【ライヴレポート】有村竜太朗、<ACOUSTIC LIVE「Op.」>初日公演に“非現実的な世界”
Plastic Treeのボーカリストとして活動する傍ら、2016年からソロワークをスタートさせた有村竜太朗が、この夏、ソロライヴ<ACOUSTIC LIVE「Op.」>を開催中だ。8月22日の東京キネマ倶楽部、8月29日の大阪・味園ユニバース、9月3日の東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREといった3ヵ所で行われる昼夜1日2公演のアコースティックセットは、涼しげなアレンジでしっとりと持ち曲を歌い上げる有村竜太朗の姿を堪能できるもの。初日となった8月22日の東京キネマ倶楽部、15時開演の“昼の部”のオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆有村竜太朗 画像
有村竜太朗が「大好きなライヴハウス」と公言している会場が東京キネマ倶楽部だ。レトロなキャバレーの香り漂う独特の雰囲気で、Plastic Treeとしても毎年<ハロウィンライヴ>を行っており、ファンにとってもなじみ深い場所である。この日はフロアに椅子席が設けられ、じっくり音楽が楽める仕様。ステージと客席の距離感も密接で、生音を楽しむには完璧なシチュエーションだ。
まずはステージにバンドメンバーの野村慶一郎(Key / Mani)、中条幸一(Acc)、青月泰山(Vc)、emyu(Vn)の4人が登場。ほどなく、開演を告げる上映ブザー音が響き、場内が暗転。舞台下手から白い衣装に身を包んだ有村が現れ、ステージセンターのスツールに、ふわりと腰掛ける。
それからギターを手にして、さりげなく1曲目の「浮融/fuyuu」へ。背景にはサンドアートの映像が映され、温かみのあるサウンドと溶け合いながら進行。サンドアートは大人のような胎児のような、不思議な人物の姿を描き出す。このサンドアートを担当したのはSILT(シルト)というサンドアートパフォーマンス集団。これまでも、アーティストのライヴ演出や広告映像に多数参加してきたので、彼らの作品に触れた人も多いはずだ。今回の公演では、非常に重要な役割を果たしていると思う。
2曲目の「猫夢/nekoyume」はアコースティックながら、弾むようなノリ。有村も左足でリズムを取って曲に入りこんでいく。ちなみに、セットリストは『個人作品集1996-2013「デも/demo」』と『個人作品集1992-2017「デも/demo #2」』収録曲から。このあとも「くるおし花/kuruoshibana」や「鍵時計/kagidokei」など、2作品からの曲が次々と演奏されていく。MCも一切ナシ。ゆえに、ライヴそのものが、非現実的な世界に感じられた。
中盤ではバンドサウンドの印象が強い「色隷/shikirei」で躍動感を作り出す。かと思えば、「日没地区/nichibotsuchiku」の出だしにはひぐらしの鳴き声を流し、夕暮れを演出。アコーディオンのイントロが響くと、照明も夕焼け色になってステージを照らした。観客の多くは、それぞれが思い描く懐かしい夕焼けを思い浮かべたはずだ。
後半へのラストスパートは「19罪/jukyusai」。バンドアレンジではノイジーなギターが降り注ぐのだが、ここでは内に秘めた熱がジワジワあふれ出すようなパフォーマンスとなった。さて、残るはあと2曲である。続いてプレイされた「恋ト幻/rentogen」では、再び冒頭のサンドアートで描かれた人物が背後に浮かんでくる。再び冒頭の緊張感に戻っていくような、不思議な感覚。
そして、ラストの「憑影と月風/tsukikagetotsukikaze」では、曲に合わせ、サンドアートで様々な月が描かれていく。楽曲の世界観と融合する演出は見事だった。曲が終わり、バンドメンバーがステージを去ると、有村はひとり、深々と一礼。ライヴ本編を締めくくった。
温かい拍手の中、客電が点いたが、観客は急に現実に引き戻されたように、戸惑い気味。ここは、もう少し余韻に浸りたいところだ。誰も席を立たず、アンコールの手拍子が起こる。有村は声援に応え、再びステージへ。しかし、「もう曲がないんです(苦笑)。また同じ曲でいいですか?」と前置きして、弾き語りバージョンで「くるおし花/kuruoshibana」を切々と聴かせた。終演後、会場を出ると、夏の終わりの夕方らしい空気が漂っている。早い時間のライヴもまた粋だなと感じた。
ちなみに夜の部では、有村は赤のアジア風衣装にチェンジ。雰囲気を変えるという気配りをみせ、ダブルヘッダー公演を見事に完遂。ノスタルジックなアコースティックサウンドと、記憶や思考を刺激する有村竜太朗の歌詞、そして哀愁漂う東京キネマ倶楽部の空気によって、夏の終わりにピッタリのステージとなった。
取材・文◎海江敦士
■ソロライヴ<ACOUSTIC LIVE「Op.」>
・昼の部:14:00 / 15:00
・夜の部:18:00 / 19:00
2019年9月03日(火) 東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
・昼の部:14:00 / 15:00
・夜の部:18:00 / 19:00
▼チケット
前売り¥5,800(税込)
※3歳以上有料
※全席指定
※1ドリンク代別途
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