時間が限られていて、それに縛られていたから。でも、大金をかけていたわけではないし、大物プロデューサーを雇っているわけでもなかったので気は楽だった。最初のプレスが全部売れて予算が増えたんで、L.A.の大きなスタジオに行って本来の方法でやった。いろいろな音の入ったおもしろいレコードを作りたかったんだ。いいレコードがたくさん作られた場所でやるというのはインスピレーションがわくものだよ。毎日、コーヒーを取りに行って、壁に掛かったゴールドディスクを見たよ。どのディスクにも大好きな曲が入っているんだ。 LAUNCH: この前のレコードでは、歌の間に冗談なども交えて、確かに気取らない雰囲気を醸し出していますね。今度のアルバムはもっと形式張ったアルバムにするべきだと思ったのですか。 DARREN: 俺たちはただ楽しんでいるだけだとか、俺たちはクレージーな連中の集まりだからそんなものを入れたんだと思っている人が多い。でもそうじゃないんだ。あの冗談は、レコーディングの後6か月経ってから入れたんだ。今度のレコードでは入れる必要はないと感じていた……少しはあったけど、あえて入れるほどでもないだろうということになった。 LAUNCH: みなさんが進歩してくるにつれて弦楽器や管楽器、さらにアレンジの必要性が増えてきているのではないでしょうか。この点についてはどう考えていますか。 ROBERT: アレンジについては、長い間の希望だった。3人でやらなければならない和声的な責任を減らして、サウンドの幅を広げたかったんだ。普段はピアノでストリングスパートの雰囲気を出し、ベースでチェロとコントラバスの全パートをやるんだ。コーラスでわざとらしいホーンのまねまでした。長い間やりたいと思っていたことなんだ。重荷になるかもしれないし、それでただのロックバンドに戻ることになるかもしれない。でも、まだわからない。 BEN: まだやりかけたばかりなんだ。アルバムでは、いい格好をして演奏した。小さい頃に、昔のウェスタンスタイルでめかし込んで写真を撮ってもらったことを思い出したよ。大きなオーケストラと一緒に演奏することは、俺には、オーケストラの真ん中に「ウォーリーをさがせ!」の写真を貼り付けているような感じなんだ。 DARREN: オーケストラの質感というものを感じてみたかったんだと思う。弦楽器は昔からある楽器だし、ピアノとベース、ドラムを囲むと本当に高級な雰囲気になる。大半のバンドが進歩する上で通る道さ。はじめは制作に反対でも、だんだん慣れてきてそれに浸れるようになる。俺たちは今、浸っている真っ最中さ。 LAUNCH: 今度のアルバムはヘッドホンで聴いてもすばらしいサウンドですが、予算があれば、前のアルバムでも弦楽器や管楽器を使っていましたか。 BEN: たしかにヘッドホン向きのアルバムだ。オーケストラにはずっと興味を持っていた。大勢の人がひとつになって歌ったり演奏したりするサウンドが好きなんだ。時間と金があれば、9歳のときにやっていたと思う。ここまで来ることができて本当にうれしい。他のメンバーも興味を持ち始めている。はじめはもっとロックバンドぽい考え方をしていたんだけどね。俺は最初のアルバムでもストリングスを使いたかったんだけど、他のメンバーが大反対したんだ。 LAUNCH: Reinhold Messnerとは誰ですか。アルバムタイトルになったわけは何ですか。 BEN: 名前が気に入っただけさ。Darrenが高校にいた頃、別名を使っていたんだ。その名前がReinhold Messnerだった。Darrenは長い間、この名前でいたわけだが、誰も彼の正体を知らない。この名前のエネルギーが好きなんだ。何か特別なものを感じる。でもちょっとのろまな感じだ。後になってわかったんだが、この名前の持ち主は巨漢で、ヨーロッパのモハメド・アリみたいな人だそうだ。有名人なんだよ。 ROBERT: Reinhold Messnerはオーストリア出身の有名な登山家なんだ。エベレスト登山の本を開けば、必ずこの人の名前が載っている。命知らずでまったく正気の沙汰じゃない。