【ライブレポート】KISAKI、最高で最強な30周年の締めくくり
30年間駆け抜けたKISAKIの伝説に、また新たな歴史が刻まれた。このページをさらに更新するのか‥‥。それは、神(KISAKI)のみぞ知ることだ。
◆ライブ写真
KISAKIが己を示す手段として選んだ音楽活動。手にしたベースを戦う剣に、彼はいくつも形を変えながらヴィジュアル系という音楽シーンの中で戦い続けてきた。気づけば、今年で30年。今年は3枚の新作フルアルバムを出すなど、30年間の歩みを集大成し、記録として残る活動を続けてきた。
KISAKIが30周年を締めくくるライブとして提示したのが、11月5日に大阪BIG CATで行なった<KISAKI BANDWORKS 30TH ANNIVERSARY LIVE「BEYOND THE KINGDOM -OSAKA->になる。今年1月に東京で行なった<KISAKI BANDWORKS 30TH ANNIVERSARY LIVE「BEYOND THE KINGDOM -TOKYO-」>で幕を開けた30周年の歩みは、ライブという形を通して完結する。
出演したのは、JILUKA / Leetspeak monsters / FEST VAINQUEUR / NEGA / defspiral/ 摩天楼オペラ / Psycho le Cému / THE LOCUS。MCに浅井博章(FM802)を迎え、転換の合間に、出演を終えたバンドたちとKISAKIにまつわる思い出話を繰り広げていた。さっそく、この日の模様を紹介したい。
◆ ◆ ◆
▪︎JILUKA
「始めようかー!」Ricko(Vo)の絶叫を合図に、凄まじい轟音が舞台の上から雪崩の如く押し寄せた。イベントのトップを飾って登場したのが、JILUKA。彼らは「Twisted Pain」を通して最初から感情のギアをトップへぶち込む。観客たちも最初から頭を振り乱し、理性のストッパーを外していた。これまでにKISAKIが作り続けてきたイベントらしい光景だ。彼がこの日に求めた景色が、早くも目の前に広がりだしていた。
KISAKIの意志を胸にJILUKAは、さらに感情のアクセルをグイッと踏み込み、「Ignite」を通して、この会場をヘドバンや折り畳みの波が起きる景色へ染め上げる。Rickoの言葉へ導かれるように、フロア中の人たちが頭上高く両手を突き上げて熱くクラップをする様も圧巻だ。JILUKAは転調や変拍子を効かせた楽曲を魅力に、観客たちの理性を黒い熱狂で塗りつぶし、その場で飛び跳ねさせていった。
轟音シンフォニックな「Faizh」でもJILUKAは、場内中の人たちの頭を揺さぶれば、大きく身体を折り畳ませる。激しさの中にも美メロな歌が胸へ届くたびに、心が嬉しく高揚する。荒々しさの中へ巧みに忍ばせた美しい歌の衝撃が身体も心も熱く騒がせる。途中、Rickoと観客たちが絶叫を交わす場面も印象的だった。
荘厳な音が響き渡る場内。Rickoの叫びを合図に、楽曲は竜巻の如く唸りをあげる。重厚な音の渦の中へ、JILUKAは観客たちをグイグイ巻き込む。「BLVCK」、とても強烈な衝撃を与える楽曲だ。凄まじい音の渦の中へ巻き込まれた観客たちが、本能のままに暴れ狂う。
JILUKAは最後に轟音シンフォニック/ラウドオペラな「VENΦM」を叩きつけ、この会場をノイズ/ラウド/カオスな景色に染め上げた。最初は様子見をしていた観客たちも何時しかヘドバンの輪の中へ加わり、この場に相応しい自分に感情を染め上げ、JILUKAと一緒に絶叫と轟音の中、全力で感情をぶつけあっていた。
