【インタビュー】BREAKERZのAKIHIDE、ソロ10周年10thアルバム完成「集大成と現在と未来を感じてもらえる」
BREAKERZのAKIHIDE(G)が通算10枚目のオリジナルアルバム『Three Stars』を10月18日にリリースした。ソロ10周年を迎えての作品は、AKIHIDE自身が昔から頭の中に思い描いていた“3つの星の物語”をベースに、新たに楽曲を書き、形にしたもので、実に構想20年。これまでに発表したソロアルバムの多くが、木の枝になった実のようなものだとしたら、今作は創作の始まりとなった大きな木そのものだという。
◆AKIHIDE [BREAKERZ] 動画 / 画像
コンセプチュアルな側面を持ちつつ、音楽のジャンルにとらわれずに自由に紡いでいった『Three Stars』収録曲から伝わってくるのはアーティストとしての熱量と、曲に触れた人たちを癒し、笑顔にしたいという想い。ロックギタリストとしての原点に立ち返って迸るようなソロを弾きまくりたかったという「Singing in the Starlight」、コロナ禍で毎朝、自分で自分を励ましていた時のことがキッカケになって生まれた「鏡の国のキミ」、大事な人を亡くした喪失感の中、一筋の光を浮かび上がらせるリードトラック「君を描いて」など全10曲が集大成にして、新たな物語の始まりを予感させる。
今のAKIHIDEの原点となったファンタジックで壮大なコンセプトストーリー、自身で全てを手がけている切り絵のコンセプトアートなど、幾重にもイメージが広がる要素が盛り込まれた今作の流れは今後も続き、3部作になる予定だ。11月4日からは今作を携えてのツアー<AKIHIDE LIVE TOUR 2023 -Three Stars->がスタートする。
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■20年胸の中に残っていた話がThree Stars
■後に生まれた数々の作品の源泉です
──10枚目のオリジナルアルバム『Three Stars』は、AKIHIDEさんがBREAKERZを結成する以前となる20年も前から存在していた物語を形にした作品ということですが、その頃に描いていたイメージを教えてください。
AKIHIDE:当時、初めて考えた物語が、ソロになってからの一連のコンセプトストーリーの元になっているんですが、最初は音楽とは関係なく話だけが頭の中にあったんです。インターネットが普及し始めた時代にお客さんとコミュニケーションを取りたいと思って、ネット上に絵本サイト『MOON SIDE THEATER』を立ち上げたのも、その頃ですね。物語の設定は“月の裏側にある映画館”。なぜ、そういう施設を作ったのか裏設定も考えて、それが今回のアルバム『Three Stars』の元になっているんです。考えた物語を小説とか絵本のように形にすることはなかったんですけどね。
──その物語を文章化することもなかったんですか?
AKIHIDE:はい。その後、絵本サイト『MOON SIDE THEATER』でタロット占いのコーナーをプログラムしたんですけど、タロットの意味合いやキャラクターは、当時考えたストーリーとリンクしています。断片は発表しましたが、20年近く胸の中に残っていた話が“Three Stars”で、後に生まれた数々のコンセプトアルバムはそこから派生しているので、源泉となったストーリーをそろそろ形にしたかったんです。10周年というタイミングで感謝の想いやケジメという意味も込めつつ、作ろうかなと思ったのがキッカケになりました。
▲『Three Stars』初回限定盤A
──軸になる物語があって、これまでの9枚のソロアルバムが生まれたということですか?
AKIHIDE:全部にストーリーがあったわけではないんですが、例えば『機械仕掛けの遊園地 -Electric Wonderland-』(6thアルバム)もそうだし、9thアルバム『UNDER CITY POP MUSIC』も繋がっていますね。8thアルバム『LOOP WORLD』にしても“Three Stars”の後のお話だったりするので、これまでリリースした8作品のコンセプトストーリーは、軸となる物語の前後や間のポジションです。例えると、自分の中に1本の大きな木があって、いろいろなものが実っていったのが各作品。今作では大きな木の始まりを伝えようと思ったんです。
──いつか物語と音楽をリンクさせたいと思っていたんでしょうか?
AKIHIDE:いや、考えてなかったですね。純粋に物語だけ作っていたんです。“絵描き”とか“お姫様”とかキャラクターだけは存在していたものの、そこに音楽を結びつけることは全然考えていなかった。当時は普通に楽曲制作やバンド活動をしていたので。
──AKIHIDEさんが以前在籍していたバンドFAIRY FORE時代ですか?