アルバムの名前を決めたとき、どこの誰かなんてまったく知らなかった。どこかでインタビューを受けたとき、誰かが教えてくれて、そのとき初めて知ったというわけさ。それで早速彼の名前を使わしてくれるように頼んだんだが、彼はとても好意的だったよ。 DARREN: 彼のことでは、ちょっとした論争がある。彼はオーストリア人だと言う人もいればイタリア人だと言う人もいる。彼は酸素ボンベなしでエベレストに登頂した最初の人なんだ。頂上ではマリファナを一服やったそうだ。彼は開拓者で山男なんだ。凍傷で足の指をなくしている。Yediを見たと主張している。本当におもしろい男だよ。 LAUNCH: アルバムの写真に写っている人たちは誰ですか。どうしてこのアルバムに使うことになったんですか。 DARREN: 前にいるのは俺の祖父だ。後ろが親父。アルバムに俺の家族の写真を載せるのに、他のメンバーを締め上げたと思うかもしれないが、みんな、自然とこの写真に興味が集まった。俺たちの音楽に合ってると思ったんで、使うことにしたんだ。 BEN: このレコードでは自分たちであらゆることを決めていったんだけど、そのやり方は自慢できるものだった。それほど深く考えたわけじゃないけどね。このアルバムは伝記のような感じだと思った。だから、それ風にやったんだ。レコード会社のデザイン担当者にアイディアをぶつけてみた。みんながそれぞれの家族の写真を持っていたんだ。俺は中古品屋に行って、今世紀初めの見たこともない人が写っているモノクロ写真を買ってきた。それと本も何冊か渡した。10ほどアイディアができあがって、この写真が一番合っていると感じたんだ。 ROBERT: バックカバーはDarrenの親父さんと小さな女の子たち。細い子や太った子、あらゆる種類の子が揃っていてこれが彼のスタイルってわけ。彼はみんなをかわいがっている。ちょっと笑ってしまうんだけど、親父さんはDarrenに、背が低くてイジワルな女とは結婚するなと言っていたんだって。前にいるのはDarrenのおじいさんだ。40歳の頃、テストパイロットをしていたそうだ。事故で亡くなったそうだが、いい話が残っている。パートナーであるもう一人の命知らずのパイロットに「俺に万が一のことがあったら、おまえに妻の面倒を見てほしい」と言ったそうだ。それで、その男は彼女と結婚したんだ。だから、Darrenのもう一人のおじいさんもテストパイロットなんだ。 LAUNCH: 留守番電話の男は誰ですか。この曲はいったい何のことですか。 ROBERT: みんながL.A.にいるとき、Benがいつものように留守番電話をチェックしていたんだ。1日に12~15回やってる。この変なメッセージを残したのはBenの親父さんで、朝の6時半に起きてすぐ入れたらしい。親父さんは、Benが頭ばかり使っていて、運動不足なのを心配しているんだ。宇宙飛行士ジョン・グレンの宇宙滞在から類推されることを延々と述べたというわけさ。Benがこのテープをみんなに聞かせてね、訳がわからないといった様子だったけど、天才じゃないかと言って飛びついたわけなんだ。すぐにレコーディングして音楽に仕立てた。 BEN: ちょうどこのアルバムを作っているときでね。このテープを聞いてとてもクールだと思った。スタジオにいた人にもスピーカーを通して聞いてもらって、レコーディングすることに決めたんだ。ミキシングがすんだものや失敗作なんかのウォームアップ曲を後ろで流したらぴったりだった。別の場所に入れれば、また別物ができる。これはレコードのテーマにも通じるんだ。頭を使い、直感を信じ、つまずきながら人生を終える。知性を養う。これが一番大切なことなんだ。かなり禅的だろう? DARREN: 明らかに、Benの親父さんは重症のマリファナ中毒だ。宇宙における身体の質量について独語しているあたりにその兆候が見受けられる。それ以上は言えない。早く助けが来ることを望むよ。 LAUNCH: ツアーにも出て、最新アルバムも売れて……個人的な関係に何か障害になるようなことはありましたか。 BEN: どの仕事でも同じだと思う。そのように変わること、それが仕事だと思う。お決まりなんだよ。