▪︎Leetspeak monsters
時の流れを数日前のハロウィンへ戻すように、Leetspeak monstersが登場。始まりは、厳かに。しかしD13(Vo, Rap)のラップと歌が、この場へいる人たちへ気持ちを軽やかにする魔法の呪文をかける。現世へ舞い降りたモンスターたちは、「Mr.Halloween」を歌い奏でながら、神(KISAKI)へ祈りを捧げに来た人たちを怪物たちが騒ぎ狂う宴の中へ連れ出した。
「Wonderland」を歌い奏でるのを合図に、Leetspeak monstersはこの場に集った人たちへドキドキとワクワクの魔法をかけてゆく。彼らが曲を重ねるごと、観客たちはいろんな“HAPPY”の魔法に魅せられていた。スリリングな雰囲気も匂わせながら、これから何がかが起きそうな不思議な高揚感をLeetspeak monstersは次々と与えてゆく。D13の「JUMP JUMP JUMP」の声にあわせ、フロア中の人たちが飛び跳ねる景色も圧巻だ。
KISAKIの30周年を祝いに、彼らはマジカルでファンタジックなパーティーチューンの「Black owl」を演奏。心地よく弾む演奏とD13が振り上げる腕の動きにあわせ、フロア中の人たちも両手を振らし飛び跳ねるなど、思い思いに笑顔で宴を楽しんでいた。身体が自然と揺れだすのは、Leetspeak monstersのかけた音楽のトリック。今は、跳ねる演奏にあわせ一緒に高く手を掲げ、このまま飛び跳ね続けていたい。
と、妖しげな音色が流れだす。パーティーへと誘うオーガナイザーとなったD13の歌声へ導かれるように、意識をふわふわっと心地よくトリップさせる音楽が場内中に流れ始める。「Monster's Party」の演奏にあわせてフロア中の人たちが大きく腕を振り上げ、4人のモンスターたちを踊りのパートナーに迎え入れ、一緒に熱狂のダンスに興じてゆく。D13の動きにあわせて大勢の人たちが真似て躍る様は、とても華やかな光景だった。
「黒く、黒く、黒く染まれー!」と、Leetspeak monstersが宴の最後に持ってきたのが、場内中を拳とヘドバンの嵐に染め上げた「Gothic」だ。煽りの要素も組み込んだ「Gothic」を歌い奏でながら、4人のモンスターたちは、この場にいる人たちを笑顔で暴れはしゃぐモンスターに変えていった。この宴から離れたくない。ずっとずっとハロウィンの空気の中で熱狂していたい。今宵も良い悪夢だった。
▪︎FEST VAINQUEUR
数多くの手拍子と熱情した黄色い歓声に迎え入れられ、FEST VAINQUEURのメンバーが舞台へ姿を現した。ドラムカウントを合図に飛び出したのが、歌始まりの超絶エモチューン「ヴァレンシアとヴァージニア」だ。冒頭から、フロア中がヘドバンする景色に染め上がる。その様を見ながら、気持ちを前のめりに歌い奏でるメンバーたち。メロエモな曲調ながらも、突きさすような歌声と演奏が刺激的だ。HAL(Vo)とHIRO(B)がドラム台に上り、歌い奏でる場面も。観客たちの熱情ぶりに刺激を受けたメンバーらも、理性の留め金を外しどんどん感情を露にしてゆく。
「とことんアガっていこうぜ!!」。HALがタオルを手に「宴-utage-」を歌い始めた途端、フロア中の人たちも手にしたタオルを高く振り上げ、かっと熱くなった気持ちを携え、右へ左に激しく横モッシュを繰り出す。「アガってグッとハイになれ!!」という歌詞ではないが、メンバーも観客たちも、この宴に飛び込まなきゃここにいる意味がないとばかりに暴れ狂っていた。HALの「そいやそいや」の煽り声も胸に熱い。 誰もが、HALと一緒に手にしたタオルを振り上げ、頭を前後左右に振り乱し、アガってグッとハイになりっぱなしで、この宴を楽しんでいた。
