【インタビュー】BREAKERZのAKIHIDE、11thソロアルバム『Fortune』に生々しさと熱さ「自ら運命を幸運に変えるために」
BREAKERZのAKIHIDE (G)が12月11日、通算11枚目となるソロアルバム『Fortune』をCDリリースする。デジタル音源として先行配信された本作は、今から20年前にAKIHIDEの中に生まれた壮大な物語を形にした前作『Three Stars』の続編に当たる作品だ。当初から「三部作になる」と予告していた第二部の誕生となる。と同時に、今作は2024年、現在のAKIHIDEの心境やギタリストとしての変化が落とし込まれたアルバムでもある。
◆AKIHIDE [BREAKERZ] 動画 / 画像
タイトル『Fortune』には、“辛い出来事が起こったとしても、いつの日にかその運命を意味があるものに変えていく”という意志と願いが込められ、実際に制作過程で起こったハプニングは思いがけない結果を生んだ。富士山をバックにドローンを使用して一発録りに挑んだ初回限定盤Aの特典ライブ映像は必見だ。
熱量の高いエモーショナルなギターソロ、ひとりギターバトルが堪能できるのも本作の醍醐味である。レコーディングで使用されたメインギターはチェリーレッドのギブソンSG。キャリアやミュージシャンとの幾多のセッションを重ねた今、機材もシンプルに原点へ立ち返り、求めているのは生々しくて熱い音を鳴らすことだという。現在、開催中のツアー<AKIHIDE LIVE TOUR 2024 -Fortune->を含め、アップデートし続けるAKIHIDEの今をロングインタビューで伝えたい。
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■20年ぐらい前からあった物語の二作目は戦争
■未来が見えづらい時代に自分の想いも込めて
──11thソロアルバム『Fortune』はデジタル音源が先行発売され、12月11日にCDという形式でリリースされます。今までにないスタイルですね。
AKIHIDE:そうですね。当初はCDも同時リリースされるはずだったんですが、今回は諸々の事情により作品の内容を重要視してCDは少し遅らせようと決めたんです。ただ、ツアーに来てくださるお客さんに新曲を届けたかったので、まず配信を先行させる形になりました。
──2023年に構想20年のアルバム『Three Stars』を発表し、その取材時に「三部作になる予定だ」とお話ししてくれました。三部作の二作目にあたるのが今作『Fortune』ですよね。AKIHIDEさんの中にどんなイメージがあったんでしょうか?
AKIHIDE:三部作のストーリーの大筋は20年ぐらい前からあって、二作目では戦争が起きるという、変化の大きい物語が描かれているんです。『Three Stars』のエンディングが暗黒な雰囲気で終わったのは今作に繋がる予兆でもあったから、少し重ためになるだろうなと思ってました。実際、現実の世界も戦争が止まなかったり、未来が見えづらい時代になってきたので、自分自身の想いも込めようと制作にとりかかりましたね。
──架空の物語と、今起きている現実をクロスさせて作ったんですか?
AKIHIDE:そうですね。常日頃、自分が感じていることや悩みも反映させて、ストーリーに追加したり、歌詞を書いていきました。
──タイトルの『Fortune』には“運命”以外にも“幸運”や“財産”という意味があります。この言葉を選んだ理由とアートワークのイメージについても教えていただけますか?