もちろん、個人的な生活にも影響はあるさ。「普通の」個人的生活なんて送っているやつはいないと俺は思う。みんな強くなる必要があるし、冷静でいることが重要だ。世界で一番難しいこととまでは言わないが、普通でいることは本当に難しいよ。 DARREN: ガールフレンドと旅行するとき、俺がファーストクラスで彼女がエコノミーなんていうときには緊張するよ。ふたりの関係が壊れかねない。一番の問題は、移動が多くて忙しすぎることだ。誰かと一緒にいる時間も限られてくる。強い絆で結ばれていることが大事で、その人のことをよく知っておくことが肝心だ。1年のうち、8か月か9か月も家を空けていると、シミのひとつやふたつすぐに忘れてしまう。長い間家を空けていると、ひずみも出てくる。 ROBERT: 俺はよくわからない。ガールフレンドや家族に全然会えないとか、いつも同じやつと顔を合わせているとか、特に滅入ることはない。基本的に、ツアーバスの中にこもって暮らしているわけだし。そこに座って、毎度同じことばかり話している。それを除けば、すばらしい人生だよ。ロックンロールを目指している人は、ここのところを考える必要があるね。 LAUNCH: 歌詞の自伝的な部分によって、この曲は私のことだと言って来る人はいますか。 BEN: ときどきあるよ。「この歌、何のことだか知ってる」という具合にね。俺が誰か特別な人のことについて書くときは、ほとんどの場合、その人のことがわからないように他の人と混ぜ合わせるか他の人と置き換える。本人に気づかれると、俺がやばくなるからね。今でもやめられない。俺の作る歌詞は、実際に存在するものに関連していることが多い。 DARREN: 1曲か2曲は自分のことだと思っている人はいると思うし、たぶんそのとおりなんじゃないかな。結局、みんな、歌の中で自分の名前が使われたり、自分のことについて書かれるのがうれしいんだ。それで満足しているんじゃないかな。実在の人物について書き、その名前を別の名前に変えるのが一番いい方法だ。 ROBERT: ほとんどの人は、自分のことについて書いてもらうことが好きなんだと思う。俺が16歳のとき、負け犬だと思った友人のことについて曲を作ったことがある。彼は、それをすばらしいと思ったそうだ。俺は、実際には、そいつの見栄を非難していたんだけどね。彼は音楽に大いに興味を持っているようなことを言っていたが、本当はそんなに興味を持っていたわけでもないってことをね。ひどい生活の隠れ蓑に利用していただけなんだ。すべて本当のことだし、黙っていればよかったんだが、歌にしてしまった。でも彼は、前にも増して大切だと感じたらしい。どんな人のどんなことでも書いたらいいのさ。みんなそれを気に入ってくれる。 LAUNCH: 今度のアルバムの中で「L.A.には住みたくない」と歌っている箇所がありますね。これは、ロサンゼルス出身で別の固定観念を持った人に対する固定観念だと思います。南部出身のみなさんはどんな固定観念に出会ったことがありますか。 BEN: 固定観念は好きだね。俺は中流階級の白人だから大きくブレイクするはずだ、なんてね。こんなの当たっているわけがない。中流階級の白人は、みんなと同じようにバカでまぬけなんだ。固定観念を正しく利用すれば、人の長所も短所も誉めてあげることができる。L.A.のことに関しては、個人的にはL.A.は好きじゃない。いつもL.A.問題を抱えている。L.A.に住んでいる人に会うか会わないかの選択に迫られることがある。普通は会わないことにしている。Reinholdの個性にはとても東海岸的なところがあるんだ。ReinholdがL.A.に住んでいたら、Reinholdでなくなる。 ROBERT: 映画に出てくる南部人は、無知な国際人といった感じで、「インターネットだって。クリック、クリック、クリックって、バカみたい」とか何とか言っているわけさ。ヨーロッパに行って南部の出身だって言ったら、奴隷がいなくなってがっかりだろうと言われる。 DARREN: 映画でアホな役回りが必要なときは、南部の無教養な白人のしゃべり方をまねる。映画だけに限ったことじゃないけどね。