続く「戦-ikusa-」では、冒頭からHALが熱情した拳と絶叫を上げ、観客たちも力強くヘドバンをしながらさらに気迫を注ぎ込み、この空間を、互いに高ぶる感情と感情とをぶつけあう戦いの場に塗り変えてゆく。HALの煽りに刺激を受け、フロア中からあふれだす熱情した叫び声。一緒に拳と叫び声を交わし様は、圧巻だ。互いに本気で想いをぶつけあう戦なち、いくらでも味わいたい。お互いが信頼を寄せているからこそ生まれる戦いだから、本気で気持ちを曝け出して熱くなれる。
最後にFEST VAINQUEURがぶち上げソングとして叩きつけたのが、「現代的疑惑都市‘DOUBT!’」。冒頭から強烈な音が、身体をマシンガンの弾丸の如く貫き続ける。熱狂を詰め込んだ音の弾丸で理性をぶっ飛ばす。誰もが楽曲にあわせて飛び跳ね、激しくヘドバンを繰り広げていた。この景色こそがFEST VAINQUEURのライブ。そして、KISAKIがこのシーンに作りあげてきたヴィジュアル系バンドのライブらしい楽しみ方。熱狂が嵐のように一瞬で駆け巡るように、我を忘れて熱情し続けたライブだった。
▪︎NEGA
UNDER CODE PRODUCTION時代からの盟友バンド、NEGA。煌きとノイズの入り混じるSEに乗せて、「VANITAS VANITATUM」からライブは始まりの合図を鳴らす。悲痛な声を上げて歌う儿(Vo)。
彼らは間髪入れずに「PURGATORY」を叩きつけ、最初からこの空間へ拳とヘドバンの嵐が巻き起こる景色を作りだした。儿を筆頭に、メンバーの誰もが観客たちへ歌声と音の牙を剥き出しに襲いかかる。演奏陣は冷静にも見えるが、尖ったその音は間違いなく観客たちの理性を壊していた。激しく叫び、グロウルする儿。余白など必要としない、直情した感情と感情ぶつけあうライブだ。それこそがNEGAのライブだ。
楽曲はノンストップで突き進む。フロア中から突き上がり続ける拳。お立ち台の上に立った儿は、激しく身体を折り曲げ、絶叫した声を張り上げ、観客たちに熱狂を求め続ける。「FABLE IN THE COLD BED」でも、NEGAは熱情/高揚した歌と重厚ながらもエモい音を組み込み、観客たちを漆黒のNEGA WORLDへ染め上げ続けてゆく。
「もっとキマッていけるよな、やれんのか!」と叫ぶ、儿。ヘヴィなデジタル音が響き渡る場内、その音へ導かれるようにクラップする観客たち。演奏が激しく唸りを上げるのを合図に、フロア中の人たちも激しく頭を振り乱す。ラウド/デジタルをハイブリッドした「MINDLESS」が荒ぶる牙を剥いて襲いかかる。ただ激しいのではない、そこへカオスとエモをクロスオーバーしたドラマを描きだす。だから、心が歌に染まりながら熱狂へ溺れていける。後半には、儿と観客たちがモンキーダンスに興じる場面も登場した。
神秘的なSEに乗せ、次の物語へ。深く、重く、奈落の底へと落とすように、NEGAはUNDER WORLDな音世界を描きだす。少ない音数の中へ強い存在感を覚えるミドルメロウな楽曲だ。儿が轟音に乗せて歌い叫ぶ様や、言葉の一言一言へ祈りを込めるように歌う姿も印象的。「ー」は、意識を惑わす楽曲だ。何時しかその世界へ感情が飲み込まれ、ずっとその様を見つめていた。
何処までも落ちてゆくような奈落のドラマは続いてゆく。その中へ希望の灯をともすように、儿は空へ向かって歌っていた。
