【ライヴレポート】BREAKERZのAKIHIDE、二部構成のツアー<Fortune>に相反する運命「闇の中に小さな灯火を」

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通算11枚目のソロアルバム『Fortune』を12月11日にCDリリースしたBREAKERZのAKIHIDEが、その直前となる12月6日に東京・浅草花劇場でツアー<AKIHIDE LIVE TOUR 2024 -Fortune->のファイナル公演を開催した。

◆AKIHIDE [BREAKERZ] 画像 / 動画

4人編成のバンドスタイルとデュオスタイルの2パターンで全国を廻り(開催地によって異なる)、1st<青きFortune>、2nd<赤きFortune>と銘打った二部構成で行われたライヴはAKIHIDEにとって初めての試み。相反する運命を描いた作品ということもあり、「2つのセットリストを組んで、同じ『Fortune』の楽曲でも印象が異なるものにしたい」とBARKSインタビュー時に語っていたが、その言葉通り、高いスキルと表現力を持つ百戦錬磨のメンバーと奏でる演奏、表情を変えるボーカルで集まったファンを楽しませた。

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最終公演となる東京・浅草花劇場は一部も二部もバンドスタイルDAY。1stステージ<青きFortune>は18時開演だ。サポートメンバーの豊田稔(Dr)、砂山淳一(B)、杉直樹(Key)が定位置につき、AKIHIDEは物語から飛び出してきたような真っ白な衣装に白のSGを構えて舞台に立った。ライヴはアルバムのオープニング曲であり、ストーリーの入り口のナンバー「Into the Story」で幕を開け、戦争が止まない現実の世界と架空の物語を照らし合わせて書いたというタイトル曲「Fortune」に移行。アルバムの曲順と同じドラマティックな展開だ。切なさと熱情が入り混ざったAKIHIDEのギターソロが楽曲を雄弁に伝える。

「<AKIHIDE LIVE TOUR 2024 -Fortune->、“青きFortune”にみなさんようこそ。アルバム『Fortune』をひっさげての旅、最後の夜となります。素敵なミュージシャンと一緒に音の物語を奏でていきたいと思います。ここからさらに『Fortune』の旅を深めていきましょう」──AKIHIDE

続いて披露されたのは純白の衣装が照明で紫色に染まった「Violet & Blue」だ。アルバムの中でも妖艶なナンバーがAKIHIDEを筆頭とするプレーヤーたちの演奏でさらに立体感を増して響く。歌詞のフレーズにも出てくるが、AKIHIDEが華麗なフレーズを奏で、曲の主人公になりきったボーカルが世界に引き込んでいく。砂山のベースソロは夜の闇を深めていくようだ。


アルバムの世界はここで一旦場面転換。「美しい眼差しを持つみなさんに捧げる曲です」と前置きして軽やかなテンポの「美しい瞳」(7thアルバム『星飼いの少年』収録)が披露された。ハンドクラップで盛り上がる客席。杉のジャジーなピアノソロがフィーチャーされ、AKIHIDEもステップを踏みながら歌って演奏し、笑顔を見せる。

「浅草花劇場、初めて来たんですが、すごく綺麗な場所ですね。ただ、花やしきはクリスマス前のメンテナンス中のようで今日、やってないんですよ。僕も、遊びたいななんて思ってたんですけどね(笑)」──AKIHIDE

浅草花やしきのアトラクションは闇の中に潜んでいたが、タイムスリップする感覚があるノスタルジックで不思議なシチュエーションに立つ花劇場も『Fortune』の想像力を掻き立てる装置。MCではCD制作(デジタル音源が先行配信)に時間をかけられた分、通常盤にボーナストラックが収録できたこと、初回限定盤Aに富士山をバックに撮影したヒーリングミュージックライヴ映像を、初回限定盤Bに前作『Three Stars』の曲を中心にループアレンジしたCDをパッケージできたこと、そして4万字にもおよぶAKIHIDE書き下ろしのコンセプトストーリーとイラストが完成したことについても触れた。


「いつもとは違った変則的なスタイルの中、いつもとは違った想いで聴き入ってくれて、耳を澄まして目を凝らして想いを受け止めてくれる。そんなツアーになったんじゃないかと思います。次にお送りする曲はコンセプトストーリーの中に思い出を振り返るシーンがあり、そこから派生して生まれた曲です。今日は足元に(「永遠の丘」のフレーズを)逆再生できるループペダルがあるので、それを曲に変換したものを演奏したいと思います。そのために時間を遡る時計の音と一緒に奏でていきたいと思います」──AKIHIDE

時を刻む音が流れ、アコギに持ち替えたAKIHIDEから届けられたのはそれぞれの心の中にある風景を浮かび上がらせるような「Reverse」。ギブソンのフルアコで甘やかな音色を鳴らした「Namida」(2ndアルバム『Lapis Lazuli』収録)へと続くインストゾーンでは奏でられる音たちに客席も陶酔していた。