でも、俺は南部を愛しているよ。俺の故郷だ。生活するにもすばらしいところだと思うよ。 LAUNCH: 「南部の無教養な白人(redneck)」という言葉を使われましたが、歌詞にも、曲のタイトル「Your Redneck Past」にも使われていますね。自分たちのことを“南部の無教養な白人”と思いますか。 BEN: アメリカ人のほとんどが“南部の無教養な白人”だと思う。そこには、ある種の強さと堅牢さがあると思う。ヨーロッパ人みたいに何千年も祖先をさかのぼることができるほどのルーツはないが、俺たちは無教養な白人の雰囲気を共通して持っていると思う。俺は南部出身だから、世界の歴史や文学、将来なりたいことなどについて特に学んだという気はしない。自分は先に行く気はないように振る舞うのもみっともないことだ。南部の人には、アクセントを直すのに発声法を習っている人や、正装の仕方を習う人、美容整形を受けている人もいる。そんなことをしたら、しっかりとつかまえておくべきもの、つまり自分自身を失ってしまうことになる。“Your Redneck Past”は、こういったことを違った角度から見ている。Peter Gabrielは「Big Time」でもっとうまく訴えかけている。自分自身を失って先へと進む。俺が「Your Redneck Past」を書くときに、いつも考えていたことだ。 DARREN: 少しはそういう要素が自分の中にあるはずだ。みんながね。俺があの曲を誰かのために演奏したときに、まったく笑いもせず、共感もしなかったとしたら、その人は先祖代々貴族の出だろう。でも、ほとんどの人はどこか共感できるはずだ。だって、俺たちはアメリカ人なんだから。 ROBERT: そうだね。北東部の工業地帯に比べたら、ノースカロライナはどこに行っても田舎だよ。俺が住んでいたところには天才がいた。彼らの脳味噌は知識であふれていたよ。でも、彼らのマンネリズムは、ニューヨークで言われている知性と比べたら、完璧に人間以下のものだ。だから、やっぱり南部は無教養なんだということになると思う。アクセントは直せても、それから逃れ切ることはできないさ。 LAUNCH: “Magic”について聞かせてください。この曲はどのような経緯でできたのですか。どうしてレコードに収録されることになったのですか。 DARREN: あの曲は、ツアーから帰って家にいるときに4トラックで録音した。俺が住んでいるところの女性保護を目的とした慈善CDとしてリリースする予定だった。でも、バンドでやってみたらサウンドがよかったんで、レコードにも収録した。だから、2種類存在している。 BEN: Darrenはたくさん曲を書いている。そのどれもがいいやつばかりなんだ。この曲は、俺の心に感じるものがあった。Robertも同じだったと思う。だからバンドでやったんだ。RobertもDarrenも、とてもいい曲を書くんだ。バランスが難しいし、信頼がなければうまくいかない。Darrenは偉大なソングライターになりつつあるし、Robertもとてもおもしろい曲を書く。2人の個性がバンドの源だ。アルバムの声と背景はバンドとして集合的にとらえられるから、いい関係を保つことが大切だ。俺は多くの曲を創り出してきた。俺たちのバンドを特徴づける声を創り出してきた。Darrenの書いた曲がそれに当てはまると感じれば、それを取り上げる。 ROBERT: この曲はバンドにも合っていたし、レコードにしないなんて考えはまるでなかった。 LAUNCH: 『Fear Of Pop』について話を聞かせてください。 BEN: 『Fear Of Pop』が変だということではなくて、俺たち3人の個性を反映していなかっただけなんだ。収録するつもりの曲がすぐに拒否されるのはわかっていた。でも、これも俺なんだ。俺は出したかったんだ。お金を失うことになるけれども、いけると思ったら、それを出すのも俺の責任なんだ。買いたかったら、店に置いてあると思うよ。 ROBERT: Benはスタジオで暇つぶしをしたかったんだよ。それで、サウンドやなんかをいじっていたかっただけなんだ。