【対談インタビュー】Sou×ナユタン星人、「離れていてもお互いの活動が原動力」

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昨年活動10周年を迎えたボーカリスト・Souが、4thフルアルバム『センス・オブ・ワンダー』を完成させた。

デジタルシングル4曲と歌い手やボカロP、絵師らが集まって曲を完成させる企画「VOCADUO 2023」でhigmaが制作した「バブル」に加え、稲葉曇、原口沙輔、ナユタン星人といった人気VOCALOIDクリエイターや、フレデリックの三原康司、mol-74、ポルカドットスティングレイといったロックバンド陣の書き下ろし曲、さらにはSou自身による作詞作曲のタイトルトラックを収録した、充実の内容に仕上がった。

BARKSでは同作をSouとソングライターとの対談、Souのソロインタビューの2本立てで掘り下げる。対談相手はナユタン星人。彼が手掛けたアルバムのラストを飾る「衛星紀行」について、両者にたっぷりと話を訊いた。活動初期より親交のあるふたりはなぜ7年ぶりにタッグを組むことになったのか。なぜ「衛星紀行」は爽やかさと情熱、悲しみと希望がない交ぜになったポップソングへと着地したのか。そこにはふたりの特性と、積み重ねてきた歴史が大きく関係していた。

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◼︎「Souさんに歌ってもらえたらこの活動最高だな」と、ひとつの目標にもしていた──ナユタン星人

──おふたりがお互いを認識し始めたのはいつごろですか?

Sou:僕は2015年の夏、ナユタンさんの初投稿楽曲「アンドロメダアンドロメダ」のころですね。そもそも当時のVOCALOIDシーンにおいて、ナユタンさんの出現は「なんだこの人は」「とんでもない新人が出てきたぞ!」と激震が走ったんです。活動のなかで自分のスタイルを見出していくボカロPさんが多いなか、ナユタンさんは初投稿曲からスタイルもクオリティもしっかり完成していたので、プロ作曲家が覆面で活動しているんじゃないか?と思ったりもして。



ナユタン星人:それ当時めっちゃ言われましたね(笑)。今は最初から方向性を固めてデビューする人も多いから当たり前になってますけど、言われてみると当時はそんなにいなかったのかも。

Sou:だからナユタンさんはその第一人者と言っても過言ではないですね。

ナユタン星人:うれしいですね。実は僕は「Souさんに歌ってもらえたらこの活動最高だな」と、ひとつの目標にもしていたんですよ。

Sou:えっ、マジっすか。

ナユタン星人:僕はもともとニコニコ動画の視聴者だったので、ボカロも歌ってみたも全部好きだったんです。Souさんの存在はそのときから知っていて、有名な曲というよりは「もっと知られてほしい良い曲」をカバーしている印象があって。選曲や歌い方からも本当にボカロ愛が伝わってきて、好きでしたね。僕が「アンドロメダアンドロメダ」の次に投稿した「ロケットサイダー」という曲があるんですけど。

Sou:爽やかな夏曲ですよね。

ナユタン星人:あれは「Souさんに歌ってもらえたらうれしいな」と思っていた曲でもあるんです。ボカロPでもなんでもないときから好きだった人に、自分の活動を知ってもらってるなんて思ってなかったので、最初にSouさんが自分の曲を歌ってくれたときはめっちゃうれしかったです。



──Souさんは2016年4月に「エイリアンエイリアン」のカバー動画をアップしました。

Sou:「アンドロメダアンドロメダ」でナユタンさんを知ったときから歌いたいと思っていたんですけど、自分が歌いたい曲を歌うのと同じくらい、自分のことを応援してくれてる人が「Souに歌ってほしい」と思う曲を歌うことも大事だとは思っていて。だから好きなボカロPさんの存在が、シーンで“爆発”するタイミングで動画を上げたいんです。「エイリアンエイリアン」は聴いた瞬間に、「あ、この曲で多分ナユタンさん、さらに爆発するな」と思って。

ナユタン星人:アップした数日後とかにSouさんが歌ってくれて、めっちゃ感動しましたね。曲と歌がめちゃくちゃ合っていたうえに、「本当に僕の曲が好きなんだろうな。じゃないとこういう歌い方になんないな」と感じる愛のある歌い方だったんです。「あれ、Souさん俺のこと好きなのかな?」みたいに思ったし(笑)、Souさんが歌ってくれたことによって、あの曲はめっちゃ広がった感がありました。



──それが2017年リリースの、“Sou×ナユタン星人”名義でリリースされた『ナユタン星への快爽列車』につながるということですね。あのアルバムはおふたりにとってどんな作品になっていますか?

ナユタン星人:いま聴いても、すごくいいんですよね。Souさんが選曲してくれたんですけど、やっぱり選曲センスがいいんですよね。「よくこれ選んだな!」「これ選んでくれるんだ!」と思うものもたくさんあって。

Sou:アルバムにしか収録されてない曲のインストもナユタンさん本人からいただけるので(笑)、好き放題選ばせていただきましたね。ナユタンさんの曲はポップでキャッチーなものが代表的ですけど、アルバムにはしっとりした曲やエモい曲もあるんです。『ナユタン星への快爽列車』はそれをいい塩梅に選曲していけた自負はありますね。

ナユタン星人:今回の「衛星紀行」もエモめの曲ではあるので、『ナユタン星への快爽列車』からつながってるなー……と思いますね。ずっと前から僕の曲を歌ってくれていて、今また歌ってくれるというのは歴史の積み重ねなので。だから「衛星紀行」が完成して、今まで感じたことのない感慨深さやうれしさが生まれました。やっぱりSouさんは特別だなと思いましたね。

Sou:お互いの軌跡とストーリーが巡り巡って「衛星紀行」にたどり着いたと思います。『センス・オブ・ワンダー』というアルバムタイトルや宇宙というモチーフが思いついて、真っ先にナユタンさんのことが思い浮かんでオファーさせていただきました。



──約7年ぶりのタッグですが、ここまで時間が空いた理由というと?

Sou:この7年間、ナユタンさんとは無限に「一緒にやろう」という話をしてきてるんです。でもタイミングが合わなかったり、ちょっと連絡が途切れてしばらくしたときに「そういえばナユタンさんと一緒にやろうって言ってたな」と思い出すという……。連絡無精すぎる(笑)。

ナユタン星人:僕、ちょっと連絡が来ないとそのままになっちゃうことが多いんです。だから僕のせいで止まってんのかなと思ったんですけど、多分Souさんも同じだから「やろうやろう」と言い合って終わるっていう(笑)。「またSouさんと一緒にやりたい!」って気持ちのまま7年経ちました(笑)。

──おふたりともお互いに対して「この人は活動を辞めないな」と無意識のうちに思っているから、そうなったのかもしれないですね。

ナユタン星人:かもしれない。例えるなら実家みたいというか。いつでも帰れるなと思ってるから、逆にずっと帰らないみたいな(笑)。

Sou:わかります(笑)。いつでも一緒にできるという安心感があるからこそ、全然いつになってもやらないし。

ナユタン星人:おまけに、いつ一緒にやってもいいものができるという確信もあるがゆえに。

Sou:うん、そうですね。

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