【インタビュー】KISAKI、音楽活動30周年。「“V系をやって良かったな”と思えるような生き方をしていきたい」
KISAKIが2023年、音楽活動30周年を迎えた。
◆撮り下ろし写真(13枚)
10代の頃から関西を中心に、ヴィジュアル系シーンで活動してきたKISAKI。いわば、最もヴィジュアル系が隆盛だった時代を駆け抜けてきたわけだが、紆余曲折ありながらも現在でも変わらず活動を続けていることは賞賛に値する。
昨年2022年には自身のバンド・MIRAGEが結成25周年を迎え、かつてKISAKIが立ち上げたレーベル・Matinaも誕生から25年を迎えた。そして今回の音楽活動30周年。KISAKIの胸には、いまどのような思いがあるのだろうか。
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■「30周年か……よし、30曲作ろう!」
──30年は人が生まれていい大人になるような年月じゃないですか。KISAKIさんはその時間をずっと音楽活動に充てられていて、今は熟された時間なのかなと。10周年、20周年の頃と感覚は違いますか?
KISAKI:やはり全然違いますね。30周年ってなった時に、やっぱり自分の年齢であったり環境が変わってきて。それはコロナ禍というのもあったんですけど。今の自分のこの生活がいつまで出来るか分からないという考えも出てきたんです。20代、30代の時にはそういうのはまだ無かったんですよね。まだまだバンドでいけるっていう自信もあったし。30周年迎えて40代も後半迎える歳になってきて、今やりつくしておかないと後悔するって思ったんです。出来ることは全部やろうって、この1年を大事にしたいなと思って、今を過ごしています。
──これまでのクライマックスを持ってきている感じでしょうか。
KISAKI:クライマックスになっても良いぐらいの気持ちですね。
──20代の頃はその感覚はなさそうですよね。
KISAKI:僕は16歳からバンドを始めたんですけど、今思えばメンバーやバンドに恵まれていたなと。音楽だけで生活できたし、自分でレーベル作ったのも二十歳の時だったし、そう考えたら仕事というより、自分の趣味がそのまま仕事になっていたのかなと。そう思うとすごくありがたいですし、実は20歳くらいにはすでに、音楽を始めた時にやりたいと思っていたことをほぼやりつくせていた感じがあったんですよ。ただ、その時はもっともっと進化していきたいという気持ちが出てきて。人間って欲がどんどん出てくるじゃないですか。でも、今この30周年迎えたときって、今後のことを考えるっていうより今後はもう時の流れに身を任せる感じでもいいのかなって。
──もう見守るようなポジション?
KISAKI:そうですね、自分が思い描いていた夢は大体は果たせたというか。ありがたいことにそれは皆さんのおかげであって。上を見たらキリがないですけど、下を見てもキリがないし。何が幸せかは自分の判断だと思うし。それは周りがなんと言おうが自分が満足いけばそれは人生それでいいと思うので。
──1月にあった30周年記念公演<KISAKI BANDWORKS 30TH ANNIVERSARY LIVE「BEYOND THE KINGDOM -TOKYO-」>を見ていて、30周年の集大成はもちろんなんですけど、最後にダウトの幸樹さんが「これがヴィジュアル系だ!」と叫んだのがまさにその通りだなと思いまして。シーンを築き上げたKISAKIさんの公演だからこそ、幸樹さんはそう言ったんだろうなと。
KISAKI:その言葉が出るというのは、僕からしたらすごく嬉しいですね。やっぱり僕はヴィジュアル系であることに誇りをもっていますし、そもそもヴィジュアル系が好きですし。幸樹は元々Matina所属なので、一緒に何十年と頑張ってきた仲間が、こうやって同じステージに立ってそういう発言をしてくれるというのはやっぱり嬉しかったですね。嬉しかったし、よく言ってくれたって(笑)。
──グッと心を掴まれた瞬間でした。KISAKIさんとヴィジュアル系そのものを振り返るような公演だったと思います。
KISAKI:あの日は、僕の30年の生き様を出し切ろうと思ってました。メンバーの協力ありきですけど、自分の出来ることは出し切ろうと取り組みました。
──そしてそのライブを経て、3カ月連続で30周年記念フルアルバムをリリースされます。記念すべき年なので音源は出るだろうなとは思ってましたが、まさかトータル30曲という量と錚々たるメンバーで作品を制作されているとは…。やはりKISAKIさんやってくれるな!と。
KISAKI:そう見えたのなら嬉しいですけど、実はそこまで深く考えていたわけではなくて、最初は何か音源を出したいという気持ちだけだったんです。でも、僕はボーカリストではないし。じゃあどうするかってなった時に、僕が作詞、作曲した曲を友人をゲストに迎えて演奏し、歌ってもらおうと。そうやって戦友であったり後輩であったり、ジャンルは違う昔からの友達であったり、何人かに声をかけたんです。そしたらいろんな方から即答で返事をいただけて、「これはちょっと1枚で収まらんな」っていう感じになってきて(笑)。そこから「30周年か……よし、30曲作ろう!」って決めました。そこから一気に火が付いた感じですね。1月に周年ライブを行うということのは去年から決まっていたことなんですけど、アルバムベーシック制作は3年くらい、ゲストボーカル録音は12月ぐらいから動き始めました。
──結構最近動き始めたんですね!
