【連載】Vol.060「Mike's Boogie Station=音楽にいつも感謝!=」

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ポール・マッカートニー2018年日本公演、昨年に引き続き素晴らしいステージを堪能!ライヴ会場からは割れんばかりの拍手が響き渡った!


▲日本公演ポスター 提供:キョードー東京インターナショナル

昨年に続きポール・マッカートニーが来日した。東京ドーム2公演と初めてのナゴヤドーム公演。そして後日、お相撲大好きなポールの両国国技館でのスペシャルなコンサートも追加発表された。今回フレッシュン・アップ・ジャパン・ツアー2018と銘打ったステージでは、この夏リリースされた最新作『EGYPT STATIONT』からのナンバーも楽しめるとあって、僕らのツアーへの期待はより一層膨らんだ。と言うのも同アルバムはBillboard誌アルバム・チャート9月22日付で初登場1位を記録!これは『TUG OF WAR』以来36年ぶり!!のこと。


▲CD『EGYPT STATIONT』 from Mike’s Collection

こんなに前評判高いアルバム引っ提げて10月29日夕方、ポールは羽田空港にプライーベート・ジェットで来日した。

*10月31日 東京ドーム
いよいよ日本ツアー初日だ。僕は1960年代末に音楽業界に足を踏み入れたが、来日アーティストのコンサートはまず初日を観るというのが鉄則だ。敬愛してやまないローリング・ストーンズの場合、新たなワールド・ツアーが始まると度に初日に出向く。最近だとNO FILTERでハンブルク、ZIP CODEはサン・ディエゴ、古いところではVoodoo LoungeはワシントンD.C.、そしてBridges To Babylonはシカゴといった具合だった。

さぁ「A Hard Day’s Night」でポール・マッカートニーLIVEが幕開けだ。開演予定より16~7分のおしだ。25年以上一緒に演り続けているポール“ウィックス”ウィッケンズをはじめ、エイブ・ラボリエル・ジュニア、ラスティ・アンダーソン、ブライアン・レイ(彼はエッタ・ジェームスやリタ・クーリッジのバックも務めていたという、今度是非インタビューしてみたい)が御大を見事なサポートで大盛り上がりの中始まった。
前回の来日と同じくビートルズとしてポール初出演映画のタイトル・ソングでオープニング。この夜のポールは白いシャツの上に黒のデニム・ジャケットと同じくデニムのズボンというカジュアルな格好だ。この衣装はファッション界で確固たる地位を築いている愛娘ステラ・マッカートニーの作品だけあって、ポールのファッションはいつもキマッテる。そこにヘフナーが実に映えマッチしている。続く「Hi Hi Hi」、ドーム全体が♪Hi Hi Hi♪と大合唱して大きく揺れる!ブライアンのボトル・ネックがグイグイと場を盛り上げる。勿論ポールはノリノリでシャウト!今夜も快調だ~!曲の後半からぐっとテンポ・アップする。

“コンバンハ トーキョー タダイマ!”。続いて3曲目が「All My Loving」だ。正直に話そう、ポールのコンサートに足を運ぶ理由はいくつかあるんだけど一番の理由として、マイ・カラオケ・ソングをポールと一緒に歌うという事(笑)。そう、特にこのナンバーはビートルズ楽曲中の二大フェイヴァリットの一つなのだ…。

“ミンナ イチバン”ヘヴィーでブルース・タッチな「Letting Go」。“ワイン・カラーの少女”(邦題)は確かブラスが…、このナンバーの途中でホーン・セクションがジョインしたのに気がつく。実は直前のカナダ・ツアー初日を観た友人からホーン・セクションが登場すると聞いていたけど、4曲目でそのホーン・セクション(=ホット・シティ・ホーンズ)が登場だ。しかし彼らの音はすれど姿が見えない。スクリーンに映ったHCHは、何とアリーナ客席フィールドで演奏していたのだ。マイケル・デイヴィス(トランペット)、ポール・バートン(トロンボーン)、ケンジ・フェントン(サックス)の三名によるホーン隊だ。この演出にドーム全体が湧く。これまた大成功だ!ホーン・セクションは長年のポール・ファンにとって大きな意味がある。そう、幻となったウイングス日本公演の再現だ。

