Let It Go, Go With A Flow…流れに身を任せて
'93年から活動拠点をニューヨークに移し、「自分の歌を世界中の人たちに聴かせたい」というデビュー時からの夢を現実のものとしつつある久保田利伸。 その最初のステップとして'95年に発表されたToshi Kubota名義の第一弾アルバム『SUNSHINE MOONLIGHT』が名刺代わりのアルバムだったとするなら、実に5年近くのインターヴァルをおいてようやく完成したニュー・アルバム『Nothing But Your Love』は勝負作となるということか? ニューヨークの久保田利伸を訪ね、インタビューをした。 取材・文●染野芳輝 |
──ようやくアメリカ向けの第二弾アルバムの発売が決まりましたけど、レコーディングはずいぶん前から行なっていましたよね。去年の6月には「ほぼ出来つつある」って言っていましたが。 Toshi Kubota: そうでしたね(笑)。夏には9割方できてたようなもんだし。ただ、EPICの制作サイド…あ、僕、アメリカでのレーベル契約をコロンビアからEPICに変えたんですけど…、彼らからの“シングル向きの曲をもう何曲か”という要望に応えて色々やってたら時間がかかっちゃいました(笑)。 ──では、アルバム・タイトルにもなった1stシングル「Nothing But Your Love」は、要望に応えて最近書いた曲なんですか? Toshi Kubota: ところが違うんですよ。これは、アルバムの中に“いい感じ”で収まる曲だと思ってたんで、僕としてはシングル曲とは考えてなかった。で、去年、日本で出した「SOUL BANGIN'」って曲があったでしょう? あれをこっちのスタッフが聴いたら、“勢いもあってポップだから、これをシングルにしよう”って話になったんですよ。で、ビートを少し変えたりして「BODY BOUNCE」という曲に仕上げたんだけど、それを宣伝サイドのミーティングにかけたら、“いや、シングルは「Nothing But Your Love」がユニークでいい”と全員一致で決まっちゃった(笑)。“ユニークだ”って気に入ってくれたのは嬉しいけど、去年のうちに出来てたこの曲でOKなんだったら、アルバムももっと早く出せたんだよね(笑)。 ──ご苦労様でした。でも、彼らは何をユニークだと感じたんでしょうね? Toshi Kubota: たぶんね、今のハヤリのR&Bとは違うテイスト、ラジオのフォーマットにズバリとハマらない感じだからでしょうね。 ──それは久保田さんの個性なわけで、それが認められたということは素晴らしいですね。 Toshi Kubota: そうですね。1枚目の時のような、ラジオのフォーマットに合わせてR&Bかポップか、どちらかに的を絞ってくれみたいな葛藤は、ほとんどなかったからね。やっぱり、R&Bとポップが僕なりにクロスオーヴァーして生まれるのが久保田利伸の音楽だから、ジャンルのことを考えて作るなんて、息苦しいですよ。でも、EPICはジャンルがクロスオーヴァーした音楽に理解があるんで、以前のような息苦しさはなくなりました。 ──活動しやすい環境になったわけですね。そんな中、制作したニュー・アルバムは、どんなイメージのもとに? Toshi Kubota: 最初のイメージは、ディアンジェロほどディ―プじゃない、でもマックスウェルほどシャレてて軽くない、それでいて今のラジオでかかるハヤリのR&Bでもないやつ…かな。あえて言うなら、ニュー・クラシック・ソウルならぬ、トシ・クラシック・ソウルって感じ?(笑) それを普通に楽しみながら自然に作れば、面白いものができるだろう、と。 ──―線級のプロデューサーが参加してますが、これも今おっしゃったサウンドを作るためのチョイスなわけですか? Toshi Kubota: そうですね。最初に決めたのがルーツで、ナマ音主体のニュー・クラシック・ソウル的なテイストに一番近くて、なおかつ個性的な音を作れるのは彼らだろう、と。 ──ソウルショック&カーリンは、もう少しメインストリーム的な音作りを狙って? Toshi Kubota: ルーツみたいなナマ音主体の“匂い”のあるサウンドに、トゥデイズR&Bなもう少しドライな音をブレンドしたかったんで、それらなら彼らですよね。彼らの音って、ヒップホップ、ソウル、ポップのバランスがいいと思うんです。それに、アメリカ人じゃないから(デンマーク出身)、客観的にソウルのオイシイところを知っているというか…それは僕にも言えることなんで、理解し合えるんです。 ──元トニー・トニー・トニーのラファエル・サーディクも、いい仕事をしていますね。 Toshi Kubota: ラファエルって、すごくソウルっぽいんだけど、同時にバランス感覚に優れていてね、このアルバムではルーツとソウルショックの間をいく音作りで、アルバムにまとまりを与えてくれたと思います。 ──アルバムの仕上がりに関しては満足しているようですね? Toshi Kubota: うん。グルーヴはヒップホップの手触りで、そこにはR&Bやポップがいろんな度合いで混じり合う…そんな感じのアルバムになったと思う。個人的にはメロウなスロー・ジャム系の曲をもう1、2曲入れたかったんだけど、それは日本向けのアルバムでいきましょうか(笑)。 ──そうですね、秋頃には日本向けのアルバムも出る予定なんですよね? Toshi Kubota: もう80%ぐらいは出来ているんだけどね、以前と違って、アメリカ向けも日本向けもそんなに違う感触にはならないと思います。この『Nothing But Your Love』もそうだけど、キャッチ―なポップ感というより“いい感じ”の音ですね。 ──久保田さん自身も今、“いい感じ”? Toshi Kubota: いい感じ、ですよ(笑)。ここ数年のテーマが“Let It Go, Go With A Flow”なんですよ。流れに身を任せて行こうってことなんだけど、これは大きな流れに流されるってことじゃない。自分が持っているものを今、一番いい 形で出すには、大きな流れの中で理解をせず、ドーンと構えてやるのが一番ってこと。そのへんがアルバムにも反映されていると思うんで、是非聴いてみてください。 |
※Toshi Kubota オフィシャル・サイト ※本人からメッセージが届きました! |