【インタビュー】MUCC、ミヤが語る『惡』と新境地「死をポジティヴに捉えるというコンセプト」

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■この日本って国がヤバいな
■という感じが俺はしています

──アルバム全体を通して、どんな絶望的な状況であっても抗おうとするガッツみたいなものを感じたのですが、そこはいかがでしょうか?

ミヤ:ガッツ……俺にあるとしたら、抗うというより“人間、大丈夫?”という感じですけどね。コロナがあって、インドの山が綺麗に見えるようになったとかいうニュース観ました?

──はい。自粛によって大気汚染が改善され、ヒマラヤ山脈が見渡せるようになったと。そういうポジティヴな異変が起きているようですが、地球にとって人間が邪魔者だったんだなみたいな。

ミヤ:神様が“人間の数をちょっと減らしちゃおう”ってコロナをポイッと落としたんじゃないか?と俺は思ってて。ゆくゆくは闘った結果、人間がコロナを押さえつけるんでしょうけど、そうなってくると、また進化した第二波がくるんじゃないか?という説もありますからね。

▲ミヤ (G)

──収束しても、それで終わりではなさそうですよね。

ミヤ:そういう中で、“人に迷惑を掛けない”のが当たり前なのに、人に迷惑を掛けてしまうようなことをしている人間に対してムカつく、というのが、俺にとって一番デカい。

──そこに対する怒りなんですかね。人間同士が争っている場合じゃないはずなのにという。

ミヤ:例えば“コロナ感染している人に対して、いたずら電話を掛けたりする人がいる”という報道もあるじゃないですか。“そこに力を使うんだったら他に使いどころあるんじゃないの? どんだけ暇なの?”とも思いますしね。とはいえ結局、国民どうこうじゃなくて、政治というか、上に立つ人に理系の人がいないのが良くないと俺は思っているんです。いろいろと対応が遅い。2月の末頃はまだオリンピックがどうとか言っていたし。当時は「過敏になりすぎている」と言われてましたけど、結局、今、ライヴとかがいつ再開できるか分からない状況になっている。そういうすべてのことが……、このアルバムの曲で“伝えたい”と思って言っていることなんですけど、「この日本って国がヤバいな」という感じが俺はしています。

──新型コロナ対応を振り返ってみると、たしかに初期段階での危機感が薄かった気はします。

ミヤ:もっと早く動いていれば、対策も変わってきていたんじゃないかなと思うんですけどね。でも言い始めたらキリがないし、それに対して否定的な意見を持つ人も少なくないから、あまり言わないようにしてますけどね。発信できる側の人間が不特定多数に対して、個人的な意見をベラベラ述べちゃいけないと思うし、そこは「アルバムを聴いてください」っていう感じではありますけど。

──直接的に発信するタイプの方もいますけど、ミヤさんやMUCCの場合、やはり作品を通してなんですね。

ミヤ:俺ら的にやれることは、それが一番だと思いますし、ちょうどリリースタイミングだったので、そこは良かったなという感じはしますよ。

──限定的な表現をしていないからこそ、いろいろな立場の人が自由に聴ける、という利点もありそうです。

ミヤ:2曲を先行配信したんですけど、「アルファ」に関しては、「今、この曲を配信してくれてありがとうございます」みたいな感想をよくもらうんですね。だけど、この曲はコロナと全く別のことを歌っているんです。ところが、今の状況とすごくリンクしてしまった。実際、この曲の歌詞を書いたのは一番最後なので、俺としては心のどこかにはあったかもしれないけどね。言いたいことはいろいろあるし、“これに対してはこう思うし、これに対してはこう思う”みたいに事柄によっても意見が違う。自分としては、アルバム全体を通して、それを言えてるという気がしています。

▲逹瑯 (Vo)

──「アルファ」は元々、どういう想いの中から書かれたものですか?