そして“シンキョク です”。ニュー・アルバムから「Who Cares」。現代社会が抱える問題に目を向けたメッセージ・ソングである。ロックが大きく変革していった60年代を時代と共に走り抜けたポールならではの作品だ。これは最近の10代、20代の若者にも聴いて欲しいナンバーだ。ちょっと前にポールはストーンズのキース・リチャーズとある曲を共作したという話をキースの自伝で読んだ。未だに陽の目を見てないが、僕はひょっとしてこんな曲調だったのかな?と想像をかき立てるギター・サウンドだ。

“イチバン イチバン イチババンババンバン…”、バスドラと共にポールが日本語で煽る。これまた新曲「Come On To Me」、タイトなロックンロールの途中からHCHが演奏に加わる。ハードなサウンドにブラスでファンキー・テイストが前面に出てくる。僕の大好きなソウル・サウンドだ。


▲レコード・ストア・デイ特別シングル「I DON’T KNOW / COME ON TO ME」 from Mike’s Collection

7曲目は「Let Me Roll It」。ポールのギター・プレイのお披露目だ。アグレッシヴなバンド・サウンドに加えポールはギター・ソロを弾きまくり一層のライヴ感を演出した。曲最後に“Foxy Lady/Tribute to Jim Hendrix”をいつものように演奏。蛇足ながら11月27日がジミの誕生日でもある。

ここからビートルズ、ウイングス,そして最近の楽曲を織り交ぜながら、ポールが愛する人たちへのトリビュートが続く。ウイングスやソロでステージを共にし、またカメラマンでもあった当時の妻リンダへ、そして現在の妻ナンシーへ、アコースティック・コーナーではプロデューサーのジョージ・マーティンといった具合だ。それぞれに最も思い出深いであろう曲で心境を綴るポール。


63年春にUKシングル・チャート1位に輝いたのが「From Me To You」。客席の女性ファンがまるで少女に戻ったかの如く踊っている姿が微笑ましい。懐かしい名曲の演奏は時空を超えさせてくれるようだ。当時僕がよく聴いたこのヴァージョン(64年)のイントロではジョンがハーモニカだった、この夜はポール”ウィックス”がジョン役。会場を見渡すと多くの僕ら爺世代の観客が涙していた様に見えた。そして懐かしのB4ソングが続く、「Love Me Do」。爺は歌いながらここで思わず感涙にむせぶ。62年秋のジョン/ポール/ジョージ/リンゴ、そうビートルズのデビュー・ナンバー。アメリカや日本では1年半後になってやっと…。ポール”ウィックス”はここでもハーモニカで僕らを魅了する。

コンサートも中盤に差し掛かり、ポリティカルな作品「Blackbird」。この曲が発表された68年の11月発売の通称“ホワイト・アルバム”に入っているんだけど、この年の4月にキング牧師がメンフィス/ロレイン・モーテルで暗殺された。同モーテルは現在、公民権運動博物館になっている。メンフィスを訪れる際は是非とも一度足を運んで欲しい。この楽曲誕生は、57年のリトル・ロック高校事件/人種分離教育騒動が基となった。ポールは16年のUSツアー/ノース・リトル・ロック公演で同事件のメンバーのうち二人の女性と会っていた。


▲UK/LP『The Beatles』封入ピンナップ

ジョンへ捧げた「Here Today」。この時ばかりは場内がシーンとなり観客はポールの歌声に聴き入る。ジョンの誕生月最終日の夜、改めてR.I.P.