▪︎defspiral
defspiralのライブは、TAKA(Vo)のエモーショナルな歌声が響き渡る歌始まりの「明日への階段」からスタート。そこへ重厚な演奏が加わり始めるのを合図に、楽曲は哀愁を帯びた世界を描きだす。彼らは歌声と演奏を通し、一人一人の心のスクリーンに、いろんな痛い想い巡らせる物語を映しだす。大勢の人たちがTAKAの歌う言葉を追いかけながら、この物語の行く先をつかみたくて、身体を揺らしつつも耳や心をしっかりと傾けていた。
楽曲は、表情を一変。defspiralは野太くもパワフルなロックナンバー「VIVA LA VIDA」をぶち噛ます。彼らは、これぞロックンロールの衝撃だと言わんばかりに、感情を揺さぶる音のこん棒をぶんぶん振り回すように歌い、演奏。とても貫祿にあふれた姿だ。雄々しいTAKAの歌声が、嬉しく気持ちを奮い立てる。
さらに勢いを増すように、MASATOのギターがザクザクとした音を唸らせる。続く「FLASH」でも、defspiralはこれがロックンロールという姿勢を示すように、野太くも気高き音と歌声を魅力に、観客たちを熱狂の渦の中へ巻き込んでいく。フロアでも彼らの演奏に酔いしれながら、ずっと心地よく身体を揺らし続ける人たちが多く誕生。演奏とシンクロするように突き上がる拳の数々が、この空間を雄々しき景色に染め上げる。とても貫祿と風格を備えたバンドだ。
止まることなく「ALEGRIA」へ。巧みに楽曲の表情に変化を与えながら。でも、一貫して豪快なロックンロールスタイルを崩すことなく突き進む。馬力の強烈な暴走列車に乗り込んだまま、スリリングさを感じながらも、風切り走る感覚に心地よく酔いしれている気分だ。
「一緒に躍ってくれませんか」の声を合図に飛び出したのが、雄々しくも華やかな色を持った「MASQUERADE」。激しく躍動する楽曲へ身を預け、高く手を掲げ、思いきり上へ上へ飛び跳ねる観客たち。defspiralがこの空間に作りだしたロックンロールの波にライドした観客たちが、巧みに音の波を乗りこなし熱狂し続ける。華麗に、でも強烈な存在感を放ちながら、defspiralはこの空間に自分たちの色をしっかりと塗り付けていった。曲が進むごとに気持ちがアガり続ける。もっともっとアガり続けたい、絶頂のその先にある景色を共につかみたい。
最後にdefspiralは、「HALO」を演奏。これまでの熱狂をすべて大きなロックという魂のカプセルの中へと封じ込め、TAKAのおおらかな歌声に乗せて、胸の奥へと投薬してくれた。胸の奥で溶けた魂の歌は、不思議と美しく汚れなき涙を瞼に湛えさせていた。長大な1本のドラマを、この場にいた一人一人が濃密に味わっていた。ずっと心が吸い寄せられ続けたライブだった。
▪︎摩天楼オペラ
KISAKI自身がライブを通してつねに求め続けてきた、観客たちと本気でぶつかりあうライブ。この日の摩天楼オペラも、その姿勢を物語っていた。
幕開けと同時に、摩天楼オペラのライブは「BURNING SOUL」から力強くスタート。彼らは、最初から観客たちへ挑みかかる姿勢だ。本気でぶつかりあおうとする姿勢が伝わるライブだ。5人が身体から放つオーラが、その姿勢を物語っていた。
続く「Murder Scope」でもメンバーらは、観客たちの感情をとことんまで燃やし尽くす勢いで歌い奏でていた。雄々しく、高らかに歌いあげる苑(Vo)に向けて突き上がる無数の拳。演奏陣もみんな、前屈な姿勢で音を繰り出し続ける。ここは戦いの場。本気で剥きだした感情と感情とをぶつけあい、燃え盛るような熱狂を生み出してゆく、互いに気持ちの通じ合った戦の場だ。
