【コラム】和楽器バンドのライブが完全復活。再確認した彼らの魅力を語る
和楽器バンドが、約3年ぶりにリリースしたオリジナルアルバム『I vs I』を掲げ、全国ツアー<和楽器バンド Japan Tour 2023 I vs I>を開催中だ。約3年ぶりにファンの声出しも解禁──2023年、和楽器バンドのライブが“完全復活”を果たした。
◆ライブ写真
さて、筆者は本ツアーの東京・LINE CUBE SHIBUYA公演を見てきたわけだが、和楽器バンドメンバーが作る圧倒的なサウンドと、目も耳も飽きさせることがないライブ構成に、改めて和楽器バンドの魅力をたっぷり感じることができた。
7月末から始まった当ツアーは、現在折り返し地点。10月29日の福岡公演まで、あと5公演となっているが、ぜひ多くの人に本ツアーに参加して欲しいので、ここでライブを観た筆者の所感をお伝えしようと思う。
なお、レーベル・事務所の監修のもとネタバレは最小限にとどめているつもりだが、絶対に知りたくないという方は、ここでブラウザバックを。内容を見ても問題ないという方は、ぜひ布教用にも本稿を使って欲しい。
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以下、ネタバレあり
◆ ◆ ◆
本ツアーはアルバム『I vs I』を掲げて行われているものなので、収録曲もすべて披露されている。
個人的に和楽器バンドの魅力として一番に推したいのはサウンドの良さ。昨年のツアーはボカロ曲中心だったためメンバーの“技”の方に注視してしまいがちだったが、『I vs I』は和楽器バンドのオハコとも言える激しい和ロック曲が多めなので、今回のライブでの楽曲群からは、よりサウンド作りの精巧さが伝わってくる。7つの楽器、しかもそのうち4つは個性的で楽器としては扱いづらい和楽器、それにボーカルという大所帯のバンドなのに、個々の音色が耳に心地よく届く。どんなにドラム、ベース、ギターが爆音を出しても、全く負けない和楽器の音。ライブでこんな音が聴けるのは、もうすぐ10年目を迎える和楽器バンドとライブスタッフの音作りに対する修練の賜物だ。正直、このサウンドを聴けるだけでもかなり貴重な機会だと思う。音楽好きならこれだけで充分楽しめると思う。シンプルに、和楽器バンドの音作りはすごい。
Netflixで配信中の『範馬刃牙』野人戦争編オープニングテーマとして世界で注目されている「The Beast」は、ギター&ベース強めの激しいロック曲。特に聴いて欲しいのはサビでのドラムと和太鼓のプレイ。誇張ではなく、2階席にいても和太鼓の音が体の芯にずっしり響いてくる。これはぜひ体感してみてほしいポイントだ。ほかの曲でも各メンバーの聴かせどころがたっぷりで、「宵ノ花」での裏メロの箏、「修羅ノ義」での町屋のギターソロは必聴。「時の方舟」では、尺八の音色で夢心地になるはず。鈴華の歌では「そして、まほろば」を絶対に生で聴いてほしい。音源を先に聴いておいて欲しいが、この難曲を、このステージいっぱいに響かせるボーカル力には身震いするほどの凄みすら感じさせられた。「愛に誉れ」ではスマートフォンによる撮影も許可されていたので、現在SNSではファンがライブ映像を投稿している。もちろん会場で生で聴くのとは大きな違いがあるが、こちらをチェックしてもらうと、和楽器バンドのライブの片鱗を味わうことができるだろう。
こんな風にすでに“聴きどころ”がたっぷりのライブなのだが、“見どころ”もたっぷり。メンバー8人全員がスーパープレイヤーで、全員が主人公の魅力を兼ね備えているからだ。凛とした美しさでステージを華やかに彩る鈴華ゆう子は天井しらずの歌唱力に加え、ピアノ・詩吟・剣詩舞のプロでもあるという才色兼備なボーカル。荒ぶった見た目をしながらいつもニコニコ優しい笑顔で、とんでもないプレイをかますスーパーギタリストの町屋。中性的なルックスでファンを魅了しつつ激しいヘドバンを繰り出すメンバー随一のロックスタイルの亜沙は、アンコールの盛り上げ隊長でもある。東京公演では「80歳になっても脱ぐよ!」と宣言していた立派な筋肉を持つ山葵は、パワードラマーでもありつつ繊細で正確なリズムでバンド全体を支える。
