【インタビュー】WANDSの柴崎浩が語る、ツアー<BOLD>の極上サウンドメイク「気持ちいい音を目指した結果」

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WANDSが6月25日の愛知県芸術劇場 大ホール公演を皮切りに7月8日の東京ガーデンシアターまで、東名阪ツアーを開催した。第5期WANDS初のホールツアーのタイトルは<WANDS Live Tour 2024 ~BOLD~>。“BOLD”には、“大胆な” “向こう見ずな”といった意味があり、シングル「大胆」にちなんだタイトルは、危険を恐れず勇敢な枠にとらわれないサウンド&パフォーマンスを予感させるものだった。

◆柴崎浩 (WANDS) 画像

BARKSはツアー開始直前、そのリハーサルが行われていたスタジオにうかがって、ステージのギターサウンドシステムの取材を敢行した。柴崎のギター機材取材は2020年10月以来。この4年弱の間のシステム変更は、'90年代の名曲から第5期の最新楽曲まで幅広く網羅するセットリストを実現するために辿り着いたひとつのスタイルなのかもしれない。操作性、多岐にわたるサウンドバリエーション、楽器本来の鳴り、それらすべてに細部にわたってこだわったサウンドシステムの全貌について訊いたロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■パッシヴピックアップを使ってみたい
■ということだけ伝えて仕様はお任せ


──まずは、<WANDS Live Tour 2024 〜BOLD〜>のメインギターから教えていただけますか。

柴崎:メインギターは2本あって、NISHGAKI GUITARSのAmnis NovusとSuhr 2020 Limited Classic S Metallicが同じくらいの使用頻度です。


▲Nishgaki Guitars Amnis Novus

Nishgaki Guitarsは、1500年という鍛治の歴史を持つ町として知られる“播州三木”(兵庫県三木市)に拠点を置くブランドであり、クラフトマンYuki Nishgakiによるハンドメイドギターを制作している。Amnis Novusは柴崎の好みやこだわりを反映して作られたモデルで、フィギュアドメイプルのトップ&バックでアルダーを挟み込んだラミネートボディー、ジャンボフレット、Sperzelのロッキングチューナー、Suhr Thornbuckerのピックアップといったスペックを持つ。幼少期から伝統的な木工技術、工法を学んでいるYuki Nishgakiならではの精緻かつ美麗な作りと上質なトーンは実に魅力的。今回のツアーでは「空へ向かう木のように」「SHOUT OUT !!」「honey」など10曲で使用された。

──それぞれの特徴や気に入っているポイントについてうかがいたいのですが、NISHGAKI GUITARSのAmnis Novusとの出会いは?

柴崎:たまたま出会ったという感じですね。2018年くらいだったかな。NISHGAKI GUITARS制作者の西垣祐希くんが、ライブときに僕の楽屋に来て「柴崎さんのギターを作らせてください」と言ってくれたんです。

──急に楽屋を訪ねてきたんですか?

柴崎:T.M.Revolutionのサポートとして僕と菰口雄矢くんのツインギターでツアーをまわってたんですね。そのとき西垣くんは、菰口くんにソリッドギターを1本作っていたので、その縁で楽屋を訪ねてくれて。西垣くんは小沼ようすけさんのギターとか、いわゆる箱物ギターばかり作っていたんだけど、ソリッドギターも作りたくなったそうで。当時の西垣くんは、まだ25歳にもなっていなかったんじゃないかな。

──えっ!? お若い方なんですね。

柴崎:そうですね。当時の僕はずっとEMG(アクティヴピックアップ)を搭載したスティーブ・ルカサー・モデル(Ernie Ball Music Man Luke III)を使っていて。そろそろ楽器から新しい刺激がほしいというか、また違う何かがあるといいなと思い始めていた時期でもあったので、西垣くんに1本作ってもらうことにしたんです。

──リクエストはしましたか?

柴崎:プレイアビリティーに関する主立ったことと、音の面でパッシヴピックアップを使ってみたいということだけ伝えて、仕様はお任せ。結果、出来上がってきたものを弾いてみたら、気に入ったという感じです。

──西垣さんは若いながら自身を売り込むだけの力量があったわけですね。

柴崎:そう思います。Amnis Novusの仕様面のポイントは、トグルスイッチが3点じゃなくて、6点なんですよ。“フリーウェイスイッチ”というんですけど、2ハムピックアップで、コイルタップスイッチングが可能だから、それぞれ3点の6ポジションなんです。このスイッチには後から載せ替えてもらったんですけど。

──優れたプレイアビリティーと汎用性の高さを備えているんですね。では、基本的なトーンキャラクターは?