そして場面転換。新しくサイケ・ペイントされたアップライト・ピアノ、通称“マジカル・ピアノ”に移ったポールは「Queenie Eye」をプレイ。早いもので、このナンバーが登場してもう5年だ。エキサイティングな盛り上がりの中バック・スクリーンにはメリル・ストリープ、ケイト・モス、ジョニー・ディップら多くのスターが参加したPVが流された。

20曲目はHCHもジョインしての「Lady Madonna」。68年のB4ヒット。やはり60年代楽曲が一番盛り上がってしまうのかな…。ステージの構成も一流だ。ブライアンがタイトにベースを弾いている。その後方でHCHがソウル・バンドのようなファンキーでダンサブルなアクションを見せてくれ僕は思わずニヤリ。

アコギに戻ったポール、“サイコー”と叫びそして曲は「Eleanor Rigby」。66年のビューティフル・タッチなヒット・ナンバーだ。

そして再びポールはベースを手にする。新曲「Fuh You」登場。勿論ESからのナンバー。このタイトルを初めて耳にした時、爺は吃驚した。FY!僕より8歳上のポールがこんなにもヤングなラヴ・ソングを作るなんて!現役爺は勿論見習っちゃうのだ(爆)。

続いてはB4の67年アルバム『Sgt.Pepper‘s Album』(ポール流表現)から「Being For The Benefit Of Mr.Kite!」。サイケデリックなライティングであの時代をしっかりと演出。ポールの自信に満ちたベース・プレイとヴォーカルをしっかり堪能できる。

トリビュートの最後はウクレレを手にして「Something」。曲前でジョージの想い出を語る…。そういえば11月29日が命日だ…涙。この曲は69年の大ヒット・チューンだ。ジョージの写真がスクリーンにアップされサウンドも徐々に盛り上がっていく展開の中で、後半ポールはアコギに持ち替え歌った。この曲のエルヴィス・プレスリー・ヴァージョンも素晴らしい、ですよネ、湯川れい子さん。

再びベースを手にして「Ob-La-Di, Ob-La-Da」。これも68年のナンバー。


▲UK/LP『The Beatles』スペーサー from Mike’s Collection

今でこそB4初のレゲエ・ソングと言われているらしいけど、当時の日本ではジャマイカの音楽といえばミリー・スモールの「マイ・ボーイ・ロリポップ」(日本盤シングルを持ってま~す♪)がヒットして話題になったくらい。レゲエは70年代初頭にようやく日本上陸、最初は“レギー”“レガエ”と称されていた…。

ピアノ前でポール耳栓を…、となれば「Live And Let Die」。映画「007死ぬのは奴らだ」主題歌。イントロに続く第一楽章後、爆音とともに炎が噴きあげステージは興奮の坩堝と化す。


▲写真:MPL Communications / MJ Kim

凄まじい爆発はイントロからエンディングまで計5回(僕の取材メモ帳には“正”がひとつ記されている、合ってますか?!)。

30曲目ラスト・チューンは「Hey Jude」。ポールはアップライト・ピアノを弾きながら歌い上げる。イントロでブライアンはタンバリンも担当。場内のライティングがとても綺麗に映える。


▲写真:MPL Communications / MJ Kim

観客は“NA”ボード。僕は取材用のペンライト掲げて左右に…。会場が完全に一体化、音楽のパワーをひしひしと感じる。そして終了後メンバー全員で一礼。


▲写真:MPL Communications / MJ Kim

観客の拍手、声援が止まることはない。そしてハロウィンということもあってマスクをした三人が日本、イギリス、LGBTの旗を持って再登場。骸骨のマスクをしたポールは日の丸担当だ。


▲写真:MPL Communications / MJ Kim

アンコール・ナンバー1曲目はアコギを手にしたポールがジェントルに歌う「Yesterday」。65年のB4ベスト・セラー。後述するが、日本ではこの夜だけの演奏となった。

“モット キキタイ?!”ヘフナーに代えて今度は“1-2-3-4”の掛け声で始まるB4の67年アルバム『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』B面5曲目「同曲Reprise」。会場全体が半世紀前にタイム・スリップする。スクリーンには、あの有名すぎるアルバム・アートがフィーチャーされる。思わず“WELCOME THE ROLLING STONES”シャーリー・テンプル人形にニヤリ…。ショート・ヴァージョンながら映像演出のアイディアはてんこ盛りの豪華さだ。