一度見たら忘れない坊主頭の神永大輔は、なんといっても尺八演奏中の変幻自在なパフォーマンスに目が離せない。スタイリッシュな美しさと相反する力強い津軽三味線の音色が融合して、妖艶さを醸し出す蜷川べに。穏やかな人柄ながら時折見せるちょっとサイコな一面がクセになるいぶくろ聖志は、“和楽器”の枠にとらわれない箏使いの魔術師。そしてバンドのまとめ役であり頼れる兄貴分の黒流は、強力な打撃とホール全体に響き渡る和太鼓の掛け声で会場の空気を作り上げる。こんな個性的なメンバーたちが次々に曲を披露して、MCでは自由にトークを繰り広げるのだから、まさに“目が足りない”状態になってしまう。これらの個性は、“推し”を作るにもぴったりだとも思う。
ちなみに、楽器に注目していても面白い。2階から見ていても、音源だけではわからない各楽器の入り方や、いぶくろが曲中に調弦をしている姿、黒流が次に打つものをいつ準備しているかといった細かなディテールを知ることができて、これはこれで楽しい。視点を変えてみると、何度行っても楽しめると思う。
飽きるところがないと言えば、ライブの構成が見事なところもポイント。主張の強い曲が多い『I vs I』収録曲と過去曲が自然な流れで展開され、「この曲とこの曲がこう繋がるとこう聴こえるのか」「この曲はここで聴くとこういう気持ちになるのか」という新たな発見もある。しっかり聴き込んでいるという人でも、アルバムの解像度が上がるはずだ。各曲に用意された映像や照明の演出も、それに一役かっている。また、今回のツアーでは全箇所で異なる日替わり曲のコーナーもある。懐かしい曲やレアな曲が聴ける可能性にも期待したい。東京公演では「オキノタユウ」が披露され、その壮大さに圧倒された。そしてコロナ禍でできなかった、客席参加型のリズム企画「ドラム和太鼓バトル」とうコーナーも。ぜひ一緒になって楽しんでほしい。和楽器バンドのライブは、ひとときも飽きないよう、老若男女が楽しめるエンタメ要素が盛り込まれている親切設計のライブだ。
実際に筆者の周りにも激しいヘドバンでノリにノるバンギャ上がりのようなお姉さんがいたり、黒流の太鼓の迫力に驚いて泣いてしまった幼児、「三味線の音が素晴らしいわね」と語り合っている老婦人がいたりと、実に様々なタイプのファンがいた。これだけ間口の広いバンドもそうそうないだろう。知らないジャンルのライブに行くときは不安に感じることもあるが、和楽器バンドほど間口が広ければ、どんな人でも馴染めるのでその点も心配ない。
また、今回は声出しが解禁された初のツアーでもあるため、そういった意味でもライブ会場ならではの盛り上がりを楽しめる。黒流の煽りも冴え渡り、一緒になって声を上げるとどんどんテンションが上がっていく。大声で「ゆう子さーーーん!」と推しの名を叫ぶ男性ファンもいたり、MCでステージ上のメンバーとコミュニケーションを取ったりと、まさに“ライブ”な光景がとても嬉しかった。山葵が“お客さんと僕らでひとつになりたい”という思いをこめて作った「BRAVE」での、メンバー全員と会場全体でのシンガロングも、きっとこの先のどの会場でも胸熱なシーンとなるだろう。コロナ禍では聴くことができなかった、アンコール代わりの「暁ノ糸」の大合唱も今回は復活。ファンの方なら、このエモさにグッとこないはずがない。
──と、本ツアーについて書きたいことは色々とあるのだが、あまり語りすぎてはいけないのでそろそろ筆を置く。最後にお伝えしたいことは、和楽器バンドのライブには一度足を運んでみても損ではないということ。ロックな部分かもしれないし、和楽器の音色かもしれないし、メンバーの個性かもしれないし──誰かのどこかにきっと刺さる部分があるからだ。ちなみに筆者が今回のライブで一番書きたかった部分は……あえて本稿には書いていない。ぜひ、<和楽器バンド Japan Tour 2023 I vs I>の現場で驚愕されたい。
文◎服部容子(BARKS)
写真◎田辺佳子
<和楽器バンド Japan Tour 2023 I vs I>
2023年07月29日(土)千葉・市川市文化会館
15:00開場/ 16:00開演
2023年08月13日(日)埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
17:00開場/ 18:00開演
2023年09月02日(土) 愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
