【インタビュー】杉山清貴、日本のポップス/AORの王道を行く作品『Rainbow Planet』
■けっこうね、アニメはね、深いですよ
■アニメはいろいろ、詞の題材になりますね
──杉山さんの自作の歌詞は2曲で、「Omotesando'83」と「Other Views」。ミュージックビデオも作った「Other Views」も、すごくいい歌詞で、メッセージ色が濃い。
杉山:僕はあんまり、今までの人生で、思い悩んだりしたことがないんですよ。どちらかというと、空を仰いで笑って生きてる感じなんですけど、でもやっぱり、周りのいろんな人たちを見ていると、たとえば一つ悩みがあったら、そこにずーっと閉じこもってしまって、「もう抜けたほうがいいんじゃない?」と思っていても、抜けるのって大変だって言うんですよね。そこにいれば、何もしなくてもいいから、楽なことは楽なんだと思うんです。でも、動いたら抜けられるのに、なんで動かないの?と。それを「Other Views」=違う景色を見てみましょうということで、同じ景色ばかり見ていたら何も始まらないんで、「顔を前に向けて行こうよ」という発想があって、僕の哲学がすごく入っていると思うんですけど。
──ですね。
杉山:僕は昔から、行き詰まったら「じゃあもうやめちゃえ」という感じなんですよ。オメガトライブの解散もそうでしたけど、いつも「嫌だったら、やめちゃえばいいじゃん」という考え方で。やめることにも、労力がいるんですよね。でもそこの労力を惜しむと、ずーっとそこにいないといけない。労力を使ってもそこを出ようよ、というのが僕の生き方なので。それがたまたま今回、このメロディの世界観に、イーグルスの「NEW KID IN TOWN」みたい世界観に触発されて、僕はあまり内面の詞を書かない人なんですけど、今回はちょっと書いてみようかなと思って、僕の哲学を書いてみました。
──これは、ある程度年齢の行った人はきっと、思い当たる節がありそうな。
杉山:これも、種明かししちゃうと、そういう詞が書けないかなと思っていて、でもそれを歌詞に閉じ込めるのは、なかなか難しい作業だったんですよね。で、僕はずーっと、一昨年ぐらいからやたらアニメにハマっていて。最初にハマったのは、いわゆる転生勇者ものというか、異世界に行ってしまったりとか、それにめちゃくちゃハマっていて。いろんなのを見ているうちに、2000年代に入ってからの作品で、面白いのがあって、「エウレカセブン」というアニメなんですけど。
──ああー。はい。
杉山:あれをシリーズ全部見ちゃった時に、主人公に気持ちがぐーっと入ってたんですよ。それを言葉にしていったら、「あ、詞になってきたな」と思って。
──おおー。まさかの「エウレカセブン」。
杉山:けっこうね、アニメはね、深いですよ。非常に心優しい人たちが出て来るし、「頑張ろう」とかそういうのも、無理やりじゃなくて、自分の中で解決できることを模索していくみたいな、そういうシーンがけっこう多くて。アニメはいろいろ、詞の題材になりますね。
▲『Rainbow Planet』【通常盤】
▲『Rainbow Planet』【初回限定盤】
──ちなみに、アニメにハマるきっかけって、何かあったんですか。
杉山:あのね、たまたまテレビをつけた時に、最初に見てしまったのが「転生したらスライムだった件」で、面白いなと思って。今は配信で過去作が見れるじゃないですか。シリーズ全部見ちゃって、何かほかにないかなって探し始めて、今はアニメだけで18シリーズぐらいマイリストに入ってます。
──すごい熱意ですねえ。
杉山:ヤバいです(笑)。
──でも夢中になるというのは、すごく大事な気がします。なかなか、ないじゃないですか。年をとってくると。僕もチェックします。
杉山:ぜひ。面白いですよ。
──最近だと、何がいいですか(笑)。
杉山:えっとね、もう終わっちゃったんですけど、すごい面白いなと思ったのは、「盾の勇者の成り上がり」で、それは一話目からどん底に突き落とされるストーリーで、いきなり異世界に転生して勇者にならされたくせに、周りからひどい仕打ちをうけて、「俺は何もやってないのに!」って、どんどんハメられていくんですよ。でもだんだん理解してくれる仲間が増えてきて、やっているうちに、最後はどんでん返しで「良かったね」ということになるという。最近流行ってる「鬼滅の刃」も、一話目からすごい衝撃的で、家族が全部鬼に殺されてしまったところから始まるわけですよ。その悲惨なところからどう立ち上がるか?というのが、最近のアニメの流行りでもあるんじゃないかと思うんですね。…アニメを熱く語っていますけど(笑)。
──いやあ。杉山さんの意外な一面が知れて楽しいです。アニメ、主題歌やりたいですね(笑)。
杉山:狙っているんですけどね(笑)。
──話を戻して。今回のアルバム、若い世代のアーティストが参加することで、リスナーの層が広がる可能性をすごく感じています。
杉山:そうですね。本当に良かったと思います。たまたまというか、「俺っぽいな」と思うものができたので、今は満足感でいっぱいです。
──みなさん、エバーグリーンな音楽、ポップスの楽しさをぜひ。若いリスナーも、アニメファンも。
杉山:ぜひぜひ、聴いてみてください。
――Naganoさんと組んだ三部作という感じもしますけど、ここで終わるわけではなく?