そのことで人と会わないようにしたり、家庭から逃れようとしてたわけじゃない。絶対に。 DARREN: 夜中にバスの中で、Benにはいつも話してるんだ。ナニの大きさで作家として、人としての価値が決まるわけじゃないってね。彼はいつも俺のことを信頼してくれている。ときどき自分を見失うようだけど、自分には向いていないなんて考える理由はどこにもない。ヨーロッパのツアーでは、集団でシャワーを浴びたり、知らない女の子と裸で泳いだりした。立派なモノを持ってるよ。そのままでね。『Fear Of Pop』は、インストゥルメンタルの勇敢な試みだし、おもしろい仕上がりになっている。すばらしい出来だよ。 LAUNCH: 少し前に、Burt Bacharachのトリビュートに参加されましたね。あれ以来、Bacharachの作品やポップミュージック全般に対する関心が再び盛り上がってきているようです。みなさんの音楽は、そのクラシックなスタイルによってポップミュージックへの関心を盛り上げていると言うことができると思いますが、どう考えていますか。 DARREN: そのとおりだと思う。Bacharach風の音楽が再燃しているようだし、うまくできたポップミュージックも出てきている。センチメンタルな歌詞の曲も今は受け入れられているようだ。俺たちがこの7年間やってきた自己嫌悪やメロドラマ風は受けてないようだけどね。この点に関しては、Bacharachに多大な責任があると思う。俺たちが小さい頃、FMラジオで聴いていたポップミュージックはBurt Bacharachの曲ばかりだった。あのとき、俺たち自身が気づかないほどに、俺たちは洗脳されていたんだと思う。 ROBERT: 曲作りが復活してきているんだと思う。最近レコードを作っている人はたくさんいるが、みんなインディーズで成功している人たちばかりだ。明確で正直なアプローチでレコードを作っている。大きなレコード契約が決まると、弦楽器を使ったり、大物プロデューサーを雇ったりして、うんざりするようなレコードを作る。みんなにはアレンジをもっと理解してほしいね。 BEN: 「今の私を受けて止めて、自然のままに」という感じの純粋な表現の方が大切だと思われる時期があるのだろう。それはそれで結構なんだ。でも、本当に表現を大事にするのなら、駐車場に寝そべって腹の底から大声を出す必要だってある。それがいい音楽かどうかは俺にはわからない。バランスがあるんだと思う。今は、技巧を凝らしたメロディックなものが主流だ。巧妙にできたものが売れているし、それから学ぶ必要もあると思う。とてもいいメロディを書くソングライターも何人かいるよ。Elliott Smithもその一人だし、Elvis Costelloはほとんど独力で、ポップソング・ライティングのアートを維持している。4つのマイナーコードだけで構成されているものとは違う。簡単にはできないことさ。俺は「Brick」がヒットしてうれしいよ。単純な曲に思えるかもしれないが、このアルバム全体のオーケストレーションよりも手が込んでいるんだ。 LAUNCH: みなさんの出身地では、もっとハードでうるさいロックバンドが生まれていますよね。みなさんがやっているメロディックなポップ音楽に対して、そんなのは男らしくないぞと言われたことはありますか。 DARREN: ああ、あるよ。それがおかしいんだ。だって、今じゃそのパンクバンドがみんなポップミュージックをやりたがっているんだから。「クールなキッズと飯を食うとき」や「バスの後ろに座るとき」なんか、肩身の狭い思いをした時期があった。今はそんなことないと思うけどね。音楽が開花してきているという感じだ。とてもいいことだよ。時期の問題さ。結局は音楽なんだから。 BEN: 俺たちにとってはよかったと思う。そのおかげで少し鍛えられたから。パンクロック・クラブで演奏する必要があった。ガレージバンドのふりをしてね。もし、俺たちの持っているものをすべてさらけ出していたら、ティーンエージャーにはいいお説教になったと思うよ。メロディを聴くなんて斬新なことだから。