柴崎:ボディートップとバックが薄いメイプルで、間にアルダーを挟んだ構造になっているんですね。表と裏に硬い材を使用しているから硬質な鳴りだけど薄っぺらさは無くて、深く歪ませても音にずっと芯が残るんです。ピックアップはSuhrのThornbuckerにしてもらいました。


▲Suhr 2020 Limited Classic S Metallic

一見トラディショナルなストラトタイプでいながら、ボディ裏側を見ると、プレイアビリティーを高めるべくネックとボディーのジョイント部に大胆なカットが施されていることがわかる。SSHのピックアップ配列によるトーンバリエーションの広さに加え、トレモロユニットも装備しているため、汎用性の高さは抜群。2ピースアルダー・ボディー、ベイクドメイプル・ネック、インディアンローズウッド指板、Suhr製ロッキングチューナー、10″-14″仕様のラディアス指板などが特徴だ。今回のツアーでは「David Bowieのように」「賞味期限切れ I love you」「大胆」など7曲で使用。Nishgaki Guitars Amnis Novusと共にメインギターとして活躍した。

──非常に扱いやすい1本と言えますね。では続いて、もう一本のメインギターであるSuhr 2020 Limited Classic S Metallicについて教えてください。

柴崎:いつ頃から使っているのか正確には覚えていないけど…2年前くらいかな。初期WANDSでは、フロントとセンターにシングルコイル2つ、リアがハムバッカーのピックアップ配列のギターをずっと使っていて。第5期で初期WANDSの曲を弾くときにはJames Tyler Classicを使っていたんです。僕の好みとして本当は、インディアンローズウッド指板のほうが好きなんですけど、James Tylerはメイプル指板なんですね。

──ストラトシェイプで同じピックアップ配列でローズウッド指板のギターがほしいと?

柴崎:そうですね。自分の好きな仕様のギターをwebで探して、これがいいと思ったのがSuhr 2020 Limited Classic S Metallic。入手したいと思って検索したら、愛媛の楽器屋さんにあるのを見つけたんです。

──では、試奏せずに入手したんですか?

柴崎:最近は、昔ほど楽器が選びたい放題ではなくなってきていることを感じているんですよね。どういうことかというと、“これは良いかもしれない”というギターを見つけても、すぐに売れてしまったりするんです。だから、このギターはスペックを見て、試奏もせずに入手したという(笑)。

──当たりの1本だったんですね。

柴崎:そうですね。でも、ピックアップを全部替えたり、ブリッジも替えたり、いろいろ手を入れています。あと、僕はボリュームノブの位置が近いと演奏中に手が当たってしまったりして苦手なので、元々のボリュームは外して。そこは空けたままひとつずらして、マスターボリュームとマスタートーンの1ボリューム/1トーン仕様にしています。


▲写真左は使用ギターがセットされたギターラック。右はギタースタンド。ワイヤレスのトランスミッターを装着したストラップを吊るすことが可能なハンガー付きにカスタマイズ。

──ギターを好みに合わせてカスタマイズされるというのはワクワクしますよね。リアのハムバッカーはコイルタップできるのでしょうか?

柴崎:できません。本当はタップを付けたかったんだけど、SSCというSuhr独自のハムノイズリダクションシステムを搭載していて。それがあるとコイルタップ機能を付けるのがちょっと難しいと言われまして。

──なるほど。ということは、シングルコイルの音を出す時はフロントかセンター?

柴崎:基本はそうですけど、リアのハムバッカーとセンターのミックスも使います。意外とそれっぽい音がするんですよ。普通のストラトキャスターのリアとセンターのハーフトーンよりもややファットだけど、同じようなニュアンスは出る。今回は「David Bowieのように」のA'メロ的なパートでU2のジ・エッジみたいなプレイをする時に使っています。

──このギターはスペックを重視して選択したとのことですが、メタリックなシルバーのボディとブラックのピックガードルックスもカッコいいですね。

柴崎:カッコいいですよね。ちょっと'80s感もあるし、それがいいなと思って。

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