「今回のアルバムの中に、ありそうでなかった曲ができたかなと思っています。洋楽テイストもあり、壮大でもあり、日本的なメロディラインもあって作っていてワクワクした曲です。みなさんを深い深い海の底にお連れしましょう」──AKIHIDE


効果音と深海に連れて行かれそうな青い照明の中、披露された『Fortune』のリードトラック「Undersea」はAKIHIDEの新境地でありつつ、曲調と声質の相性が抜群で、たゆたうようなギターのフレーズも印象的。センシティヴなアプローチでありつつ、豊田のセンスあふれるプレイがフィーチャリングされ、AKIHIDEのギターソロへ。歓声と盛大な拍手が送られ、「きっと、ずっと」はシティポップでジャジーなアレンジ。テクニカルで饒舌なギターソロもさすがである。

AKIHIDEと何度も音を鳴らしてきたメンバー紹介は豊田から。「唯一無二のセットとグルーヴでリズムを刻む。色気ダダ漏れのプレイ。カホーンを軸に、見たことがないオンリーワンなセッティングでオンリーワンな音を出す」とAKIHIDEに形容された。ソロ初期からの付き合いで本ツアーもデュオスタイルを含めて全通のベーシスト砂山については「濃密な時間を過ごしました」と紹介。8年ぶりの共演となるキーボーディスト杉を「素敵な優しい音色を奏でる。バンドのムードメーカー」と伝え、「そんな素敵なみなさんとご一緒させてもらってます。AKIHIDEです」と最後に自己紹介した。


「“青きFortune”にふさわしいお祭りソングをお届けしましょう」と後半は、三部作の始まりに当たるアルバム『Three Stars』から「青ノ祭」を届け、ハンドクラップとコール&レスポンス。躍動感のある歌と演奏に熱い拍手が送られ、本編ラストナンバーへと。

「最後に送る曲は誰もが通る運命…。生まれて生きて、空へと旅立っていく。その想いは風になって降り注ぐ。そして僕自身もこの時計が止まったとしても想いを風にのせて歌い、奏で続けたいと思います」──AKIHIDE

届けられたのは「風にのせて」。ハートウォーミングで切なくて聴くほどに味わいを増すこの曲は今のAKIHIDEだからこそ歌える曲なのではないか。


ヒーリング的な要素も含めて“青の世界”へといざなった1st<青きFortune>。アンコールではパーカー、Tシャツ、バッグとツアーグッズに身を包んだAKIHIDEが登場した。感謝の気持ちを伝え、幼い頃の母との思い出が種になって芽吹いた曲と表現し、弾き語りから途中でバンドスタイルになる構成で「星の子守唄 -Goodnight Song-」が送られた。後半の語りがまた感動的だったが、それは二部のレポートで記すことにする。この曲はやがてシンガロングになり、温かい気持ちになって一部が終了した。

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2nd<赤きFortune>は20時半開演。AKIHIDEは黒を基調にした衣装で登場し、時を刻む音から「Reverse」で始まる幕開け。アコギからアルバムレコーディングのメインギターである赤のSGに持ち替え、「風にのせて」をストレートなロックサウンドで響かせた。

「<AKIHIDE LIVE TOUR 2024 -Fortune->、“赤きFortune”にようこそ。約1ヶ月、バンドスタイルとデュオスタイルを織り混ぜたツアーの最後のステージとなります。どうぞ最後まで楽しんでいってください。2ndステージは1stステージとは違う視点で『Fortune』の世界をお届けしていきたいと思います」──AKIHIDE


同じ曲を演奏しても新鮮に響くステージング。AKIHIDEが前に出てエモーショナルなソロを弾いた「きっと、ずっと」はボーカルも時にシャウトするようなスタイルだ。アクティヴなステージにさらに火を点けたのが燃えるような赤の照明の中、投下された「the Burning Star」(『Three Stars』収録)。時にギターのような役割を果たす砂山のベースソロからAKIHIDEのギターソロに移行し、プレイは熱を帯びていく。セットリストにも驚かされる。

「次は『Fortune』から違う世界に行って、この曲を久々にお届けしたいと思います。優しいインストナンバーです。母に抱かれてついつい昼寝をしてしまうような和やかな空気をお届けできたらなと思います」──AKIHIDE

ピアノから始まり、AKIHIDEのまろやかな音色が場内を満たしていったのは「ゆりかご」(5thアルバム『ふるさと』収録)。メンバーとのキメも息がピッタリ。豊かな演奏は、まさにゆりかごのごとく心地いい。「Undersea」も<青きFortune>とは異なるアプローチで披露された。ジェスチャーを混じえながら歌うAKIHIDEのギターは深い孤独をたたえつつ、時に叫ぶように鳴らされ、呼応するメンバーの演奏にもエッジがある。


二部のメンバー紹介では見た目にも焦点が当てられた。豊田は着替えたジャケットの赤い裏地をチラ見せ。砂山は髪型が違っているのをいじられ、杉はメガネの縁が青からオレンジ色に変わっていると指摘されるも、本人は意識していなかったことが判明し、笑いの渦に。その和やかな雰囲気を持ち込むように豊田のカホーンで始まった「白猫のランデヴー」(『Three Stars』収録)ではハンドクラップで大盛り上がり。上手下手に移動してロカビリーテイストのギターで煽り、リズムセクションは会話し合うようなアドリブ合戦。やがてファンも参加してのクラップセッションとなった。

