KISAKI、90年代V系の音源を集めたオムニバス盤『鹿鳴館伝説』プロデュース

KISAKIが東京のライブハウス・目黒鹿鳴館の40周年を記念し、90年代ヴィジュアル系の音源を集約したオムニバス盤『鹿鳴館伝説』をプロデュースした。

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目黒鹿鳴館の歩みを語るうえで、90年代のヴィジュアルシーンとの親和性は欠かすことができない。1990年代後期はEXTASY RECORDS、FREE-WILL RECORDS、DANGER CRUE RECORDS、Tears Musicの大レーベル以外にも、noir、Anarchist Records、KEY PARTY、Soleil、Kreis、LOOP ASHなど、新しいレーベルが続々と誕生していた時代。

同じ時期、本作のプロデューサーでもあるKISAKIが関西を代表するレーベルとしてMatinaを設立。自身が率いたMIRAGE、Syndromeを筆頭に、Madeth gray’ll、DAS:VASSER、vellaDonna、ヴィドールなどなど関西ヴィジュアル系シーンを彩ったバンドたちを続々輩出した。

細かく見ていけば、関西では心斎橋BAHAMAというライブハウスがレーベルを担いGARGOYLEやEins:Vierなどの音源を。名古屋では名古屋MUSIC FARMが黒夢やSILVER ROSEの音源を。関東でも、埼玉県にある浦和NARSISが、PIERROTやNALSISTの音源をリリースするなど、ライブハウスを軸としたレーベルから個人で立ち上げたレーベルまで存在していた。様々なバンドやレーベルが群雄割拠していた時代と言える。

そんな中でも目黒鹿鳴館は「バンドが目標とする場所」「制覇すべき聖地」としての立場を変えることなく、孤高の存在で在り続けてきた。今回のオムニバス盤『鹿鳴館伝説』に収録されたバンドたちは、すべて目黒鹿鳴館の舞台を彩り、目黒鹿鳴館でワンマン公演を行ない、この会場を埋めつくすことを夢見てきたバンドたちだ。「目黒鹿鳴館の歩みに名前を刻んできたバンドたち」とも言える。その伝統というべきスタイルは、現在もヴィジュアル系バンドたちの間には浸透している。

4枚組のCD『鹿鳴館伝説』には、レーベルやバンドの垣根を越えた全50バンドの音源が収録されている。KISAKIの人脈と人望、目黒鹿鳴館を愛するレーベルのオーナーやバンドたちが支持の声を上げたことで、今回の作品は誕生した。90年代のヴィジュアルシーンを回顧するだけではなく、ひとつの時代を生々しく切り取った作品だ。

連日のように様々なヴィジュアル系のイベントやワンマン公演などが行われており、楽屋へ続く階段を降りていくと、けっして広くはない2つの楽屋や廊下では多くのバンドマンたちがヘアメイクを施しながら出演の時を待っていた。あの90年代時期に目黒鹿鳴館の中にあった言いようのない熱気が、ヴィジュアル系というシーンを活性化させ、後に世界的に認められるジャンルにまで押し広げた要因になっていたことを、今更ながら思い返してしまう。当時のバンドやシーンのことを体感していない人には、憧憬としてこの音源に触れながら、あの活気も感じてもらいたい。

なお、本作における収益は全額目黒鹿鳴館に寄付される。KISAKIは同店の存続を願い「目黒鹿鳴館40周年＆救済プロジェクト」に参加中でもあり、今回の『鹿鳴館伝説』もKISAKIなりの目黒鹿鳴館への愛情と恩返しの形と言えようか。

文◎長澤智典
編集◎BARKS