続けざまに「Helter Skelter」、『THE BEATLES』から。ヘヴィーなギター・リフがドーム全体を揺るがしロックな世界を築き上げる。エキサイティングなナンバー。これはザ・フーのファンもお気に入りの楽曲だ。

そしてグランド・ピアノの前でポールは“モウ ソロソロ”、会場内に笑い声が…ホント彼の日本語は上手くなった。コンサートは終焉へと向かう。「Golden Slumbers~Carry That Weight~The End」。B4の69年アルバム『Abbey Road』から。ポールは89年からのツアーでこの3曲メドレーを取り入れた。ふと僕の頭に90年の東京ドーム、2015年の日本武道館、16年のデザート・トリップ、17年の武道館…いろんなシーンが蘇ってきた。ドラマティックに展開する感動の一時。そして最終章♪Oh Yeah!…♪からは最後の最後まで手拍子で観客はノリまくるのだ。ポールはレスポールを手にステージ・センターでフィニッシュ。“マタ アイマショウ”THX MR.PAUL!!時計の針は21時17分を指していた。

☆☆☆

*11月1日 東京ドーム(2日目)

予定を30分近く遅れてオープニング。ロック・コンサートでのこの“遅れ”がファンは嬉しいのだ。大昔は1時間、海外では2時間は当たり前だった。僕はその間アルコールを軽くたしなむ(笑)。

アンコール前まで初日は30曲だったけど、この日は1曲増えて31曲。日替わりで数曲弄るセットリストにコアなファンは一喜一憂し、出来る限り全公演制覇を目指すのだ。

まず2曲目に「Junior’s Farm」が登場した。74年のウイングスのヒット曲。アップビートのキャッチーなメロディー、そして何度も繰り返す♪Let’s Go♪のサビが印象的だ。ヘフナーのウォーキングが心地よい♪。
3曲目は“カエッテ キタヨ”のポールのMCの後に「Can’t Buy Me Love」。ノリが非常にいい4ロックンロール、64年にUK/USでナンバー・ワン・ヒット。しかし当時我国のTBS/POPS BEST 10では何故か12位だった。

そして前日の「Who Cares」と「Come On To Me」の間に6曲目に「Got To Get You Into My Life」が加わった。Freshen Upツアー初登場のこのナンバーは、B4の66年アルバム『Revolver』からのエキサイティングなナンバー。ホーン・セクションも加わり、待ってましたと観客は手拍子と歓声で大いに盛り上がる。


▲写真:MPL Communications / MJ Kim

初日13曲目のところがこの日14曲目となるわけだけど、ここでの登場はB4「We Can Work It Out」、邦題“恋を抱きしめよう”すっごく好きだった、勿論今も。ビーチ・ボーイズが来日した66年初頭によく耳にしたナンバーだ。TBS/POPS BEST 10では3週1位。ポールはアコギ。これも爺は歌えてしまった…冷や汗。


▲写真:MPL Communications / MJ Kim

そしてアンコール1曲目でこの日新たに登場した“1-2-3-4”で始まる「I Saw Her Standing There」はカラオケでいつも怒鳴らせて貰っているマイ青春ソング。64年リリースJP最初のB4アルバム『Meet The Beatles』B面2曲目収録の気骨溢れたロックンロールである。本当に“チョー サイコー”。