止まることなく演奏は、シンフォニックでハード浪漫な「落とし穴の底はこんな世界」へ。緩急を生かし、様々に転調をしながら、彼らは魂を燃やし尽くすロックなオペラを描きだす。苑の煽る声にあわせ、フロア中から上がる拳と絶叫した声。一切手を緩めることなく、彼らは気合と熱情を込めた歌声と音の弾丸を次々と放ちながら、観客たちのハートに熱情という刺激を与えてい。ステージの上を食い入るように見つめる人。大きく手を振り上げ騒ぐ人、乗り方はそれぞれなれ、誰もが摩天楼オペラのライブにすっかり魅せられていた。
「alkaloid showcase」の演奏が始まったとたん、フロアのあちこちで観客たちが高く手を上げ、跳ねだした。みんな求めていた、理性をぶっ壊してくれる興奮と衝撃。ときに荒ぶる感情をぶつけ、ときにメロウな歌に気持ちを揺らし、たくさんの観客たちが、この空間に熱狂の景色を作りあげていた。5人も雄々しい姿で、気迫を込めた歌や演奏を舞台の上から降り注ぎ続ける。
苑の歌始まりで「Invisible Chaos」。これまで以上に激しくもカオスな衝撃を、彼らは突きつける。苑のハイトーンな歌声も気持ちを奮い立てる。ここには,互いに心の繋がりあった景色が生まれていた。阿吽の呼吸のように、お互いが欲しいものを与え受け止めながら、この空間を熱情させていった。力強く突き上がる無数の拳が、それを証明していた。
最後に摩天楼オペラは、この日一番の激しさを持った「GLORIA」を突きつけた。幕を開けたときからラストまで、彼らはずっと加速し続けなから、この空間に熱情した景色を作りあげていった。この場で生まれた熱狂した声をKISAKIへ届けるように、最高のライブを描きだしていった。フロア中から響き渡る合唱も、胸を熱く震わせた。そこには、一人一人が合唱隊の一員となった、心を揺さぶるロックなオペラの景色が生まれていた。
▪︎Psycho le Cému
続いて、Psycho le Cémuのライブが幕を開ける。「もう一度いこうぜ」と述べたDAISHI(Vo)の声を合図に、「アカツキ」が流れだす。彼らは、なぜ、この日の舞台に自分たちが上がっているのかをよくわかっている。だからこそ、彼らなりのリスペクトを込め、近くにいるKISAKIへ向け、そして、何度でも伝説を作り続けてゆく自分たちの未来へも想いを向けて「アカツキ」を歌っていただろう。
続く「ノスフェラトゥ」ではフロア中の人たちの拳を突き上げさせ、この場に熱狂の景色を作りあげる。予定調和ではない、互いが本気で感情をぶつけあって生まれる熱狂がKISAKIイズムだとわかっているからこそ、彼らは序盤の2曲で、Psycho le Cémuなりの愛情をKISAKIに、そして目の前にいる一人一人に、心を奮い立てる景色を通して見せていった。演奏中、ずっと振り下ろされることなく突き上がり続けた拳がフロアの熱を示していた。
「激しいやつを演ろう、全員で頭振れ!」の声を合図に、Psycho le Cémuは「LOVE IS DEAD」を叩きつけた。フロアでは、演奏にあわせ無数の拳が突き上がり、折り畳みやヘドバンの景色が生まれる。サビで場内中の人たちがわちゃわちゃとはしゃぐ姿も印象的。とても胸を熱く騒がせる歌だ。歌心で気持ちが高ぶれば、演奏で身体が騒ぎ続ける。感情を高揚し続けるドラマが、嬉しく気持ちを奮い立てる。
