【ライブレポート】Sou、『センス・オブ・ワンダー』ツアー完遂「もうひとりの自分を見つけられた気がしている」
7月に4thフルアルバム『センス・オブ・ワンダー』をリリースしたSou。彼が同作を引っ提げて大阪・愛知・福岡・上海・広州を回ったリリースツアー<Sou LIVE TOUR 2024『センス・オブ・ワンダー』>の最終公演が、9月22日にパシフィコ横浜・国立大ホールで開催された。最新アルバム曲はもちろん、多数のカバー曲や初期のオリジナル曲も披露。観客とともに宇宙旅行を謳歌するような、充実の2時間を展開した。
◆ライブ写真
宇宙空間を想起させるドラマチックなレーザーと照明、SEで彩られたオープニングを経て、ステージ中央からSouが登場。『センス・オブ・ワンダー』通常盤ボーナストラック/歌ってみた楽曲として収録されたseizaの「プラネテス」でツアーファイナルの幕を開けた。笑顔を浮かべながら客席を眺める彼は、自身の思いを投影するように《さあ 誰も知らないふたりだけの世界へいこう》という歌詞を歌い上げる。「COSMIC BEAT」ではイントロで「横浜、声出せますか!?」と勢いよく拳を掲げ、サビで「僕と歌って!」と煽ると客席からシンガロングが巻き起こる。歓喜の念をあらわにした彼の躍動感のある歌声と身のこなしは、瞬く間に朗らかな一体感を作り上げた。
「今日は最高の1日にしましょう」と挨拶をすると、アルバムの1曲目に収録されている「KOHAKU」を歌唱する。前回の公演から約1ヶ月ぶりのライブとあってか、この日のSouは蓄えていたエネルギーを放出するような爆発力があった。「ハイヒール」では「みんな自由に踊って!」と呼び掛け、さらに自身の高揚を歌に刻み込む。彼がこの日を迎えられた喜びを噛み締めていること、目の前に自分の歌を求めている観客が集まっていることへの感謝、リスナーと顔を合わせられるこの日を待ちわびていたことがダイレクトに伝わってきた。以前よりライブに苦手意識を持っている旨を公言している彼だが、それを凌駕するほどのポジティブな空気が漲る。
バンドインストの導入からなだれ込んだ「WHAT」では歌詞の“君”に合わせて客席を指さすなど艶やかで勇ましいパフォーマンスを見せ、アグレッシブかつスタイリッシュな演奏とも抜群の相性を叩き出す。その後は「世界を射抜いて」「ネロ」「月夜のタクト」とTVアニメのタイアップ曲をたたみ掛ける。スリリングなサウンドを纏いながら全身を震わせてフルスロットルで歌い、さらに楽曲を鋭く研ぎ澄ました。今のSouには、楽曲の世界を歌で表現するだけでなく、目の前の観客を楽曲の世界の奥深くへと導く力がある。それだけ『センス・オブ・ワンダー』の制作とこのツアーが有意義だったのだろう。
初の海外ツアーを回れたこと、パシフィコ横浜でライブを開催できたことへの感謝を告げた彼は、「(ツアーファイナルを迎えることで)ついにアルバムが完成するような感覚がある」と感慨に浸る。そして「歌い手なのでカバー曲もたくさん持ってきました」と言い、まずgaburyuの「ウォーターマーク」を披露する。ハイパーポップサウンドにメロラップやファルセットを重ねて幻想性を高めると、原口沙輔の「イガク」のカバーを披露し、そのまま同氏による提供曲「リダイレクト」へ。破壊音と美しい音色が乱反射するサウンドにソフトな歌声が溶け、カバー曲とオリジナル曲の境目をさらに曖昧にする。それはSouにとってカバー曲もオリジナル曲も音楽愛が根源になっており、そこには優劣が存在しないというアティテュードを体現するようだった。
ライブの定番「Souだけにー?」「爽快ー!」のコール&レスポンスで観客とコミュニケーションを取った後は、ピアノの音色に歌を乗せて、にしほかの「アガリ症」を歌い出す。歌詞に描かれた心象風景を声で描きながらも観客との掛け合いも楽しみ、トリッキーな要素がふんだんに盛り込まれたフロクロの「ビビビビ」ではアンニュイなボーカルだけでなく、激しく点滅する照明のなかでの不協和音的なロングトーン、低い声かつ早口で繰り出すセクションが緊迫感を生み出した。カオティックなムードのまま「混沌ブギ」でテンションを上げると、歌ってみたセクションを締めくくったのはyouまんの「ワーストリグレット」。シリアスな演奏に乗せて感傷的な歌を響かせ、会場を音の渦に巻き込んだ。