そしてこの日のビックリは何といってもアンコール・パート3曲目終了後だ。昨年の武道館もそうだったけど、ポールは観客をステージに呼んで“交流の一時”サプライズを行うことがある。ポールのコールでステージに登場したのはEgypt Stationイエローteeカップル。あれっ、マナブくんとエリコさんだ!僕の“Mike’s Garage”のイベントによく顔を出してくれるB4・ポール・フリークで広く世間に知られるマナブくんだ。この日の開演前のあの広いドーム場内で偶然遭遇して“僕のガールフレンドです”と紹介されたのがエリコさんだった。ポールに手招きされてボードを持った二人がセンター・ステージへ登場。ポールはマナブくんとすかさず友人と再会するような仕草で満面笑みでシェイクハンズ(そうそう、彼は2年前の8月のワシントンD.C.でのポールのコンサートでもオン・ステージ!“SAIKO”ボードにサインを貰ったと聞いたっけ)。ポールが改めてボードをじっくりと見ると、そこには“WANNA PROPOSE TO HER”と記されてある。そう、このステージでマナブくんはポールを証人として正式なプロポーズを行うんだ(笑)。ポールにゲット・ダウンと言われたマナブくんはひざまずき“64歳になっても僕のことを必要としてくれますか?”とB4「When I’m Sixty-Four」の歌詞を引用した言葉で彼女にまず語りかけポールと観客の笑いを誘う。続けて英語と日本語で“結婚してください”。ポールにマイクを向けられたエリコさんは“YES YES YES”。そして二人は抱き合い、ポールもジョインして三人でハグ!!その後ポールはエリコさんにもう一度おめでとうハグ。ボードにポールは大きくサインし。会場から温かい拍手と歓声が送られた。お幸せに!

☆☆☆

*11月5日 両国国技館

僕もB4研究家の藤本国彦さんほどではないけど大相撲が大好き。その辺りはVol.13に詳しく書かせて貰った。時々東京での本場所をLIVEで楽しむ。勿論、両国国技館。その昔は蔵前に国技館があった(大好きだった若ノ花や鶴ヶ嶺はこっちの方で観戦した)。

ポールも相撲が大好きで93年に続き2013年の日本ツアー中の11月に九州場所を楽しみ、後日 “ポール・マッカートニーNEW アルバム発売中!”の懸賞まで出したのだ。そんなポールは昨年まで二度行った武道館公演に続き、今年は国技館LIVE!を行った。東京最後の夜は7500人の観客を前にスペシャルなショーだ。ポールのような超ビッグ・ネームは本来、肩慣らしやプロモーション以外の目的で1万人に満たないステージをあまり行わない。つまり世界中のファンのニーズに応えるべく可能な限り大きな会場を望む。そんなビッグ・ネームのポールが日本だけに3回目の小規模コンサートを演ってくれるなんて、それだけでも特筆すべきことだと言える。これにはプロモーターの尽力は並大抵のことでははなかっただろうと思う。


▲Pic. by Mike’s pal. 

両国駅から国技館正面に向かうとその正面辺りには“ポール・マッカートニー at両国国技館”などののぼり旗がはためく。また物販ではこの日のスペシャルTシャツが大人気だ。


▲両国国技館特別tee for Mike’s Collection

開始時間を1時間過ぎたところでポールはいつものようにヘフナーを脇に抱え、手を振りながら登場。「A Hard Day’s Night」のカウントの前に腰をくねらせながら愛器をビブラートし、ちょっとカッコつけてみせる。こういうオフ・マイクの音がかすかに漏れてくるのがライヴの醍醐味であり楽しみ。この日のライヴはスクリーンを排除し、照明も極めてシンプル、あくまでバンド演奏だけにこだわった演出。ドーム特有のホール・エコーのないサウンドは、バンド本来が持つ荒々しさが僕らにダイレクトに伝わり心を強く揺さぶる。そこへ今回起用されたホーン・セクションがいかにバンドを活気付けさせているか、改めてライヴの本質を思い知らされた。


▲写真:MPL Communications / MJ Kim

4曲目「Letting Go」でまず北客席サイドでの演奏で登場したHCH。僕は思わずサム&デイヴ69年の日本公演でのソウルメン・オーケストラがサンケイホールの客席に降りて演奏したシーンを思い出した…。そして国技館の最も特徴的な1階枡席最前列の観客が柵と柵の間に足を挟み投げ出して座っている光景(まるでブランコ)、これに流石のポールもこれはストレンジに映ったに違いない。

「All My Loving」後に“ゴッツァンデス”。「In Spite Of All The Dander」後に“ドスコイ”、相撲で懸賞金を受け取る時の作法(手刀を切る)を入れながらの“ゴッツァンデス”。そして蹲踞の姿勢に入ろうとしたり…。ポールは相撲をよく知っている。実は九州場所直前ということで会場には関取の姿がなかったのが残念(それとも何方かがお忍びで…??)。因みにアンコール前にも“ドスコイ ドスコイ”。