AKIHIDE:運命を意味する言葉って“Destiny”とかいくつかあるんですよね。英語圏ではもっと深い意味で使われているかもしれませんが、響きの明るさと文字の雰囲気で“Fortune”に決めました。2つのワードに勝手に分けると“For” “Tune”だし、重い物語だからこそ、未来に繋がる響きにしたいなという想いがあったんです。
──なるほど。
AKIHIDE:ジャケットのアートワークに関しては紫色がテーマなんです。コンセプトストーリーも“紫の瞳”がひとつのテーマになっているんですが、いろいろな運命が絡み合ってひとつの人生とか生命を描いていると考えた時に、“紫”は“赤”と“青”の混色なので、遠目に見た時に赤と青が混ざり合って紫に見えるのがいいと思ったんですよね。それで、まずタイトルのロゴを描いて、“変化”は物語の大きなパーツなので、羽根をモチーフにジャケットに描きました。運命というワードから湧いてくる多彩なイメージやワードを凝縮させたアートであり、デザインになっています。写真を撮影した後に自分でイラストを描いたんですが、こういう形で混ぜ合わせるのは初めてですね。
──同時に、今作にはファンの方々から募集した蝶が合わさったアートも盛り込まれていますよね。
AKIHIDE:はい。おっしゃっているのはCDのブックレットの中に入るものだと思うんですが、コンセプトストーリーにおいて蝶は重要なキーワードなんです。蝶って卵から芋虫になってサナギになって、その中で自分の身体を溶かして成虫の蝶になるじゃないですか。完全変態のガラっと変わる感じが運命を象徴しているなと。制作に当たってオフィシャルサイトで「蝶を紙に描いてそこに皆さんの夢や願い事など、未来の自分に描くものを書いて、切り抜いて送ってください」って募集したんですよ。“蝶のように羽ばたいてもらいたい” “アルバムがそういう作品になれば”と思って手伝ってもらったんですが、皆さんの蝶を集めて完成したアートワークがブックレットの最後のページに使われています。
──素敵な試みですね。
AKIHIDE:本当に綺麗なんですよ。この試みも、通常盤にボーナストラックを入れることにしたのも、CDが発売延期になったから実現できたことなんです。そういう経緯があって今作のテーマに通じる運命を僕自身感じていたんですよね。延期になったのも意味があるというか、意味があるものにしないといけないと思ったんです。運命を幸運に変えるために“これもできる。あれもできる”ってより中身を濃くしていったのが今作です。『Fortune』というタイトルを付けた時にはそこまで考えてなかったんですけど、後に運命的なことが立て続けに起きて、導かれている気がしたんですよね。
──今おっしゃってくれたことは今作のメッセージでもあるんですよね。辛いことや悲しいことがあっても、いつの日か“だからこそ今があるんだ”って思えるような出来事にしていきたいという。
AKIHIDE:そうなんですよ。全てに意味があるし、意味を持たせるのは自分自身だって。作っている最中に気づかされました。
──ソロでAKIHIDEさんが、そういう前向きで明確な人生観を打ち出すって珍しくないですか?
AKIHIDE:珍しいかもしれないですね。今年になって考え方が変わったんです。いろんな人と出会ったり、話をする中で感じたことなんですけど。今年は自分が撒いた種があちこちで芽吹いたこともあって、すごく忙しかったんですよ。そういうことも影響しているのかもしれない。
──人との出会いによって人生観が変わったんですか?
AKIHIDE:出会いもそうだし、自分で自分を追い込んでいい運命にするために変えちゃっているのかもしれないですね。そういうタイミングが来たのかなって勝手に思っているんですけどね。
▲初回限定盤A
──では、収録曲について順番に聞かせてください。まず、“さあ、続きを聞かせてあげよう”という歌詞で始まるオープニングの「Into the Story」はジャジーなテイストだけど、ギターソロは燃え盛っているようです。
AKIHIDE:ジャジーでしっとり始まるアイデアは最初からあったんですが、一番最後に完成した曲でコンセプトストーリーの始まりでもあるので、歌詞は書き直したんです。物語の入り口的なポジションですね。
──タイトル曲の「Fortune」は“燃え狂う僕たちの街”という歌詞が出てくるように戦争を描いたドラマティックでヘヴィなテイストのナンバー。ギターソロも弾きまくっていますね。
AKIHIDE:近年はサンプル音源を使って曲を作ることが多いので、ストリングスの音を取り入れようと思った時に、映画のサントラみたいな雰囲気がいいなと。子供の頃から好きだった映画『STAR WARS』の影響を受けて物語を描いているので、壮大な感じで始まりたいなと思って書いた曲です。現実でも世界で戦争が絶え間なく起こっていて、決して対岸の火事ではなく、僕らにもいつ降りかかってくるかわからない。そう思った時に戦火の中にいる人たちの気持ちを想像して“自分はどうするだろう?” “物語の登場人物はどうするだろう?”と架空の世界と現実の世界を照らし合わせていった曲ですね。
──実際、AKIHIDEさんのソロCDには手書きのコンセプトストーリーブック(web版)が欠かせないものとなっています。楽曲と物語の関連性はどのように捉えたらいいんでしょうか?
AKIHIDE:コンセプトストーリーが答えというわけではないんです。まずは楽曲を楽しんでほしいですね。ストーリーとリンクさせて聴くのもいいし、ある意味、オマケ的なものと捉えていただければ。
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