【ライブレポート】<ギターカーニヴァル2018>開催。初日は、外道、人間椅子、ROLLY、田渕ひさ子による華々しい共演が実現
浦和発ギターの祭典<ギターカーニヴァル2018>が、2018年5月19日と20日の2日間に亘り開催された。本記事では、初日の5月19日のオフィシャルレポートをお届けする。
◆<ギターカーニヴァル2018 5月19日> 画像
2日間に亘って様々なイベントが開催される<ギターカーニヴァル>の主軸を担うコンテンツが、埼玉会館小ホールで行われるメインコンサートだ。今年度初日の5月19日は外道、人間椅子、ROLLY、田渕ひさ子という長いキャリアを誇る4アーティストが顔を揃え、華々しい公演となった。
開演時間を迎えると、ステージに今回のライブの司会進行役を務めるROLLYとボイス・トレーナー/シンガーの常間地真秀が登場。ROLLYの軽妙なトークと常間地の名前を何度も間違えるというボケで客席の笑いを誘った後、最初にライブを行う田渕ひさ子をステージに呼び込んだ。アコースティック・ギターを抱えてスゥトールに腰かけた田渕は、“超やりにくい(笑)”と一言。“トップバッターの田渕ひさ子です。よろしくお願いします”と挨拶をした後、「fence」からライブをスタートさせた。
今回彼女はソロでの参加ということで、アコースティック・ギターを使った弾き語りを選択。涼やかなアコースティック・ギターの音色と温かみのある歌声のマッチングは心地好くて、「fence」が始まると同時に場内を埋めたオーディエンスがステージに惹き寄せられたことが、はっきりと感じられた。
その後はハイコードを多用した煌びやかなバッキング・ギターと澄んだ歌声をフィーチュアした「360°」や、リズミカル&アッパーな「cast away」、ゆったりとしたアルペジオと繊細なボーカルを活かした“染みる系”の「ノートを閉じて」などをプレイ。ベテランにふさわしい安定したボーカルとギターはもちろん、弾き語りで起伏に富んだステージを披露する辺りはさすがの一言。1曲ごとに空気感を変えながら進んでいくライブは聴き応えがあって楽しめた。
清澄な音楽と和やかなMCでオーディエンスを楽しませた後、ラストソングとして自身のバンドtoddleの軽やかな「vacantly」をプレイ。様々な表情を見せたうえで明るいナンバーで締め括る構成が決まって、彼女のライブが終わった後の場内は爽やかな余韻に包まれていた。
続いてステージに立ったのはROLLYだった。ベルベットのスーツに黒ぶち眼鏡といういで立ちでストラトキャスターを抱えた彼はクリーン・トーンで軽くアルペジオをつま弾いた後、いきなり「真夜中のギター」を歌い出した。豊かな声量を活かしつつオペラ歌手のように抑揚を効かせた歌声は圧巻で、客席からは“おおっ!”というどよめきが湧き起こった。
続けて、スロー・チューンの「YOU BELONG TO ME」を披露。エフェクターを駆使してボーカル・ハーモニーを聴かせたり、キーボードのような音を鳴らしたり、バイオリンのようなニュアンスも出す辺りは実に見事。ストラトキャスター1本とは思えない厚みのあるサウンドと表現力に富んだボーカルで、深みのある世界を構築してみせたことに驚かされた。
その後はバックトラックを流しながらプレイする形でAKB48の「十年桜」やフォーカスの「シルヴィア」、ゲイリー・ムーアの「パリの散歩道」などが演奏された。ステージを行き来して、熱くパフォームしながらギターを弾くROLLYの姿には目を奪われずにいられないし、テイスティーかつ表情豊かなギター・プレイも聴き応えがある。感情を露わにしてパフォームするROLLYに引っ張られて、場内の熱気はどんどん高まっていった。
“歌謡ショー”的なコンセプトのMCで笑いを取りつつ良質な音楽でオーディエンスを惹きつける彼の手法は魅力に富んでいる。ROLLYならではの優れたエンターテイメント性が光るステージだった。
15分程の休憩を挟んだ後、場内にダークなオープニングSEが流れ、人間椅子がステージに登場。彼らはプログレッシブ・ロックに通じるテイストのギター・リフを配した「黒猫」からライブをスタートさせた。和装束に身を包んだ和嶋と鈴木が並び立ってパワフルなサウンドを轟かせるステージのインパクトは絶大で、どんな場所であれ、彼らのライブが始まると人間椅子の世界に染まるなと思わずにいられない。和やかな雰囲気だった休憩時間の直後にも拘わらず、場内の熱気は一気に高まった。