KISAKI:あ、ゲストのボーカル陣が最近ですね。曲の部分はもうレコーディングしてあって、後はもう歌だけという状況だったんです。元々のきっかけはコロナ禍になってライブができなくなって、ライブハウスがクラウドファンディングやるから楽曲を提供してくれというのがあって曲を作り始めたことが原点です。
──『鹿鳴館伝説』ですね。
KISAKI:そうです。その他にも数件ありました。今までは既存の曲を提供していたんですけど、それではクラウドファンディングの力にはなれないんじゃないかって思って。自分がファンだったら、せっかく出すんだったら新曲の方が良いよなって思って、試しに1曲作ったのが始まりだったんです。その時に「ゲストを呼んで曲を作るのってありだな、これは誰もやってないな」って思って。色んなバンドが周年とかで自分のバンドのトリビュートアルバムを作ったりとかあるじゃないですか。そういうのは見たことがありますけど、僕が今やってるスタイルはあまり聞いたことがないというか、自分の中では新しいと思った。そこから、僕の仲間や友人に今回の企画の交渉期間に入るんです。「こういうことやるからもちろんやってくれるよね?」って(笑)。皆さんのお力添えを頂いて完成した30曲だったんですけど、大変でしたね。足掛け3年、コロナ禍は何もできなかったんでエンジニアさんと二人でずっと作業したり、家で作詞したりして…すごい陰キャな生活してました。陰キャアーティストでしたね(笑)。
──陰キャアーティスト(笑)。そのシーズンってちょうどMIRAGE25周年とも被りますよね?
KISAKI:そうなんです。それもクラウドファンディング始まりなんですよ。ボーカルとして頼んだのがMIRAGEのAKIRAで。今回も主軸となって歌ってくれているんですけど、俺はAKIRAの歌がすごい好きで。彼と話しているときに「MIRAGEが2022年で結成から丸々25周年になりますね」ってことから「軽くまた1本ライブでもやる?」って話になったんですけど、彼が「やるならセッションとか軽い感じじゃなくてしっかりとやりませんか」って申し出てくれたんです。1年の限定ではあるけど第3章MIRAGEとして新メンバーを迎え入れて5人にしてフルアルバムを作ろうと。そこから始まっているんで、僕は計40曲レコーディングしないといけないという(笑)。途中から気が狂いそうでしたよ。MVを撮ろう、アー写も撮ろうってことにもなりますし、本格的に時間足りないなって思いながらやってて。そんな感じでMIRAGEを進めつつ、同時に30周年企画のアルバムも制作して……。1月のライブの演出も決めたりしなきゃいけなかったので、去年の年末くらいは、まさに地獄でしたね。コロナにも感染しちゃったり(苦笑)。
──それは確かに……。そんな中で完成した3部作にはキャッチコピーもついていますね。テーマありきで制作されたのでしょうか。
KISAKI: 30曲作ってそれぞれのアルバムに振り分けていくときに、自分が思い描いていたテーマであったり、歌詞や想い、心境をそのままキャッチフレーズにしました。
──曲もまさに“THE KISAKIワールド”ですよね。
KISAKI:完璧にそうですね。そうしたいというか、そうしないと意味がないというか。古いって言われるかもしれないですけど、自分が肌で感じたこと、自分が好きな音楽、30年間の音楽活動で培ってきたものを表現したかったんです。
──アルバムの最初にSEがありまして。
KISAKI:SEって結構みんな簡単に考えがちなんですけど、僕の中では曲作るよりSE作る方が難しいんですよ。SEってやっぱり要するにオープニングテーマみたいな感じじゃないですか。
──幕開けですよね。
KISAKI:何事も幕開けって結構大事だから、まずそこで心を掴まないとって思って、特に1枚目のSEにはこだわりましたね。
──本当に「ここから始まるぞ」という感じがしますね。
KISAKI:ゾクゾクするような、でも綺麗で世界観が出るようなものをと思って作りました。
──なんか、メロディーが悲しいとかではないですけど…。
KISAKI:悲しみの中の希望、ですね。今から始まる物語ということで、遠くを見ているイメージで作ったんです。
──そうです、本当にそんな感じがして、それがまた3部作のド頭にくる。アルバム全体としても、ただ曲が並べられたアルバムではなく、ライブを見させていただいているような感覚になりました。
KISAKI:そうですね。ライブとかドラマ、映画のようなイメージを持っていただけると嬉しいです。
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