妖艶でアグレッシヴなアプローチとなった「Violet & Blue」は紫に赤い色が加わったようなナンバーとなり、AKIHIDEもフェイクを混じえながら歌う。鍵盤と歌のみで始まった「Fortune」は痛みと焦燥感を感じさせるアクトで後半のギターソロは圧巻だった。間髪入れずに演奏されたのは<青きFortune>の1曲目「Into the Story」。“今 始まるよ 運命の物語”という歌詞で本編は余韻を残し、終わりを告げた。



アンコールで「まさにアルバムが示す通り、運命という作品になったと思います。本当に素敵な素敵な夜ばかりでした」とツアーを振り返り、感謝の気持ちを伝えたAKIHIDE。最後の曲は「星の子守唄 -Goodnight Song-」。CDには収録されていない曲の後半の語りが胸に深く染み渡った。

「日々の中、みんなの夜に辛いことや悲しいことが待っているかもしれません。心が痛くて眠れない夜、僕はまぶたの闇の中に小さな灯火を探します。その灯火は小さいけれど、あたたかくて夜の闇を照らしてくれる。僕の大切な大切な思い出たちです。たとえ強い灯りじゃなくても眩しい光じゃなくても、その人にとって大切な思い出であれば夜を照らし、一歩一歩と明日へと導いてくれると僕は信じています。みんなが悩む日に灯火がたくさん灯りますように。そして、その灯火のひとつに僕が作る物語や音や作品になることを願って、これからも共に歩み続けたいと思います。どうぞ素敵な夜を迎えてください。今日は本当に来てくれてありがとう」──AKIHIDE


それはたぶん、音楽を奏でる上でずっとAKIHIDEが思っていることだろう。そのメッセージを歌で演奏で体現した<青きFortune>と<赤きFortune>はAKIHIDEというアーティストの本質、人間性、成熟した今をより近くに感じられるステージであった。ストーリーはまだまだ続いていく。

取材・文◎山本弘子
写真◎達川範一 (B ZONE)

■<AKIHIDE LIVE TOUR 2024 -Fortune->12月6日(⾦)@東京・浅草花劇場セットリスト

【1st “青きFortune” (Band style)】
01. Into the Story
02. Fortune
03. Violet & Blue
04. 美しい瞳
05. Reverse
06. Namida
07. Undersea
08. きっと、ずっと
09. 青ノ祭
10. 風にのせて
encore
11. 星の子守唄 -Goodnight Song-

【2nd “赤きFortune” (Band style)】
01. Reverse
02. 風にのせて
03. きっと、ずっと
04. the Burning Star
05. ゆりかご
06. Undersea
07. 白猫のランデヴー
08. Violet & Blue
09. Fortune
10. Into the Story
encore
11. 星の子守唄 -Goodnight Song-

●TOUR SCHEDULE
▼Band Style
11月08日(⾦) 愛知・名古屋SPADE BOX
11月09日(土) ⼤阪・BERONICA
▼Duo Style
11月16日(土) 北海道・⼩樽GOLDSTONE
11月17日(日) 福岡・ROOMS
11月23日(土) 宮城・仙台retro Back Page
11月30日(土) 神奈川・新横浜Strage
▼Band Style
12月06日(⾦) 東京・浅草花劇場

●Support Member
Bass:砂山淳一(Band Style / Duo Style)
Perc:豊⽥稔(Band Style)
Key:杉直樹(Band Style)


■11thソロアルバム『Fortune』

2024年10月23日(水)配信開始
2024年12月11日(水)CDリリース
【初回限定盤A (CD+Blu-ray)】
ZACL-9141/ZAXB-9141 ¥7,700(税込)
・特典Blu-ray:<AKIHIDE 432Hz Healing Live in Fuji>収録
【初回限定盤B (2CD)】
ZACL-9142/ZAXB-9142 ¥5,500(税込)
・特典CD:『In the "LOOP WORLD" vol.2 -Three Stars-』収録
【通常盤(CD)】ZACL-9143 ¥3,300(税込)
・ボーナストラック「渚のふたり」収録
※全形態共通:「Fortune」コンセプトストーリー(web版)アクセスコード付属


▲初回限定盤A


▲初回限定盤B


▲通常盤

▼CD収録曲
01. Into the Story
02. Fortune
03. Violet & Blue
04. Undersea
05. Fight or Flight
06. Reverse
07. きっと、ずっと
08. 風にのせて
09. 星の子守唄 -Goodnight Song-
※通常盤のみボーナストラック「渚のふたり」収録
▼特典CD:初回限定盤B
『In the "LOOP WORLD" vol.2 -Three Stars-』収録
1. Singing in the Starlight
2. 嘘
3. the Burning Star
4. 青ノ祭
5. 帰らずの森
6. 白猫のランデヴー
7. Undersea
8. Ghost

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