【インタビュー】キャサリン・ジェンキンス、愛と祈りに満ち溢れた新作『光に導かれて~ガイディング・ライト』

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ウェールズ出身、世界的な人気を誇るメッゾ・ソプラノのキャサリン・ジェンキンスが1月23日に『光に導かれて~ガイディング・ライト』をリリース、3月21日に日立システムズホール仙台コンサートホールで、そして3月25日にはオーチャードホールで待望の来日コンサートを行った。クラシックを基調としながらも、映画音楽やポップスなどもレパートリーに取り込み、そのクリスタル・ヴォイスは世界中で愛され続けている。またチャリティーにも力を注ぎ、2011年には被災した宮城を訪れて生徒たちに素晴らしい歌声を披露したことも記憶に新しい。そのキャサリン・ジェンキンスが、亡くした人や新しい命への愛を語ってくれるインタビューをどうぞ。

■傷ついた人たちを癒して助けることができる音楽に携わって
■活動ができることは私にとって本当に嬉しいことです


──3月21日、仙台(日立システムズホール仙台コンサートホール)でコンサートがありましたが、いかがでしたか?

キャサリン・ジェンキンス(以下、キャサリン):(東北が震災に見舞われた)2011年に仙台に行ったときのことがとても印象深く残っているんです。そのときは学校に行って子供たちに会ったり、一緒に食事をして「アメイジング・グレイス」を歌ったんです。世界中で常に歌っている曲なんですが、それ以来、この曲を歌うたびに仙台のことを思い出すようになりました。今回、2011年にお会いした方たちが来てくださって、私自身、泣いてしまったほど感情があふれた出来事でした。いつもコンサートでは「また戻ってくるから」と約束をするんですが、仙台にはまた必ず行きたいと思っています。

──2011年のときもそうですが、傷付いた方を癒していただいて、日本人として本当にありがたいとずっと思っています。

キャサリン:私自身にとっても光栄なことですし、子供たちがどういうふうに成長しているのか確認するのも非常に幸せなことです。

──震災が起きたときも真っ先に訪れていただきましたが、キャサリンさんにとってはどういった出来事だったんですか?

キャサリン:母から誰かを助けるという精神を受け継いでいるのだと思います。今までもチャリティーなどに参加してきたのですが、チャリティーはお金を寄付するだけではなく、例えば傷ついた人たちを癒す活動でもあります。戦争に向かう兵士たちを慰問したりすることもあったのですが、音楽は魂のセラピーに通じるものがあると思っています。傷ついた人たちを癒して助ける。そういうことができる音楽に携わって活動ができることは私にとって本当に嬉しいことだと思います。


──今回のアルバム『光に導かれて~ガイディング・ライト』は穏やかで愛と祈りに満ちていますが、亡くなった人たちへの愛、新しく生まれてくる生命への愛が描かれ、プライベートな感情が表現された作品になっていると思います。今のタイミングでこういうアルバムを作ろうと思った動機を教えていただけますか?

キャサリン:4年ぶりのアルバムになりますが、その間に私の中でいろいろな変化がありました。子供が2人生まれたことももちろんあるのですが、今、本当に幸せで安定していて、いろんなことに感謝しています。その気持ちをそのままレコーディングしたいと思いました。こういう曲を選んだのもすごく穏やかで幸せな気持ちで過ごしている今の自分自身が共感できる曲だったからです。自分の心に響くものを歌って、リスナーのみなさんにも感じていただきたいと思ってこのアルバムを作りました。

──全体を通してすごく懐かしく穏やかな気持ちになります。前半はトラディショナルソングが多くて、賛美歌につながって、最後はポップ調になる。この構成が絶妙で素晴らしいと思いました。

キャサリン:おっしゃる通り、みなさんに穏やかな気持ちになってほしいと思って作ったアルバムなので成功しているとしたら、とても嬉しいです。多くの要素がミックスされた曲がありますが、決して宗教的ではなく、スピリチュアルな部分を出したいと思っていて、聴いてくださったリスナーの方それぞれがいろいろな意味に解釈していただければと思っています。収録されている賛美歌は実際に自分が子供の頃から歌ってきたもので、親しみがあります。一方では今までに歌ったことがないような曲も歌っていて、そうしてバランスをとりながら、私自身の中でもひとつの旅路みたいなものを経験できるように構成しています。今の世の中はみなさん、忙しい時代だと思いますが、このアルバムの曲を聴くことで穏やかな気持ちになって自分を見つめ直すような時間を持っていただけたらなと思います。

──日本人はケルト系のトラディショナルソングが大好きです。なので1曲目の「家路へ」は完全にトラディショナルソングだなと思ったんです。

キャサリン:確かに私の故郷のウェールズはケルトが作った国です。もともとこの曲はトラディショナルというわけではないんですが、ケルティックでウェールズらしい印象を私も受けました。映画の『ブレイブ・ハート』の中の音楽のようにも感じたのですが、歌詞も好きでしたね。私自身が故郷のウェールズを思い出してそこに帰るとような。家族がいたり、生まれ育った場所に帰っていくような懐かしい気持ちを感じてこの曲を選びました。

──ウェールズといえば「ウェールズのための祈り(フィンランディア)」という曲が収録されていますが、どういう意味を持った曲なんでしょうか?

キャサリン:この曲はウェールズの国歌と言ってもいいぐらいにウェールズの人たちにとって深く感じるものがあるといいますか、もともとはインストゥルメンタルなんですが“ウェールズを祝福してください。幸せが訪れますように”という気持ちを込めた歌なのでウェールズ人にとって大事な曲です。

──第二の国歌と言われるぐらい、みなさん、いろいろなところで歌われるんですよね?

キャサリン:そうですね。非公式ですが心の中の国歌と言っていいぐらいの曲だと思います。

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