16:00開場/ 17:00開演
2023年09月07日(木)東京・LINE CUBE SHIBUYA
17:30開場/ 18:30開演
2023年09月18日(月・祝) 広島・上野学園ホール
16:00開場/ 17:00開演
2023年10月01日(日)茨城・水戸市民会館 グロービスホール
17:00開場/ 18:00開演
2023年10月07日(土)大阪・オリックス劇場
16:00開場/ 17:00開演
2023年10月09日(月・祝)宮城・仙台サンプラザホール
16:00開場/ 17:00開演
2023年10月29(日)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
16:00開場/ 17:00開演
【チケット料金】
VIP指定席:前売 ¥15,000(消費税込み/前方指定席/プレゼント付き)
VIP着席指定席:前売 ¥15,000(消費税込み/プレゼント付き)
一般指定席/着席指定席:前売 ¥10,000(消費税込み)
【企画/制作】イグナイトマネージメント/LIFE
【協賛】ニューギン グループ
New Album『I vs I』
CD購入:https://wgb.lnk.to/ivsi_cd_po
デジタル配信:https://wgb.lnk.to/IvsI_digital
収録曲
01.The Beast(アニメ『範馬刃牙』2期オープニングテーマ)
02.宵ノ花(ゲームアプリ『真・戦国炎舞-KIZNA-』オープニングテーマ)
03.愛に誉れ (『スマパチ義風堂々!!~兼続と慶次3』テーマソング)
04.生命のアリア(TV アニメ「MARS RED」オープニングテーマ)
05.修羅ノ義(『スマパチ義風堂々!!~兼続と慶次3』 テーマソング)
06.藍より青し(ゲームアプリ『真・戦国炎舞-KIZNA-』合戦テーマ)
07.Interlude ~Starlight~
08.Starlight (I vs I ver.)(フジテレビ系⽉9ドラマ「イチケイのカラス」主題歌)
09.そして、まほろば
10.時の方舟
11.BRAVE
-Bonus Track-
12.星の如く(すとぷり提供楽曲 セルフカバー)
13.名作ジャーニー(アニメ「あはれ!名作くん」主題歌)
【初回限定「ボカロ三昧2 大演奏会」盤】
CD+Blu-ray ¥7,700 (税込)/UMCK-7217
初回プレス限定封入特典:トレーディングカード(絵柄A) 全9種類の内1枚ランダム封入
Blu-ray収録内容:2022年8月より全国23都市で開催された「ボカロ三昧2 大演奏会」から東京・中野サンプラザホール公演を完全収録!
「ボカロ三昧2 大演奏会」(全18曲)
Overture〜ボカロ三昧2 大演奏会〜
フォニイ
エゴロック
グッバイ宣言
Surges
天ノ弱
紅一葉
アイデンティティ
ナイト・オブ・ナイツ
ド屑
ベノム
いーあるふぁんくらぶ
ドラム和太鼓バトル〜打演飛動〜
キメラ
マーシャル・マキシマイザー
Fire◎Flower
<ENCORE>
吉原ラメント
千本桜
【初回限定vs盤】
CD+Goods ¥6,050(税込)/UMCK-7218
初回プレス限定封入特典:トレーディングカード(絵柄B) 全9種類の内1枚ランダム封入
Goods内容:範馬刃牙コラボロゴ使用ミニタオル、アクリルキーホルダー、ステッカー2種 (範馬刃牙コラボロゴ1種、アルバムロゴ1種)
【CD Only盤】
2CD 税込¥3,850/UMCK-1752/3
初回プレス限定封入特典:トレーディングカード(絵柄C) 全9種類の内1枚ランダム封入
CD DISC2収録内容:アルバム全曲のInstrumental収録(CD1枚に収録)
【真・八重流盤(FC限定)盤 】
全3形態(初回限定「ボカロ三昧2 大演奏会」盤+初回限定「vs」盤+CD Only盤)+DVD
¥18,150(税込)/ PROS-1929
初回プレス限定封入特典:トレーディングカード(絵柄A、B、Cのいずれか全9種入り)
DVD収録内容:アートワーク撮影のメイキングとメンバーの個別インタビュー収録
※受注生産による完全限定盤:受注期間2023年6月5日(月)まで
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