Charlotte Churchに初めに何曲か歌ってもらいたい。彼女はウェールズ出身の13歳のオペラ歌手だ。18歳の連中もそれなら聴くだろう。年寄りの太った女が歌っていても誰も聴かないからね。(ノースカロライナ州の)チャペルヒルで演奏するように頼まれて嬉しかったよ。俺たちと同年代かもっと若い観客に向かって言いたいことを主張できたんだから。 ROBERT: 俺は、やつらには嫌気がさしていた。やつらもそのことを知っていた。うるさくてどうにもならないバンドにいたことがある。南部にはメロディックな音楽が十分にない。リズムが主体だ。 LAUNCH: 成功したことで、生活も大きく変わったことと思います。どのような誘惑にかられますか。 BEN: ほしいものを手に入れることに慣れていない。何かを頼むときに怖じ気づくことに慣れている。手に入らないことがわかっていたからね。でも、今じゃ、お金を使ってほしいものを手に入れることができる。まったく我を忘れてしまう。車を買った。今まで、車なんて買ったことがなかった。いや車は買ったけど、300ドルのやつだし、もう何年も乗っている。小切手でいい車を買ったんだ。乗り込んで走らせても、壊れない。まったく変な感じなんだ。50歳になったふりをして、すっかり文無しのふりをして、部屋の隅で遊んでいる。自分のために物事が回転しているのが不思議なんだよ。持って行かれるんじゃないだろうか、すべてなくなって街の薄汚い店に戻って演奏しなきゃならなくなるんじゃないだろうかと、いつも心配している。 DARREN: 俺には、旅行して、なかなか見る機会のない土地に滞在してゆっくり見て回る趣味があるんだ。それから家に戻って休暇を取る。だが、仕事で成功すると、必ずついてくるのが欲求だ。使うお金が多くなって、いらないものまで買ってしまう。気を付けないとね。 ROBERT: 俺は、ずっとウォータースポーツとボートが好きでね。だから、俺が買ったシガーボートが危険過ぎるとか特別法外だとかとは思っていない。来年は、去年ボートにかけたお金と同じ額だけ稼ぐと思う。音楽に飽きたら、いつでもボートに乗って、時速240キロで突っ走るんだ。 LAUNCH: 時間とお金が問題でないとして、レコーディングの予算が無制限だとしたら、どんなレコードを作りますか。 DARREN: ひどいレコードだ。買う価値のないレコード。締め切りがあるから集中できるんだと思う。締め切りを延ばしても、スタジオに入って迷い始めたら、始めにやりたかったことなんて忘れてしまって、なんでもないことで動きがとれなくなる。俺は締め切りが好きだね。最初からやり直すことになるから。 ROBERT: 俺はわからない。スタジオにいることは、瞬間をとらえることだと思う。だから、すべての瞬間をとらえる必要があるのなら、今までで一番退屈なレコードになると思う。でも、俺はほとんどの時間を曲を書くことに使うと思う。2年という期間、6か月という期間をとらえるには、とてつもないエネルギーがいるからね。長い期間働くなんて想像もつかない。きっと手をかけすぎたものになるよ。 BEN: 俺は、レコードを作るのに時間とお金は犠牲にできない。レコード制作というのは、限界を認めてそれに従うことだ。もしやりたいなら、知的になって、自分独自の限界を設定することもできる。しかし、音楽の神様と予算は……同じ神様なんだが……きっと舞い降りて、変化をもたらしてくれる。すべてを自分の思うどおりにすることはできない。自分の宿命に対して50パーセント以上のコントロールを持つアルバムは、たいていひどいものだ。最高のレコードは、Robert Johnsonがホテルの一室で録音した最後の言葉のようなものだ。 LAUNCH: ツアー中、ファンに共通してみられることは何かありますか。彼らの反応はどのようなものですか。 BEN: ほとんどの人は、俺と同じ感じだ。あまり形式張らない。みんな、一体感が持てるからつながっているんだと思う。最も大切なことは、自分自身でいることだ。俺のところに誰かがやってきて何か話しかけられたら、その人の中に自分自身を見つけるんだ。