▲写真:MPL Communications / MJ Kim

「Lady Madonna」後ポールによる簡単アンケート(笑)“東京に住んでる人?”“それ以外の人?”と質問してみたりとこの会場ならではの雰囲気を醸し出した。
25曲目ラストの「Hey Jude」で観客が揺らすサイリウム(赤・青・白)が場内を大きく盛り上げる。


▲写真:MPL Communications / MJ Kim

この日の白眉は「Helter Skelter」だ。かつてない爆音が会場中に鳴り響く。破壊的なベースが文字通りうねりを上げる。ギターの轟音に包まれながら、ポールの底知れぬ音楽への熱い情熱とパワーに思いを馳せる。高いモチベーションをこの人は持ち続けてる。どんなに老いても、ロックを伝え続けるのだろう!装飾のないシンプルなステージだから、より一層に僕らに強く伝わる。

☆☆☆

*11月8日 ナゴヤドーム

ポールが初めてその地を踏んだ名古屋は、日本ツアー最終公演地で千秋楽に相応しい雰囲気だ。ナゴヤドームには早い時間からファンが大挙集結し、隣接する巨大ショッピング・モールは夕方4時すぎには飲食店で順番待ちの列、まるで休日さながらのごった返しだ。
NAGOYA teeは凄い売れ行きだった。


▲ナゴヤドーム特別tee for Mike’s Collection

会場周辺の盛り上がりは東京の比ではない。ドームのコンコースは人、人、人で溢れ、待ち合わせも一苦労の状態。満員御礼!東京よりもちょっと年齢層が高めだが、長い長いファン歴だからこそビートルズ愛、ポール愛に満ちているような…(若いポール・ファンの皆さんスミマセン。爺の正直な感想です)。ステージに登場したポールもそのホットな雰囲気を即座に感じ取りご満悦で、終始リラックスした様子でプレイしていた。

「Blackbird」が始まる前では例の簡単アンケート、“名古屋に住んでいる人は?”“それ以外の人は?”で盛り上がる。そして23曲目「Fuh You」に入る前に“ツギハ シンキョク ダガヤ~”、名古屋市民、愛知県人は大喜び!!

そして「Ob-La-Di,Ob-La-Da」後はファンの盛り上がりにポールが拍手、そして「デラ サイコー!サイコー!!」。31曲目ラスト・ソング「Hey Jude」。ここでのNAボードはすっかりお馴染みだけど、この日は“NAgoya”ボードが登場。ポールも♪Na Na Na Nagoya♪。


▲Nagoyaボード from Mike’s Collection

アンコールに応えて日の丸を掲げたポールが登場。観客は予め席に置いてあった“再登場時に使用してください”と記された二つの穴があいたホワイトorレッドのペーパーをお面のようにする。ステージにいるポールからは【JAPAN LOVES PAUL】と映る。“アイシテルヨ”。


▲JAPAN LOVES PAUL用の用紙 from Mike’s Collection

アンコール1曲目、東京ドームと両国国技館では「I Saw Her Standing There」。でもこの日は「Birthday」。前方の男性ファン(マナブくんの友人とのこと)が“Today is my Birthday”と記したボードを掲げていた。その場で曲目変更したのかな???50周年を迎えスペシャル・エディションがリリース直前のホワイト・アルバム『The Beatles』(“6CD+BRD”と“4LP”はやっぱりゲットしては)、ここに収録されている。

そしてお約束セリフの“モウ ソロソロ”で会場中から落胆の溜息が漏れた。最後は花束と中日ドラゴンズでお馴染みドアラぬいぐるみを手に“最高の時間だった!日本にまた戻ってくるよ!マタ アイマショウ!”で締めくくられた。とても雰囲気の良いナゴヤドーム、ベスト・オブ・ジャパン・ツアー2018だった。ストーンズとポールにも詳しい友人がこう語った、「ポールのコンサートは必ず同じフレーズで終わるんですよ。それは事実上のラスト・アルバム『Abbey Road』に収録されたビートルズとして最後の全員演奏曲「The End」の一節“結局、あなたが得る愛は、あなたが与える愛に等しい”。ポールの言葉通り、日本のファンは精一杯愛情を示し、ポールもそれに応えるんです」。