ミヤ:例えば、“大切な人を守りたいと思っても守れなくなったらどうしよう?”とか、何が正解か分からないような不安感が元になってます。たぶんこの曲は、見る人が見たら何を歌ってるか分かると思う。でも、それを経験してない人には絶対に分からない。だから、すごく個人的過ぎるし、書いた当時はそのことだけしか考えてなかったんですけど、第三者が聴くともっとシンプルな曲に聴こえるんだなぁというのは、自分の曲ではありますけど、けっこう新鮮でしたね。

──「アルファ」は一聴すると優しいですけど、ドラムに激しさが宿っているなと。

ミヤ:そうですか? これはYUKKEの曲だし、柔らかい曲調なので、演奏中は激しさを意識してなかったと思いますけどね。ただ、試みとして面白いのは、最後のサビでリズムが倍のテンポになるんですが、最初のサビは抑えた状態で。それに、ベースは激しいドラムを聴いて弾いたものなので、結果的に、最初のサビからベースが曲をグイグイ引っ張っていくようなアレンジになった。そういう入れ替えによって生まれた効果があって、それもすごく良かったと思います。

──今作は、メンバー間のやり取りがこれまでと違ったところってありましたか?

ミヤ:ないです。いつもよりやり取りは少なかったかもしれない。

──やり取りが少なくてもOKラインにすぐ到達できた、ということですか?

ミヤ:いや、元々やり取りはしないんで。“自分たちのバンドで、今、表現すべきことは何か”というのは決めないんですよ。メンバーから出てきたものに対して、“それはオマエ、違うよ”となったらボツにするし、“それはいい、正解だと思う”となったら採用するということは変わらず。


──なるほど。逹瑯さんの歌についてはどうでしょうか? 例えば1曲の中で表情が変化するなど、表現がより多彩で深くなったという印象を受けたのですが。

ミヤ:“やっと少しヴォーカリストらしくなってきたかな”と最近は思っていて。“前よりは肝が据わったかな”という感じはしますね。今回、逹瑯に関しては、ツアーをしながらずっとレコーディングもしていたんですよ。喉のコンディションを気にしながらだったので、とても神経を使ったと思うし、一番ハードルが高い環境だったはず。ライヴで喉を気にせず歌いたいけど、レコーディングですごくいいものを録りたいし、という状況でバランスを取っていかなくちゃならなかったから。無駄に喉を消費しないような歌い方を意識して、必然的にすごく生産性が上がったと思う。今作は全体的な制作期間は長いんですけど、レコーディングから出来上がるまでの時間はすごく短かったんですよ。1日に5曲録音することもあったので。

──そんなにですか!

ミヤ:最後の新曲は全部そうでしたね。なので、レコーディング時に高い最低ラインに届いてなければ、「てめぇ、何やってんだよ!?」って話になる。「チマチマ直しとかしてる時間なんかねぇんだよ!」と。そういう状況だったので、逹瑯だけではなく、それぞれがそれなりに準備をして、気分をシャキッとさせてレコーディングに来てたとは思う。だからこそなんとかやりきれたという感じではありました。本来そうあるべきなんですよね。

──みんながやっとそうなった、と。

ミヤ:さっきも言ったように、最後につくった新曲4曲に関しては、本来1曲しか録らない予定だったのが4曲になったわけで。だからといって「録音がスケジュール的に間に合わないからやめよう」という考えは俺の中にない。導かれたから録音するだけだし、俺は“やりきれる”と思ったのでやったという。その状況下で、“これはいつもより覚悟して仕上げていかないとマズい”と思えないメンバーがいたとしたら、そいつはもうメンバーとして要らないってなる。いちおうメンバー各自……それなりにですけど、いつもよりレベルが上がってたかなという感じは受けました。やっぱり窮地に立たされた時に実力を発揮できる人間じゃないとね。“時間がある中でいいものをつくろう”という考えももちろん正解なんですけど、“それって、ずっと聴いていられる作品になるのかな?”という感じはしますね。

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