Bruce Springsteenがインタビューで、観客を見ることができず自分を見失ってしまったら、その日でもうおしまいだ、と言っていたのを覚えている。日に日に、その気持ちがわかってくるような気がする。 ROBERT: 無関係なファンもいる。ロックファンじゃなくて、CD購買クラブかなんかで選ばれて、コンサートを見に来ている普通の人たちだ。月並みなロックについてはよく知っていて、年に関係なく、15年前の月並みなロックやグルーピーのことを忘れていない。突っ立って「俺ってグルーピーかい?」なんて言ってるよ。 DARREN: 気がついたんだけど、俺たちの音楽を気に入ってくれている人たちは、ほとんどが更生施設で暮らしたことのある人たちだ。これは共通して言える。そのほかには、麻薬濫用者がいるかな。はっきり知らないが。ときどき、目がどろんとしているのを見る。彼らのことが心配だよ。 LAUNCH: みなさんのことについては、いろいろと書かれていますが、ここでBen Folds Fiveについての誤解を解いておきたければ、おっしゃってください。 BEN: 俺に集中するのは避けられないのかもしれないが、あまり気分はよくない。俺の名前がバンドの一部になっているし、俺が曲を書いている。でも、ソロをやっていれば、まったく違うものになっているだろう。いつも、そこがしゃくにさわる。このインタビューでは、3人みんなのことについて聞いてくれた。でも、普通は、こういう風には進めてくれない。誤った引用に関しては、かなり頭に来たものがたくさんあるが、誤解についてはよくわからない。バンパーステッカーの標語を何にするかってことより、自分たちがどういう行動をとるかっていうことのほうが大事だと思うし。俺たちについて、多くの人は、一種のDeadバンドとか、キャバレーバンド、スイングリバイバル・バンド、さらにはJellyfishみたいだと思っているようだ。「あの“Brick”バンド」と言われることもあるが、こっちはクールだね。 ROBERT: 俺たちに対する最も大きな誤解は、俺たちみんなが奨学金をもらって大学を卒業した得体の知れない冗談好きのとても頭のいい子供だと思われていることだ。でも、実際のところは、みんな注意力散漫症候群にかかっている。できるだけセクシーに振る舞おうとしているし、“外れないように”できるだけクールにしているつもりだ。でも、みんな大変な誤解をしている。みんな、俺たちはクールなものには何にでも反対していると思っている。実際は、俺たちはクールな人たちと一緒にいたいんだ。ねぐらに誘って、Warren ZevonやDionne Warwickのレコードを聴こうなんて言ってくれる人は誰もいない。 DARREN: 何年もの間、俺の重荷になっていることがある。ここで、そのことについて話す機会をもらえてうれしいよ。実際、そのことについて考えていたら、昨晩(ゆうべ)も眠れなかった。セントルイスでのギグの前、俺たちは、絶対に、猫を張り倒してバーベキューになんかしていない。そんなことは起こっていないし、誰がでっち上げたのかも知らない。あれはオポッサムだったんだ。あれは食用だから、その気になれば食べられる。ちょっと抵抗があるけど、手を出さないわけにもいかない。この誤解だけはみんなの前で解いておきたかったんだ。 by dave dimartino |
この記事の関連情報
【ライブレポート】ベン・フォールズ・ファイヴの新しい時代の到来を告げる、記念すべきライヴ
【インタビュー】ベン・フォールズ・ファイヴ、「3人だけのケミストリーってやっぱりあるな」
復活の最強ピアノ・ロック・トリオ、ベン・フォールズ・ファイヴの来日公演決定
ベン・フォールズ・ファイヴ、魅力が光る万華鏡のような新作発表
ベン・フォールズ・ファイヴ、コンピレーションに続きニュー・アルバムも制作か?
ジュークボックス・ザ・ゴースト、ドライビング・ピアノ・ポップにご注目
ベン・フォールズとアンジェラ・アキ、共作で「黒めがね」
新「GarageBand」は、StingやFall Out Boyが自ら曲指導
ベン・フォールズ・ファイヴ、一夜限りの再結成