「激愛メリーゴーランド」ではメンバー5人がフロントに並び、歌い踊る。DAISHIの歌にあわせ、AYA(G)とYURAサマ(Dr)が楽器を置いてダンサーに徹する。そのエンターテイメント性こそPsycho le Cémuらしさ。AYAとYURAサマの、息がぴったりのダンスもさすがだ。表現する以上は、徹底してエンターテイメント性を追求し尽くす。その姿勢は、こういうところからも見えてくる。YURAサマに至っては、上着を脱ぎ捨てて躍るほどの気合の入りよう。曲ごとに、巧みに場内の空気を楽しく塗りかえてゆく様も、ドラマを作るのが上手いPsycho le Cémuらしさ。
「心の声を聞かせてくれ、ブチあげよう」とseek(B)が煽る。彼らはパワフルでスピーディーでパンキッシュなロックナンバー「Murderer Death Kill」を突きつけ、フロア中の人たちをわちゃわちゃとはしゃがせる。DAISHIの歌にあわせ、seekの煽る姿に向け、観客たちが両手を振り上げ、一緒に熱情の宴を作りあげる。野太いseekの煽り声に向けてフロア中の人たちが叫ぶ様も、嬉しい一体感を覚える景色だ。曲が進むごとに場内のテンションもアガり続ける。
最後にPsycho le Cémuは「君がいる世界」を歌い、この空間に気持ちを一つにしたエモくハートフルな世界を作りあげていった。DAISHIの想いをつかみとろうとフロア中から伸びる無数の手。誰もが演奏にあわせて心を一つに、熱情した世界を共に作りあげていった。たとえ初見でも、一瞬でエモくメロディアスな楽しい世界へ飛び込むことができる。誰もがPsycho le Cémuの歌を求めたくて、はしゃいでしまう。終盤、一緒に声を張り上げて歌いあった、あの感動の景色も忘れられない。
▪︎THE LOCUS(当日限定バンド)
30年間の歩みを知らしめる神らしい宴が、そこには広がっていた。大トリを務めたTHE LOCUSのライブは2部構成で実施。荘厳なSEが場内中を包み込む。ゆっくりと幕が開いた中、バックライトに照らされたメンバーたちが登場。「大阪、かかってこい!」と、最初にボーカリストとして登場したのが、Matina時代からの盟友・幸樹。
彼の激しい煽りを受け、壮大な物語を描くように麗美でシンフォニック、でも激しさを抱いた演奏が響きだす。THE LOCUSのライブの冒頭を飾ったのが、「凛」。身体を前のめりに観客たちを煽る幸樹。メンバーたちも身体を大きく揺らしながら音を奏で、観客たちを煽りだす。KISAKIは後ろにじっと構えるが、間奏に入ると舞台の最前へと踊り出て観客たちを煽りだす。低いポジションでベースを掻き鳴らす、あの姿こそがKISAKIだ。幸樹の煽りを受け、フロア中から突き上がる無数の拳・拳・拳。妖艶ながらも、しっかりと煽りの要素も組み込んだシンフォニックナンバーだけに、歌に心が酔いしれつつも、ずっと身体を揺さぶり、腕を振り上げ、声を上げずにいれない。一体感を持った熱狂の景色も含めてドラマを描くのがKISAKIの音楽スタイル。その神髄を示した楽曲を最初に演奏してくれたのが嬉しい。
KISAKIのベースとRyoのドラムがシンクロしながら奏でたのが、Phantasmagoriaの「Pixy false」だ。楽曲の登場にフロア中の人たちが興奮の声を上げ、左右に腕を揺らし、舞台に向けて拳を振り上げる。幸樹は、お立ち台に左足を乗せ、前屈姿勢のまま雄々しい姿で歌い、ときに声を張り上げ、観客たちを煽り続ける。とてもスケールの大きな、激しくもシンフォニックなドラマを描きだす楽曲だ。この曲の間奏では、GAKUとI'LLが息のあったユニゾンプレイも披露。KISAKIも、前へ前へと踊り出て観客たちを煽り続ける。彼が舞台の上にいるだけで、バンドの存在感が大きく見える。KISAKIがお立ち台で煽る姿に興奮を覚える観客たち。フロア中の人たちが熱狂しては、神にかしずく。そう、これこそがPhantasmagoriaや凛の頃に見せていたKISAKIの姿だ。1曲の中、次々と表情を変えながら多彩な魅力を打ち放つ。だから一つ一つの動きから目を放せない。興奮の声を上げずにいられない。