「黒猫」で創り上げた緊迫感を保ったまま、「芳一受難」と「なまはげ」などをプレイ。緻密な場面転換を活かした楽曲を聴かせる彼らのライブは壮大な物語を紡いでいくような味わいがあり、強固な惹き込み力を持っている。力強いボーカルやホット&スリリングなギター、ファットにウネるベース、スケールの大きいドラムなど、ハイレベルなプレイの数々も楽しめた。
爽快感に溢れたサウンドとメンバーが織りなすフィジカルなステージングに、オーディエンスも激しいリアクションを見せ、場内はエネルギーが渦巻く空間と化した。人間椅子を初めて観るリスナーも多い場でオーディエンスを一つに纏め上げる辺り、彼らのパワーやポテンシャルの高さは圧倒的といえる。
トリを務めた外道のライブは、パワフル&グルービィな「ONE,TWO」と「What a Bitch~I CAN SHOUT」を続けて聴かせる流れから始まった。“鉄壁”という言葉が似つかわしいタイトなアンサンブルやトリオバンドとは思えない厚みのあるサウンドは実に見事で、ライブを観ていると自然と気持ちが引き上げられる。彼らの年代ならではといえる大らかさがステージに溢れているのも実に良かった。
その後はアップテンポの「Get Down」や緩急を活かしたアレンジが光る「コウモリ男」、ファンキーな「ダンス・ダンス・ダンス」などが演奏された。明るいオーラを放ちながらステージを行き来してホットなアドリブを弾きまくる加納秀人と、快心のプレイを決めた後に笑顔を浮かべる松本慎二とそうる透。ライブを楽しんでいることが伝わってくるメンバー達の姿は本当に魅力的で、ベテランの彼らもステージに立つと少年に戻るんだなと思わずにいられなかった。
ライブ後半では、外道初期の名曲「ビュン・ビュン」と「香り」を畳み掛けるようにプレイ。当時の彼らが放っていたパンキッシュな魅力は今なお色褪せることがなく、時代を超えた輝きを放つ。と同時に、40年を超える年月を通してグルーヴィな音楽性にシフトした現在の外道のカッコ良さも改めて感じることができた。オーディエンスのリアクションも上々で、場内はメインコンサートの締め括りにふさわしい盛大な盛り上がりとなった。
外道が「香り」を演奏し終えた後、出演者全員がステージに姿を現して、ツイン・ドラム、ツイン・ベース、4ギター(田渕ひさ子も、ここではフェンダー・ジャズマスターをプレイ)という編成で、「パープル・ヘイズ」と「ジョニーBグッド」が演奏された。豪華な顔ぶれが並び立ったセッションは観応えがあったし、特に間奏でメンバー全員のソロをフィーチュアした「ジョニーBグッド」は圧巻だった。演奏が終わると同時に客席からは大歓声と拍手が湧きあがり、最良の形でメインコンサート初日は幕を降ろした。
カラーの異なるベテラン勢4組の競演は観応えがあって、大いに楽しめた。また、それぞれのアプローチでエンターテイメントする彼らの姿を見て、音楽やギターは演者に喜びをもたらすと同時に、多くの人を楽しませる力を持った素晴らしいツールだなと改めて思わせてくれた。良質さが光るコンサートだったので、今後も『ギターカーニヴァル』の継続的な開催を期待したい。
取材・文:村上 孝之
撮影:尾形隆夫
<埼玉★浦和ギターカーニヴァル2018> 5月19日(土)セットリスト
■田渕ひさ子1.fence
2.360°
3.palette
4.cast away
5.ノートを閉じて
6.vacantly
■ROLLY
1.真夜中のギター
2.YOU BELONG TO ME
3.十年桜
4.シルヴィア
5.パリの散歩道
6.恋のマジックポーション
7.月まで飛んで
■人間椅子
SE 此岸御詠歌
1.黒猫
2.芳一受難
3.なまはげ
4.針の山
■外道
1.ONE,TWO
2.What a Bitch~I CAN SHOUT
3.Get Down
4.ブルース~コウモリ男
5ダンス・ダンス・ダンス
6,ビュン・ビュン
7.香り
アンコール・セッション
1.パープル・ヘイズ(ジミ・ヘンドリックス)
2.ジョニーBグッド(チャック・ベリー)
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