杉山:終わるわけではないですけど、とりあえず、杉山清貴の原点に一回戻った気がします。だから次はまた、違う方向に持って行く可能性もありますね。
──最後に、オメガトライブについても触れておきたいんですけどね。ここ2年間、何度か再集結ライブをやられてきて、さっきも言われたように、再発見したこととか、そういうことも多々あったのではないか?と。
杉山:そうですね。率直な意見を言うと、一昨年の野音のために最初に集まってリハをやった時に、「おまえら、うまいな」と思ったんですよ。
──あはは。今になって。
杉山:でも本当にそうなんですよ。あの当時は、世の中ではああいうサウンドが普通だったので、メンバーのテクニックとか、考えたこともなかったんですけど。僕らはもともと「きゅうてぃぱんちょす」というバンドをアマチュアから始めて、ずーっとロックばっかりやっていて、いきなりああいうアーバンな、テクニカルな曲を渡されて、「おまえら演奏するんだぞ」と言われた時、「えー!?」ってなるわけじゃないですか。だからみんな必死で、この分数コードって何だろう?というところから始まっていますから。全員が同じところから一緒にやり始めて、みんなが同じレベルから上がっていったから、うまいとかヘタとか感じなかったんですよ。だから「おまえら、うまいな」とあらためて思うのは、そういうところだと思いますね。いいメンバーだなと思います。
──近年は、フルタイムのミュージシャンではなかったメンバーもいますよね。それでもしっかり維持してる。
杉山:そうです。すごいですよね。やっぱりね、高校生の頃からの仲間ですから、一回解散したとはいえ、ケンカして別れたわけじゃないので、30数年経ってこういう集まり方ができたのは、すごく良かったなと思います。メンバーもみんなそう思っているみたい。やっぱり当時は、言葉は悪いですけど「やらされてる感あるよな」と思っていて、それで解散になったわけで。でもこんなにかっこいい楽曲を「やらせてもらえてたんだ」という発想に、今はなっています。
──素晴らしい。じゃあオメガトライブは、今後も続いて行くということでいいですか。
杉山:そうですね。いつ集まって、いつやってもいい感じになれましたね。ただオメガトライブというのは、あの2年8か月の中で作品は完結していますし、メンバーが集まったから新作を作るか?というと、それはまったくない話なんで。やっぱりプロデューサーが作った世界なので、彼がいなければオメガトライブは引き継げない。僕らが作ったら、オメガトライブじゃなくなっちゃうんで。いくら林(哲司)さんが作っても、オメガトライブじゃなくなっちゃうって、林さんもそう言っていますから。プロデューサーの思いがすべて集結したものなので、彼が亡くなってしまった今は、新作はありえない。だから、昔の作品をみなさんには楽しんでいただきたいなと思ってます。
──わかりました。
杉山:変に新曲を作ろうとか、逆にプレッシャーになっちゃうと、またメンバー間の関係が変わっちゃうと思うし、だったら全員が納得した形で、過去の作品をもう一回掘り下げて、今の自分たちでどこまで演奏して伝えることができるか?を、楽しんだほうがいいなと思います。
取材・文●宮本英夫
リリース情報
2020年5月13日発売
【初回限定盤】 KICS-93897 \4,000(税抜
【通常盤】 KICS-3897 \3,000(税抜)
[CD] 初回盤・通常盤共通
1. Omotesando'83
2. 二人の色彩
3. 誘惑のChaChaCha
4. Daughter
5. 暗闇を照らす微笑み
6. Rainbow Planet
7. Fall in you
8. Other Views
9. 君がどんな遠くにいても
10. もう僕らは虹を見て、綺麗だとは言わない
-Bonus Track- (初回盤・通常盤)
11. Velvet Moon(2019 Chrismasu concert ver.)
[DVD] 初回盤のみ
1. Other Views (Music Video)
2. Hand made (Special Movie)
ライブ・イベント情報
※コンサートは延期や振り替えの発表が不定期にされますので、HPをご確認ください。
6月27日(土)長野・北野文芸座
6月28日(日)茨城・結城市民文化センター アクロス小ホール
7月4日(土)焼津・焼津文化会館 小ホール
7月5日(日)浜松・浜松市福祉交流センター
7月10日(金)岩手・盛岡Club Change WAVE
7月21日(火)栃木・宇都宮市文化会館 小ホール
7月31日(金)群馬・桐生市市民文化会館 小ホール
8月16日(日)座間・ハーモニーホール座間 小ホール
8月22日(土)奈良・なら100年会館 中ホール
8月23日(日)京都・京都府立府民ホールアルティ
8月29日(土)東京 日本橋・日本橋三井ホール
8月30日(日)東京 日本橋・日本橋三井ホール
9月18日(金)高知・高知X-pt.
9月19日(土)香川・高松festhalle(フェストハレ)
9月21日(月)愛媛・松山市総合コミュニティセンター
9月26日(土)東京 大手町・よみうり大手町ホール
9月27日(日)東京 大手町・よみうり大手町ホール
10月3日(土)埼玉・越谷産シティホール 小ホール
10月31日(土)福島・郡山Hip Shot Japan
11月2日(月)青森・青森Quarter
11月3日(火)山形・山形ミュージック昭和Session
11月13日(金)長崎・NBCビデオホール
11月14日(土)福岡・レソラホール
11月16日(月)熊本・熊本B.9 V1
11月17日(火)大分・BRICK BLOCK
1月8日(土)東京 西新井・ギャラクシティ西新井文化ホール
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