【インタビュー】AJICO、プロデューサー鈴木正人が語るツアー<接続>放送の見どころ「すごいものをみた」
■ベンジーさんがせっかちで
■次々に曲をやろうとするんですよ(笑)
──で、そうして制作を進めていく中で、鈴木さんもライヴに参加する話になっていったんですか?
鈴木:「ライヴどうしようか」という話になった時に「鍵盤をけっこう入れたから、そこに関しては正人くんに参加してもらおうか」みたいな話はレコーディングの時にもチラッと出てたかな。
──ではその時点で、5人編成になることになっていたんですね。
鈴木:そうですね。ただ、さっきも言いましたけど、僕はそれこそ全曲に参加するとは思ってなくて。“新しいEPの曲だけ、ゲストみたいな感じでやるぐらいかな”と思ってたんですけど、やっていくうちに「あれも」「これも」ってなっていって(笑)。
──そうですか。いや、ふたりは鈴木さんの才能を称賛していましたよ。ベンジーは「正人くんのセンス、すごくカッコいいんで、今回は正人くんに預ける部分が多かった」と言ってましたし。
鈴木:そんな(笑)……ありがたいですね。そんなに大したものじゃないですけど。
──いえいえ、そんなことないです。それから「惑星のベンチ」のトラックダウンの時には、できたテイクに対してUAが「デヴィッド・ボウイの「スターマン」みたいな感じで」と言ってやり直してもらったら、すごく良くなったらしいですね。
鈴木:ああ、そうそう(笑)。最初に上がってきたやつはすごくちゃんと出来上がってて、それはそれで完成度が高くて良かったんですけど、UAのイメージは「そこまでゴージャスな雰囲気じゃなくてもいいんじゃない?」みたいな感じで。
──そうなんですね。完成したテイクは、想像がすごく広がる仕上がりになってますね。
鈴木:うん。やり直してもらって、すごく良くなりました。
──それからタイトル曲の「接続」は、今回の4曲の中ではベンジーの一番のお気に入りだそうです。
鈴木:うん。「接続」は、基本のドラム、ベースはデモの時にやってたままで、ほとんどいじってないですね。鍵盤をいくつか足した、みたいな。元々のデモのテイクがすごくカッコ良かったので。
──わかりました。で、今年の春頃にライヴのリハーサルに入ったと思うのですが、その時は鈴木さんとしてはどうでした?
鈴木:けっこう大変だったんですよ(笑)。他のメンバーはみんな曲を知ってるというか……前のアルバムの曲が多いから、それはそうなんですけど。でも僕は、もともと鍵盤が入ってない曲もいっぱいあったので、そこにどういうアプローチをしようか?というところから始まって、音色もどうしようかな?と思いながらやってるんですけど。とにかく、ベンジーさんがせっかちで、次々に曲をやろうとするんですよ。1回やったら「はい、次行こうか」みたいな。
──ああ、そうですね! ベンジーってそういう人なんですよね。
鈴木:そう。だから「ちょっと待ってよ」みたいな(笑)。そういうことがありました。
──そうですね、鈴木さんは初めて演奏する曲だって多いですしね。
鈴木:僕だけ、一からなんだよね。さすがに途中で「ちょっと待ってください……」「ごめんごめん」みたいな感じでした(笑)。
──ははは。4人の雰囲気はどうでした? バンドはスムーズに動いてましたか。
鈴木:そうですね、最初は「うーん、どうやってやってたかな?」とか、そういう感じはあったけど。でもTOKIEさんも椎野さんも百戦錬磨というか、プレイヤーとして素晴らしいので。スムーズだったんじゃないかな。で、僕もみんなを昔から知ってたので、そういう意味では全然楽にできましたね。
──で、セットリストはAJICOの新旧の曲はもちろん、UAとベンジーがそれぞれ唄ってきた曲もあったわけですが。鈴木さんとして、特に印象に残ってる曲や演奏はどれでしょうか?
鈴木:うん……いい曲だなと思ったのは「すてきなあたしの夢」でした。あれはピアノが入ってない曲で、今回付け足したんですけど、ピアノを弾いてて、すごく気持ちいい曲なんですよね。和声がとてもキレイで、ちょっとクラシックみたいな感じで。あとは……苦労したのはUAの曲かな。「情熱」をどういうアプローチでやろうかというのは、ちょっと悩んで、バンドみんなで「どうしようか?」みたいになって。普通にやれば全然できちゃうんだけど、それだとつまらないかな、と。オリジナルに寄りすぎるのも何だしな、みたいな。そこでちょっと時間かかったかな。
──ステージでUAが、AJICOバージョンの「情熱」だと言ってましたけど、まさにそのぐらいリアレンジされてましたね。特にイントロの入り方がすごく冴えてるなと思いました。
鈴木:そうですね(笑)。あれも「どうしよう?」って話で。前の曲とのつなぎから含めて、最終的にあの形になったんです。
──はい。それこそ「地平線 Ma」からの流れですね。それから「深緑」のイントロでもキーボードがフィーチャーされていましたね。
鈴木:ああ、はいはい。あれは「Lake」という曲(『深緑』収録)をくっつけてるんですね。あれもUAが「まずオルガンから始まりたい」というアイディアを出して。それも「大音量でやってほしい」って……お客さんをびっくりさせたい、と。
──いや、びっくりしました。何なんだこれは?みたいな。
鈴木:プログレのバンドみたいになったかもしれない(笑)。イントロでは。
──そうですね。先ほど言ったように、サイケデリックな彩りがあるコンサートだった気がします。20年前のAJICOのツアーは、当時のジャムバンドの匂いもあったと思うんですよ。それがこの2021年のAJICOは現代的なサイケ感があるなと。それが迫ってくる感じがあります。
鈴木:ああ……そこにはUAの中で、そういうセッション的なものはなるべく排除したい、みたいな感じがあったのかな? たぶん。だから「波動」も、元々は後半にすごく長いセッションが続いていってたんだけど、そこをちょっと短くしようということになって。
──この曲で鈴木さんはハモンドを弾いてますね。
鈴木:そうですね。あれに関してはオルガン以外のアイディアがなかったので。
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■WOWOW番組『AJICO Tour 接続』
放送:〔WOWOWライブ〕〔WOWOWオンデマンド〕※放送終了から2週間アーカイブ配信あり
出演:AJICO (UA、浅井健一、TOKIE、椎野恭一) and 鈴木正人
楽曲:深緑、美しいこと、すてきなあたしの夢、フリーダム、L.L.M.S.D.、Black Jenny、接続、惑星のベンチ、金の泥、悲しみジョニー、地平線 Ma、情熱、ぺピン、庭 ほか
※収録日:2021年6月13日
※収録場所:東京 中野サンプラザ
番組URL:https://www.wowow.co.jp/ajico/
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