☆☆☆

【ポール・マッカートニー フレッシュン・アップ ジャパン・ツアー2018】は大成功のうちに幕を閉じた。そんな中で「Yesterday」をもっと聴きたかったというファンの声を聞いた。9月のカナダ公演では4度登場したが、日本4公演のうちセットリストに加えられたのは初日の10月31日のみ。この日はポールの母親、メアリーの命日であった。この理由から11月の3公演ではセットリストからこのナンバーが外されたのだろうか…。このあたりはぜひとも本人の口から語ってほしいものである。

そして昨年以上にポールの“日本大好き”がMCから仕草から歌から強く感じられた。海外の公演でも日本語を喋ったり、日本人ファンをステージに招いたりする。これは何よりも熱狂的な日本のファンの支持があってこそのことだと思う。この積み重ねこそが今回の日本ツアーだ。そして、改めてコンサートでの演出も含め随所でプロモーターの音楽愛を感じさせてくれたことは特筆に値する。

コンサート会場中にポール愛に溢れるメッセージ・ボードが掲げられ、ポールは演奏中にそれを一つ一つ確かめるように見つめている。その熱いメッセージに応えるようにジェスチャーし、手を振り、ウィンク…。1966年にたった一度だけ来日したものの解散し、二人のメンバーを失って二度と再現が叶わぬビートルズ。しかし、残されたポールと日本のファンはビートルズのライヴの理想像を見事に具現化している。

昨年の武道館レビューで≪ぜひとも毎年、日本公演やってください≫と記したけど、もう一度、2019年もシクヨロだ!!

☆☆☆

【ウィル・リー・スーパー・グループ】



11月22日COTTON CLUBでウィル・リーのLIVEを味わった。彼のステージを楽しみに足を運んだんだけど、今回は大きな目的があった。それはドラムスを担当するチャーリー・ドレイトンに会うことだ。



彼の名はキース・リチャーズのファースト・アルバム『TALK IS CHEAP』から意識した。キースのソロ・ツアーを初めて観た88年のボストン/オーフューム・シアターでも彼はベース奏者としてステージに立ち、そしてドラムスも担当していた。92年のキースのセカンド・ソロ・アルバム『MAIN OFFENDER』にもチャーリーは参加。同年秋から冬にかけての欧州ツアー・メンバーにも選出された。僕はそのツアーのパリとバルセロナのLIVEを味わった。ライヴ終了後の深夜、バック・ミュージシャン達とドンチャン騒ぎしたんだけど、その中の一人にチャーリーがいた。何と彼は25年以上前の飲み会を今でもよく憶えていた!



僕は同日のセカンドを楽しんだけど、3曲目前に、皆さんはビートルズが好きかいというウィルのMCで「Eight Days A Week」が登場した。ポール来日後だけにとってもハッピーな気持ちでこのナンバーを満喫した。ウィルがMCで“今夜はセンセイが来ているので緊張する”と言っていたけど、その先生が6曲前でステージにコールされた。チャック・レイニーである。“WORK SHOP & LIVE” “SUPER LIVE & TALK SHOW”の為に来日したのだ。彼とは数年前、マリーナ・ショウのライヴ後にバックステージでいろんな話をした。ウィリーがチャックはレイ・チャールズの多くの作品でバックを務めたと紹介。スーパージャムはレイの大ヒット「I Got A Woman」だ。チャックのファンクな演奏ぶりに驚愕である。「I Got~」はビートルズもカヴァーしていてアルバム『Live at the BBC』に収録。因みに65年のビートルズ2度目のUSツアーのオープニング・アクトはキング・カーティスが務めたが、そのバンドのベースはチャック・レイニーだった。

写真23



*写真提供:COTTON CLUB
*Pic. by Y.Yoneda

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