Souは「みんなの前に立てていることが嘘みたい」と、ライブのたびに様々な場所からたくさんのリスナーが集まってくれることへの感動をあらわにすると「僕をこの舞台に立たせてくれてありがとうございます」と頭を下げる。そして自分の心がめげそうになったときに音楽を聴いて活力にしていることを明かすと、「次に歌うのは道に迷ったときや、躓いていたときに、そっと背中を押せる曲です。その思いを直にみんなに受け取ってほしいです」と続け、「ことばのこり」を歌い始めた。その歌声は涙をすくい上げるように柔らかく、そよ風のように爽やかで、どこまでも純粋だった。
その後も「バブル」、自身が作詞作曲を手掛けたアルバムのタイトル曲「センス・オブ・ワンダー」と音楽を通して観客に神秘的な感覚を与える。それは宇宙に飛び出すようなイメージを想起させると同時に、Souの心の奥にある、清らかで瑞々しくロマンチックな空間に触れるようでもあった。「みんなにまたいつかどこかで会えるように願いながら歌います」と告げ、本編ラストにアルバムのラストを飾る「衛星紀行」を届ける。星空に包まれたステージはカラフルに色づき、あたたかく無邪気な歌声からは観客への素直な愛情が溢れていた。
アンコールはKulfiQの「カロン」、HoYoFair 2023参加曲「灰カラ」、2015年にリリースされた1stアルバム「水奏レグルス」から「あやとり」を披露し、MCでは「成長できた2ヶ月間だった」「自分はライブをそんなに得意としていないけど、みんなに会うたびに元気をもらっていて。もうひとりの自分を見つけられた気がしている」とツアーを振り返る。ラスト1曲を前に名残惜しい心境を吐露すると、「またみんなと会えるように、本当に頑張るので。みんなも日々に負けず、次に会えるそのときまで、お互い強く生きていこう!」とメッセージを贈り、自身が初めて作詞作曲をした2019年の楽曲「愚者のパレード」でツアーを締めくくった。彼いわく「ネガティブで考え込んでしまう自分自身を表した曲」であり、ソングライターとしての原点である同曲をスケール大きく歌う様子は、とても頼もしかった。
ステージであそこまで生き生きした彼を観たのは初めてではないかと思うほどに、ライブを楽しむ姿が印象的なツアーファイナルだった。観客からのまっすぐな愛情と、観客への感謝の念が、彼に少しずつ変化をもたらしているのかもしれない。SouはHoYoFair 2024参加楽曲「Truth & Justice」の歌唱を担当するなどシンガーとしての活躍はもちろん、「センス・オブ・ワンダー」の制作を経て楽曲制作欲も上がっているという。シンガーとして、アーティストとして進化し続ける彼の動向に注目だ。
写真◎川崎龍弥
セットリスト
2024年9月22日(日)OPEN16:00 START17:00
神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
1.プラネテス(Original Artist:seiza)
2. COSMIC BEAT
-MC-
3. KOHAKU
4.ハイヒール
-BAND Inst-
5. WHAT
6.世界を射抜いて
7.ネロ
8.月夜のタクト
-MC-
9.ウォーターマーク(Original Artist:gaburyu)
10.イガク(Original Artist:原口沙輔)
11.リダイレクト
-MC-
12.アガリ症(Original Artist:にほしか)
13.ビビビビ(Original Artist:フロクロ)
14.混沌ブギ(Original Artist:jon-YAKITORY)
15.ワーストリグレット(Original Artist:youまん)
-MC-
16.ことばのこり
17.バブル
18.センス・オブ・ワンダー
19.衛星紀行
EN1.カロン(Original Artist:KulfiQ)
EN2.灰カラ
EN3.あやとり
EN4.愚者のパレード
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