AKIHIDE:その後ぐらいですね。
──先ほど“月の裏側にある映画館”の話をしてくれましたけど、今回のアートワークに繋がる“3つの星”の物語について少し教えてもらえますか?
AKIHIDE:先ほど『機械仕掛けの遊園地 -Electric Wonderland-』や『UNDER CITY POP MUSIC』の話に触れましたが、地球に住めなくなった人間たちが逃げていった先が、“炎の星” “水の星” “氷の星”という設定が自分の中にあったんです。それぞれの星の環境の中、生き延びるために姿や形を変えていっているので、宇宙人のような見た目になっているんですが、彼らがやがて故郷の地球に戻って、月の裏側に“MOON SIDE THEATER”を創るというのが結末です。とは言え、イメージだけだった物語なので、まだちゃんと形として完結していないんですよ。その3分の1ぐらいを落とし込んだのが今回のアルバム『Three Stars』なんです。
▲コンセプトアート“氷の星”
▲コンセプトアート“水の星”
▲コンセプトアート“炎の皇子”
──20年近く前に思い描いたのは壮大な物語だったんですね。
AKIHIDE:そうだったんですよ(笑)。壮大で形にするのが難しかったので、ずっと眠らせていたんです。物語を膨らませ過ぎてしまったので、音楽と絡めて三部作ぐらいにまとめて、うまく伝えられたらなと思ったのが、その一作目に当たる今回の『Three Stars』です。
──そういう物語を考えるルーツというのは? 例えば子供の頃から妄想するのが好きでお話を考えていたとか?
AKIHIDE:幼い頃から想像するのは好きでしたね。小学生の頃から自分で漫画を描いていたり、ディズニーはディズニーランドだけでなく絵本や映画も大好きだし、いろいろなアニメからも影響を受けていると思います。さっきお話した“MOON SIDE THEATER”も20代の時にそういう施設を渋谷に作りたいなって妄想していたんです(笑)。漠然と“夢の国みたいなスペースができたらいいな”と考えていて。
──だから、今のスタイルがあるんですね。
AKIHIDE:映画『スター・ウォーズ』も大好きです。一大エンターテインメントな作品で、『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望』から『スター・ウォーズ エピソード6 / ジェダイの帰還』までが旧三部作と呼ばれていますよね。そういうふうにどんどんリンクするようなストーリーが好きだったことも影響していると思います。
▲コンセプトストーリー登場人物 “カエルの法王” “氷の姫” “絵描き”
──AKIHIDEさんのライフワークですね。今回のアルバム『Three Stars』は集大成でもあり、現在でもあり、未来でもあるという位置付けだそうですが、壮大な物語が軸にありつつ、どういうふうに曲を形にしていったんでしょうか?
AKIHIDE:ここ最近はライブ<Angya>と銘打ち、ループペダルを使ったギター1本のシンプルなスタイルで定期的に日本各地を廻っているんですが、今回のアルバムも最初はそのスタイルで作ろうと思っていたんです。ただ、物語を再構築していく過程で、この曲たちはギターだけでは表現しきれないなと。ファンタジーやスペイシーな要素も入れたくなって、前アルバム『UNDER CITY POP MUSIC』の時のように打ち込みやサンプリングを多用したサウンド作りになっていったんです。
──最初はシンプルなスタイルから始めて?
AKIHIDE:ええ。ただ曲自体は物語にとらわれず、普通にシンプルに作ったんです。中には物語から派生したものもありますが、純粋に“これ、いい曲だな”と思って形にしたものもあります。例えば「鏡の国のキミ」はループペダルで遊んでいたらできた曲で、後から歌詞をストーリーに当てはめて書いていったんです。逆に“炎の星のテーマソング”というアイデアが先にあって作った「the Burning Star」のような曲もあります。今までは『UNDER CITY POP MUSIC』だったら“シティポップ”とか、『ふるさと』(5thアルバム)なら“ガットギター”だったり、何かしら音楽のモチーフがあったんですが、今回はジャンルも気にせず、自由に作った楽曲が収録されています。
──歌詞の書き方的には?
AKIHIDE:メロディやサウンドのアレンジに関しては自由に作っているんですが、歌詞はある程度物語とリンクさせています。「白猫のランデヴー」では主人公(氷の星の姫)とは違う心理を歌っているものの、白猫のカチューシャをしているパーティの雰囲気やエロティックなムードを出したいと思って書いています。音楽的にはフランスのジャズとエレクトリックドラムを組み合わせた時に生まれる違和感を出したかったんです。ソロライブでよく「黒猫のTango」をジャズアレンジで演奏しているんですが、その曲と対になるようなイメージですね。
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