「最高に熱い夜にするぜ、かかってこい」と生声で煽る幸樹。幸樹の煽りを合図に飛び出したのが、凛の「The Psalms and Lamentations」。この曲も、壮大かつ激烈な楽曲だ。演奏が始まったとたん、フロア中の人たちがヘドバンに興じ、拳を振り上げ、声を張り上げて、グロウルする幸樹と全力でぶつかりあう。その様を、後ろから煽るKISAKI。幸樹も、今にも客席へ飛び込まんばかりの勢いと姿で歌う。いつしかその横にKISAKIが立っていた。彼も、フロア中から沸き立つ熱気を全身で感じようとしていた。その気迫が指に伝わり、ベースの音を奮い立てることを、みずからの経験を通して知っているからこそ、KISAKIも前屈姿勢で、右腕に力を込めながらピッキングしていた。次々と転調してゆく楽曲ながら、観客たちも盛り上がるポイントを熟知しており、幸樹の歌や演奏陣の動きに、しっかりとリアクションしてゆく。気持ちが一つに通じ合っている、あの頃の光景が、今、目の前に広がっていた。
幸樹の歌としては最後になるのが、Phantasmagoriaの「狂想曲-Cruel Crucible-」だ。ザクザクとしたGAKUの奏でるギターの音を合図に,演奏陣が音を一気に重ねるのにあわせ、フロア中の人たちも思いきり頭を振り乱す。気持ちの内側から熱情した思いを振り絞るように熱唱する幸樹。高貴な装いも見せる楽曲の中へ、THE LOCUSのメンバー陣が切っ先鋭いスリリングな衝動を描き加える。胸打つメロディアスな歌なのに、演奏陣が滾る想いをぶつけるからこそ、楽曲は凄まじい熱を放って身体に届いていた。その熱を、両手を大きく広げて受け止める観客たち。とても激しく、浪漫を覚える、まさに協奏曲ならぬ狂想曲だ。KISAKIとI'LLが寄り添い演奏する場面も印象的だった。
幸樹から歌のバトンを受け取った真緒が舞台に登場。「みなさんの大切な想いをこの曲に重ねて聴いてください」。真緒が最初に歌ったのが、凛の名バラード「World In Flames」。今にも壊れそうな感情的な真緒の歌声に乗せて演奏はスタート。少しずつ熱を上げるように、でも悲嘆な想いを抱いた世界観を生かすように、真緒も演奏陣もあえて感情をグッと押し殺した表情で歌い奏でていた。この曲では、フロア中の人たちが、5人の歌い奏でる様をじっと見つめていた。いや、一挙手一投足を見逃すことなく、すべてを心に刻もうという気持ちで受け止めていた。胸の内を震わせるように歌う真緒の姿も、強烈に瞼へ焼きついた。
「暗黒に染まりなさい」という真緒の声に続いて届けたのが、Phantasmagoriaの「Unknow zero distance」。呪詛のような真緒の歌。彼が叫び声を上げたとたん、楽曲は一気に爆発。溜め込んでいた熱情をすべて吐き出す勢いで演奏が激しくなる。KISAKIも前へ躍り出て、観客たちを挑発し続ける。みずからが熱狂のコンダクターとなり、この空間を燃え盛らせようと高らかに歌いあげた真緒。I'LLとGAKUのコンビネーションもヒッタリなリフプレイも、耳に心地よい。次々と強烈な音を叩きつけるRyoのドラムの上で、KISAKIのべースの音が唸りをあげて吠え続ける。誰もが感情を剥き出しに、荘厳かつ壮大な楽曲の中に燃え盛る炎を作りあげていた。
