【インタビュー】Sou、創作は無限大「宇宙を想像したときの高揚感が得られるアルバムにしたかった」

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◼︎自分の全力の幅が増えた

──ナユタン星人さんとはしっかり話し合って曲の方向性を決めたそうですが、アルバムの新曲はどれもそういう作り方だったのでしょうか?

Sou:どれもバラバラですね。そういう曲もあれば、最初の打ち合わせで「もう好きにやっちゃってください」とまるっとお願いしている曲もあります。稲葉曇さんには「稲葉さんのいつもの感じで、僕に合いそうな感じの曲をお願いします」と頼みましたね。あと一応そのアーティストさん、クリエイターさんの持ち曲のなかで「こういう方向性のものを」とお伝えするようにしています。原口沙輔さんにもそんなふうに沙輔さんの曲の中でリファレンスを出したら、結構沙輔さんとしても意外だったようで。

──「おっ、そこを突いてきますか」のような?

Sou:ヒット曲の「人マニア」の要素も入れつつ、できれば僕の好きな沙輔さんの昔の曲や過去のアルバムの曲の系統でお願いして。そしたら「なんとか混ぜてみます」と言ってくれて、結果混ざったものを作ってくださって……ほんと感謝しかないですね。僕、好きな曲のタイプがいっぱいあるので、ナユタンさんの「衛星紀行」然り“これとこれを混ぜてほしい”と頼むことが多くて。沙輔さんの作ってくださった「リダイレクト」は歌詞もインターネット活動者ならではの素敵な歌詞にしていただいて、曲の世界観にも合っているなと思います。



──『センス・オブ・ワンダー』の楽曲は、Souさんの要素も楽曲提供したソングライターさんの要素もどちらも尊重し合うだけでなく、それぞれに新しいニュアンスが生まれているのも特徴的だと思っていました。それはSouさんの「この曲の雰囲気とこの曲の雰囲気を混ぜてほしい」という要望と、各ソングライターさんの考える「Souさんのムードに合うものを」という感性の相乗効果で成り立つものなのだろうなと、今のお話を聞いて腑に落ちました。ちなみにですが、バンドマンからの提供曲の場合、各バンドのボーカリストを意識することはありますか?

Sou:半々ですね。フレデリックもポルカドットスティングレイもmol-74も、自分がこれまでたくさん聴いてきたバンドなので、多分やろうと思ったらそっくりな歌い方にできちゃうとは思うんですよ。でもいくら曲の世界観に合わせるためにとはいえ、ただなぞるだけなのは違うと思っていて。だからなるべく真似にはならないように、でもちょっとしゃくり方とかを寄せたりしました。そういう細かいところを意識すると、いい塩梅になる気がしているんです。各バンドのファンの方が聴いたときに、そういうニュアンスを感じてもらえたらうれしいですね。



──Souさんのボーカルは、この10年間ずっと新鮮さと清涼感を保ちつつも、年々成熟した深みが増しているんですよね。いまおっしゃったような細かいところへの意識があるから、それを成せるのかなとも思いました。

Sou:初投稿曲とか昔の「歌ってみた」とかを聴いて初心に戻るようなことは普段から結構していて。やっぱり「歌ってみた」って録音もミックスも自分の思うようにできるし、聴いていて気に入らない部分はすぐにそこだけ録り直したりもできるんですよね。やればやるほど勝手がわかってくるから、やろうと思えばどんどん綺麗な、完璧なものになっていくんです。でもそのなかで「超うまい音源が果たしていいのか?」みたいな疑問に行き着くというか。

──人間ならではの揺らぎや甘さ、呼吸の流れなどがボーカルに必要なのではないか、と。

Sou:昔は録り直したりもほとんどせず、一発録りでどんどん完成させてたんですよね。その当時の音源には、今の僕にはない良さがあるんです。気になるところを全部直すと、うまいけどものすごい細切れの歌になって、なんとなく違和感がある。「仮で録った歌のほうが逆に良くない?」みたいなことがあることも多いので、そのバランスはいつも難しいなと思います。

──そういう試行錯誤は味になっているでしょうし、大きな経験にもなっているのではないでしょうか。

Sou:やっぱり10年もやってると、多少なりとも技術は上がったのかなとは思います。毎回ひたすら全力でやるのみなんですけど、その結果前回よりパワーアップしている実感はあるんですよね。自分の全力の幅が増えたんだなと思います。それもこれも、ほんと僕がただの音楽オタク、VOCALOIDオタクだからですね(笑)。

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