止まることなく、演奏はPhantasmagoriaの「NEO ARK」へ。変拍子も印象的な演奏から、荘厳シンフォニックな世界へと楽曲が進化していく。Ryoの叩き出す荒ぶるドラムビートと野太いリフを刻むKISAKIのベースに煽られ、無我夢中で無心で頭を振り乱す観客たち。真緒も、変拍子の効いた楽曲に感情と重ねあわせ、ときにみずからの歌声や叫び声も楽器の一部に変える。FEST VAINQUEURのメンバーどうしという理由もあるのだろう、GAKUとI'LLのプレイは安定感を持って響いている。真緒やKISAKIの煽りに応じて、その場で逆ダイするような様を見せながら暴れ騒ぐ観客たちの姿も強烈に瞼へ焼きついた。
KISAKIの煽りを合図に、THE LOCUSが最後に突きつけたのが凛の「Foolish」。激しく、シンフォニックでドラマチックな、まさに観客たちを暴れ狂う野獣に変えてゆく楽曲だ。狂ったように歌う真緒に向けて、フロア中の人たちも、同じく狂ったように髪の毛を振り乱していた。KISAKIも、今にも客席へ踏み出そうといわんばかりの距離まで前に出て、観客たちを煽り続ける。気迫と気迫を、魂と魂をぶつけあうライブ。KISAKIが、ヴィジュアル界に作り上げ、継承し続けてきたライブの有り方だ。途中、KISAKIはCo2をフロア中にぶち撒けるお馴染みのパフォーマンスも披露。さらにはお立ち台に上がり、次々とCo2を吹きつけ、この空間を、神が降臨した世界へと染め上げていった。終盤には幸樹も登場。ツインボーカル編成で、観客たちを徹底して煽り尽くしていた。すべてをなぎ倒し、この世界をKISAKI色に染め上げる。それこそが30年間第一線で輝き続けてきたKISAKIの生きざま。それをしっかりと示したライブだった。
▪︎大セッション
最後は、この日出演した全バンドのメンバーが舞台へ勢ぞろい。誰もが、この曲をみんなで歌い演奏することを、一緒に狂乱の宴を作りだすことを待っていただろう。最後に大セッションとして届けたのが、Phantasmagoriaの「神歌」。まさに天上から降臨し、神となったKISAKIを中心に、舞台の上には、天使・堕天使・悪魔・魔人‥‥‥とにかく、いろんな神に仕える僕たちが声を張り上げ、神に祈りを捧げるように「神歌」を演奏。会場中に音が鳴り響きだしたとたん、フロア中の人たちが大きく両手を打ち鳴らし、舞台上に勢ぞろいした天上界の人々へ祈りを捧げるように騒ぎだす。
舞台の上では、この日出演したボーカリストが次々とマイクリレーしながら、啓示となる言葉を次々と吐き出し続けていた。舞台の上も、フロア中の人たちも、同じ動きをしながら神に祈りを捧げてゆく。延々と続く大セッションを通し、神々も下々も一つに乱れ狂い、熱狂にひれ伏す。場内中の人たちの気持ちを一つに結び合う景色を、「神歌」は数多く作り続けてきた。その伝説に、また新たな1ページが刻まれた。こKISAKIは<EXTASY SUMMIT>を彷彿させたかったと言っていた。キッズの心を忘れずに自らもその景色をみて完全燃焼出来たと言っていた。どこを切り取っても最高で最強の<KISAKI BANDWORKS 30TH ANNIVERSARY LAST LIVE「BEYOND THE KINGDOM -OSAKA-」>素晴らしい一日となった。
文◎長澤智典
写真◎春川 眞
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